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第二章 トレジャーハンター適性テスト⁉

4.その名は、『異形』

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 か、会話が、ない!
 振動弾であらわれた細い道を進みはじめて、もう三十分は経つ。
 見つけた石を採取したいとわたしから言い出すとき以外、友弥くんはほとんど無言だ。
 気まずい、気まずすぎる!
 この重たすぎる空気、どうにかしたい!
 会話だ! とにかく会話をすべし!

「ね、ねえ、そういえば友弥くんは何年生なの? 学校どこ?」
「……」
「わたしは、灯りが丘小学校の、五年生でさー」
「……」
「ちょっと、聞いてる⁉」
「しっ。静かにしろ」

 友弥くんが、曲がり道の手前で身をかがめた。
 ヘッドライトを消し、ゴーグルを装着してじっと何かを観察している。

「えっ、なに? なんか虫とかいる感じ?」
「だから、静かにしろ。……引き返すわけにもいかないし、やるしかないか」

 そう言うと、友弥くんは腰に巻いたベルトのホルダーから、なにかを引き抜いた。
 うんうん、立派な拳銃ですねー。
 ……。
 け、拳銃⁉

「ちょっと! なんなのそれ! 銃刀法違反!」
「ばっ、静かにしろとあれほど!」

 黒光りする拳銃に、思わず大声をあげた、そのときだった。
 こちらを振り向いた友弥くんの背後から、白く光るが、ぬうっとあらわれた。
 わたしが悲鳴をあげるよりも早く、友弥くんがそのに銃口をむける。
 天井ちかくにまで膨れ上がった白いが、こちらにむかってにょろりと腕のようなものをのばした。
 友弥くんが、すかさず引き金をひいた。

 ――バシュン!

 きらきらと光をはなつ透明な弾に貫かれたが、まるで霧が晴れるようにさぁっと消えていく。

「一匹だけだったか」
「な、な、な」

 突然の展開に、ついていけない。

「なんっ、えっ、いまのなに⁉ 説明! 説明が足りないって!」

 テスト中の初心者マークの身なんだぞ、こちとら!

「言っただろ。『遺跡には人智を超えるものもある』と。あれは、そのうちのひとつだ」

 友弥くんは拳銃をホルダーにしまい、ひとりすずしい顔をしている。

「いや、たしかに言ってたけど! オバケが出るなんて、聞いてないよ!」
「オバケときたか……。遺跡は、かつてそこで暮らしていた人の想いや様々な出来事の結晶みたいなもんだ。そう言う場所には、よくも悪くもエネルギーがたまりやすい」
「えーと、つまり、そのエネルギーのかたまりが、さっきのオバケってこと?」

 わたしの言葉に、友弥くんはこくりとうなずいた。

「オレたちハンターは、さっきみたいな負のエネルギーのかたまりを『異形』と呼んでいる。一撃でしとめられたし、いまのはおとなしい部類のヤツだな」

 ということは、おとなしくないやつもいるんだ……。
 えっ、なに? トレジャーハンターって、オバケとも戦わなきゃいけないの⁉

「じゃあ、その銃はあのオバケを倒す用ってことなの?」
「そうだ。浄化作用のある水晶でつくられた弾を発射する、通称クリスタルガン。じいちゃんお手製の、七つ道具のひとつだ」

 ねえ、おじいさん、いくらなんでもすごすぎませんか?

「おまえのベルトにもついてるから、確認しておけ」
「……まさか、そんな物騒なものをぶら下げているとは、思わなかったよ……」

 わたしは友弥くんに言われたとおりに、ベルトについたホルダーの中を確認した。
 ある。たしかに。拳銃が。

「用心しろよ。出現頻度はそれほど高くないが、一匹見かけたらほかのが隠れていることも、あるからな」
「異形って、そんなゴキブリみたいな扱いなんだ……」
 
 ……もしかして、トレジャーハンターって、思った以上に命がけなのでは?
 わたしは自分のクリスタルガンをホルダーに戻すと、『寿命の半分を取り戻すまえに命を落としませんように』と、小声で祈りをささげた。
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