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牙鼠の森
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レアールの街で唯一の教会が運営する治療院の一室にレームはいた。
甲斐甲斐しく世話をしてくれているルナの肩越しに、見覚えのある少年達が見える。
三人いる少年少女の内、少女がこちらに気付いて近寄ってくると心配そうな表情とは裏腹にレームを覗く瞳がきらきらと輝いていた。
「おじ様...お身体は大丈夫ですか? 私本当に心配しましたの」
指を絡ませもじもじとするミネア。
後方から「ぷっ」と噴き出す少年の声が聞えるが、少女がグリンっと後ろを振り向くと少年は即座に手で口を塞いで黙った。
「ミネアがなんか変」
ルナが首を傾げてリガル達の方を向くがリガルは諦めたように首を振るばかり。
そんなルナの事も見えていないかのようなミネアはレームの右手を両手で優しく包む。
「あぁ。俺は大丈夫だよ。君達も無事で本当に良かった」
「そんな! 私達が無事だったのはおじ様のお陰です!......そのおじ様ったら本当に格好良かったですわ」
うっとりと頬を紅色に染め上目遣いをするミネアに、後ろの三人が決壊した。
「ぶっひゃっひゃっひゃ。気持ち悪ぃ! あーひゃっひゃっひゃ」
「ミ、ミネア殿! 怪我に響くでござる! 笑わせないでほしいでござる。ぷーっぷぷぷ」
「やだぁ。ミネアったら変なのぉ」
狭い病室内に三人の笑いの渦が巻き起こる。
三人は下を向き全身を小刻みに震わせるミネアには気付かない。
「おいおい」
レームが制止しようとするがミネアの我慢の糸が切れた。
「笑ってんじゃないわよ! ぶっ飛ばすわよ!」
ミネアの怒声に病室が静寂に包まれた。
「他の患者さんもいますわン。お静かにですわン」
扉が開き犬人の看護婦さんと年配の医師が部屋に入る。
「ほっほっ。若い方々は賑やかだね。さぁ少し見せてもらえるかな?」
レアールに一つしかない治療院を仕切るテレジは先ずはベットに横たわるトシゾウの容体を診察を始める。
順番にレームの診察も終えると考えたように口を開いた。
「やはり中級傷薬を使用したのが良かったね。君もあの子も酷い怪我だったんだよ? いいかい、傷薬はあくまで自己治癒力を爆発的に高めるだけで即座に感知する魔法薬ではないんだ。あまり無理をしないようにね」
レームは頭を掻く。
「あの、、そんなに酷かったんですか?」
「そうだねぇ。あっちの子は鎖骨が砕かれ腕が千切れかかっていたよ。君は内臓の損傷に加えて至る所が骨折していたんだから寧ろ生きてるのが不思議なくらいじゃ」
思っていたよりも酷い状態だった事に驚き「お手数掛けました」と言い淀んだ。
さらに申し訳なさそうに続ける。
「あの...ギルドに顔を出したいんですが駄目でしょうか?」
テレジは少し眉を下げ軽い触診を施しカルテを見る。
「君の身体は長年沢山の患者を見てきた儂ですら見た事がないくらい治りがはやいんじゃよねぇ。そういうスキル持ちなのかな? まあ原因は分からないけどこの分だとギルドに行くくらいは問題ないかなぁ。ただ安静なのは変わらないからね?」
ほっと安堵して謝辞を述べる。
そこでもう一つ気がかりな事を勇気をだして聞いてみた。
「あのぉ、治療費っていくらくらいになりますかね?」
大陸全土に広がる教会の理念は【全ての子羊に救いの手を】と掲げる程民衆に寄り添った経営をしているとはいえ、そもそも中級傷薬自体が破格に高価な品だ。
レームの宿が一泊九十ダリーに比べ時価ではあるが、下級傷薬が一つ五百ダリーで性能は骨が見えるくらいの切り傷が瞬時に塞がる効能とされている。
さらに言えば週に一度の休みの他はせっせと働く街の住民の月の稼ぎが六千ダリーの経済事情で、中級傷薬はなんと一つ一万ダリーの高値である。
ルナに出会う前は三千から四千ダリーの収入をいったり来たりで生活してきたレームにとって、中級傷薬に加え入院費用治療費なんてとても支払えるとは思えない金額だった。
テレジの返答までの間はある意味鼠の王との対峙と同じくらいの恐怖がある。
「ふふふ、そう心配するなレーム。よく眠れたか? 今回の治療費はギルドが立て替えたから安心しろ」
少し開いた扉から顔を出したのはセシリアだった。
突然のギルマスの出現にトライデントの三人は恐縮するが、ルナは嬉しそうに手を振った。
「容体は良さそうだな。テレジ先生、すみませんがレームを少し連れて行ってもいいでしょうか? どうしても連れて行きたい場所があるのですが」
「まぁお前さんが一緒について行くのであれば問題なかろう」
「有難う御座います、先生」
レームもセシリアと共に頭を下げた。
支度を済ませ両側を美女二人に支えられて大通りを歩く。
行き交う人々は幸せそうに笑い、大広場では噴水を囲み大勢が歌い踊る。
街中に奏でられる楽し気な演奏やそれに合わせる子供達のタップダンス、至る所で出店が並び近隣の街や村から集まった観光客を目当てに芸を披露するジプシーや唄の語り手を担うエルフ達。
「「カンパーイ!」」
何処からともなく耳に入ってくる乾杯にレームの心も躍り逸る。
「よく見ろレーム。これがお前の成し遂げた事だ」
レームは気恥ずかしく思ったが一つだけ訂正した
「俺だけじゃないさ。俺達が成し遂げた事だよ」
いつの間にか片手いっぱいに串焼きを持ったルナも「そうそう! 私も超頑張ったからね!」と笑う。
ギルドが見えてくると、まだ昼が過ぎたばかりだというのに向かいにある酒場『迷宮の止まり木亭』のテラス席で木製の大ジョッキを傾けていた大男がこちらに気付き片手を上げた。
「レームじゃねぇか! ようやく来たな。おいっ! おめぇら! 主役が来たぞ!」
大声で店の中に向かって叫ぶギムレットの声にわらわらと大勢が集まって来る。
「あんらけっこうやるにゃないのさっ!」
顔を真っ赤にして呂律の回っていない神官の美しい女性が両手にジョッキを持ってレームに絡む。
「うっわ。この人酒くさっ」
ルナが匂いに顔をしかめると
「あんらと!? ほれおこちゃまも飲め飲めぇ。こっちこんかーい!」
ルナは女性に引っ張られ連れて行かれてしまう。
「あーあ。あの嬢ちゃんよりにも寄ってソフィアに捕まったのかぁ。南無ぅ」
両の掌を合わせてお辞儀をするギムレットにレームが声を掛けた。
「ギムレット...久しぶりだな」
これでもレームはセシリアを筆頭に昔からの馴染みには情けない姿を見せ続けた自覚はある。
はぁぁっと眺めに溜息を吐いたギムレットはレームにもエールの入ったジョッキを渡した。
「なぁに辛気臭ぇ顔してんだ。おめぇも色々あったがよ、レームとライゼルは俺にとっちゃ可愛い弟みたいなもんだっての! 俺はずっとお前はこのまま終わらねぇって信じてたしな。おらぁ乾杯すんぞ」
レームは込み上げてくるものを必死に抑えた。
大勢の探索者がジョッキを掲げ、椅子に乗り上げテーブルに足をかけたギムレットがタトゥーだらけの腕を天高く掲げる。
「偉大なる探索者レームに!」
「「レームに!」」
カンパーイ! もう彼らにとっては何度目かの始まりの挨拶と共にレームとセシリアもジョッキを傾けた。
「うっへぇ。中やばいよ。マジでやばい」
そんなルナも薄っすら頬を染めてレームの背中に隠れる。
「こねこちゃぁ~ん。エールがのこってんよぉ」
どうやら不良神官から逃げてきたようだ。
「おいレーム! ライゼルがお前を待ってたぞ~。ギルドにいるはずだ」
ギムレッドが煙草の煙を吐き出しリガルとトシゾウを両腕に抱えながら声を上げる。
レームはミネアも加えた四人でギルドの中に入って行った。
「おぅ」 ロビーで座っていたライゼルが手を挙げ、隣のロロとエレナが一礼をして四人を迎える。
「ライゼルはあっちに行かなくていいのか?」
「あぁ? あいつらは放っておいて問題ないさ。それより女神の祝福なんて人生でそう何度も見れるもんじゃないからな、これから迷宮に行くんだろ? 一緒に行こうぜ」
ルナとミネアはロロとエレナに挟まれすっかり馴染んでいる。
「女神の祝福かぁ。今さらながら年甲斐もなく胸が高鳴ってるよ」
「レームは見た事ないか? ギルマスも? 言っても俺達も『茨の園』の一度だけだけどな」
レームは首を振り、セシリアは「子供の頃に一度な」と答える。
「じゃあ驚くぜ? あいつらもいればな......いやなんでもねぇ。忘れてくれ。さぁさぁ行こうぜ?」
レームとセシリアに気を遣うように言葉を切ったライゼルが皆を急かす。
外に出るとギルドの竜車と『虹』所有の竜車の二台が止まっており、御者がラトプスに草をあげており、ルナが「可愛い」と頭を撫でる。
女の子チームと大人チームに分かれて乗りこみ二台の亜竜はゆっくりと出発すると、幌の窓からは、ムキムキの探索者に腕相撲で椅子ごとひっくり返されるリガルの姿が見えた。
「あのぉ......女神の祝福って結局なんなんですか?」
ルナの質問にミネアも興味をそそられ聞き耳を立てる。
耳の尖がった種族で容姿端麗なロロが答えた。
「まあ、簡単に言えば攻略の御褒美の事さ。迷宮を作ったとされている神々が初回に限り討伐報酬としてその神に由来する褒美を与えてくれるといったところかな。関わった神が違うと報酬も変わる。今回は森の迷宮というだけあって私には最高の御褒美だったよ」
端麗な顔をが妖しく歪む。
なにわともあれルナとミネアの胸に期待が膨らみ、一行の竜車はレアールの森の立て札へと停車したのだった。
甲斐甲斐しく世話をしてくれているルナの肩越しに、見覚えのある少年達が見える。
三人いる少年少女の内、少女がこちらに気付いて近寄ってくると心配そうな表情とは裏腹にレームを覗く瞳がきらきらと輝いていた。
「おじ様...お身体は大丈夫ですか? 私本当に心配しましたの」
指を絡ませもじもじとするミネア。
後方から「ぷっ」と噴き出す少年の声が聞えるが、少女がグリンっと後ろを振り向くと少年は即座に手で口を塞いで黙った。
「ミネアがなんか変」
ルナが首を傾げてリガル達の方を向くがリガルは諦めたように首を振るばかり。
そんなルナの事も見えていないかのようなミネアはレームの右手を両手で優しく包む。
「あぁ。俺は大丈夫だよ。君達も無事で本当に良かった」
「そんな! 私達が無事だったのはおじ様のお陰です!......そのおじ様ったら本当に格好良かったですわ」
うっとりと頬を紅色に染め上目遣いをするミネアに、後ろの三人が決壊した。
「ぶっひゃっひゃっひゃ。気持ち悪ぃ! あーひゃっひゃっひゃ」
「ミ、ミネア殿! 怪我に響くでござる! 笑わせないでほしいでござる。ぷーっぷぷぷ」
「やだぁ。ミネアったら変なのぉ」
狭い病室内に三人の笑いの渦が巻き起こる。
三人は下を向き全身を小刻みに震わせるミネアには気付かない。
「おいおい」
レームが制止しようとするがミネアの我慢の糸が切れた。
「笑ってんじゃないわよ! ぶっ飛ばすわよ!」
ミネアの怒声に病室が静寂に包まれた。
「他の患者さんもいますわン。お静かにですわン」
扉が開き犬人の看護婦さんと年配の医師が部屋に入る。
「ほっほっ。若い方々は賑やかだね。さぁ少し見せてもらえるかな?」
レアールに一つしかない治療院を仕切るテレジは先ずはベットに横たわるトシゾウの容体を診察を始める。
順番にレームの診察も終えると考えたように口を開いた。
「やはり中級傷薬を使用したのが良かったね。君もあの子も酷い怪我だったんだよ? いいかい、傷薬はあくまで自己治癒力を爆発的に高めるだけで即座に感知する魔法薬ではないんだ。あまり無理をしないようにね」
レームは頭を掻く。
「あの、、そんなに酷かったんですか?」
「そうだねぇ。あっちの子は鎖骨が砕かれ腕が千切れかかっていたよ。君は内臓の損傷に加えて至る所が骨折していたんだから寧ろ生きてるのが不思議なくらいじゃ」
思っていたよりも酷い状態だった事に驚き「お手数掛けました」と言い淀んだ。
さらに申し訳なさそうに続ける。
「あの...ギルドに顔を出したいんですが駄目でしょうか?」
テレジは少し眉を下げ軽い触診を施しカルテを見る。
「君の身体は長年沢山の患者を見てきた儂ですら見た事がないくらい治りがはやいんじゃよねぇ。そういうスキル持ちなのかな? まあ原因は分からないけどこの分だとギルドに行くくらいは問題ないかなぁ。ただ安静なのは変わらないからね?」
ほっと安堵して謝辞を述べる。
そこでもう一つ気がかりな事を勇気をだして聞いてみた。
「あのぉ、治療費っていくらくらいになりますかね?」
大陸全土に広がる教会の理念は【全ての子羊に救いの手を】と掲げる程民衆に寄り添った経営をしているとはいえ、そもそも中級傷薬自体が破格に高価な品だ。
レームの宿が一泊九十ダリーに比べ時価ではあるが、下級傷薬が一つ五百ダリーで性能は骨が見えるくらいの切り傷が瞬時に塞がる効能とされている。
さらに言えば週に一度の休みの他はせっせと働く街の住民の月の稼ぎが六千ダリーの経済事情で、中級傷薬はなんと一つ一万ダリーの高値である。
ルナに出会う前は三千から四千ダリーの収入をいったり来たりで生活してきたレームにとって、中級傷薬に加え入院費用治療費なんてとても支払えるとは思えない金額だった。
テレジの返答までの間はある意味鼠の王との対峙と同じくらいの恐怖がある。
「ふふふ、そう心配するなレーム。よく眠れたか? 今回の治療費はギルドが立て替えたから安心しろ」
少し開いた扉から顔を出したのはセシリアだった。
突然のギルマスの出現にトライデントの三人は恐縮するが、ルナは嬉しそうに手を振った。
「容体は良さそうだな。テレジ先生、すみませんがレームを少し連れて行ってもいいでしょうか? どうしても連れて行きたい場所があるのですが」
「まぁお前さんが一緒について行くのであれば問題なかろう」
「有難う御座います、先生」
レームもセシリアと共に頭を下げた。
支度を済ませ両側を美女二人に支えられて大通りを歩く。
行き交う人々は幸せそうに笑い、大広場では噴水を囲み大勢が歌い踊る。
街中に奏でられる楽し気な演奏やそれに合わせる子供達のタップダンス、至る所で出店が並び近隣の街や村から集まった観光客を目当てに芸を披露するジプシーや唄の語り手を担うエルフ達。
「「カンパーイ!」」
何処からともなく耳に入ってくる乾杯にレームの心も躍り逸る。
「よく見ろレーム。これがお前の成し遂げた事だ」
レームは気恥ずかしく思ったが一つだけ訂正した
「俺だけじゃないさ。俺達が成し遂げた事だよ」
いつの間にか片手いっぱいに串焼きを持ったルナも「そうそう! 私も超頑張ったからね!」と笑う。
ギルドが見えてくると、まだ昼が過ぎたばかりだというのに向かいにある酒場『迷宮の止まり木亭』のテラス席で木製の大ジョッキを傾けていた大男がこちらに気付き片手を上げた。
「レームじゃねぇか! ようやく来たな。おいっ! おめぇら! 主役が来たぞ!」
大声で店の中に向かって叫ぶギムレットの声にわらわらと大勢が集まって来る。
「あんらけっこうやるにゃないのさっ!」
顔を真っ赤にして呂律の回っていない神官の美しい女性が両手にジョッキを持ってレームに絡む。
「うっわ。この人酒くさっ」
ルナが匂いに顔をしかめると
「あんらと!? ほれおこちゃまも飲め飲めぇ。こっちこんかーい!」
ルナは女性に引っ張られ連れて行かれてしまう。
「あーあ。あの嬢ちゃんよりにも寄ってソフィアに捕まったのかぁ。南無ぅ」
両の掌を合わせてお辞儀をするギムレットにレームが声を掛けた。
「ギムレット...久しぶりだな」
これでもレームはセシリアを筆頭に昔からの馴染みには情けない姿を見せ続けた自覚はある。
はぁぁっと眺めに溜息を吐いたギムレットはレームにもエールの入ったジョッキを渡した。
「なぁに辛気臭ぇ顔してんだ。おめぇも色々あったがよ、レームとライゼルは俺にとっちゃ可愛い弟みたいなもんだっての! 俺はずっとお前はこのまま終わらねぇって信じてたしな。おらぁ乾杯すんぞ」
レームは込み上げてくるものを必死に抑えた。
大勢の探索者がジョッキを掲げ、椅子に乗り上げテーブルに足をかけたギムレットがタトゥーだらけの腕を天高く掲げる。
「偉大なる探索者レームに!」
「「レームに!」」
カンパーイ! もう彼らにとっては何度目かの始まりの挨拶と共にレームとセシリアもジョッキを傾けた。
「うっへぇ。中やばいよ。マジでやばい」
そんなルナも薄っすら頬を染めてレームの背中に隠れる。
「こねこちゃぁ~ん。エールがのこってんよぉ」
どうやら不良神官から逃げてきたようだ。
「おいレーム! ライゼルがお前を待ってたぞ~。ギルドにいるはずだ」
ギムレッドが煙草の煙を吐き出しリガルとトシゾウを両腕に抱えながら声を上げる。
レームはミネアも加えた四人でギルドの中に入って行った。
「おぅ」 ロビーで座っていたライゼルが手を挙げ、隣のロロとエレナが一礼をして四人を迎える。
「ライゼルはあっちに行かなくていいのか?」
「あぁ? あいつらは放っておいて問題ないさ。それより女神の祝福なんて人生でそう何度も見れるもんじゃないからな、これから迷宮に行くんだろ? 一緒に行こうぜ」
ルナとミネアはロロとエレナに挟まれすっかり馴染んでいる。
「女神の祝福かぁ。今さらながら年甲斐もなく胸が高鳴ってるよ」
「レームは見た事ないか? ギルマスも? 言っても俺達も『茨の園』の一度だけだけどな」
レームは首を振り、セシリアは「子供の頃に一度な」と答える。
「じゃあ驚くぜ? あいつらもいればな......いやなんでもねぇ。忘れてくれ。さぁさぁ行こうぜ?」
レームとセシリアに気を遣うように言葉を切ったライゼルが皆を急かす。
外に出るとギルドの竜車と『虹』所有の竜車の二台が止まっており、御者がラトプスに草をあげており、ルナが「可愛い」と頭を撫でる。
女の子チームと大人チームに分かれて乗りこみ二台の亜竜はゆっくりと出発すると、幌の窓からは、ムキムキの探索者に腕相撲で椅子ごとひっくり返されるリガルの姿が見えた。
「あのぉ......女神の祝福って結局なんなんですか?」
ルナの質問にミネアも興味をそそられ聞き耳を立てる。
耳の尖がった種族で容姿端麗なロロが答えた。
「まあ、簡単に言えば攻略の御褒美の事さ。迷宮を作ったとされている神々が初回に限り討伐報酬としてその神に由来する褒美を与えてくれるといったところかな。関わった神が違うと報酬も変わる。今回は森の迷宮というだけあって私には最高の御褒美だったよ」
端麗な顔をが妖しく歪む。
なにわともあれルナとミネアの胸に期待が膨らみ、一行の竜車はレアールの森の立て札へと停車したのだった。
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