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こんにちは、異世界
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ネットの『よろず相談サイト』で、ゲームの攻略相談に乗っているつもりでいたのに、いつの間にか異世界の国政相談に乗せられて、あまつさえ相談相手の国王に拉致られた俺、坂上 由――――大学院生24歳。
俺が異世界の帝国ロダにきて、2日が経っていた。
現在の俺の状況を少しまとめてみよう。
身長176センチ。
体重62キロ。
手も足も普通に動いて体のどこにも違和感はない。
熱も平熱で食欲ガッツリ。
異世界トリップという信じられない状況にいるはずなのに、俺は今日も飯が美味く朝からしっかりと食べた。
どんな状況でも朝食は抜くなというのが坂上家の家訓……というわけではない。
どうもロダの食事は俺の口にあったようだった。
少なくとも俺の常食のコンビニ弁当より数段美味いのは間違いない事実である。
うん。
健康状態には俺はどこにも問題はなかった。
一方精神的な状態の方だが。
こちらもおおむね問題なしである。
(問題なしなのが、本当に問題ないのかはわからないが)
ムリヤリ異世界トリップをさせられてしまった俺ではあったが、元凶であるアディとの関係は良好すぎる程に良好だった。
アディには悪気など少しもなかったのである。
「ユウだって俺に会いたいと言ってくれただろう?」
…………確かに了承はしたが、相手が異世界人だなんて俺にわかるはずがないだろう?
悪いのは俺なのか?
悶々と悩む俺にアディは「ありがとう」と言って爽やかに笑った。
そういえば、こいつは俺に会って礼が言いたいと言っていたのだったなと俺は思い出す。
本当にアディは一途な良い奴だった。
こんなアディに俺が怒れるはずがない。
有言実行……一途過ぎるだろうとは思うけど。
そして、異世界トリップで一番の心配事だろう、俺の帰還の問題なのだが――
アディは、実に簡単に帰れると保証してくれた。
しかも俺が拉致られたその場所その時間に、ピッタリ帰れるそうだ。
「ただ、時機を見て欲しい」
そうアディは言った。
この城の神殿の泉が、地球との異世界トリップのゲートになっているのだそうだが、トリップにはし易い時機とタイミングがあるのだとアディは言う。
「異界渡りは、やろうと思えばいつでも可能なのだが、タイミングを誤ると反動が起きる」
「反動?」
「まず間違いなく天変地異が起こる」
「天………」
俺はポカンと口を開けた。
起こる天変地異は、その時季の気候や星の配置によって様々な種類があるのだそうだが、そのどれが起こっても被害が甚大になることだけは間違いないのだそうだった。
次に異界渡りの時機が到来するのは一ヶ月後だから、それまで待って欲しいとアディは俺に頼んでくる。
俺は二つ返事でそれを了承した。
俺の所為で天変地異なんか起こって欲しくない。
ちなみに今は水の時季で、この時季に俺がムリヤリ帰れば間違いなく水害が起こるそうだ。
勝手に神殿には近寄らない事を、俺は心に誓う。
それが今のところの俺の状態だった。
俺が異世界の帝国ロダにきて、2日が経っていた。
現在の俺の状況を少しまとめてみよう。
身長176センチ。
体重62キロ。
手も足も普通に動いて体のどこにも違和感はない。
熱も平熱で食欲ガッツリ。
異世界トリップという信じられない状況にいるはずなのに、俺は今日も飯が美味く朝からしっかりと食べた。
どんな状況でも朝食は抜くなというのが坂上家の家訓……というわけではない。
どうもロダの食事は俺の口にあったようだった。
少なくとも俺の常食のコンビニ弁当より数段美味いのは間違いない事実である。
うん。
健康状態には俺はどこにも問題はなかった。
一方精神的な状態の方だが。
こちらもおおむね問題なしである。
(問題なしなのが、本当に問題ないのかはわからないが)
ムリヤリ異世界トリップをさせられてしまった俺ではあったが、元凶であるアディとの関係は良好すぎる程に良好だった。
アディには悪気など少しもなかったのである。
「ユウだって俺に会いたいと言ってくれただろう?」
…………確かに了承はしたが、相手が異世界人だなんて俺にわかるはずがないだろう?
悪いのは俺なのか?
悶々と悩む俺にアディは「ありがとう」と言って爽やかに笑った。
そういえば、こいつは俺に会って礼が言いたいと言っていたのだったなと俺は思い出す。
本当にアディは一途な良い奴だった。
こんなアディに俺が怒れるはずがない。
有言実行……一途過ぎるだろうとは思うけど。
そして、異世界トリップで一番の心配事だろう、俺の帰還の問題なのだが――
アディは、実に簡単に帰れると保証してくれた。
しかも俺が拉致られたその場所その時間に、ピッタリ帰れるそうだ。
「ただ、時機を見て欲しい」
そうアディは言った。
この城の神殿の泉が、地球との異世界トリップのゲートになっているのだそうだが、トリップにはし易い時機とタイミングがあるのだとアディは言う。
「異界渡りは、やろうと思えばいつでも可能なのだが、タイミングを誤ると反動が起きる」
「反動?」
「まず間違いなく天変地異が起こる」
「天………」
俺はポカンと口を開けた。
起こる天変地異は、その時季の気候や星の配置によって様々な種類があるのだそうだが、そのどれが起こっても被害が甚大になることだけは間違いないのだそうだった。
次に異界渡りの時機が到来するのは一ヶ月後だから、それまで待って欲しいとアディは俺に頼んでくる。
俺は二つ返事でそれを了承した。
俺の所為で天変地異なんか起こって欲しくない。
ちなみに今は水の時季で、この時季に俺がムリヤリ帰れば間違いなく水害が起こるそうだ。
勝手に神殿には近寄らない事を、俺は心に誓う。
それが今のところの俺の状態だった。
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