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第六章 家族で異世界転移した日本人との出会い

3、専業主婦&家事手伝いはチートジョブでした~

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 ボクに解析して増やしてもらいたい物として、花織さんが出してきた物なのだが……。

「あの、これ空ですよね?」

 花織さんが勢いよく首を振って、ビンの隅を指差す。

「ここ! ここに少し残ってます!」

 そして、その他にも化粧品をアイテムボックスから取り出していく……。
 使い切ったあと、この世界で似たものが作れないか参考にするために取っておいたらしい。

 それは何? という顔のブランカさんマリアさん、それから花音ちゃんも?

 そんな女性陣に、化粧品の効能を説明する花織さん。
 説明を聞くうちに、化粧品の重要性を納得してしまったようだ。

 その他容器のほうがMP消費が高いので、何度か解析し直して生成することになる。

『ぽち、たま、うさ子、臭いは大丈夫? ……くさくない?』

 気になるのは、こちらだ。ダメなようなら、ボク達がいる間は使用厳禁の約束を取り付けよう。くんくんしながら、ぽち達が答える。

『だいじょうぶ~』『くさくない~』
『カイト、おなかすいた~』

『うん、そろそろお昼の時間だったね。臭いは大丈夫なようだ』

 しかし、もっと他に何か先に、ありそうなものだと思うのだが……。化粧品って、そんなに優先順位高いものなのだろうか? 
 なんて考えていると、女性陣からプレッシャーが来る。
 この人達は、読心スキルとかもってるのか?

「……先にお昼にしませんか? ぽち達もおなかが空いたようなので」

 

 ボクの目の前に、約一ヶ月ぶりのプリンにケーキがある。早速アイテムボックスに入れて解析する。
 店で出しているのは、プリンとこのケーキだけだという。しかし、他にもメニューがあるようだ。スイーツ以外もあるらしい、実に楽しみだ。

 ボクのテンションがプリンやケーキで上がりすぎたのか、ぽち、たま、うさ子も興味を持ってにおいをかいでいる。

『カイト、おいし~?』『たべられる?』
『だいじょうぶ?』

「これもチョコレートと一緒で、ぽち、たま、うさ子には体に悪いんだ……」

 何が入っているか分からないのは、もちろん。人間用の食べ物は味が濃すぎる……。
 専用で作れるといいだけど、できるんだろうか?

「そのミルクが大丈夫なものなら、ワンちゃんたち用のプリン作りましょうか?」

 ペット達のミルク皿をみて、花織さんが言う。

 プリンの材料は、卵と牛乳と砂糖の三つだけだった。
 スポンジケーキの材料が卵と小麦粉と砂糖とか……。
 プリンのカラメルの材料が砂糖だけとか、意外すぎる事実だ。

 砂糖抜きのプリンを作ってもらう事にして、ペット用ミルクを渡す。更に驚かされた。

 器の中で卵とミルクを混ぜると、その場でプリンが出来ていく。いくら料理知識のない僕でも、おかしい事に気付くというものだ。

「MP消費の料理スキルで作ってるんですよ」

 ボクのジョブやスキルもチートだけど、この家族も充分にチートだった。
 母親の花織さんのジョブは専業主婦でジョブ関連のスキルは四つあるそうだ。

内助の功:レベルに応じて家族のステータスを強化。家族のスキル習得補助。
料理:通常の料理スキルに加え、微小だが魔法的な効果を発生させる。
裁縫:通所の裁縫スキルに加え、微小だが魔法的な効果を発生させる。
掃除:通常の掃除スキルに加え、微笑だが魔法的な効果を発生させる。


 父親の空野和弘さんのジョブは手品師で、大きめなアイテムボックス、幻影魔法のスキルを持っている。
 リアルな幻影の「耳が大きくなっちゃた」「鼻が伸びていくピノキオ」の技を見せてくれた……。
 ……芸人か! 次は、縦じまのハンカチ出すんじゃないかと思ったわ。

 花音ちゃんは、家事手伝いのジョブで説明を聞くと……。

家事手伝い:家業などの手伝いに適したジョブ。家族の持つスキルを覚え易い。
☆        
 確実に、チート化しているだろう。
 あと17歳の息子さんがいるそうだが、冒険者のジョブで戦闘系スキル持ちらしい。

 この家族のチート化の要因は、花織さんの内助の功によるスキル習得補助に間違いない。その証拠に、アイテムボックスを花織さんも花音ちゃんも使っている。

『カイト、プリンおいし~!』
『『ぷりん、すき~!』』

『よ~し、指令だ! 花織さんをお前達の可愛さでメロメロにしてやれ!」 

『『『らじゃ~』』』

 プリンを食べ終わった、ぽち、たま、うさ子が花織さんにぺこりと御礼をして見上げる。
 そして、思わず伸びた花織さんの手に撫でらるまま身を任せている。
 ボクは、ころあいを見て話を切り出す。

「プリンを作ってくれた花織さんに感謝しているみたいですね……」

 カリカリはバランス食として万全だと思うが、一種類しかないのでメニューを増やせないかと、花織さんにお願いする。
 他にも、この世界の食材でにおいチェックして、食べられそうなものを極薄味で調理してもらう約束をした。

『カイトわる~』『カイト、ありがと~』
『『『にんむ、かんりょ~』』』

 さっと、花織さんの手を逃れて、じゃれ合いはじめる……。

「どうも、一般より能力が高い気がしていたんだが……。転移者は、自然に特別なジョブになる事が多いのかもしれないね」

「専業主婦に、家事手伝い、手品師ですか……。ボクの守護者のジョブも、この世界で一般的にあるものですが特別製になってますね」

「……僕の趣味って、手品だったんだよね」

「その辺の影響も、あるんですかね」

「そういえば、花音は『お手伝いする~』って付いて回ってたかな?」

 どうやら転移者の能力は、この世界では高く成るようである。そして転移時の生活環境が、ジョブに関係している可能性が出てきた。
 まあ、どうなる事でもないのだが……。

 食事のあと……化粧品の続きを終え、やっと父親の空野和弘さんの順番が来る。

「……特別な日だけと決めていた。この世界で最後に、死ぬ前にと思って取って置いたものもある」

 そう言って、アイテムボックスから取り出した。
 一回分くらいの緑茶。三つの紅茶のティーパック。缶コーヒーが一つ。缶詰が五つ、カップ麺が四つある。
 大収穫だ、よく我慢できたものである。花織さんの料理のスキル。日本の料理の再現が活躍したおかげだろう。


 電池切れの二つの携帯電話を復活させた……。
 保存されていた写真に、顔がほころぶ。

 小さい頃の写真を見て花音ちゃんが顔を赤らめる。

 手鏡、傘、懐中電灯、救急セット、工具、ガムテープ、ビニールテープ……。
 他にも色々と有用な物を解析できた。

 ……がMPは限られている。化粧品って、本当に必要な物なのか?
 ボクは女性陣からの殺気に、化粧品の必要性を再確認させられた。……何故?
 
『カイト分かり易い~』『けしょうひん、みて』
『首かしげた~』

『……マジ?』

『『『やってた~』』』

 ……ぐふっ。
 読心スキルは無かったようだが、心を読まれないように気を付けよう。

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