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第一章 穴に落ちたら、呪われた⁉

3.わたしの寿命が、半分に……?

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「同業者……、ではなさそうだな。おい、ここで何をしている」

 驚きのあまりぼう然としているわたしとは対照的に、男の子は落ち着きはらっている。

 向こう側が透けて見えそうなくらい真っ白な肌に、薄茶色の髪。
 瞳の色もグリーンがかった淡い茶色で、なんだか絵本に出てくる妖精みたいだなあなんて、空想してしまう。

「おい、聞いているのか」

 ぼんやりしているわたしに、男の子は眉をひそめた。
 
「あ、ああ、ごめん。えーと、キミは妖精じゃないよね?」
「……同業者でないことは確定だな。どこから迷い込んだんだ?」
「じ、神社の裏で、化石を掘っていたら、急に穴があいて」

 わたしの言葉に、男の子はポケットから地図を取り出して、なにやらチェックしはじめた。

「オレの知らない入り口がまだあったか……。とりあえず、ついて来い。ここを出る」

 きびすを返そうとした男の子の視線が、わたしの手の甲でぴたりと止まった。
 こぼれ落ちてしまいそうなくらい、目をまんまるくしている。

「おい! これ! この印はどうした⁉︎」
「さ、さっき、そこの祭壇の水晶に近づこうとしたら、なんか急に光って……」

 男の子は口元に手をあてると、なにかじぃっと考え込みはじめた。

「……か。……たら、……えるかもな」

 遠くを見るような目をしながら、ボソボソとひとりごとを言っている。

「えっ、なに? この印がなんなのか、知ってるの⁉」

 知っているのなら、教えてほしい。あわよくば、消してほしい!
 必死なわたしをスルーしていた男の子は、やっと顔をあげた。

「それは、『呪印』だ。おおかた、ここに祀られたものの怒りに触れたんだろう」

 そう言うと、男の子はひと呼吸置いて、わたしの顔をじっと見つめた。

「その印が刻まれたものは、寿命が半分になるという言い伝えがある」

 じゅっ、じゅっ、じゅっ。

「寿命が半分~っ⁉︎」

 困る、困りすぎる!
 だってそれじゃあ、おにいちゃんとの『約束』が果たせない。

「待って待って! さすがに困るって! なにか、これを消す方法はないの⁉」
「……あるには、ある」

 なんとか印を消してやろうと力まかせに手の甲をこすっていたわたしは、その言葉にピタリと動きを止めた。

「【悠久の時を超えし鏡がうつすところ、大いなる財宝が、その願いを叶えん】」
「……は?」

 急にわけのわからない呪文のようなものが耳に飛び込んできて、わたしは思わず聞きかえす。

「この遺跡の言い伝えだ。これが本当だとすれば、【大いなる財宝】があれば、その印を消すくらいは、できるはずだ」
「まっ、マジで?」

 これはもう、その【大いなる財宝】とやらを探すしかない!

「とりあえず、ここから出るぞ。そんな服装でいつまでもここにいるのは、自殺行為だ」

 男の子はそういうと、こちらを振り返ることなくズンズン洞窟を進んでいく。
 ベルトでいくつも謎の道具をくくりつけたその背中を、わたしは慌てて追った。

「……あれ?」
 
 男の子の首元で、なにかがキラリと光った。
 よく見ると、シャツのすき間から、あわい光をはなつヒスイのペンダントがのぞいていた。
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