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さようなら異世界
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「サウリア、君は海を越え人間達に危機を報せようとしてくれた。そして傷ついた人間を癒してくれた。君のために俺は雨を降らせよう。でも、これは一時しのぎにしかならない。だからサウリア、君は君の仲間を説得してくれ。……人間と戦ってはいけないと。本当に自分達の国を救いたいなら人間と平等の立場で人間を招き、和平を結び、調和しろと。――――それが『神』のご意志なんだと」
この空手形は、おそらく空手形では終わらないだろうという自信があった。
救世主たる俺の行うことによって雨の降らない有鱗種の国に雨が降る確率は、高い。
ならばそれを最大限に利用して有鱗種に行いを改めてもらいたいと思う。
俺の言葉に、サウリアは感極まったように体を震わせその場にひれ伏した。
『必ず! ……救世主さま、ありがとうございます!』
サウリアって見かけによらず熱血漢だよな。
他の有鱗種もサウリアに引き摺られるように、次々に頭を下げた。
俺を見る目に畏怖の念がこもる。
大広間には、どこか厳粛な雰囲気が満ちた。
静かになった部屋に、ドォォ――という水の流れる音が聞こえてくる。
「イヤです! ユウさま」
その静寂を、リーファの悲痛な声が破った。
「帰られてしまうなんてイヤです。異界渡りは、そんなに何度も行えるようなものではありません。ここでユウさまが帰ってしまわれれば、次にいつお呼びできるかは何もわからないんです。……それに、何より危険です! 時機を外した異界渡りは確かにこの世界に天変地異を呼びますが、その害が実際に異界を渡るユウさまご自身に及ばぬ保証はありません。無事に元の世界に戻れるのかどうかすらわからないのです! そんな危険にユウさまを遭わせるなんて……」
リーファは泣いて潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
――――うん。その可能性は俺も考えた。
天変地異を起こすほどの現象が、その中心にいるだろう俺に何らかの影響を及ぼす可能性は、かなり大きいと思う。
無事に帰れるのかどうか?
帰れたとしても五体満足ですむのか?
……ひょっとしたら命だって失うかもしれない。
今までの俺なら、絶対そんな事はしないだろうと思える程の危険が、そこにはあった。
なのに、おかしいよな。
俺の心には不思議なくらい迷いがない。
――――リーファ。
俺はもう二度と後悔はしないと決めてしまったんだ。
「大丈夫だよ。リーファ。俺はね、どうやら救世主みたいなんだ。俺が救世主なら俺には『神』さまの加護がある。リーファの『神』さまは絶対だろう?」
リーファは、悲壮な顔をした。
自分の『神』を信じる巫女としての立場と、俺を危険な目に遭わせたくないという優しさが、心の中で葛藤となってリーファを苦しめているのだろう。
「ユウさま! 私も――私も反対です! そんな危険をユウさまが犯す必要なんてありません。獣人の力ならば、いくらでもお貸しします。みんなで力を合わせて有鱗種を倒せばいいんです。――――ユウさま。帰らないでくださいっ」
長い耳をフルフルと震わせて、フィフィが俺に訴えかけてきた。
ああ。スゴイ。
可愛い女の子二人から心配して引き止められるなんて、夢みたいだ。
少なくとも俺の今までの人生では一度もなかった事態に俺は顔を歪めて笑う。
「フィフィ、ありがとう。その気持ちは嬉しいけれど、今から兵を集めていたんじゃ武装して攻めてきた有鱗種にはどうやっても勝てないよ。まごまごしていたら、捕まえた人間達を連れていかれてしまう」
俺の言葉を聞いたフィフィは、ガクリとその場に膝をついた。
俺は、胸にこみ上げる熱い思いを抱えたままで視線を移す。
「そう思うだろう? ティツァ……アディ」
俺が目をやった先の二人は、揃って苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
この空手形は、おそらく空手形では終わらないだろうという自信があった。
救世主たる俺の行うことによって雨の降らない有鱗種の国に雨が降る確率は、高い。
ならばそれを最大限に利用して有鱗種に行いを改めてもらいたいと思う。
俺の言葉に、サウリアは感極まったように体を震わせその場にひれ伏した。
『必ず! ……救世主さま、ありがとうございます!』
サウリアって見かけによらず熱血漢だよな。
他の有鱗種もサウリアに引き摺られるように、次々に頭を下げた。
俺を見る目に畏怖の念がこもる。
大広間には、どこか厳粛な雰囲気が満ちた。
静かになった部屋に、ドォォ――という水の流れる音が聞こえてくる。
「イヤです! ユウさま」
その静寂を、リーファの悲痛な声が破った。
「帰られてしまうなんてイヤです。異界渡りは、そんなに何度も行えるようなものではありません。ここでユウさまが帰ってしまわれれば、次にいつお呼びできるかは何もわからないんです。……それに、何より危険です! 時機を外した異界渡りは確かにこの世界に天変地異を呼びますが、その害が実際に異界を渡るユウさまご自身に及ばぬ保証はありません。無事に元の世界に戻れるのかどうかすらわからないのです! そんな危険にユウさまを遭わせるなんて……」
リーファは泣いて潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
――――うん。その可能性は俺も考えた。
天変地異を起こすほどの現象が、その中心にいるだろう俺に何らかの影響を及ぼす可能性は、かなり大きいと思う。
無事に帰れるのかどうか?
帰れたとしても五体満足ですむのか?
……ひょっとしたら命だって失うかもしれない。
今までの俺なら、絶対そんな事はしないだろうと思える程の危険が、そこにはあった。
なのに、おかしいよな。
俺の心には不思議なくらい迷いがない。
――――リーファ。
俺はもう二度と後悔はしないと決めてしまったんだ。
「大丈夫だよ。リーファ。俺はね、どうやら救世主みたいなんだ。俺が救世主なら俺には『神』さまの加護がある。リーファの『神』さまは絶対だろう?」
リーファは、悲壮な顔をした。
自分の『神』を信じる巫女としての立場と、俺を危険な目に遭わせたくないという優しさが、心の中で葛藤となってリーファを苦しめているのだろう。
「ユウさま! 私も――私も反対です! そんな危険をユウさまが犯す必要なんてありません。獣人の力ならば、いくらでもお貸しします。みんなで力を合わせて有鱗種を倒せばいいんです。――――ユウさま。帰らないでくださいっ」
長い耳をフルフルと震わせて、フィフィが俺に訴えかけてきた。
ああ。スゴイ。
可愛い女の子二人から心配して引き止められるなんて、夢みたいだ。
少なくとも俺の今までの人生では一度もなかった事態に俺は顔を歪めて笑う。
「フィフィ、ありがとう。その気持ちは嬉しいけれど、今から兵を集めていたんじゃ武装して攻めてきた有鱗種にはどうやっても勝てないよ。まごまごしていたら、捕まえた人間達を連れていかれてしまう」
俺の言葉を聞いたフィフィは、ガクリとその場に膝をついた。
俺は、胸にこみ上げる熱い思いを抱えたままで視線を移す。
「そう思うだろう? ティツァ……アディ」
俺が目をやった先の二人は、揃って苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
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