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第二章 トレジャーハンター適性テスト⁉

3.その七つ道具、キケンにつき

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 おじいさんとのふたり暮らしとは思えないほど、裏庭はきちんと手入れされていた。
 小さな花壇にはユリやあじさいが植えられ、緑色の葉っぱがつやつや輝いている。
 その裏庭のすみに、ちいさな井戸があった。
 いまはもう使われていないようで、木でできたフタがかぶせられている。
 友弥くんが、そのフタをぱかっとはずした。

「きょうは、ここから入るぞ」
「はあっ⁉ 冗談でしょ!」

 思わず大声でそうかえすと、わたしはおそるおそる井戸の奥をのぞきこんだ。
 目をこらしてみても暗闇がひろがるばかりで、底がどこかもわからない。

「この井戸の下は、きのうの地下遺跡につながっているんだ。ほら、さっさと行くぞ」

 友弥くんは縄ばしごを井戸に放り投げると、ひょいひょいと闇の中に消えていく。
 ええい、もうどうにでもなれ!
 わたしは覚悟を決めると、縄ばしごに足をかけた。
 気を付けてなー、というおじいさんの声に、いや本当にね! と心のなかで返事をした。



「うわ、本当だ」

 井戸の底に降りたとたん、右手の甲に刻まれた呪いの印があらわれた。きのう友弥くんに言われたとおりだ。
 ひと晩寝たらすっきり全快する、軽めのカゼみたいなものなら良かったのに!
 おでこにつけたライトを照らすと、きのうの洞窟と似た質感の壁が目に飛び込んできた。
 あの神社の地下からつながっているなんて、とんでもない広さだなぁ。

 友弥くんはグローブをはめた手元を照らし、遺跡の地図を確認していた。手作りらしい地図には、びっしりと書き込みがある。

「ベレムナイトがあるのは、おそらくこっちの方だ。行くぞ」

 そう言うと、友弥くんはスタスタと先を行ってしまう。
 しかたなく、わたしは小走りで友弥くんの後を追った。



「ねえ、そろそろ教えてほしいんだけど、さっき身体につけられたコレ、なんなの」
「じいちゃんも言っていた通り、ハントに必要な七つ道具だ。……ほら、ちょうど出番だな」

 わたしは、友弥くんが指さす先を見た。目の前に、岩の壁が立ちふさがっている。

「えっ、行き止まりだけど」
「よく見ろ」

 友弥くんが、七つ道具のひとつであるスマートウォッチをトントンとたたいた。
 液晶に、チカチカと白い光が点滅している。

「こいつは、レーダーの役割も果たすんだ。この岩の奥に、通路がある」
「レ、レーダーって! なにその高性能! いや、でも通路があったって……」

 こんな岩が立ちふさがっていたらどうしようもないでしょう、と言おうとしたわたしを、友弥くんが左手で制した。

「少し離れてろ」

 友弥くんは、なにかを岩に取り付けたかと思うと、素早くうしろに跳びのいた。

「ねえ、なにして……」
「一応、頭を守れ」

 そう注意された直後、ドォン! という大きな音とともに、土けむりが舞い上がった。

「なっ⁉︎」

 なななな、なに⁉ なにがおきたの!
 土けむりがおさまると、ひとりがようやく通れるくらいの、細い通路があらわれた。
 えっ、なに? 手品? タネもしかけもないやつ?

 あぜんとしているわたしを尻目に,友弥くんは平然としている。

「振動弾をしかけた。火薬の力を使わずに、振動エネルギーで岩を破壊する。じいちゃんお手製の七つ道具のひとつだ」

 い、岩を破壊する七つ道具だぁ……⁉︎

「……なんっじゃそりゃ! 子どもがそんなもの持ってていいの⁉」

 ちょっと物騒すぎない⁉ 友弥くんの家!

「子どもじゃない、トレジャーハンターだ」

 友弥くんは子ども扱いされたことにムッとしながら、新しい道を地図に書き足していく。

「構造上は、あっちにつながっていそうだな。先を急ぐぞ」
「えー! ねぇ、そこに見えてる二枚貝の化石、採取してからにしようよ!」

お宝を見つけたわたしは、あわてて友弥くんを引きとめる。

「はぁ……。早くしろよ」
「へぇい、ボス!」
「誰がボスだ、誰が!」
「ボスがイヤなら、親分?」
「……もうボスでいい。いいからさっさとしろ!」

 そう言って目をそらす友弥くんがおかしくて、つい顔がニヤけてしまう。
 せっかちなボスのご機嫌をそこねないよう、わたしはできるだけ素早くハンマーを振るった。
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