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本編
第27話 晒し者
しおりを挟む「平民が邪魔だからといって、このアリスに危害を加えようとしたそうだな」
「いつも一人でいるお前を気にかけて面倒を見ようとしたアリスに、お前は平民だからという理由で数々のひどい行いをし、さらにはその魔獣でアリスを襲おうとした!」
「この仕打ちのなんたることか! お前という女には、道徳心のかけらもないのか!?」
「なんの申し開きもないということは、アリスいじめを認めるのだな?」
「……もういい。アリスがかわいそうだ。お前がかばう魔獣が何よりの証拠だ。観念してそいつを引き渡せ。そして学園から去るがいい」
ロザリアが呆気にとられている間に、グレンはどんどん話した。
観客席に座っていた生徒たちも、グレンに同調したり、ロザリアに憎悪の眼差しを送ったりしていた。
しかしよく見てみると、ただの興味でこの場にいる生徒が大半なようだった。ロザリアに怒りの視線を向けているのは、グレンの取り巻きたちや、赤寮の生徒がほとんどだ。
反対に黒寮の生徒は全くいなかった。
(つまり殿下は、私を学園から追い出したいってこと……?)
ロザリアはグレンの話と今の状況をなんとか整理し、そう結論づけた。
アリスの方を見れば、彼女はずっと下を向いていた。
この場所へきてからというもの、彼女は一言も話していない。
(私がアリスちゃんをいじめていて、それでもって魔獣を学園で飼育して、襲わせようとして……)
真白を慌てて迎えに来たのを、この場にいた全員が目撃していた。
確かにそれは、言い訳のしようがないと思う。
ロザリアは見事にはめられてしまったのだ。
(アリス、ちゃん……)
ロザリアの胸がずきんと傷んだ。
やはり、仲良くなったと思ったのは、ロザリアの幻想だったのだろうか。
ロザリアは友達がいなさすぎて、勘違いしていただけだったのだろうか。
真白はアリスが大切にしていた子犬だ。
もしかして最初から、ロザリアを嵌めるために……?
ロザリアの中で、様々な疑念が渦を巻いた。
「兄二人を殺してまで、公爵家当主になりたかったようだが、残念だったな。蓋を開けてみれば、『武具』の召喚もできない、ただの無能だった。神はよく人を見ておられるよ」
(また言ってる。そんなはず、ないのに……)
ロザリアはひく、と眉を動かした。
それは違う、となんとか反論しようとしたとき。
がつん! と何かがこめかみに直撃した。
「ッ」
(え!? いたッッッ!)
結構な勢いで飛んできたそれは、ロザリアをよろめかせる。
ものすごい痛みを感じてこめかみに手を当てれば、ぬるりとした感触が手に触れた。
「!」
(ひいいいい! 血が!!!!)
ロザリアの表情は一ミリも変わらなかったが、心の中では悲鳴を上げた。
アリスが「ああ!」と声を上げていたのにも、気づかなかった。
(待って、やばい。普通に痛い。どうしよう……)
血でパニックになってしまい、ロザリアはぶっ倒れそうになった。顔から血の気が引いていく。もともと白い肌が極限まで青白くなる。
地面を見れば、小さな小石が転がっていた。
小石だとしても、あんなスピードで投げられては、普通に怪我をする。
一体だれがこんなことを、とロザリアが顔を上げたところで、一際ロザリアに憎悪の視線を注ぐ女性徒と目があった。
「この人殺し!」
甲高い罵倒の声。
こめかみを押さえたまま、ロザリアは石が飛んできた方向を見る。
そこには幾人かの女性たちが固まっていて、ロザリアに憎悪の眼差しを向けていた。
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