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異世界迷走中
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「えっ……あ、あの……その……」
うん。そんな姿も、もの凄く可愛い!
ヤバい。俺にはリーファがいるのに、浮気しそうだ。
悶絶もので見ていたら、ティツァが俺からフィフィを隠すように間に割り込んできた。
ヒドイ! せっかくの目の保養を。
俺が抗議をこめて睨み付ければ、その倍は怖い目つきで睨み返されてしまう。
……すいません。謝るからその視線だけで殺せるって凶悪な目つきを止めて欲しい。
「こいつを誘惑するな」
視線だけでもビビっているのに、その声には恐ろしいような殺気がこもっていた。
「誘惑なんてしていない!」
俺は慌てて否定する。
そんなつもりは……本当の本当にちょっぴりしかない。
「俺達獣人にとって、若い雄が雌に食事を与えるのは立派な求愛行動だ」
「へ?」
俺はポカンとしてしまった。
(きゅ、求愛行動!?)
あれか?
鳥とか虫とかの雄が雌にエサを捕って来て交尾を迫るあの行動のことか?
「ち、違う!俺はそんなつもりはなくて!」
俺は焦る。
ティツァの向こう側でフィフィの青い耳がいつもよりなお一層垂れ下がったような気がしたけれど、そんな事にかまっている余裕はなかった。
「そんなつもりが無いのなら、なおさら迂闊な言動は慎め。まったくお前は……」
俺は、その後ティツァの脅し混じりの説教を聞きながら食事をする破目になった。
なんの拷問だ。
……せっかくの食事が全然美味しくない。
フィフィは、なんだか動きがぎこちないし、俺は早々に食事を切り上げてしまう。
ティツァはそれも気に入らないようで俺をジロリと睨み付けてきた。
俺が不機嫌に睨み返せば、大きなため息をつきながら話しかけてくる。
「……街で、仲間が不審な奴を拾ったと連絡がきた」
いきなりの話に、俺は目をぱちくりとさせた。
「不審な奴って?」
そんなもん拾うのか?
「川に浮いていて、死んでいると思って拾ったら生きていたそうだ。人間に渡そうと思ったら聞いた事の無い言葉を喋ると。」
……それは確かに不審人物に思えた。
ティツァの仲間達は、みんな人間が嫌いな者達ばかりで、何か事がある時には必ず人間よりティツァに先に連絡してくるそうなのだった。
「ひょっとしたら他国の間諜なのかもしれない。人間に渡してしまえば俺達には情報が入って来なくなるから、その前にできれば事情を聞き出したい」
俺の背中を冷や汗が流れた。
言葉の通じないスパイだか何だかを捕まえていて、その話を俺にしてくるって事は――――
「お前に通訳をしてもらいたい」
……ですよね。
俺は、自分の異世界トリップ特典自動翻訳機能を心底恨んだ。
そんな面倒事に巻き込まれたくない!
俺はもの凄く嫌そうに顔をしかめたのに――――
「明日、時間をつくれ」
ティツァは高飛車だった。
俺さまか?
俺さまだよな。
確実に。
しかし、俺はここでニカッと笑ってやった。
「あ、ダメだわ。俺、明日アディ達の大ババ……じゃなくておばばさまに会いに行くから」
そう!
なんと俺は、明日はかねてからの計画通りアディやリーファと、彼らのお祖母さんに会いに行くのであった。
ラッキー!
正直行きたくないと思ったが、こうなれば何が何でも行ってやると固く決意する。
ティツァは、嫌そうに顔をしかめた。
「前王妃か……それでは仕方ないな」
流石の俺さまティツァでも、その計画はどうにもならないようだった。
俺は、帰ってきたら必ず時間をつくって、その不審人物に会うことを約束させられる。
仕方なく渋々頷いた。
後で思い返せば、どうして直ぐにその不審人物に会いに行かなかったのかと後悔するのだが、この時の俺には、そんな事は知る由も無い事だった。
うん。そんな姿も、もの凄く可愛い!
ヤバい。俺にはリーファがいるのに、浮気しそうだ。
悶絶もので見ていたら、ティツァが俺からフィフィを隠すように間に割り込んできた。
ヒドイ! せっかくの目の保養を。
俺が抗議をこめて睨み付ければ、その倍は怖い目つきで睨み返されてしまう。
……すいません。謝るからその視線だけで殺せるって凶悪な目つきを止めて欲しい。
「こいつを誘惑するな」
視線だけでもビビっているのに、その声には恐ろしいような殺気がこもっていた。
「誘惑なんてしていない!」
俺は慌てて否定する。
そんなつもりは……本当の本当にちょっぴりしかない。
「俺達獣人にとって、若い雄が雌に食事を与えるのは立派な求愛行動だ」
「へ?」
俺はポカンとしてしまった。
(きゅ、求愛行動!?)
あれか?
鳥とか虫とかの雄が雌にエサを捕って来て交尾を迫るあの行動のことか?
「ち、違う!俺はそんなつもりはなくて!」
俺は焦る。
ティツァの向こう側でフィフィの青い耳がいつもよりなお一層垂れ下がったような気がしたけれど、そんな事にかまっている余裕はなかった。
「そんなつもりが無いのなら、なおさら迂闊な言動は慎め。まったくお前は……」
俺は、その後ティツァの脅し混じりの説教を聞きながら食事をする破目になった。
なんの拷問だ。
……せっかくの食事が全然美味しくない。
フィフィは、なんだか動きがぎこちないし、俺は早々に食事を切り上げてしまう。
ティツァはそれも気に入らないようで俺をジロリと睨み付けてきた。
俺が不機嫌に睨み返せば、大きなため息をつきながら話しかけてくる。
「……街で、仲間が不審な奴を拾ったと連絡がきた」
いきなりの話に、俺は目をぱちくりとさせた。
「不審な奴って?」
そんなもん拾うのか?
「川に浮いていて、死んでいると思って拾ったら生きていたそうだ。人間に渡そうと思ったら聞いた事の無い言葉を喋ると。」
……それは確かに不審人物に思えた。
ティツァの仲間達は、みんな人間が嫌いな者達ばかりで、何か事がある時には必ず人間よりティツァに先に連絡してくるそうなのだった。
「ひょっとしたら他国の間諜なのかもしれない。人間に渡してしまえば俺達には情報が入って来なくなるから、その前にできれば事情を聞き出したい」
俺の背中を冷や汗が流れた。
言葉の通じないスパイだか何だかを捕まえていて、その話を俺にしてくるって事は――――
「お前に通訳をしてもらいたい」
……ですよね。
俺は、自分の異世界トリップ特典自動翻訳機能を心底恨んだ。
そんな面倒事に巻き込まれたくない!
俺はもの凄く嫌そうに顔をしかめたのに――――
「明日、時間をつくれ」
ティツァは高飛車だった。
俺さまか?
俺さまだよな。
確実に。
しかし、俺はここでニカッと笑ってやった。
「あ、ダメだわ。俺、明日アディ達の大ババ……じゃなくておばばさまに会いに行くから」
そう!
なんと俺は、明日はかねてからの計画通りアディやリーファと、彼らのお祖母さんに会いに行くのであった。
ラッキー!
正直行きたくないと思ったが、こうなれば何が何でも行ってやると固く決意する。
ティツァは、嫌そうに顔をしかめた。
「前王妃か……それでは仕方ないな」
流石の俺さまティツァでも、その計画はどうにもならないようだった。
俺は、帰ってきたら必ず時間をつくって、その不審人物に会うことを約束させられる。
仕方なく渋々頷いた。
後で思い返せば、どうして直ぐにその不審人物に会いに行かなかったのかと後悔するのだが、この時の俺には、そんな事は知る由も無い事だった。
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