小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重

文字の大きさ
上 下
20 / 60
異世界迷走中

しおりを挟む
 俺は間抜けな事に、ここではじめて自分が話している言葉について思い至った。

(そういや、何で俺は異世界のアディ達と普通に言葉が通じているんだ?)

 俺は、普通に日本語で会話をしている……いや、会話しているつもりだった。

(だって[よろず相談サイト]では、アディは普通に日本語使っていたし)

 サイトでのやりとりは、当然日本語だ。だから俺はアディの外見がモロ外国人でも日本語で会話することに何の不思議も覚えなかったのだ。
 しかし、よくよく考えれば、アディはともかくエイベット卿や他の人達まで日本語ペラペラなのは、おかし過ぎる。

(異世界の公用語が日本語のわけないし……)

 ひょっとしてこれは、異世界トリップ定番の自動翻訳機能の恩恵なのか?
 俺は日本語で話しているつもりでも相手には相手の言語に聞こえて、そして相手は自分の言語で話しているのに俺には日本語で聞こえるという、あの超便利な。


 そう考えれば何もかもつじつまが合った。
 アディのサイトの相談も、おそらくアディはこの国の言語でやっていたのだろう。

(これも『神の賜いし御力』なのか?)

 便利すぎだろうと、俺は思う。
 こんなに都合が良すぎていいんだろうか。
 いや、全然気づかずに恩恵にあずかっていた俺が言うことでもないけどな。

 何はともあれ、それが正解のようだった。
 そしてそのために、今目の前のこの娘には俺が獣人の言葉を喋っているように聞こえているってわけだ。

(どう説明しよう?)

 悩みながらも俺は、自分の勘が当たっていた事を複雑な思いで確信していた。

(獣人には、独自の言葉がある。しかも、それを巧妙に隠す知恵もあるんだ)

 そんな存在を、ただの使役動物だなんて思えるはずがなかった。
 いったい何の目的で、獣人達が自分達の言葉を隠し、奴隷なんていう立場に甘んじているのかはわからないが、俺は俺がとんでもなく面倒な事態に足を突っ込みかけているのを感じた。

「えっと。俺は別に君達の言葉がわかるわけじゃなくて……その、俺はここの人間じゃないから」

 しどろもどろに俺は説明する。

 真紅の瞳がパチパチと瞬いた。可愛らしく首が傾げられ、長い耳がユラリと揺れる。

 俺の心臓が爆発する。
 ……ケモミミの破壊力、マジ凄すぎる。

「あ……俺は、別の世界からここに来たんだ。異世界トリップってわかるかな?」

 別の世界と言いながら、俺はなんとなく空を指差した。
 つられて獣人の女の子も上を向く。

 建物の間から青い空が見えた。

「別の世界? ………………あなたは、来られたのですか?」

 うんうんと俺は頷く。

 ----この時、俺は自分が致命的なミスをした事に気づかなかった。

 彼女の目が限界まで見開かれる。




 丁度その瞬間、

「ユウさま!」

 俺は、名前を呼ばれて慌てて振り返った。
 そこには俺の方に駆けてくる例の黒髪の騎士がいた。

(すげぇ……はじめて声を聞いた)

 どうでもいいことに感動する。

「ユウさま。勝手に動くなと目で合図をしたでしょう! あなたは何をしているのです!」

 黒髪の騎士は滅茶苦茶怒っていた。
 ……どうやら彼が広場でアディの元に行く前に俺を睨み付けたのは、そこで待っていろという彼なりのアイコンタクトだったらしい。

(そんなもん、わかるわけないだろう?)

 彼と俺との間にそんな高度な意思疎通ができるはずがない。
 何せ声も今はじめて聞いたくらいの仲なのだ。
 なのに黒髪の騎士は、俺の行動がいかに無分別で、周囲に迷惑をかけて、しかも国王陛下をもの凄く心配させているかを、懇々と俺に言い聞かせた。
 なんとアディは王都の全軍を動かして俺を捜索しようとしているらしい。
 過保護にも程があると思う。

「さあ、一刻も早く戻りますよ!」

 俺の手をガッシと掴んで黒髪の騎士が道路を戻り出す。
 無口でクールだとばかり思っていた男の、思いもよらぬ饒舌さと熱い行動に面食らいながらも俺は後に続く。

 獣人の女の子は、いつの間にか姿を消していた。
 まあ、城へは無事戻れそうだから、別にいいんだけれど……



 俺は、自分が今知った真実をどうするべきかを考え込みながら、騎士に引っ張られていったのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺をハーレムに組み込むな!!!!〜モテモテハーレムの勇者様が平凡ゴリラの俺に惚れているとか冗談だろ?〜

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
無自覚モテモテ勇者×平凡地味顔ゴリラ系男子の、コメディー要素強めなラブコメBLのつもり。 勇者ユウリと共に旅する仲間の一人である青年、アレクには悩みがあった。それは自分を除くパーティーメンバーが勇者にベタ惚れかつ、鈍感な勇者がさっぱりそれに気づいていないことだ。イケメン勇者が女の子にチヤホヤされているさまは、相手がイケメンすぎて嫉妬の対象でこそないものの、モテない男子にとっては目に毒なのである。 しかしある日、アレクはユウリに二人きりで呼び出され、告白されてしまい……!? たまには健全な全年齢向けBLを書いてみたくてできた話です。一応、付き合い出す前の両片思いカップルコメディー仕立て……のつもり。他の仲間たちが勇者に言い寄る描写があります。

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

続・聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』(完結)の続編になります。 あらすじ  異世界に再び召喚され、一ヶ月経った主人公の古河大矢(こがだいや)。妹の桃花が聖女になりアリッシュは魔物のいない平和な国になったが、新たな問題が発生していた。

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

処理中です...