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第一章 異世界の住人はとても個性的でした。
聞くに聞けなかった(言語能力的に)だけです
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「スゴイ! リオール、オイシソウ!」
目の前で焼き上がるクッキーを暖は手放しで誉める。
「そんな。大したものじゃないよ」
謙遜しながらも、リオールは嬉しそうだ。
成り行きでラミアーの食生活改善を目指すことになってしまった暖。
しかし、ラミアーの偏食は筋金入りで、暖が体に良いからと勧めるような食事には見向きもしないのだ。
困った暖は、以前クッキーを作ってくれたリオールに相談しに来ていたのだった。
実は薬学にも知識のあるエルフは、暖の要望に従って貧血に効く木の実を使ったクッキーを焼いてくれた。
「吸血鬼の面倒なんか見る必要はないと思いますけれど。他ならぬウララのお願いですからね」
「アリガトウ、リオール」
暖は心の底から感謝した。
ギュッとリオールの手を握る。
至近距離で顔を覗きこんで…………ハッとした。
リオールは何故か青白い顔を真っ赤にしているのだが、その目の下には黒々とした ”くま” がくっきりとできていたのだ。
「リオール、酷イ顔」
こんなに濃いくまは、テストで三日間徹夜した後の鏡の中の自分以外見たことがない。
暖に酷い顔と言われたリオールは、ガ~ン! とショックを受けたみたいにふらついた。
「ウ、ウララ……」
「リオール、眠レテル?」
グイッと暖は顔を近づける。
問いかけられたリオールは、目を見開いて暖から距離をとった。
「あ、……あの」
「何日、眠レテナイノ?」
離された距離をあっという間に詰めて、暖は問い詰める。
「えっと、……その、…………と、十日間くらい」
リオールの返事に暖は目を丸くした。
十日間も眠らなければ死んでしまうのではないだろうか?
「あ、あ、でも! 気にしなくてもいいんですよ。エルフにとって十日くらい寝ないのは、別になんともないことなんです。こう見えてエルフは頑丈です。体に異常はありません」
くまのできた顔で、弱々しく笑うリオール。
だが、体が大丈夫だからと言って心が平気とは限らなかった。
第一、眠らないのと眠れないのは、――――全然違う。
暖は問答無用でリオールに迫った。
「ウ、ウララ?」
離れようとするリオールの手をグッと掴む。そのまま引き寄せ、力いっぱいしがみついた。
「ウララ!?」
「オ願イ。チョットコノママデ」
背の高いリオールの体に、セミがとまるように抱きつく暖。
本当は抱き締めてあげたいと思ったのだが、体格差からどうにもならなかった。
動くに動けずリオールは体を固めている。
触れあった箇所が温く…………やがて強ばっていたリオールの体から力が抜けた。
おずおずとエルフの手が暖の背中に回る。
「……ウララ、あなたは本当に何も聞きませんね」
呟くようにリオールは、そう言った。
確かに暖は今までリオールに対しうつ病の原因を聞いたことがない。
「言葉、ワカラナカッタカラ」
聞くに聞けなかったのだと正直に暖は答えた。
リオールの顔がポカンとなる。
でも、それが真実だった。
――――何故眠れないのか?
――――どうして、リオールはこんな状態になっているのか?
――――死にたがりのエルフの過去に何があったのか?
暖だって知りたくない訳ではない。
それでも――――
「聞イテ欲シケレバ、何時デモ聞クヨ。慰メイルナラ、全力デ慰メル。……デモ、話シタクナケレバ、話サナクテイイ。ドンナリオールデモ、側ニイルカラ」
それしかできない暖だった。
「私、リオール、会エテ良カッタ。リオールモ同ジダト、嬉シイ」
心からそう言った。
リオールの顔が、クシャリと歪む。
「もちろん! もちろんです。ウララ。……あなたに会えて良かった。……ありがとう」
リオールのキレイな瞳からホロホロと涙がこぼれる。
本当に泣き虫なエルフだった。
目の前で焼き上がるクッキーを暖は手放しで誉める。
「そんな。大したものじゃないよ」
謙遜しながらも、リオールは嬉しそうだ。
成り行きでラミアーの食生活改善を目指すことになってしまった暖。
しかし、ラミアーの偏食は筋金入りで、暖が体に良いからと勧めるような食事には見向きもしないのだ。
困った暖は、以前クッキーを作ってくれたリオールに相談しに来ていたのだった。
実は薬学にも知識のあるエルフは、暖の要望に従って貧血に効く木の実を使ったクッキーを焼いてくれた。
「吸血鬼の面倒なんか見る必要はないと思いますけれど。他ならぬウララのお願いですからね」
「アリガトウ、リオール」
暖は心の底から感謝した。
ギュッとリオールの手を握る。
至近距離で顔を覗きこんで…………ハッとした。
リオールは何故か青白い顔を真っ赤にしているのだが、その目の下には黒々とした ”くま” がくっきりとできていたのだ。
「リオール、酷イ顔」
こんなに濃いくまは、テストで三日間徹夜した後の鏡の中の自分以外見たことがない。
暖に酷い顔と言われたリオールは、ガ~ン! とショックを受けたみたいにふらついた。
「ウ、ウララ……」
「リオール、眠レテル?」
グイッと暖は顔を近づける。
問いかけられたリオールは、目を見開いて暖から距離をとった。
「あ、……あの」
「何日、眠レテナイノ?」
離された距離をあっという間に詰めて、暖は問い詰める。
「えっと、……その、…………と、十日間くらい」
リオールの返事に暖は目を丸くした。
十日間も眠らなければ死んでしまうのではないだろうか?
「あ、あ、でも! 気にしなくてもいいんですよ。エルフにとって十日くらい寝ないのは、別になんともないことなんです。こう見えてエルフは頑丈です。体に異常はありません」
くまのできた顔で、弱々しく笑うリオール。
だが、体が大丈夫だからと言って心が平気とは限らなかった。
第一、眠らないのと眠れないのは、――――全然違う。
暖は問答無用でリオールに迫った。
「ウ、ウララ?」
離れようとするリオールの手をグッと掴む。そのまま引き寄せ、力いっぱいしがみついた。
「ウララ!?」
「オ願イ。チョットコノママデ」
背の高いリオールの体に、セミがとまるように抱きつく暖。
本当は抱き締めてあげたいと思ったのだが、体格差からどうにもならなかった。
動くに動けずリオールは体を固めている。
触れあった箇所が温く…………やがて強ばっていたリオールの体から力が抜けた。
おずおずとエルフの手が暖の背中に回る。
「……ウララ、あなたは本当に何も聞きませんね」
呟くようにリオールは、そう言った。
確かに暖は今までリオールに対しうつ病の原因を聞いたことがない。
「言葉、ワカラナカッタカラ」
聞くに聞けなかったのだと正直に暖は答えた。
リオールの顔がポカンとなる。
でも、それが真実だった。
――――何故眠れないのか?
――――どうして、リオールはこんな状態になっているのか?
――――死にたがりのエルフの過去に何があったのか?
暖だって知りたくない訳ではない。
それでも――――
「聞イテ欲シケレバ、何時デモ聞クヨ。慰メイルナラ、全力デ慰メル。……デモ、話シタクナケレバ、話サナクテイイ。ドンナリオールデモ、側ニイルカラ」
それしかできない暖だった。
「私、リオール、会エテ良カッタ。リオールモ同ジダト、嬉シイ」
心からそう言った。
リオールの顔が、クシャリと歪む。
「もちろん! もちろんです。ウララ。……あなたに会えて良かった。……ありがとう」
リオールのキレイな瞳からホロホロと涙がこぼれる。
本当に泣き虫なエルフだった。
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