13 / 60
こんにちは、異世界
9
しおりを挟む
「そうだ。この大陸には先住民が居た」
建国10年にしては国の規模が大きい事を不思議に思い、問い詰めた俺にアディはあっさりとそう認めた。
アディにしてみれば、むしろ俺がそれを知らなかった事の方が不思議らしい。
「言っていなかったか?」
言われていたら、いくら俺だって覚えていたはずだ。
頭は普通のはずなんだ。成績、中の上が俺のテストの定位置だ。
「まあ、わざわざ言う程の事でもないしな」
海を渡ってきたアディ達とこの大陸に以前から住んでいた先住民の間に、実はほとんど違いはない。そもそも、先住民と呼ばれる人々もルーツを探ればアディ達と一緒なのだという。
彼らのルーツは、ここでもアディ達の住んでいた場所でもなく、今は失われた大陸が人間という種族の本当の故郷なのだと伝えられているのだとか。
(すげぇ。ムー大陸かアトランティスか?)
どこの世界にも似たような伝説はあるんだなと俺は思う。
当然言語も生活習慣も決定的な違いはなく、アディ達の方が文明や文化が進んでいたために、必然的に先住民はアディのお祖父さんの創った国、ロダに統一されたのだそうだった。
「――――差別とかはないんだな?」
「もちろんだ」
アディはきっぱり頷く。
国を創ったのがアディ達だから現在の政治の中枢や支配階級に移民が多いのは仕方がないが、努力すれば先住民でも偉くなれるし、先住民だからという差別はしないとアディは言いきる。
論より証拠で、俺とリーファのデートを邪魔した2人の騎士の内、黒髪の男の方は先住民だった。しかも軍でもけっこうお偉いさんなのだとか。
先住民には黒髪黒目が多いらしかった。
「人種差別は、法令でも禁止している」
アディの笑顔には一片の曇りもない。
……そう、アディ達にとって、獣人は人間ではなかった。
アディ達が移住してくる以前から獣人は人間の労働力として使われていて、その認識は俺達にとっての馬や牛、犬等の使役動物と同じだ。
俺が階段で道を譲った話を聞いたアディは目を丸くして「ユウらしい」と一頻り笑った。
「確かに耳と尻尾がなければ、俺達に似ているからな」
アディの言葉にエイベック卿は顔を真っ赤にして怒る。
「我らを獣人と一緒にするなど、もっての外です!」
多分、俺がサルやチンパンジーと一緒にされるような感覚なんだろう。サルもチンパンジーも賢いが一緒にされたらやっぱり俺でも凹むからな。
アディやリーファ、そして嫌々ながらエイベック卿の話を聞いてまとめた結果、どうやら獣人というのは俺達の世界で言う『霊長目ヒト科のヒト以外』という分類のようだった。
知能が高く、道具を使用し、集団生活もできて簡単な言語も理解する。
……だけど決して人間では有り得ない生物。
(ボノボだったか? もの凄く頭が良くて、ゲームなんかもするサルがいたけれど、やっぱりあれを人間と同じだとは思えないもんな。)
たかが耳と尻尾、されど耳と尻尾だった。
俺はその事に納得して……俺の心の奥にひっかかった“何か”に蓋をした。
うん、俺の勘なんか当たった事ないし、勘違いしたあげく大騒ぎを起こすようなイタイ奴にはなりたくなかったからだった。
建国10年にしては国の規模が大きい事を不思議に思い、問い詰めた俺にアディはあっさりとそう認めた。
アディにしてみれば、むしろ俺がそれを知らなかった事の方が不思議らしい。
「言っていなかったか?」
言われていたら、いくら俺だって覚えていたはずだ。
頭は普通のはずなんだ。成績、中の上が俺のテストの定位置だ。
「まあ、わざわざ言う程の事でもないしな」
海を渡ってきたアディ達とこの大陸に以前から住んでいた先住民の間に、実はほとんど違いはない。そもそも、先住民と呼ばれる人々もルーツを探ればアディ達と一緒なのだという。
彼らのルーツは、ここでもアディ達の住んでいた場所でもなく、今は失われた大陸が人間という種族の本当の故郷なのだと伝えられているのだとか。
(すげぇ。ムー大陸かアトランティスか?)
どこの世界にも似たような伝説はあるんだなと俺は思う。
当然言語も生活習慣も決定的な違いはなく、アディ達の方が文明や文化が進んでいたために、必然的に先住民はアディのお祖父さんの創った国、ロダに統一されたのだそうだった。
「――――差別とかはないんだな?」
「もちろんだ」
アディはきっぱり頷く。
国を創ったのがアディ達だから現在の政治の中枢や支配階級に移民が多いのは仕方がないが、努力すれば先住民でも偉くなれるし、先住民だからという差別はしないとアディは言いきる。
論より証拠で、俺とリーファのデートを邪魔した2人の騎士の内、黒髪の男の方は先住民だった。しかも軍でもけっこうお偉いさんなのだとか。
先住民には黒髪黒目が多いらしかった。
「人種差別は、法令でも禁止している」
アディの笑顔には一片の曇りもない。
……そう、アディ達にとって、獣人は人間ではなかった。
アディ達が移住してくる以前から獣人は人間の労働力として使われていて、その認識は俺達にとっての馬や牛、犬等の使役動物と同じだ。
俺が階段で道を譲った話を聞いたアディは目を丸くして「ユウらしい」と一頻り笑った。
「確かに耳と尻尾がなければ、俺達に似ているからな」
アディの言葉にエイベック卿は顔を真っ赤にして怒る。
「我らを獣人と一緒にするなど、もっての外です!」
多分、俺がサルやチンパンジーと一緒にされるような感覚なんだろう。サルもチンパンジーも賢いが一緒にされたらやっぱり俺でも凹むからな。
アディやリーファ、そして嫌々ながらエイベック卿の話を聞いてまとめた結果、どうやら獣人というのは俺達の世界で言う『霊長目ヒト科のヒト以外』という分類のようだった。
知能が高く、道具を使用し、集団生活もできて簡単な言語も理解する。
……だけど決して人間では有り得ない生物。
(ボノボだったか? もの凄く頭が良くて、ゲームなんかもするサルがいたけれど、やっぱりあれを人間と同じだとは思えないもんな。)
たかが耳と尻尾、されど耳と尻尾だった。
俺はその事に納得して……俺の心の奥にひっかかった“何か”に蓋をした。
うん、俺の勘なんか当たった事ないし、勘違いしたあげく大騒ぎを起こすようなイタイ奴にはなりたくなかったからだった。
1
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
狼くんは耳と尻尾に視線を感じる
犬派だんぜん
BL
俺は狼の獣人で、幼馴染と街で冒険者に登録したばかりの15歳だ。この街にアイテムボックス持ちが来るという噂は俺たちには関係ないことだと思っていたのに、初心者講習で一緒になってしまった。気が弱そうなそいつをほっとけなくて声をかけたけど、俺の耳と尻尾を見られてる気がする。
『世界を越えてもその手は』外伝。「アルとの出会い」「アルとの転機」のキリシュの話です。
【完結】転生じぃちゃん助けた子犬に喰われる!?
湊未来
BL
『ななな、なんで頭にウサギの耳が生えているんだぁぁぁ!!!!』
時の神の気まぐれなお遊びに巻き込まれた哀れな男が、獣人国アルスター王国で、絶叫という名の産声をあげ誕生した。
名を『ユリアス・ラパン』と言う。
生を全うし天へと召された爺さんが、何の因果か、過去の記憶を残したまま、兎獣人へと転生してしまった。
過去の記憶を武器にやりたい放題。無意識に、周りの肉食獣人をも魅了していくからさぁ大変!
果たして、兎獣人に輪廻転生してしまった爺さんは、第二の人生を平和に、のほほんと過ごす事が出来るのだろうか?
兎獣人に異様な執着を見せる狼獣人✖️爺さんの記憶を残したまま輪廻転生してしまった兎獣人のハートフルBLコメディ。時々、シリアス。
※BLは初投稿です。温かな目でご覧頂けると幸いです。
※R-18は出てきません。未遂はあるので、保険でR-15つけておきます。
※男性が妊娠する世界観ですが、そう言った描写は出てきません。
過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがこは
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。
【完結】雨を待つ隠れ家
エウラ
BL
VRMMO 『Free Fantasy online』通称FFOのログイン中に、異世界召喚された桜庭六花。しかし、それはその異世界では禁忌魔法で欠陥もあり、魂だけが召喚された為、見かねた異世界の神が急遽アバターをかたどった身体を創って魂を容れたが、馴染む前に召喚陣に転移してしまう。
結果、隷属の首輪で奴隷として生きることになり・・・。
主人公の待遇はかなり酷いです。(身体的にも精神的にも辛い)
後に救い出され、溺愛されてハッピーエンド予定。
設定が仕事しませんでした。全員キャラが暴走。ノリと勢いで書いてるので、それでもよかったら読んで下さい。
番外編を追加していましたが、長くなって収拾つかなくなりそうなのでこちらは完結にします。
読んでくださってありがとう御座いました。
別タイトルで番外編を書く予定です。
婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》
クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。
そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。
アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。
その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。
サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。
一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。
R18は多分なるからつけました。
2020年10月18日、題名を変更しました。
『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。
前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)
俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜
琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。
ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが………
ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ……
世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。
気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。
そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。
※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる