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本編
第14話 アレイズの焦り
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その晩、ロザリアが保健室でウトウトしていると、ベッドまで訪ねてきた人物がいた。
アレイズだった。
なぜか必死の形相でロザリアに迫ってきたため、ロザリアはびく、と身を引いた。
黒寮の寮長アレイズ・マクフィリアは元王宮近衛魔導士で、今はこの学園の戦闘訓練の授業を受け持つ教師だ。腕の立つ魔導士のわりに年齢も若く、顔もそれなりにいいときたので、学園の女生徒たちには人気だった(ロザリアは知らなかったが)。
しかしいかんせん、ロザリアと同じく顔つきが悪い。
ので、近づかれると怖いのだ。
(私もきっと、こんな感じで見られているのね)
そう思ってため息を吐く。
「おい、ロザリア=リンド」
「は、はい」
「お前は一体、何をしたんだ」
「えっ……」
いきなり肩をつかまれ、ロザリアはぎょっとしてしまった。
なぜアレイズがこんなに必死なのか、皆目検討もつかなかったからだ。
たんこぶ一つで、まさか退学になるんじゃ……。
「言え、何をした?」
「え、か、階段から落ちて、それで……」
「階段から落ちた?」
アレイズが眉を潜めた。
その様子があまりにも怖くて、ロザリアは震え上がってしまった。
ロザリアはアレイズに嫌われている(少なくとも本人はそう思っている)。
旧校舎の件がバレれば、本当に退学にされてしまいそうだ。
「せ、先生……?」
ロザリアが怯えたような声を出すと、アレイズはハッとしたようにロザリアから手を離した。
チッと舌打ちし、ベッドから離れていく。
「やはりお前は魔導士など向いていない。即刻この学園を去るべきだ」
「ッ」
「階段から落ちただと? そんな……」
ぶつぶつ呟きながら、アレイズは去って行った。
「な、なんだったの……」
ロザリアは呆然としたように、その後を見送ったのだった。
アレイズだった。
なぜか必死の形相でロザリアに迫ってきたため、ロザリアはびく、と身を引いた。
黒寮の寮長アレイズ・マクフィリアは元王宮近衛魔導士で、今はこの学園の戦闘訓練の授業を受け持つ教師だ。腕の立つ魔導士のわりに年齢も若く、顔もそれなりにいいときたので、学園の女生徒たちには人気だった(ロザリアは知らなかったが)。
しかしいかんせん、ロザリアと同じく顔つきが悪い。
ので、近づかれると怖いのだ。
(私もきっと、こんな感じで見られているのね)
そう思ってため息を吐く。
「おい、ロザリア=リンド」
「は、はい」
「お前は一体、何をしたんだ」
「えっ……」
いきなり肩をつかまれ、ロザリアはぎょっとしてしまった。
なぜアレイズがこんなに必死なのか、皆目検討もつかなかったからだ。
たんこぶ一つで、まさか退学になるんじゃ……。
「言え、何をした?」
「え、か、階段から落ちて、それで……」
「階段から落ちた?」
アレイズが眉を潜めた。
その様子があまりにも怖くて、ロザリアは震え上がってしまった。
ロザリアはアレイズに嫌われている(少なくとも本人はそう思っている)。
旧校舎の件がバレれば、本当に退学にされてしまいそうだ。
「せ、先生……?」
ロザリアが怯えたような声を出すと、アレイズはハッとしたようにロザリアから手を離した。
チッと舌打ちし、ベッドから離れていく。
「やはりお前は魔導士など向いていない。即刻この学園を去るべきだ」
「ッ」
「階段から落ちただと? そんな……」
ぶつぶつ呟きながら、アレイズは去って行った。
「な、なんだったの……」
ロザリアは呆然としたように、その後を見送ったのだった。
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