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十歳の少年は可愛いのです!
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その後、ミナは順調にビーズアクセサリーを完成させた。
フランソワーヌやエレーヌに教えながら張り切って作ったおかげで、予定していたミサンガの他に、ブレスレットも作ってしまった。
ライトアングルウィーブというビーズが直角に向き合う編み方で作ったボリュームのある作品で、ビーズにはシトリンとホークスアイを使っている。両方とも自分の目的を叶えさせてくれると言われる宝石だ。
(ミサンガとブレスレットの違いは、いまいちよくわからんのやけど)
ちなみに、ミナは細い紐状のものをミサンガ。太くてボリュームがあって、腕につけるものをブレスレットと区別している。正しいかどうかはわからない。
二つとも、約束通りアウレリウスにプレゼントしたら、ものすごく喜ばれた。
「妖精も宿っていないし普通のミサンガやブレスレットに見えるけど、ミナのお手製だっていうだけで、私にとってはどんな高価な宝飾品より価値があるからね」
相変わらずシスコン全開な兄である。
(……まあ、もう慣れたけど)
ミナは気にせず受け流した。
受け取ったアウレリウスに特に変化はなかったため、ミナのビーズアクセサリー作りは、晴れて解禁となる。
(……次は、何を作ろうかな)
ウキウキしながら考えていた、そんなある日――――
「お前は、どうして俺を捜しに来ないんだ!?」
突然ハルトムートに怒鳴られてしまった。
昼休みがもうすぐ終わるという教室の真ん中である。
「え?」
「昼休み、俺はいつもルーノと共に姿を消している。……お前は、何故俺を捜しに来ない! ――――俺とお前は、不本意ながらも一緒に暮らしているんだぞ。普通、そういう相手がいなくなったら、どこにいるのかとか心配になるものだろう!?」
(……いや、屋上でお弁当を食べてるんは、知ってるし)
ミナはポカンとしてしまう。
「――――要は、ハルトムートさまは、ミナに心配して捜しに来てほしかったんだよね。なのに、いつまで経ってもミナが来ないから、逆ギレしているんだよ」
身も蓋もない説明をしてくれるのは、ルーノだ。
一つ年上の平民の少年は、呆れきった目でハルトムートを見ている。
「……ずいぶんハルトムートさまに対する態度が、雑――――親しみやすくなったのね」
「言い直さなくてもいいよ。……ここ数日、あれだけヘタレな姿を見ちゃうとね。王族に対する畏敬の念とか、尊敬とか、みんなどっかいっちゃった」
ハハハと、乾いた笑い声をルーノは上げる。
(ヘタレって――――)
いったいルーノは、どんなハルトムートを見たのだろう?
――――にしても、
(そっかそっか、ハルトムートは、あたしに心配してほしかったんやな)
それはずいぶんと――――可愛らしいことだった!
(子供みたい! って、ホンマに十歳の子供なんやけど)
フランソワーヌのような子供らしからぬ子供と毎日接しているミナにとって、ハルトムートの行動は、癒やし以外の何物でも無い!
「ルーノ! お前、何を勝手なことを言っているんだ! 俺は、そんなこと思っていないぞ!!」
ルーノに自分の本心をバラされ、焦っている様子も、とてつもなく可愛かった!
(ハルトムート、最高やっ!)
デヘヘと、ミナはだらしなく笑う。
(……おい、ものすごく変態くさいぞ)
頭の中にレヴィアの呆れきった声が響いた。
(……ニャ~)
ナハトも引き気味に鳴いている。
ミナは、慌てて表情を引き締めた。
「すみません。実は私、ハルトムートさまとルーノが屋上にいることは、わかっていたのです」
ミナの言葉に、ハルトムートは目を見開く。
「は? わかっていた? いったいどうして? ……それに、わかっていたのなら、何故屋上に来なかった?」
強い口調で聞いてきた。
「理由はお話できないのですけれど……屋上に行かなかったのは、誘われてもいないのに押しかけたらいけないかと思ったからですわ」
そう言われたハルトムートは、むうっと押し黙る。
そもそも最初に黙って置いてけぼりにしたのはハルトムートである。それでいて捜しに来ないと怒るなど、理不尽なことなのだ。
(まあ、それも十歳の男の子のやったことだと思えば、あたし的には怒る気あらへんのやけどな)
周囲がどう見るかは、また別である。
ここは教室で、ミナの周りには他のクラスメートたちがいる。
彼らの様子をそっとうかがい見れば、みんな呆れたような顔をしていた。
――――特に、フランソワーヌの目が冷たい。
(呆れているっちゅうより、思いっきりバカにしているわよね?)
一応、今のところまだ王子から廃嫡されていないので、その目は止めてあげてほしいと思う。
(……まあ、でも闇属性への怯えみたいなもんが欠片も見えないのは、いいことなんやないんかな?)
本当にいいかどうかは、微妙なところではあるが――――。
それより、せっかく懐きはじめてくれたハルトムートの機嫌をなんとか直したい!
そう思ったミナは、ハルトムートに対し、ニッコリ笑う。
「ハルトムートさまに置いていかれたのは寂しかったですけれど、おかげでビーズアクセサリーを作ることができました。――――ハルトムートさまにも何かお作りしたいのですが、いいですか?」
ミナに問いかけられたハルトムートは、パッと視線を向けてきた。
「……そうか、寂しかったか……そうか」
なんだか嬉しそうに呟く。
(くぅぅっ! 可愛い!!)
ミナは悶えて死にそうになった。
フランソワーヌやエレーヌに教えながら張り切って作ったおかげで、予定していたミサンガの他に、ブレスレットも作ってしまった。
ライトアングルウィーブというビーズが直角に向き合う編み方で作ったボリュームのある作品で、ビーズにはシトリンとホークスアイを使っている。両方とも自分の目的を叶えさせてくれると言われる宝石だ。
(ミサンガとブレスレットの違いは、いまいちよくわからんのやけど)
ちなみに、ミナは細い紐状のものをミサンガ。太くてボリュームがあって、腕につけるものをブレスレットと区別している。正しいかどうかはわからない。
二つとも、約束通りアウレリウスにプレゼントしたら、ものすごく喜ばれた。
「妖精も宿っていないし普通のミサンガやブレスレットに見えるけど、ミナのお手製だっていうだけで、私にとってはどんな高価な宝飾品より価値があるからね」
相変わらずシスコン全開な兄である。
(……まあ、もう慣れたけど)
ミナは気にせず受け流した。
受け取ったアウレリウスに特に変化はなかったため、ミナのビーズアクセサリー作りは、晴れて解禁となる。
(……次は、何を作ろうかな)
ウキウキしながら考えていた、そんなある日――――
「お前は、どうして俺を捜しに来ないんだ!?」
突然ハルトムートに怒鳴られてしまった。
昼休みがもうすぐ終わるという教室の真ん中である。
「え?」
「昼休み、俺はいつもルーノと共に姿を消している。……お前は、何故俺を捜しに来ない! ――――俺とお前は、不本意ながらも一緒に暮らしているんだぞ。普通、そういう相手がいなくなったら、どこにいるのかとか心配になるものだろう!?」
(……いや、屋上でお弁当を食べてるんは、知ってるし)
ミナはポカンとしてしまう。
「――――要は、ハルトムートさまは、ミナに心配して捜しに来てほしかったんだよね。なのに、いつまで経ってもミナが来ないから、逆ギレしているんだよ」
身も蓋もない説明をしてくれるのは、ルーノだ。
一つ年上の平民の少年は、呆れきった目でハルトムートを見ている。
「……ずいぶんハルトムートさまに対する態度が、雑――――親しみやすくなったのね」
「言い直さなくてもいいよ。……ここ数日、あれだけヘタレな姿を見ちゃうとね。王族に対する畏敬の念とか、尊敬とか、みんなどっかいっちゃった」
ハハハと、乾いた笑い声をルーノは上げる。
(ヘタレって――――)
いったいルーノは、どんなハルトムートを見たのだろう?
――――にしても、
(そっかそっか、ハルトムートは、あたしに心配してほしかったんやな)
それはずいぶんと――――可愛らしいことだった!
(子供みたい! って、ホンマに十歳の子供なんやけど)
フランソワーヌのような子供らしからぬ子供と毎日接しているミナにとって、ハルトムートの行動は、癒やし以外の何物でも無い!
「ルーノ! お前、何を勝手なことを言っているんだ! 俺は、そんなこと思っていないぞ!!」
ルーノに自分の本心をバラされ、焦っている様子も、とてつもなく可愛かった!
(ハルトムート、最高やっ!)
デヘヘと、ミナはだらしなく笑う。
(……おい、ものすごく変態くさいぞ)
頭の中にレヴィアの呆れきった声が響いた。
(……ニャ~)
ナハトも引き気味に鳴いている。
ミナは、慌てて表情を引き締めた。
「すみません。実は私、ハルトムートさまとルーノが屋上にいることは、わかっていたのです」
ミナの言葉に、ハルトムートは目を見開く。
「は? わかっていた? いったいどうして? ……それに、わかっていたのなら、何故屋上に来なかった?」
強い口調で聞いてきた。
「理由はお話できないのですけれど……屋上に行かなかったのは、誘われてもいないのに押しかけたらいけないかと思ったからですわ」
そう言われたハルトムートは、むうっと押し黙る。
そもそも最初に黙って置いてけぼりにしたのはハルトムートである。それでいて捜しに来ないと怒るなど、理不尽なことなのだ。
(まあ、それも十歳の男の子のやったことだと思えば、あたし的には怒る気あらへんのやけどな)
周囲がどう見るかは、また別である。
ここは教室で、ミナの周りには他のクラスメートたちがいる。
彼らの様子をそっとうかがい見れば、みんな呆れたような顔をしていた。
――――特に、フランソワーヌの目が冷たい。
(呆れているっちゅうより、思いっきりバカにしているわよね?)
一応、今のところまだ王子から廃嫡されていないので、その目は止めてあげてほしいと思う。
(……まあ、でも闇属性への怯えみたいなもんが欠片も見えないのは、いいことなんやないんかな?)
本当にいいかどうかは、微妙なところではあるが――――。
それより、せっかく懐きはじめてくれたハルトムートの機嫌をなんとか直したい!
そう思ったミナは、ハルトムートに対し、ニッコリ笑う。
「ハルトムートさまに置いていかれたのは寂しかったですけれど、おかげでビーズアクセサリーを作ることができました。――――ハルトムートさまにも何かお作りしたいのですが、いいですか?」
ミナに問いかけられたハルトムートは、パッと視線を向けてきた。
「……そうか、寂しかったか……そうか」
なんだか嬉しそうに呟く。
(くぅぅっ! 可愛い!!)
ミナは悶えて死にそうになった。
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