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本編
第9話 謎の男
しおりを挟むロザリアは真っ暗な空間の中で目を覚ました。
「なに、ここ……?」
あたりを見回す。
不思議なことに、旧校舎の壁は消えていた。
『……ようやく来たか』
「!」
聞いたことのない、男の声が聞こえてきた。
ロザリアが振り返ると、真っ暗な闇の中で、ほんのわずかに輝いている部分があった。
そこには玉座のようなものがあり、誰かが足を組んで座っている。
「だれ……?」
ロザリアは目を細めて、そちらを確認した。
誰もいなかったはずの空間に、一人の男。
どうやらこちらを見つめているようだ。
『しかしまあ、軟弱そうな娘だな』
若い声の主は、ロザリアに何か不満を抱いているようだった。
『本当にお前が……なのか?』
「……?」
声の一部が霞んで聞こえない。
「あの、あなたは一体……?」
ロザリアは、怖くてその場から動けなかった。
じわじわと嫌な汗が浮かんでくる。
顔が見えない男。
けれど、なんとなくわかった。
そこに座る人物が、普通の人間ではないということが。
この男はまずい。
そう本能が告げていた。
男は肩を震わせて笑った。
『意志も脆弱そうだ。なぜ封印はお前のようなやつを選んだ?』
「な、なんのはな……」
ロザリアが震える声でそう言うと、男はく、と笑った。
『まあいい。退屈していたんだ。しばし、お前につきやってやるよ』
──選ばれた? 一体何に?
声も出せなくなったロザリアだったが、男はロザリアの心を読んだかのように告げた。
『俺の……にだよ』
そう言って男は不敵に笑うと、自らの手を宙に向けた。
その瞬間、強い風が巻き起こる。
闇の中にまばゆい光が発生し、何かを形作ってゆく。
武具の召喚だ。
空間がぐにゃりと曲がった気がした。
ロザリアはその武具が何かを確認する間も無く、再び奔流の中へ放り込まれてしまった。
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