転生もふもふ九尾、使い魔になる

美雨音ハル

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第11話 罪

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 次に目が覚めたのは、すっかり日も暮れた頃だった。
 まぶたの裏に、あたたかな炎の色がちらついた。
 目を開けると、ランプを手にした男が、小屋の入り口に立っていた。
 力なく男を見上げていると、男は黙って小屋に入り、壁にもたれて座り込んだ。

「……お前、一体なんのつもり?」

 男は何も答えなかった。
 ただ壁にもたれて、ぼんやりとしているだけだ。
 なんでこんなところにいるのだろうか。
 見張り?
 私に何かするのだろうか。

「私をどうするのよ」

「……」

「何か、いいなさいよ」

 そうすごんで言えば、ようやく男はこちらに視線を向けた。
 その目に光はなく、無感情に私を見つめているだけだ。
 その視線に、死ぬほど腹が立ってきた。
 今も燃えているあの森は、すべてこの男のせいなのに、なぜこいつは水のように静かでいられるのか。

「お前が森を燃やせと言ったの」

「……違う」

 意外なことに、男は首を横に振った。

「あいつらが勝手にやった」

 あいつらというのは、ここの村人のことだろうか。

「俺はお前をどうにかするように言われただけだ」

「……」

「この土地が、欲しかったらしい」

 男はつぶやくように言った。

「そんなことはどうでもいいか」

「……よくないわよ。あんた、あんただって同罪なんだからね」

 私は唸り声をあげた。
 始まりは全部こいつだ。
 こいつがもっとうまく立ち回れば、こんなことにはならなかったのかもしれないのに。

「俺が欲しかったのは、森じゃない」

「じゃあ、何が狙いだったの?」

 男はぼんやりと私を見たまま、何も答えなくなった。
 私は心に降り積もった恨みを吐き出すように、静かな声で言った。

「お前はおどれほどのことをしでかしたのか、わかってないわ」

「……」

「……いずれわかるでしょうよ。そのときになっても、もう何もできないでしょうが」

「……どうでもいい」

 男は言葉通り、心底どうでもよさそうな顔をしていた。
 じいっと私を見つめたまま。
 この男は一体なんなのだろうか。
 まるで人形のように感情が薄く、思惑の掴めない男。
 おまけにバカ強い。
 百年以上生きた幻獣であるこの私を、たった一振りの剣でなぎ払ってしまったのだから。

「おろかもの」

 私は吐き捨てるようにそう言って、目をつぶった。
 
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