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第五章 地下遺跡の深層と呪いの真相⁉
6.最終ミッション? 地下遺跡を脱出せよ!
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ビシリ、と壁に大きな亀裂がはしるのが目にはいった。
つぎの瞬間、亀裂を中心に壁がくだけた。
石つぶてが、ようしゃなくわたしたちに降り注ぐ。
「チッ。おい! 飛べ!」
「了解っ!」
相変わらず説明が足りないけど、さすがにもうだいたい分かるよ!
できるだけ前の方に、ワイヤーガンを発射した。
素早くワイヤーを巻き取り、崩れた岩の隙間をぬうように空中を移動する。
揺れはどんどん大きくなっている。
つぎのワイヤーを撃ったとたんに、天井が音を立てて崩れはじめた。
「うわっ!」
射出したワイヤーが、行き場をなくす。
落ちる! と思った瞬間、強い力で手を引かれた。
「そのままつかまってろ!」
友弥くんがわたしの手をつかんだまま、自分のワイヤーを巻き取った。
崩れ落ちる岩にむかってワイヤーを撃ち、それを蹴り飛ばしながら、前に前にと飛んでいく。
「ひぃえぇっ……!」
目の前を岩のかたまりがビュンビュン通り過ぎる。
わたしがなさけない声を漏らすのと同時に、天井が落ちた。
コンマ何秒かはやく、崩れる岩の間をすりぬける。
振り返ると、あの水晶の祭壇が、崩れた岩に飲み込まれていくのが見えた。
「はぁ、はぁっ……」
アクション映画さながらの脱出を遂げた友弥くんが、苦しそうに肩で息をした。
わたしをつかんだままあの動きをしたんだから、苦しくて当たり前だ。
「だ、大丈夫? いやほんとゴメンね、無駄に身体がデカくて」
「……っ、ろ」
「え、なに」
「いいから……っ、構えろっ。異形だ!」
「えっ、うわっ! うっそでしょ!」
いつの間にかこちらを取り囲んでいる異形の大群に、わたしはいままでで一番の大声をあげた。
「囲まれた。おい、そっち側頼むぞ!」
「わかった! てか、さすがに多すぎない⁉」
わたしたちは背中合わせになると、素早くクリスタルガンを構えた。
もはや数える気が起きないくらい、大量の異形がずらりと列をなしている。
「地震や山火事で大移動する、野生動物みたいなもんだろ。……いくぞ!」
友弥くんの合図にあわせて、わたしは引き金を引いた。
ここまでびっしりと埋め尽くされていれば、イヤでも弾があたる。
端から順になぎたおすように、つぎつぎに水晶の弾丸を浴びせていく。
背中越しに、友弥くんが引き金を引く動きが伝わってくる。それがなぜだか心地よくて、わたしはひそかにほっと息をはいた。
「よし、だいぶ数が減ってきたね! ……きゃあっ⁉」
「なっ……⁉」
何が起きたのか、自分でもすぐにはわからなかった。
さっきまで友弥くんと背中合わせでいたはずの身体が、宙づりになっている。
「痛っ!」
頭の右側に、引っ張られるようなするどい痛みが走った。
ギシギシと首を動かすと、天井にはりついた異形が、白い腕をのばしてツインテールにしたわたしの髪をつかみあげている。
「いだだだだっ! 痛いって! この!」
そいつめがけてクリスタルガンを撃とうとしても、不安定な体制で狙いが全然さだまらない。
「オレが撃つ! いいから動くな!」
「え、ええっ⁉」
友弥くんが、下からクリスタルガンを構えるのが見える。
グリーンがかった薄茶色の目が、怒りに染まっていた。
「おい! 晶をはなせ、クソが!」
弾が発射された瞬間、思わずぎゅっと目を閉じた。
耳元を弾がかすめ、ぷつり、と何かが切れる音が聞こえた。
ふわり、と身体が自由になるのにあわせて、友弥くんがワイヤーガンで飛んでくる。
落下するわたしを腕一本で抱きかかえると、岩場に着地した。
「ケガは⁉」
「た、たぶんない、かな」
心臓がお祭り騒ぎだ。
自分の心音がうるさすぎる。ちょっと落ち着いてくれたのむから!
「よし。もうすこしだ」
友弥くんが指さす先に、出口が見えてきた。
うしろからは、仕留めそこなった異形たちがうぞうぞと追いかけてきている。
「……これで最後だ。晶のも出せ」
友弥くんが、ポケットから振動弾を取り出した。
わたしはうなずくと、同じように自分のぶんを出し、起爆スイッチを押した。
異形めがけて、ふたりぶんの振動弾を放り投げる。
はじめてここに転がり落ちた日に見た、あのペリドットの壁が崩れていく。
きらめく黄緑色の石が、異形の白い身体にざらざらと降り注いだ。
「……またな」
友弥くんがなにかを祈るような表情で、遺跡を振り返る。
つぶやいたお別れの言葉が、地響きにかき消された。
つぎの瞬間、亀裂を中心に壁がくだけた。
石つぶてが、ようしゃなくわたしたちに降り注ぐ。
「チッ。おい! 飛べ!」
「了解っ!」
相変わらず説明が足りないけど、さすがにもうだいたい分かるよ!
できるだけ前の方に、ワイヤーガンを発射した。
素早くワイヤーを巻き取り、崩れた岩の隙間をぬうように空中を移動する。
揺れはどんどん大きくなっている。
つぎのワイヤーを撃ったとたんに、天井が音を立てて崩れはじめた。
「うわっ!」
射出したワイヤーが、行き場をなくす。
落ちる! と思った瞬間、強い力で手を引かれた。
「そのままつかまってろ!」
友弥くんがわたしの手をつかんだまま、自分のワイヤーを巻き取った。
崩れ落ちる岩にむかってワイヤーを撃ち、それを蹴り飛ばしながら、前に前にと飛んでいく。
「ひぃえぇっ……!」
目の前を岩のかたまりがビュンビュン通り過ぎる。
わたしがなさけない声を漏らすのと同時に、天井が落ちた。
コンマ何秒かはやく、崩れる岩の間をすりぬける。
振り返ると、あの水晶の祭壇が、崩れた岩に飲み込まれていくのが見えた。
「はぁ、はぁっ……」
アクション映画さながらの脱出を遂げた友弥くんが、苦しそうに肩で息をした。
わたしをつかんだままあの動きをしたんだから、苦しくて当たり前だ。
「だ、大丈夫? いやほんとゴメンね、無駄に身体がデカくて」
「……っ、ろ」
「え、なに」
「いいから……っ、構えろっ。異形だ!」
「えっ、うわっ! うっそでしょ!」
いつの間にかこちらを取り囲んでいる異形の大群に、わたしはいままでで一番の大声をあげた。
「囲まれた。おい、そっち側頼むぞ!」
「わかった! てか、さすがに多すぎない⁉」
わたしたちは背中合わせになると、素早くクリスタルガンを構えた。
もはや数える気が起きないくらい、大量の異形がずらりと列をなしている。
「地震や山火事で大移動する、野生動物みたいなもんだろ。……いくぞ!」
友弥くんの合図にあわせて、わたしは引き金を引いた。
ここまでびっしりと埋め尽くされていれば、イヤでも弾があたる。
端から順になぎたおすように、つぎつぎに水晶の弾丸を浴びせていく。
背中越しに、友弥くんが引き金を引く動きが伝わってくる。それがなぜだか心地よくて、わたしはひそかにほっと息をはいた。
「よし、だいぶ数が減ってきたね! ……きゃあっ⁉」
「なっ……⁉」
何が起きたのか、自分でもすぐにはわからなかった。
さっきまで友弥くんと背中合わせでいたはずの身体が、宙づりになっている。
「痛っ!」
頭の右側に、引っ張られるようなするどい痛みが走った。
ギシギシと首を動かすと、天井にはりついた異形が、白い腕をのばしてツインテールにしたわたしの髪をつかみあげている。
「いだだだだっ! 痛いって! この!」
そいつめがけてクリスタルガンを撃とうとしても、不安定な体制で狙いが全然さだまらない。
「オレが撃つ! いいから動くな!」
「え、ええっ⁉」
友弥くんが、下からクリスタルガンを構えるのが見える。
グリーンがかった薄茶色の目が、怒りに染まっていた。
「おい! 晶をはなせ、クソが!」
弾が発射された瞬間、思わずぎゅっと目を閉じた。
耳元を弾がかすめ、ぷつり、と何かが切れる音が聞こえた。
ふわり、と身体が自由になるのにあわせて、友弥くんがワイヤーガンで飛んでくる。
落下するわたしを腕一本で抱きかかえると、岩場に着地した。
「ケガは⁉」
「た、たぶんない、かな」
心臓がお祭り騒ぎだ。
自分の心音がうるさすぎる。ちょっと落ち着いてくれたのむから!
「よし。もうすこしだ」
友弥くんが指さす先に、出口が見えてきた。
うしろからは、仕留めそこなった異形たちがうぞうぞと追いかけてきている。
「……これで最後だ。晶のも出せ」
友弥くんが、ポケットから振動弾を取り出した。
わたしはうなずくと、同じように自分のぶんを出し、起爆スイッチを押した。
異形めがけて、ふたりぶんの振動弾を放り投げる。
はじめてここに転がり落ちた日に見た、あのペリドットの壁が崩れていく。
きらめく黄緑色の石が、異形の白い身体にざらざらと降り注いだ。
「……またな」
友弥くんがなにかを祈るような表情で、遺跡を振り返る。
つぶやいたお別れの言葉が、地響きにかき消された。
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