悪役令嬢と七つの大罪

美雨音ハル

文字の大きさ
上 下
11 / 43
本編

第9話 謎の男

しおりを挟む

 ロザリアは真っ暗な空間の中で目を覚ました。

「なに、ここ……?」

 あたりを見回す。
 不思議なことに、旧校舎の壁は消えていた。
 

『……ようやく来たか』


「!」

 聞いたことのない、男の声が聞こえてきた。
 ロザリアが振り返ると、真っ暗な闇の中で、ほんのわずかに輝いている部分があった。
 そこには玉座のようなものがあり、誰かが足を組んで座っている。

「だれ……?」

 ロザリアは目を細めて、そちらを確認した。
 誰もいなかったはずの空間に、一人の男。
 どうやらこちらを見つめているようだ。

『しかしまあ、軟弱そうな娘だな』

 若い声の主は、ロザリアに何か不満を抱いているようだった。

『本当にお前が……なのか?』

「……?」

 声の一部が霞んで聞こえない。

「あの、あなたは一体……?」

 ロザリアは、怖くてその場から動けなかった。
 じわじわと嫌な汗が浮かんでくる。

 顔が見えない男。

 けれど、なんとなくわかった。
 そこに座る人物が、普通の人間ではないということが。
 この男はまずい。
 そう本能が告げていた。
 男は肩を震わせて笑った。

『意志も脆弱そうだ。なぜ封印はお前のようなやつを選んだ?』

「な、なんのはな……」

 ロザリアが震える声でそう言うと、男はく、と笑った。

『まあいい。退屈していたんだ。しばし、お前につきやってやるよ』

 ──選ばれた? 一体何に?

 声も出せなくなったロザリアだったが、男はロザリアの心を読んだかのように告げた。

『俺の……にだよ』

 そう言って男は不敵に笑うと、自らの手を宙に向けた。
 その瞬間、強い風が巻き起こる。
 闇の中にまばゆい光が発生し、何かを形作ってゆく。
 武具の召喚だ。
 空間がぐにゃりと曲がった気がした。
 ロザリアはその武具が何かを確認する間も無く、再び奔流の中へ放り込まれてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法狂騒譚

冠つらら
ファンタジー
ここは世界の裏側。 誰もが生まれながらに魔法が使える場所。 舞台は、世界の片隅にあるリモンシェット校。 世の中には古代魔法と近代科学魔法の派閥があった。 近代派の男子生徒、ゾマーは、古代派の象徴であるティーリンにちょっかいをかける。 しかし、投げられた敵意は、やがて大きな波紋を引き起こす。 魔法の学び舎は今日も騒がしい。 ※タイトル変更しております ※他のサイトでも投稿しています

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

【完結】婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました

Mimi
ファンタジー
私エヴァンジェリンには、幼い頃に決められた婚約者がいる。 男女間の愛はなかったけれど、幼馴染みとしての情はあったのに。 卒業パーティーの2日前。 私を呼び出した婚約者の隣には 彼の『真実の愛のお相手』がいて、 私は彼からパートナーにはならない、と宣言された。 彼は私にサプライズをあげる、なんて言うけれど、それはきっと私を悪役令嬢にした婚約破棄ね。 わかりました! いつまでも夢を見たい貴方に、昨今流行りのざまぁを かまして見せましょう! そして……その結果。 何故、私が事故物件に認定されてしまうの! ※本人の恋愛的心情があまり無いので、恋愛ではなくファンタジーカテにしております。 チートな能力などは出現しません。 他サイトにて公開中 どうぞよろしくお願い致します!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)
恋愛
プリムローズは、筆頭公爵の末娘。 上の姉と兄とは歳が離れていて、両親は上の子供達が手がかからなくなる。 すると父は仕事で母は社交に忙しく、末娘を放置。 そんな末娘に変化が起きる。 ある時、王宮で王妃様の第2子懐妊を祝うパーティーが行われる。 領地で隠居していた、祖父母が出席のためにやって来た。 パーティー後に悲劇が、プリムローズのたった一言で運命が変わる。 彼女は5年後に父からの催促で戻るが、家族との関係はどうなるのか? かなり普通のご令嬢とは違う育て方をされ、ズレた感覚の持ち主に。 個性的な周りの人物と出会いつつ、笑いありシリアスありの物語。 ゆっくり進行ですが、まったり読んで下さい。 ★初めての投稿小説になります。  お読み頂けたら、嬉しく思います。 全91話 完結作品

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

糞ゲーと言われた乙女ゲームの悪役令嬢(末席)に生まれ変わったようですが、私は断罪されずに済みました。

メカ喜楽直人
ファンタジー
物心ついた時にはヴァリは前世の記憶を持っていることに気が付いていた。国の名前や自身の家名がちょっとダジャレっぽいなとは思っていたものの特に記憶にあるでなし、中央貴族とは縁もなく、のんきに田舎暮らしを満喫していた。 だが、領地を襲った大嵐により背負った借金のカタとして、准男爵家の嫡男と婚約することになる。 ──その時、ようやく気が付いたのだ。自分が神絵師の無駄遣いとして有名なキング・オブ・糞ゲー(乙女ゲーム部門)の世界に生まれ変わっていたことを。 しかも私、ヒロインがもの凄い物好きだったら悪役令嬢になっちゃうんですけど?!

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

処理中です...