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第四章 ベリル探しは、キケンがいっぱい⁉
3.おかしな異形
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フクロウ軒でのにぎやかなランチが終わり、ふたたび御祠堂にもどってきた。
「で、これがきょうの目的物だ」
「おーっ! ベリルだ! 今回はオーパーツじゃないんだね」
友弥くんが差し出した写真に、わたしは思わず歓声をあげた。
ベリル、学名は、緑柱石。
六角形の柱のようなかたちをした、美しい鉱物だ。透明度が高いものは宝石として取引され、それはそれはお高い値段がつく。
緑ならエメラルド、赤ならビクスバイト、水色ならアクアマリン。
全然違う宝石のように見えるけれど、なんの発色元素が混ざっているかの違いがあるだけで、もとは同じベリルなのだ!
石って、不思議。
「いや、待ってよ。このクオリティのこの大きさのものが、あの遺跡にあるの?」
「ある、らしい」
「宝の山じゃん! おかしいってここの地下! 日本でこんなの採れないって普通!」
「同じセリフを、ベレムナイトのときも聞いた」
いったいどういう地質をしてるわけ? あの遺跡!
「……ねえ、自分用は採掘しちゃダメなの?」
「クラックが多くて、不純物がたっぷりなやつならいいぞ」
「ケ、ケチくさっ……!」
レベルの低い言い争いをしていると、両手に七つ道具をかかえた泰平さんが入ってきた。
「ふたりとも、メンテナンスが終わったよ。つけてみてくれ」
七つ道具を順に装着していく。ゆるんだネジも痛んだパーツも、すっかり元通りだ。
「うん、よさそうだね。そうそう、友弥」
「ん、なに?」
「友弥の酸素マスク、パイプ部分に亀裂があってな。あれだけはすぐに直せそうもないから、今日は予備をもっていっておくれ」
「わかった。……前回どこかにぶつけたかな」
「予備のマスクだから、いつものより酸素容量が少ない。無茶だけはせんでくれよ」
「わかってるって」
友弥くんは酸素マスクを受け取ると、写真をポケットにしまった。
「ベリルがありそうなのは、前回とは反対方向だな」
遺跡に潜りお手製の地図を確認すると、友弥くんが進行方向を指差した。
はじめて会ったときよりも、地図はさらに大きくなっている。それだけ、新しい情報が書き加えられているということだ。
「この遺跡がどれだけ広いのか、さっきのマスターたちも知らないの?」
「知らないだろうな。それどころか、まだ行ったことのないエリアが多そうだ」
「ひえぇ」
いま歩いているこの場所の上にも、ビルが建っていたりひとが住んでいるのかもと思うと、なんだかめまいがする。
「ねえ、そういえば【大いなる財宝】探しは⁉ 友弥くん、わたしの呪印の件、忘れてないでしょうね⁉」
ベレムナイトも水晶の鳥もベリルも、大変魅力的ではあるけれど! だが! しかし!
かんじんの目的が果たせる雰囲気がまったくないのは、いったいどういうこと⁉
「……そうあせるな。オレだって、きちんと調べてはいるんだ」
「本当にぃ~?」
わたしがわざとらしく友弥くんをあおった、そのときだった。
「おい、モメてるヒマはなさそうだぞ。構えろ!」
友弥くんが低い声をだした。
むこうをのぞくと、白く光るものが、うぞうぞとうごめいている。
「異形だ。ひさしぶりだな」
「わたしは、できれば一生会いたくなかったんだけど……」
わたしは、しぶしぶクリスタルガンをホルダーから引き抜いた。
いち、にい、さん、よん……。
「ねえ、なんか多くない?」
「多いな。オレは左から順にねらう。おまえは右からいけ」
「うう……。ちゃんと弾があたりますように」
わたしたちは、せーの! で岩から左右に飛び出した。
こちらに気づいた異形が、ぬらぬらと不規則に体をゆらしながら、襲いかかる。
「ひぇっ! きっもちワル!」
引き金を思いっきり引いた。水晶の弾が、つぎつぎに異形を打ち抜いていく。
――しかし。
「ちょっ、なにアイツ⁉」
中央に、あきらかにほかの異形と違うヤツがいる。
まず、身体がやたらと大きい。
そして、ふつうは弾があたると霧が晴れるように消えていくのに、コイツはすこしひるむだけで、全然消えるそぶりがない。
それどころか、だんだん大きく、光り方も激しくなっているように見える。
その異形が、ひゅんっと腕をしならせた。
腕が命中した壁が大きく削れて、破片がバラバラとあたりに飛び散る。
「うっそでしょ⁉」
あんなのがあたったら、ひとたまりもない。
ちらりと横を見ると、友弥くんも顔をしかめておかしな異形から距離をとった。
「おい、いったん退け! アイツとはやみくもに戦っても、ダメそうだ」
「で、これがきょうの目的物だ」
「おーっ! ベリルだ! 今回はオーパーツじゃないんだね」
友弥くんが差し出した写真に、わたしは思わず歓声をあげた。
ベリル、学名は、緑柱石。
六角形の柱のようなかたちをした、美しい鉱物だ。透明度が高いものは宝石として取引され、それはそれはお高い値段がつく。
緑ならエメラルド、赤ならビクスバイト、水色ならアクアマリン。
全然違う宝石のように見えるけれど、なんの発色元素が混ざっているかの違いがあるだけで、もとは同じベリルなのだ!
石って、不思議。
「いや、待ってよ。このクオリティのこの大きさのものが、あの遺跡にあるの?」
「ある、らしい」
「宝の山じゃん! おかしいってここの地下! 日本でこんなの採れないって普通!」
「同じセリフを、ベレムナイトのときも聞いた」
いったいどういう地質をしてるわけ? あの遺跡!
「……ねえ、自分用は採掘しちゃダメなの?」
「クラックが多くて、不純物がたっぷりなやつならいいぞ」
「ケ、ケチくさっ……!」
レベルの低い言い争いをしていると、両手に七つ道具をかかえた泰平さんが入ってきた。
「ふたりとも、メンテナンスが終わったよ。つけてみてくれ」
七つ道具を順に装着していく。ゆるんだネジも痛んだパーツも、すっかり元通りだ。
「うん、よさそうだね。そうそう、友弥」
「ん、なに?」
「友弥の酸素マスク、パイプ部分に亀裂があってな。あれだけはすぐに直せそうもないから、今日は予備をもっていっておくれ」
「わかった。……前回どこかにぶつけたかな」
「予備のマスクだから、いつものより酸素容量が少ない。無茶だけはせんでくれよ」
「わかってるって」
友弥くんは酸素マスクを受け取ると、写真をポケットにしまった。
「ベリルがありそうなのは、前回とは反対方向だな」
遺跡に潜りお手製の地図を確認すると、友弥くんが進行方向を指差した。
はじめて会ったときよりも、地図はさらに大きくなっている。それだけ、新しい情報が書き加えられているということだ。
「この遺跡がどれだけ広いのか、さっきのマスターたちも知らないの?」
「知らないだろうな。それどころか、まだ行ったことのないエリアが多そうだ」
「ひえぇ」
いま歩いているこの場所の上にも、ビルが建っていたりひとが住んでいるのかもと思うと、なんだかめまいがする。
「ねえ、そういえば【大いなる財宝】探しは⁉ 友弥くん、わたしの呪印の件、忘れてないでしょうね⁉」
ベレムナイトも水晶の鳥もベリルも、大変魅力的ではあるけれど! だが! しかし!
かんじんの目的が果たせる雰囲気がまったくないのは、いったいどういうこと⁉
「……そうあせるな。オレだって、きちんと調べてはいるんだ」
「本当にぃ~?」
わたしがわざとらしく友弥くんをあおった、そのときだった。
「おい、モメてるヒマはなさそうだぞ。構えろ!」
友弥くんが低い声をだした。
むこうをのぞくと、白く光るものが、うぞうぞとうごめいている。
「異形だ。ひさしぶりだな」
「わたしは、できれば一生会いたくなかったんだけど……」
わたしは、しぶしぶクリスタルガンをホルダーから引き抜いた。
いち、にい、さん、よん……。
「ねえ、なんか多くない?」
「多いな。オレは左から順にねらう。おまえは右からいけ」
「うう……。ちゃんと弾があたりますように」
わたしたちは、せーの! で岩から左右に飛び出した。
こちらに気づいた異形が、ぬらぬらと不規則に体をゆらしながら、襲いかかる。
「ひぇっ! きっもちワル!」
引き金を思いっきり引いた。水晶の弾が、つぎつぎに異形を打ち抜いていく。
――しかし。
「ちょっ、なにアイツ⁉」
中央に、あきらかにほかの異形と違うヤツがいる。
まず、身体がやたらと大きい。
そして、ふつうは弾があたると霧が晴れるように消えていくのに、コイツはすこしひるむだけで、全然消えるそぶりがない。
それどころか、だんだん大きく、光り方も激しくなっているように見える。
その異形が、ひゅんっと腕をしならせた。
腕が命中した壁が大きく削れて、破片がバラバラとあたりに飛び散る。
「うっそでしょ⁉」
あんなのがあたったら、ひとたまりもない。
ちらりと横を見ると、友弥くんも顔をしかめておかしな異形から距離をとった。
「おい、いったん退け! アイツとはやみくもに戦っても、ダメそうだ」
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