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クラスメートに癒やされました
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優雅な足取りでおっとりと歩いてくるのはフランソワーヌで、彼女の後ろには気の進まない様子のエレーヌがいる。
同級生の侯爵令嬢は、フフフと優雅な笑みを浮かべた。
「相変わらず、とても目立っておられますわね」
別に、好きで目立っているわけではない。
ジロリと睨めば、ますます楽しそうに笑われてしまった。
キラキラと輝く王宮の広間に、十一歳の侯爵令嬢は自然に溶け込んでいる。
ここが彼女の舞台なのだ。
「そう怒らないでくださいませ。――――完璧な王子さまとご令嬢の姿ですのに、他を圧するほどの空気を醸し出してご入場されたかと思えば、あれほど高位な妖精騎士と妖精闘士を従えていることを見せつけるだなんて――――さすが、ヴィルヘルミナさんとハルトムート殿下だと、皆で感心していたのですよ」
フランソワーヌが「皆」と言って指し示す先には、クラスメートの一部が集っていた。
全員、フランソワーヌ同様、この場に出席することのできる地位のある家の令息令嬢たちだ。
ミナと視線が合った彼らは、嬉しそうに笑うと、こちらに近づいてきた。
「ヴィルヘルミナさま、お綺麗ですわ!」
「ドレスも、とても素晴らしいですね!」
「いや、たしかにお美しいけれど、それより話題とすべきは、あの妖精騎士さまたちの方だろう!」
「私、はじめて見ました!」
「あれほど神々しく力溢れるお方たちと、契約しておられるなんて!」
「さすがヴィルヘルミナさまですわ!」
「いや、ハルトムート殿下だって!!」
「殿下! ――――憧れます!!」
子供特有のテンションなのだろう。クラスメートたちは、いつになく興奮している。
いつもは遠巻きにしているハルトムートにも、我先にと近寄って、自分たちの感動を伝えていた。
「皆、ハルトムート殿下とヴィルヘルミナさんが誇らしいのですわ。私たちは、学園でお二人と接していますから、お二人が危険でもなんでもない方たちなのだとわかっていますもの。それなのに、大人たちの態度に、先ほどから『ムカツ――――』少々不快に思っていたのです。特に、あの公爵家のご令息は、常々ご自分の妖精を自慢ばかりする『胸ク――――』心証のよろしくない方でしたので、追い払っていただいてスカッとしましたわ」
――――なんだか、いろいろ、ダダもれなフランソワーヌである。後ろでエレーヌが頭を抱えている。
(『ムカツク』とか『胸クソ』とか、普通に言いそうになっているし――――)
公爵家と侯爵家だ。ひょっとして因縁だの怨念だのあるのかもしれない。
(いや、怨念はあってもらったら困るんやけど!)
侯爵令嬢のフランソワーヌは、ハルトムートの婚約者候補だった。
しかし、ハルトムートがこんなことになった後、ひょっとしたら、あの公爵家の嫡男の婚約者候補になってしまったのかもしれない。
そうだとしたら、フランソワーヌのこの鬱憤も理解できた。
(さすがに、アレはナシやもんな)
ウンウンと、ミナは心の中で頷く。
気心の知れたクラスメートに囲まれて、ミナは、すっかり肩の力が抜けた。
視線を向ければ、ハルトムートも、笑顔とまではいかないが、ずいぶん表情が柔らかくなっている。
「ハ~ッ」
「皆さんが来てくださって、よかった!」
ハルトムートとミナの後ろで、カチンコチンに固まっていたルーノとルージュも、安堵の声をもらしていた。
泣きそうになっているように見えるのは、気のせいだろう……
「――――ヴィルヘルミナ」
ほっこりとしていれば、そこに新たな声がかかった。
近づいてきたのは、ヴィルヘルミナの両親と兄アウレリウスだ。
一緒に王城に来たミナの家族は、用件があるということで、今まで別行動だったのだ。
(……その用件っちゅうのは、十中八九ハルトムート絡みなんやろうけど)
ミナの家族の姿を見たクラスメートたちは、にこやかに笑いながらそれぞれの家族の元に戻っていった。
表面上にこやかな笑みを浮かべて、子供たちを見送るエストマン伯爵だが、実の娘のミナには彼が静かに怒っていることがわかる。
何故だろう? と理由を考えて…………ハッ! として胸に手を当てた。
――――正確には、服の下のペンダントにである。
(しまった! レヴィアのことは家族には内緒にしていたんやった!)
それがバレてしまったのだ。怒られるのも当然である。
内心ガクブルとしていれば、苦笑したアウレリウスに頭を撫でられた。
「うん。ミナが何を恐がっているのか丸わかりだけど、今、父上のご機嫌が悪いのは違う理由だから」
ミナはキョトンとしてしまった。
それでは、いったい何に父は怒っているのだろう?
視線を向ければ、エストマン伯爵は大きく息を吐き出した。
「陛下から、ハルトムート殿下にご伝言だ。――――席を設けるから第二王子として式典に参加するように。……そして、今この時をもって、王宮への帰還を命じるとね」
ものすごく忌々しそうに、ミナの父はそう言った。
同級生の侯爵令嬢は、フフフと優雅な笑みを浮かべた。
「相変わらず、とても目立っておられますわね」
別に、好きで目立っているわけではない。
ジロリと睨めば、ますます楽しそうに笑われてしまった。
キラキラと輝く王宮の広間に、十一歳の侯爵令嬢は自然に溶け込んでいる。
ここが彼女の舞台なのだ。
「そう怒らないでくださいませ。――――完璧な王子さまとご令嬢の姿ですのに、他を圧するほどの空気を醸し出してご入場されたかと思えば、あれほど高位な妖精騎士と妖精闘士を従えていることを見せつけるだなんて――――さすが、ヴィルヘルミナさんとハルトムート殿下だと、皆で感心していたのですよ」
フランソワーヌが「皆」と言って指し示す先には、クラスメートの一部が集っていた。
全員、フランソワーヌ同様、この場に出席することのできる地位のある家の令息令嬢たちだ。
ミナと視線が合った彼らは、嬉しそうに笑うと、こちらに近づいてきた。
「ヴィルヘルミナさま、お綺麗ですわ!」
「ドレスも、とても素晴らしいですね!」
「いや、たしかにお美しいけれど、それより話題とすべきは、あの妖精騎士さまたちの方だろう!」
「私、はじめて見ました!」
「あれほど神々しく力溢れるお方たちと、契約しておられるなんて!」
「さすがヴィルヘルミナさまですわ!」
「いや、ハルトムート殿下だって!!」
「殿下! ――――憧れます!!」
子供特有のテンションなのだろう。クラスメートたちは、いつになく興奮している。
いつもは遠巻きにしているハルトムートにも、我先にと近寄って、自分たちの感動を伝えていた。
「皆、ハルトムート殿下とヴィルヘルミナさんが誇らしいのですわ。私たちは、学園でお二人と接していますから、お二人が危険でもなんでもない方たちなのだとわかっていますもの。それなのに、大人たちの態度に、先ほどから『ムカツ――――』少々不快に思っていたのです。特に、あの公爵家のご令息は、常々ご自分の妖精を自慢ばかりする『胸ク――――』心証のよろしくない方でしたので、追い払っていただいてスカッとしましたわ」
――――なんだか、いろいろ、ダダもれなフランソワーヌである。後ろでエレーヌが頭を抱えている。
(『ムカツク』とか『胸クソ』とか、普通に言いそうになっているし――――)
公爵家と侯爵家だ。ひょっとして因縁だの怨念だのあるのかもしれない。
(いや、怨念はあってもらったら困るんやけど!)
侯爵令嬢のフランソワーヌは、ハルトムートの婚約者候補だった。
しかし、ハルトムートがこんなことになった後、ひょっとしたら、あの公爵家の嫡男の婚約者候補になってしまったのかもしれない。
そうだとしたら、フランソワーヌのこの鬱憤も理解できた。
(さすがに、アレはナシやもんな)
ウンウンと、ミナは心の中で頷く。
気心の知れたクラスメートに囲まれて、ミナは、すっかり肩の力が抜けた。
視線を向ければ、ハルトムートも、笑顔とまではいかないが、ずいぶん表情が柔らかくなっている。
「ハ~ッ」
「皆さんが来てくださって、よかった!」
ハルトムートとミナの後ろで、カチンコチンに固まっていたルーノとルージュも、安堵の声をもらしていた。
泣きそうになっているように見えるのは、気のせいだろう……
「――――ヴィルヘルミナ」
ほっこりとしていれば、そこに新たな声がかかった。
近づいてきたのは、ヴィルヘルミナの両親と兄アウレリウスだ。
一緒に王城に来たミナの家族は、用件があるということで、今まで別行動だったのだ。
(……その用件っちゅうのは、十中八九ハルトムート絡みなんやろうけど)
ミナの家族の姿を見たクラスメートたちは、にこやかに笑いながらそれぞれの家族の元に戻っていった。
表面上にこやかな笑みを浮かべて、子供たちを見送るエストマン伯爵だが、実の娘のミナには彼が静かに怒っていることがわかる。
何故だろう? と理由を考えて…………ハッ! として胸に手を当てた。
――――正確には、服の下のペンダントにである。
(しまった! レヴィアのことは家族には内緒にしていたんやった!)
それがバレてしまったのだ。怒られるのも当然である。
内心ガクブルとしていれば、苦笑したアウレリウスに頭を撫でられた。
「うん。ミナが何を恐がっているのか丸わかりだけど、今、父上のご機嫌が悪いのは違う理由だから」
ミナはキョトンとしてしまった。
それでは、いったい何に父は怒っているのだろう?
視線を向ければ、エストマン伯爵は大きく息を吐き出した。
「陛下から、ハルトムート殿下にご伝言だ。――――席を設けるから第二王子として式典に参加するように。……そして、今この時をもって、王宮への帰還を命じるとね」
ものすごく忌々しそうに、ミナの父はそう言った。
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