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聖女? どうやら消えたようですよ
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結果から言えば、私の事業は大成功を収めた。
逆行転生前に既に確認済みなのだから、失敗するはずもないのだが、まあ一安心である。
当然、孤児院も潤った。
孤児たちは、多少忙しく働かされることになったが、衣食住は大幅に改善され、全員健康優良児。
これでは、どう足掻いても私に理不尽な不幸自慢などできまい。
(ざまぁみなさい、クソ聖女!)
いささか品位に欠けるが、私は心の中で思いっきり高笑いした。
本当は、聖女の目の前で実際に高笑いしてやりたかったのだが、それは絶対不可能だ。
逆行転生したとかそういうこととは関係なく、聖女という存在そのものが、いなくなってしまったから。
(よくよく考えれば、当然だったのよね)
孤児院の経営が改善され、飢えて発熱し生死の境を彷徨うということに“ならなかった”聖女は、前世の記憶を思い出さなかった。
その結果、聖女として覚醒することもなく、今の聖女――――いや、聖女になる可能性があった少女は、プクプクと太っていることを除けば、どこにでもいる普通の女の子になってしまったのだ。
どうやら彼女は太りやすい体質だったらしい。
(ということは、私が処刑された後の世界で、私という悪役がいなくなって幸せになった聖女も太った可能性が大きいんじゃないかしら? たしか、王子の好みは、守ってあげたくなるような儚くて華奢な女の子だったはずだけど……あの二人は、その後どうなったのかしら?)
彼らが末永く幸せに暮らしたのかどうかは、かなり微妙ではないだろうか?
まあ、既に消えた未来だと思うから、どうでもいいけれど。
事業を成功させ、お父さまにもだいぶ儲けさせた私は、ご褒美に別荘を買ってもらった。
王都からさほど離れていない山の中で、澄んだ空気と山林に響く小鳥の声が心地よい。
とはいえ、私がこの地に求めているのは、森林浴でもなければ森の中のパワースポットというわけでもなかった。
「――――なあなあ、今度は何を企んでいるんだ?」
私の目的地は、別荘近くの崖にある洞窟だ。
「なあったら、こんな薄暗い洞穴に、何があるんだよ?」
ポッカリ空いた暗闇のさらに奥を私は目指す。
なにやら雑音が聞こえるような気がするが、聞こえないったら、聞こえない!
「おい! そこは危ないぞ!」
そんな雑音が聞こえた瞬間、私はバランスを崩した。
足下にあった石に躓いてしまったのだ。
間一髪転ぶ寸前で、私は、私よりはずいぶん大きな手に支えられる。
「ふ~、気をつけろよ」
「あ、ありがとう……じゃない! どうしてあなたは、また当たり前のような顔をして、ここにいるんです?」
私は、たった今、助けてくれたアーサーを、ジロリと睨みつけた。
逆行転生前に既に確認済みなのだから、失敗するはずもないのだが、まあ一安心である。
当然、孤児院も潤った。
孤児たちは、多少忙しく働かされることになったが、衣食住は大幅に改善され、全員健康優良児。
これでは、どう足掻いても私に理不尽な不幸自慢などできまい。
(ざまぁみなさい、クソ聖女!)
いささか品位に欠けるが、私は心の中で思いっきり高笑いした。
本当は、聖女の目の前で実際に高笑いしてやりたかったのだが、それは絶対不可能だ。
逆行転生したとかそういうこととは関係なく、聖女という存在そのものが、いなくなってしまったから。
(よくよく考えれば、当然だったのよね)
孤児院の経営が改善され、飢えて発熱し生死の境を彷徨うということに“ならなかった”聖女は、前世の記憶を思い出さなかった。
その結果、聖女として覚醒することもなく、今の聖女――――いや、聖女になる可能性があった少女は、プクプクと太っていることを除けば、どこにでもいる普通の女の子になってしまったのだ。
どうやら彼女は太りやすい体質だったらしい。
(ということは、私が処刑された後の世界で、私という悪役がいなくなって幸せになった聖女も太った可能性が大きいんじゃないかしら? たしか、王子の好みは、守ってあげたくなるような儚くて華奢な女の子だったはずだけど……あの二人は、その後どうなったのかしら?)
彼らが末永く幸せに暮らしたのかどうかは、かなり微妙ではないだろうか?
まあ、既に消えた未来だと思うから、どうでもいいけれど。
事業を成功させ、お父さまにもだいぶ儲けさせた私は、ご褒美に別荘を買ってもらった。
王都からさほど離れていない山の中で、澄んだ空気と山林に響く小鳥の声が心地よい。
とはいえ、私がこの地に求めているのは、森林浴でもなければ森の中のパワースポットというわけでもなかった。
「――――なあなあ、今度は何を企んでいるんだ?」
私の目的地は、別荘近くの崖にある洞窟だ。
「なあったら、こんな薄暗い洞穴に、何があるんだよ?」
ポッカリ空いた暗闇のさらに奥を私は目指す。
なにやら雑音が聞こえるような気がするが、聞こえないったら、聞こえない!
「おい! そこは危ないぞ!」
そんな雑音が聞こえた瞬間、私はバランスを崩した。
足下にあった石に躓いてしまったのだ。
間一髪転ぶ寸前で、私は、私よりはずいぶん大きな手に支えられる。
「ふ~、気をつけろよ」
「あ、ありがとう……じゃない! どうしてあなたは、また当たり前のような顔をして、ここにいるんです?」
私は、たった今、助けてくれたアーサーを、ジロリと睨みつけた。
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