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異世界驚嘆中
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え?
……見捨てる。
王太后さまが前国王を見捨てるって……まさかの離婚!?
「わしなら間違いなく別れておったな」
「私もそうしようとは思ったのですが、息子夫婦に、孫達とお父さんを頼むと言い遺されてしまったものですから」
可愛い我が子の最期の頼みを無下にするわけにはいかなかったのだと、王太后さまはため息交じりに説明してくれた。
……アディのおじいさんって、いったい?
「まあ、あれも、あのうっとうしいところを除けば、なかなか見どころのある男じゃったからな。我らを解放することはできずとも、我らの待遇を少しでも良くしようと東奔西走しておった」
「そのくらいできなければ、本気で見捨てていましたわ。頼りにはならなくとも優しい人でしたから。――――ユウ様も優しいところが本当に夫にそっくりですわ」
「………………」
俺は褒められているのだろうか?
いや、絶対違うだろう!
老婦人二人はニコニコともの凄いイイ笑みを浮かべている。
俺の顔は引きつり過ぎて痙攣を起こしそうだ。
――――結局、この人達は俺に何をしたいんだ?
俺はガックリ項垂れる。
俺の疑問は顔に出ていたのだろう。王太后さまが説明してくれた。
「ユウさま。我々は救世主たるあなたさまに心からの感謝を伝え、そして今後世界を救う際に、悩み迷うだろうあなたさまの背中を押すべく、お会いしたのです」
(……背中を押す?)
押されたくありませんって、断っちゃダメだろうか。
「世界に危機が迫り、救世主たるあなたは、いずれ己が行動に迷うじゃろう。――――お迷いなさるな。あなたが為すことは、全て『神』の決められた運命ですじゃ。あなたにそれ以外の道は無い。御心のままに動きなされ。――――それをお伝えしたかった」
おばあちゃんの言葉は……呪いのようだった。
(道が無いって、何だ?!)
「ユウさまの事は、この世界にご来臨された時から逐一報告を受けておりました。その報告を聞くにつれ、どうにも夫を思い出し、ここは1つ発破をかけなければならないだろうと思い至ったのです。丁度リーファからユウさまをご案内したいと連絡をもらいましたから、一日千秋の思いでお待ち申しておりました」
「ウム。もう少し遅ければ老体に鞭打ってこちらから出向かなければと思っておったところじゃった。やはり『神』のお導きじゃ」
……逐一報告って、王太后さまいったい何をしていらっしゃるのですか?
そして、おばあちゃん。老体に鞭打つのは止めてください。
『お義母さんって、元気がイイのは良いんだけれど、もう少し自分の年を考えてくれたらって思うのよね』
突如、俺は母の言葉を思い出していた。
母は、ばあちゃん家に行くたびにそうぼやいていた。
あの時は、元気がイイにこしたことはないじゃないかと思っていたんだが、今なら母親の気持ちがよくわかる。
(元気の良すぎる年寄って、やっぱり少し問題だ)
「……ご心配していただきましてありがとうございます。――――でも、俺は救世主なんてもんじゃありませんから!」
心遣いには礼を言っても、譲れるものと譲れないものがある。
俺がキッと顔を上げれば、2人の老婦人は困ったように微笑んだ。
「やれ、往生際の悪い。」
「優柔不断のくせに、頑固なところまであの人にそっくりだわ」
(それは、間違いなく俺を貶しているからな!!)
俺が憤然としていると、俄かに部屋の外が騒がしくなってきた。
……見捨てる。
王太后さまが前国王を見捨てるって……まさかの離婚!?
「わしなら間違いなく別れておったな」
「私もそうしようとは思ったのですが、息子夫婦に、孫達とお父さんを頼むと言い遺されてしまったものですから」
可愛い我が子の最期の頼みを無下にするわけにはいかなかったのだと、王太后さまはため息交じりに説明してくれた。
……アディのおじいさんって、いったい?
「まあ、あれも、あのうっとうしいところを除けば、なかなか見どころのある男じゃったからな。我らを解放することはできずとも、我らの待遇を少しでも良くしようと東奔西走しておった」
「そのくらいできなければ、本気で見捨てていましたわ。頼りにはならなくとも優しい人でしたから。――――ユウ様も優しいところが本当に夫にそっくりですわ」
「………………」
俺は褒められているのだろうか?
いや、絶対違うだろう!
老婦人二人はニコニコともの凄いイイ笑みを浮かべている。
俺の顔は引きつり過ぎて痙攣を起こしそうだ。
――――結局、この人達は俺に何をしたいんだ?
俺はガックリ項垂れる。
俺の疑問は顔に出ていたのだろう。王太后さまが説明してくれた。
「ユウさま。我々は救世主たるあなたさまに心からの感謝を伝え、そして今後世界を救う際に、悩み迷うだろうあなたさまの背中を押すべく、お会いしたのです」
(……背中を押す?)
押されたくありませんって、断っちゃダメだろうか。
「世界に危機が迫り、救世主たるあなたは、いずれ己が行動に迷うじゃろう。――――お迷いなさるな。あなたが為すことは、全て『神』の決められた運命ですじゃ。あなたにそれ以外の道は無い。御心のままに動きなされ。――――それをお伝えしたかった」
おばあちゃんの言葉は……呪いのようだった。
(道が無いって、何だ?!)
「ユウさまの事は、この世界にご来臨された時から逐一報告を受けておりました。その報告を聞くにつれ、どうにも夫を思い出し、ここは1つ発破をかけなければならないだろうと思い至ったのです。丁度リーファからユウさまをご案内したいと連絡をもらいましたから、一日千秋の思いでお待ち申しておりました」
「ウム。もう少し遅ければ老体に鞭打ってこちらから出向かなければと思っておったところじゃった。やはり『神』のお導きじゃ」
……逐一報告って、王太后さまいったい何をしていらっしゃるのですか?
そして、おばあちゃん。老体に鞭打つのは止めてください。
『お義母さんって、元気がイイのは良いんだけれど、もう少し自分の年を考えてくれたらって思うのよね』
突如、俺は母の言葉を思い出していた。
母は、ばあちゃん家に行くたびにそうぼやいていた。
あの時は、元気がイイにこしたことはないじゃないかと思っていたんだが、今なら母親の気持ちがよくわかる。
(元気の良すぎる年寄って、やっぱり少し問題だ)
「……ご心配していただきましてありがとうございます。――――でも、俺は救世主なんてもんじゃありませんから!」
心遣いには礼を言っても、譲れるものと譲れないものがある。
俺がキッと顔を上げれば、2人の老婦人は困ったように微笑んだ。
「やれ、往生際の悪い。」
「優柔不断のくせに、頑固なところまであの人にそっくりだわ」
(それは、間違いなく俺を貶しているからな!!)
俺が憤然としていると、俄かに部屋の外が騒がしくなってきた。
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