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その後の二人
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結婚式の準備はたいへんだ。
いろいろ話し合った私とタカシは、お互いいい年だしきちんとお披露目をしようということになり、結婚式を挙げることにした。
おかげで、現在進行形で東奔西走している。
互いの家族への挨拶と報告。
式の日取りを決めて、会場を決めて、結納と招待客のリストを作って。
タカシのマンションに一緒に住むことにしたから新居の心配はいらないけれど、指輪を決めたり、衣装を決めたり、結婚式の演出を決めたりと、やることは山のよう。
それを仕事の合間にやっているのだから、私は疲れていたのだろう。
「――――は?」
おかげで、突如目の前に現れた若い女性が、何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「だから! もうっ! 何度言えばわかるのよ? 早くタカシさんと別れてって言っているでしょう! 彼と結婚するのは、私なんだから!」
…………いや、きっと疲れていなかったとしてもわからない。
ここは歩道で、今は夕方。外灯がポツリポツリと点く時刻だ。
急いで会社から帰る途中で、私は彼女に呼び止められた。
通行人が、何事かと私たちを振り返っては通りすぎていく。
はっきり言って恥ずかしいので、路上で叫ぶのは止めてほしいと思うのだが――――。
いったい彼女は、なんなの?
「私とタカシさんは、もうずっと前からおつき合いしていたのよ。……そりゃあ、この前ちょっとケンカして『別れる』なんて言っちゃったけど、今までだってタカシさんは、私のわがままをなんだって聞いてくれたもの! きっと、今度だって、私がゴメンナサイって謝ればすぐに仲直りしてくれるに決まっているわ! ……私、タカシさんが、あんなに大きな事業家一族のご子息だったなんて知らなかったの。もうっ、もうっ、ダントツ優良物件じゃない! すっごい玉の輿になれるわ! そうと知っていたら、絶対別れなかったのに!」
――――どうやら、彼女はタカシの元カノのようだ。
そう言えば『結婚祝いを言いに兄貴が職場にきて大騒ぎになった』と、彼は言っていた。
私も驚いたのだが、タカシのお兄さんは、某有名IT企業の若社長。お父さんは日本有数の企業グループの経営者で、おまけにお母さんは有名なファッションデザイナーだ。
タカシ自身は、親の七光りみたいなものが嫌いで、家とはまったく無関係な会社にエンジニアとして勤めているのだが、経営の才能もあるようで、結婚を機にポストを用意するからお父さんかお兄さんの会社に移れと言われている。
私は、今の仕事を続けるのも、ご家族の会社に行くのも、どちらでもタカシの好きなようにしてほしいと伝えているのだけど。
要は、タカシの家はとてもお金持ちだったのだ。
元カノは、その事実を知って、またタカシとよりを戻したいと思ったのだろう。
だからといって、私に突撃してくるのはいかがなものかと思うのだが。
「あなたも玉の輿狙いなんでしょう? でも、残念ね。私がいればあなたの出番なんてないわよ。タカシさんだって、あなたみたいなオバサンより、私のような若くて可愛い娘と結婚したいに決まっているもの! わかったら、さっさと身を引いてちょうだい!」
ツンと唇を尖らせて、元カノは私を睨んだ。
とんでもない自信家である。
私は、ハア~と大きなため息をついた。
「あなたのご要望には応えられません。それでは失礼しますね」
こんな茶番につき合っていられない。
さっさとその場を離れようとしたのだが――――。
「なっ! ちょっと、待ちなさいよ! なに勝手に帰ろうとしているのよ!」
元カノが、慌てて私の前に立ち塞がった。
「私が帰るのに、あなたの許可はいりませんよね?」
「私が話しかけているのよ! ちゃんと答えなさいよ!」
「だから、ご要望には応えられませんって答えたでしょう?」
「そんな答え、納得できないわ!」
キンキンと怒鳴る彼女の声が、五月蠅い。
「なんで、私があなたに納得してもらわなきゃいけないんですか?」
私は、ジロリと彼女を睨みつけた。
「そ、それは――――」
「私がタカシと結婚するのは、玉の輿狙いなんかじゃありません。彼を愛していて、ずっと一生一緒に生きていきたいと思ったから結婚するんです。それにあなたは関係ありませんし、当然文句を言われる筋合いもありません。無関係の人は、すっこんでいてください!」
冷たく言い放てば、元カノは「うっ」と怯んだ。
「な、なによ! なによ! なによ! オバサンのくせに!」
言い返せなくなった彼女は、そんなことを叫ぶ。
以前の私だったら、彼女の言葉にとても傷ついただろう。
でも今は、負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
「だから? 少なくとも私は、どんなにオバサンでも、あなたみたいに非常識な若者よりずっとマシだと思っています。……だいたい、あなたはタカシをフッて二股かけていた若い方の人とおつき合いをしているんでしょう? こんなことを言ってきて相手に対して不誠実だと思わないんですか?」
彼女の顔は、見る見る真っ赤になった。
「うるさい! うるさい! うるさい! 余計なお世話よ! あいつなんて、若さ以外はタカシさんより全然劣るダメダメな奴なんだから。それでも若い分、タカシさんより出世するかなと思って選んであげたけど、タカシさんがお金持ちだとわかっていたら、絶対選ばなかったわ! ……ともかく、私はタカシさんと結婚したいの! オバサンはさっさと私に譲るって言いなさいよ!」
身勝手もここに極まれりといった発言だ。
まったく呆れてしまう。
「タカシったら、見る目がないにもほどがあるわ」
思わずこぼせば、
「――――すまない。言い訳のしようがない」
声が聞こえた。
「タカシ?」
「タカシさん!」
すっかり暗くなった歩道の向こうから、タカシが現れた。
それを見た元カノは、タカシに駆け寄ろうとする。
「タカシさん! あの人が私に言いがかりをつけてくるんですよ! まったくヒドい人ですよね? きっと、私が若いからって、ひがんでいるんです!」
いけしゃあしゃあとそんなことを言い出した。
私は、呆れかえって声も出ない。
「とてもそうは見えなかったが?」
「ええ!? 違いますよぉ~」
「いや、違わないと思うよ。――――君もそう思うだろう?」
近寄ってきた元カノから、嫌そうに身を離したタカシは、振り返って後ろにいた人物にそう聞いた。
「ええ、違いませんね。ずっと見ていたから間違いありません」
きっぱり言い切った新たな人物を見て、元カノは「ヒッ!」と息をのむ。
「な、なんでここに?」
「先輩に君のことを謝ろうとして一緒についてきたんだよ。……まさか、君が俺のことをそんな風に思っていたとは思わなかった。……お望みどおり、先輩より全然劣るダメダメな俺は、君と別れてやるよ。だからといって先輩が君を選ぶなんて、絶対ないと思うけどな」
新たに現れた青年は、どうやら元カノの今カレ(?)のようだった。
凍えるような冷たい表情で彼女を睨みつける。
「ち、違うのよ。今のは、その――――」
「違わないさ。君のそのおバカなくらい天真爛漫なところも魅力的だと思っていたけれど……さすがに愛想が尽きた。俺にはもう金輪際話しかけないでくれ。――――先輩も、本当に申し訳ありませんでした。謝罪はあらためてまた後日に、今日はこれで失礼させてください」
青年は、タカシに深々と頭を下げた。
「ああ、それは気にしなくていいよ。おかげで俺はナズナに会えたんだから。今となってはフラれてよかったとさえ思っているくらいだ。……それより、ショックなのは君の方だろう? 気をつけて帰れよ」
もう一度頭を下げて青年は去っていった。
元カノは、どうすればいいのか迷った様子で青年とタカシを代わる代わる見ていたが、タカシに冷たく睨まれて「ヒウッ!」と情けない悲鳴をあげ、慌てて駆け去っていく。
青年の去っていったのと同じ方向に駆けていったから、追いすがるのかもしれないが、さすがに仲直りは無理だろう。
これで許してもらえたのなら、私はあの青年の懐の深さを心の底から尊敬する。
少なくとも、私なら絶対ムリだ。
「不快な思いをさせてしまってすまない!」
そんなことを考えていれば、タカシが勢いよく謝ってきた。
「まったくだわ。あんなに趣味が悪いとは思わなかった」
心の狭い私は、そんなことはないと言えなかったので、プーと頬を膨らませる。
「本当に、ゴメン! ――――彼女、先日俺の家のことを知ってからやたらと絡んできて、あまりにしつこいから、会社で『俺には、もう心に決めた愛する人がいて、その人と結婚するからつきまとわないでほしい』と言ったんだ。そしたら急に飛び出していって……急いで後を追ったんだが、間に合わなかった」
タカシは、膝につくくらいに頭を下げる。
そのままずっと下げ続けて、いつまで経っても上げないから――――仕方なく、私が折れた。
「もういいわ。でも、もう二度とあの人には会いたくないわ」
「ああ、俺もさすがに堪忍袋の緒が切れた。どうしようか迷っていたけれど、今の会社を辞めて親父のところに移るよ。それで、使える伝手を全部使って、彼女を遠ざける。……そうだな。地方に左遷とかいいかもしれないな」
タカシは悪そうな顔でニヤリと笑った。
彼の家の力を使えば、そのくらい簡単なのかもしれない。
私は心の中で彼女に向かって合掌した。
まあ、ざまあみろとしか思えないけれど。
「許してくれるかい?」
「仕方ないわね。もう悪い女に引っかからないように、ずっと傍で見張っていてあげるわ」
ため息をつきながらそう言えば、タカシは嬉しそうに笑った。
「ありがとう! ずっと一生見張っていてくれ! いつか常世の国に行くまで――――そして、その後も」
それは永遠というのではないだろうか?
私は笑って「はい」と頷いた。
◇◇◇
これにて完結です。
お楽しみいただけたなら幸いです。
いろいろ話し合った私とタカシは、お互いいい年だしきちんとお披露目をしようということになり、結婚式を挙げることにした。
おかげで、現在進行形で東奔西走している。
互いの家族への挨拶と報告。
式の日取りを決めて、会場を決めて、結納と招待客のリストを作って。
タカシのマンションに一緒に住むことにしたから新居の心配はいらないけれど、指輪を決めたり、衣装を決めたり、結婚式の演出を決めたりと、やることは山のよう。
それを仕事の合間にやっているのだから、私は疲れていたのだろう。
「――――は?」
おかげで、突如目の前に現れた若い女性が、何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「だから! もうっ! 何度言えばわかるのよ? 早くタカシさんと別れてって言っているでしょう! 彼と結婚するのは、私なんだから!」
…………いや、きっと疲れていなかったとしてもわからない。
ここは歩道で、今は夕方。外灯がポツリポツリと点く時刻だ。
急いで会社から帰る途中で、私は彼女に呼び止められた。
通行人が、何事かと私たちを振り返っては通りすぎていく。
はっきり言って恥ずかしいので、路上で叫ぶのは止めてほしいと思うのだが――――。
いったい彼女は、なんなの?
「私とタカシさんは、もうずっと前からおつき合いしていたのよ。……そりゃあ、この前ちょっとケンカして『別れる』なんて言っちゃったけど、今までだってタカシさんは、私のわがままをなんだって聞いてくれたもの! きっと、今度だって、私がゴメンナサイって謝ればすぐに仲直りしてくれるに決まっているわ! ……私、タカシさんが、あんなに大きな事業家一族のご子息だったなんて知らなかったの。もうっ、もうっ、ダントツ優良物件じゃない! すっごい玉の輿になれるわ! そうと知っていたら、絶対別れなかったのに!」
――――どうやら、彼女はタカシの元カノのようだ。
そう言えば『結婚祝いを言いに兄貴が職場にきて大騒ぎになった』と、彼は言っていた。
私も驚いたのだが、タカシのお兄さんは、某有名IT企業の若社長。お父さんは日本有数の企業グループの経営者で、おまけにお母さんは有名なファッションデザイナーだ。
タカシ自身は、親の七光りみたいなものが嫌いで、家とはまったく無関係な会社にエンジニアとして勤めているのだが、経営の才能もあるようで、結婚を機にポストを用意するからお父さんかお兄さんの会社に移れと言われている。
私は、今の仕事を続けるのも、ご家族の会社に行くのも、どちらでもタカシの好きなようにしてほしいと伝えているのだけど。
要は、タカシの家はとてもお金持ちだったのだ。
元カノは、その事実を知って、またタカシとよりを戻したいと思ったのだろう。
だからといって、私に突撃してくるのはいかがなものかと思うのだが。
「あなたも玉の輿狙いなんでしょう? でも、残念ね。私がいればあなたの出番なんてないわよ。タカシさんだって、あなたみたいなオバサンより、私のような若くて可愛い娘と結婚したいに決まっているもの! わかったら、さっさと身を引いてちょうだい!」
ツンと唇を尖らせて、元カノは私を睨んだ。
とんでもない自信家である。
私は、ハア~と大きなため息をついた。
「あなたのご要望には応えられません。それでは失礼しますね」
こんな茶番につき合っていられない。
さっさとその場を離れようとしたのだが――――。
「なっ! ちょっと、待ちなさいよ! なに勝手に帰ろうとしているのよ!」
元カノが、慌てて私の前に立ち塞がった。
「私が帰るのに、あなたの許可はいりませんよね?」
「私が話しかけているのよ! ちゃんと答えなさいよ!」
「だから、ご要望には応えられませんって答えたでしょう?」
「そんな答え、納得できないわ!」
キンキンと怒鳴る彼女の声が、五月蠅い。
「なんで、私があなたに納得してもらわなきゃいけないんですか?」
私は、ジロリと彼女を睨みつけた。
「そ、それは――――」
「私がタカシと結婚するのは、玉の輿狙いなんかじゃありません。彼を愛していて、ずっと一生一緒に生きていきたいと思ったから結婚するんです。それにあなたは関係ありませんし、当然文句を言われる筋合いもありません。無関係の人は、すっこんでいてください!」
冷たく言い放てば、元カノは「うっ」と怯んだ。
「な、なによ! なによ! なによ! オバサンのくせに!」
言い返せなくなった彼女は、そんなことを叫ぶ。
以前の私だったら、彼女の言葉にとても傷ついただろう。
でも今は、負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
「だから? 少なくとも私は、どんなにオバサンでも、あなたみたいに非常識な若者よりずっとマシだと思っています。……だいたい、あなたはタカシをフッて二股かけていた若い方の人とおつき合いをしているんでしょう? こんなことを言ってきて相手に対して不誠実だと思わないんですか?」
彼女の顔は、見る見る真っ赤になった。
「うるさい! うるさい! うるさい! 余計なお世話よ! あいつなんて、若さ以外はタカシさんより全然劣るダメダメな奴なんだから。それでも若い分、タカシさんより出世するかなと思って選んであげたけど、タカシさんがお金持ちだとわかっていたら、絶対選ばなかったわ! ……ともかく、私はタカシさんと結婚したいの! オバサンはさっさと私に譲るって言いなさいよ!」
身勝手もここに極まれりといった発言だ。
まったく呆れてしまう。
「タカシったら、見る目がないにもほどがあるわ」
思わずこぼせば、
「――――すまない。言い訳のしようがない」
声が聞こえた。
「タカシ?」
「タカシさん!」
すっかり暗くなった歩道の向こうから、タカシが現れた。
それを見た元カノは、タカシに駆け寄ろうとする。
「タカシさん! あの人が私に言いがかりをつけてくるんですよ! まったくヒドい人ですよね? きっと、私が若いからって、ひがんでいるんです!」
いけしゃあしゃあとそんなことを言い出した。
私は、呆れかえって声も出ない。
「とてもそうは見えなかったが?」
「ええ!? 違いますよぉ~」
「いや、違わないと思うよ。――――君もそう思うだろう?」
近寄ってきた元カノから、嫌そうに身を離したタカシは、振り返って後ろにいた人物にそう聞いた。
「ええ、違いませんね。ずっと見ていたから間違いありません」
きっぱり言い切った新たな人物を見て、元カノは「ヒッ!」と息をのむ。
「な、なんでここに?」
「先輩に君のことを謝ろうとして一緒についてきたんだよ。……まさか、君が俺のことをそんな風に思っていたとは思わなかった。……お望みどおり、先輩より全然劣るダメダメな俺は、君と別れてやるよ。だからといって先輩が君を選ぶなんて、絶対ないと思うけどな」
新たに現れた青年は、どうやら元カノの今カレ(?)のようだった。
凍えるような冷たい表情で彼女を睨みつける。
「ち、違うのよ。今のは、その――――」
「違わないさ。君のそのおバカなくらい天真爛漫なところも魅力的だと思っていたけれど……さすがに愛想が尽きた。俺にはもう金輪際話しかけないでくれ。――――先輩も、本当に申し訳ありませんでした。謝罪はあらためてまた後日に、今日はこれで失礼させてください」
青年は、タカシに深々と頭を下げた。
「ああ、それは気にしなくていいよ。おかげで俺はナズナに会えたんだから。今となってはフラれてよかったとさえ思っているくらいだ。……それより、ショックなのは君の方だろう? 気をつけて帰れよ」
もう一度頭を下げて青年は去っていった。
元カノは、どうすればいいのか迷った様子で青年とタカシを代わる代わる見ていたが、タカシに冷たく睨まれて「ヒウッ!」と情けない悲鳴をあげ、慌てて駆け去っていく。
青年の去っていったのと同じ方向に駆けていったから、追いすがるのかもしれないが、さすがに仲直りは無理だろう。
これで許してもらえたのなら、私はあの青年の懐の深さを心の底から尊敬する。
少なくとも、私なら絶対ムリだ。
「不快な思いをさせてしまってすまない!」
そんなことを考えていれば、タカシが勢いよく謝ってきた。
「まったくだわ。あんなに趣味が悪いとは思わなかった」
心の狭い私は、そんなことはないと言えなかったので、プーと頬を膨らませる。
「本当に、ゴメン! ――――彼女、先日俺の家のことを知ってからやたらと絡んできて、あまりにしつこいから、会社で『俺には、もう心に決めた愛する人がいて、その人と結婚するからつきまとわないでほしい』と言ったんだ。そしたら急に飛び出していって……急いで後を追ったんだが、間に合わなかった」
タカシは、膝につくくらいに頭を下げる。
そのままずっと下げ続けて、いつまで経っても上げないから――――仕方なく、私が折れた。
「もういいわ。でも、もう二度とあの人には会いたくないわ」
「ああ、俺もさすがに堪忍袋の緒が切れた。どうしようか迷っていたけれど、今の会社を辞めて親父のところに移るよ。それで、使える伝手を全部使って、彼女を遠ざける。……そうだな。地方に左遷とかいいかもしれないな」
タカシは悪そうな顔でニヤリと笑った。
彼の家の力を使えば、そのくらい簡単なのかもしれない。
私は心の中で彼女に向かって合掌した。
まあ、ざまあみろとしか思えないけれど。
「許してくれるかい?」
「仕方ないわね。もう悪い女に引っかからないように、ずっと傍で見張っていてあげるわ」
ため息をつきながらそう言えば、タカシは嬉しそうに笑った。
「ありがとう! ずっと一生見張っていてくれ! いつか常世の国に行くまで――――そして、その後も」
それは永遠というのではないだろうか?
私は笑って「はい」と頷いた。
◇◇◇
これにて完結です。
お楽しみいただけたなら幸いです。
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