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三年生になりました
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(いや、あたしとしてはカッコよく去ったつもりだったんやけどな)
いつものエストマン伯爵家の広大すぎる敷地内。
いつもの夜間の特訓の時間帯。
そこには、いつもと同じメンバーの顔がある。
――――そう、ミナの目の前には、ハルトムートとガストンが、ちゃっかり参加していた。
「なんで!?」
「……いや、なんでと言われても? 普通に訓練はしたいだろう?」
「然り然り。我の力を使えば、あの不快な場所からここまでは、ひとっ飛びでしかないからな。主の希望を叶えて訪れるに、なんの支障もない」
さも当然と言うようにハルトムートもガストンも返してくる。
ミナは――――がっくりとうなだれた。
言われてみれば、たしかにその通りなのだが……まさか、城に帰ると言ったその晩に戻ってくるとは思わなかった。
「――――ひょっとして、毎晩来るつもりなんですか?」
「――――学園も今まで通り通われるとか?」
ルーノとルージュの問いかけにも、ハルトムートはあっさり頷く。
「城に帰るとは言ったが、学園をやめると言ったつもりはないぞ」
つまり、これからもハルトムートとは、毎日学園で一緒に学び、夜は共に訓練をするのだ。
「さすがに朝の訓練には、時々しか来られなくなってしまうが――――」
(朝まで来るつもりだったんか~い!)
それは、ほぼ今まで通りの生活ということになるのではないだろうか?
(詐欺や、帰る帰る詐欺やで!)
もちろんそんな詐欺は、存在しない――――と思う。
「私の覚悟を返しなさいよぉ~!!」
ミナの叫びが星空に吸い込まれて――――消えた。
その後の、日々は平穏に――――あまりにも平穏に過ぎて、ミナたちは三年生になった。
ここからは学科が別れるため、仲良くなったクラスメートともバラバラになる。
ルーノは魔法の探求を目指す研究学科に、ルージュはゲームの設定通り騎士学科に入った。
平民初の騎士学科入学に、クラス中でお祝いをしたのはいい思い出だ。
ハルトムートは、当然のこととして法律経済学科を選んだ。
ミナは、医学科だ。
「二人とも、全ての学科から入ってほしいって要請がきていたのに、単独でよかったのかい?」
そう聞いてくるのは、法律経済学科と騎士学科を両方主席卒業という偉業を成し遂げたアウレリウスだ。
ミナはハルトムートと顔を見合わせて笑う。
「学園の勉強をそれほど一生懸命するつもりがないから」
「そうだな。とりあえず卒業できれば、学科も成績もどうでもいい」
今のミナたちは、学園以外でも強くなるための訓練ができている。
だとすれば学園にこだわる必要はないのだ。
アウレリウスは、呆れたように肩をすくめた。
「それを、血眼になって学園の成績を上げようとしている奴らに言わないようにするんだよ」
それくらいの気遣いなら、もうできる。
いったい兄は自分をいくつだと思っているのかと、ミナは呆れてしまう。
実年齢は十二歳でしかないので、アウレリウスの心配もそれほど過剰なものではないのだが。
学科が別れたことは残念だったのだが、進級には違う面でいいこともあった。
実地研修ができるようになったのである。
具体的になにをやるのかと言えば、騎士団の派遣などに連れて行ってもらえるのだ。
(さすがに魔物の大量発生には連れて行ってもらえないやろうけど、騎士団の力を間近で見るいい機会や)
相変わらず魔物の大量発生は、定期的に起こっている。
もう何年も続いているので、もはや起こることが当たり前になっているくらいだ。
大きな被害はないが、小さなものは限りなく、医学科に進んだミナは治癒魔法使いの見習いとして連れて行ってもらえるだろう。
(あたしの治癒魔法は、ちょっとしたもんやしな。騎士団でひっぱりだこになってもおかしくない腕前や)
実際には治癒魔法だけでなく、攻撃魔法も防御魔法もずば抜けているのだが、ミナにあまり自覚はない。
「実地研修が、今からとても楽しみです」
「…………あまりやり過ぎないようにね」
「…………不安しかないな」
わくわくしているミナの様子に、頭を抱えるアウレリウスとハルトムートだった。
いつものエストマン伯爵家の広大すぎる敷地内。
いつもの夜間の特訓の時間帯。
そこには、いつもと同じメンバーの顔がある。
――――そう、ミナの目の前には、ハルトムートとガストンが、ちゃっかり参加していた。
「なんで!?」
「……いや、なんでと言われても? 普通に訓練はしたいだろう?」
「然り然り。我の力を使えば、あの不快な場所からここまでは、ひとっ飛びでしかないからな。主の希望を叶えて訪れるに、なんの支障もない」
さも当然と言うようにハルトムートもガストンも返してくる。
ミナは――――がっくりとうなだれた。
言われてみれば、たしかにその通りなのだが……まさか、城に帰ると言ったその晩に戻ってくるとは思わなかった。
「――――ひょっとして、毎晩来るつもりなんですか?」
「――――学園も今まで通り通われるとか?」
ルーノとルージュの問いかけにも、ハルトムートはあっさり頷く。
「城に帰るとは言ったが、学園をやめると言ったつもりはないぞ」
つまり、これからもハルトムートとは、毎日学園で一緒に学び、夜は共に訓練をするのだ。
「さすがに朝の訓練には、時々しか来られなくなってしまうが――――」
(朝まで来るつもりだったんか~い!)
それは、ほぼ今まで通りの生活ということになるのではないだろうか?
(詐欺や、帰る帰る詐欺やで!)
もちろんそんな詐欺は、存在しない――――と思う。
「私の覚悟を返しなさいよぉ~!!」
ミナの叫びが星空に吸い込まれて――――消えた。
その後の、日々は平穏に――――あまりにも平穏に過ぎて、ミナたちは三年生になった。
ここからは学科が別れるため、仲良くなったクラスメートともバラバラになる。
ルーノは魔法の探求を目指す研究学科に、ルージュはゲームの設定通り騎士学科に入った。
平民初の騎士学科入学に、クラス中でお祝いをしたのはいい思い出だ。
ハルトムートは、当然のこととして法律経済学科を選んだ。
ミナは、医学科だ。
「二人とも、全ての学科から入ってほしいって要請がきていたのに、単独でよかったのかい?」
そう聞いてくるのは、法律経済学科と騎士学科を両方主席卒業という偉業を成し遂げたアウレリウスだ。
ミナはハルトムートと顔を見合わせて笑う。
「学園の勉強をそれほど一生懸命するつもりがないから」
「そうだな。とりあえず卒業できれば、学科も成績もどうでもいい」
今のミナたちは、学園以外でも強くなるための訓練ができている。
だとすれば学園にこだわる必要はないのだ。
アウレリウスは、呆れたように肩をすくめた。
「それを、血眼になって学園の成績を上げようとしている奴らに言わないようにするんだよ」
それくらいの気遣いなら、もうできる。
いったい兄は自分をいくつだと思っているのかと、ミナは呆れてしまう。
実年齢は十二歳でしかないので、アウレリウスの心配もそれほど過剰なものではないのだが。
学科が別れたことは残念だったのだが、進級には違う面でいいこともあった。
実地研修ができるようになったのである。
具体的になにをやるのかと言えば、騎士団の派遣などに連れて行ってもらえるのだ。
(さすがに魔物の大量発生には連れて行ってもらえないやろうけど、騎士団の力を間近で見るいい機会や)
相変わらず魔物の大量発生は、定期的に起こっている。
もう何年も続いているので、もはや起こることが当たり前になっているくらいだ。
大きな被害はないが、小さなものは限りなく、医学科に進んだミナは治癒魔法使いの見習いとして連れて行ってもらえるだろう。
(あたしの治癒魔法は、ちょっとしたもんやしな。騎士団でひっぱりだこになってもおかしくない腕前や)
実際には治癒魔法だけでなく、攻撃魔法も防御魔法もずば抜けているのだが、ミナにあまり自覚はない。
「実地研修が、今からとても楽しみです」
「…………あまりやり過ぎないようにね」
「…………不安しかないな」
わくわくしているミナの様子に、頭を抱えるアウレリウスとハルトムートだった。
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