虹色のプレゼントボックス

紀道侑

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第二章 向田さんちの無花果の樹

木の中に都市があるんですって、ファンタジーっぽいんですって。

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「あれがナピーナップの首都、ナウマヤカです」

 みんなで飛行船の窓から景色を眺めてるとピンタさんが教えてくれた。





「おお、木の下にある街かと思ったら木の中にある街だったんだね」

 木の枝の上とかに街があんのか。
 ファンタジーっぽい。

「凄いねえ、ファンタジーって感じだね」

「ですね」

 鈴木さんと東くんもファンタジーレーダービンビン丸のようだ。

「ほう、これは見事だな」

 いつの間にやら俺の横に吸血鬼の女王様がいた。
 鈴木さんと東くんも驚愕の顔をして京を見てる。

 ……この女つい一時間前に俺たちの前であれだけ醜態を晒しておいて、なんで何事もなかったかのように当たり前な顔で会話に入ってきてんだ。
 なんて強靭な精神なんだ。色んな意味でとんでもない逸材だ。

「奥方様、あれが樹中都市ナウマヤカです」

 ピンタさんが京をおかしな呼び方をしながら、再度街の紹介をする。
 急になんだこのオッサンカワウソ、ちょっとやめてよ。

「んん、なんだピンタもう一度言ってくれ」

「奥方様、あれが樹中都市ナウマヤカです」

「んん、あれがかの樹中都市か」

 なにが「かの樹中都市か」だ、お前この世界のことなんて何も知らねえだろ。

「んん、それでピンタよあの都市の名前は何と言ったかな?」

「奥方様、ナウマヤカでございます」

「んんっ、もう一度言ってくれ」

「奥方様、ナウマヤカでございます」

「んん、もう一度言ってくれ」

「奥方様、ナウマヤカでございます」

「んん、もう一度……」

「奥方様、あれが……」

 いや何回繰り返すねん。


 そして俺たちは樹中都市とやらに到着したらしい。
 飛行船が飛行場の敷地に入ると何やら人だかりが見える。
 あ、なんか嫌な予感がするわ。

場所名 ナピーナップ諸島ナピーナップ国首都ナウマヤカ

説明

昨日沿岸に見えた銀色の巨人を見た人々が悪の巨人の再来なのではないかと恐怖にかられて集まっている。
勇者にすがろうとこの国の王族も総出で来ている。


 おお、めんどくさいことになってる。

「なんか人たくさんいない?」

 鈴木さんが異変に気づいたらしい。

「…昨日の京の巨人ヒーロー姿見てみんなびびって、勇者に助けてもらおうと集まってるらしい」

「「「……」」」

 パーティーメンバーみんな遠くを見つめる目になった。

「ふむ、私のせいか」

 とうの本人は真顔で悪びれた感じもなく「ふむ」とか言ってる。
 いやまあ過失だからな。確かにそんなに悪いことしたわけではない。
 でも少しは悪びれてほしい。

 すげえフラットな顔してんな。
 なんだこの動じない女は……。
 精神力が強靭すぎるんだよ。

「まあ、行くべ、東くん先頭でよろ」

「ええー、自分ですか~?」

 東くんがブーたれだした。
 異世界歴が長くて色んな貴族に相対した経験がたくさんある東くんが代表として対人関係がんばるって予定だったじゃないか。頑張れよ。

「女王歴が長い私が代表として切り込んでやろうか?」

「いや、お前のこと誰も知らないだろ」

 なぜか吸血鬼の女王様が出ばりだした。お前は頑張るなよ。

「こいつ、なんか変なことしそうだから早く行って」

「……はあ、わかりました」

 東くんが諦めて、飛行船から先頭で出ていく。
 うん、びっくりするぐらい人いるわ。
 あったかい気候だからかみんな南国風の露出多い服着てる。
 人族は色黒の人が多いようだ。
 なんか前の方にいるやつらはいい服着てる気がするな。
 貴族とかかな。

「勇者様ーっ助けてくださいませーっ!!!!」
「お助けをーっ!!」
「助けてええっ!!」
「悪の巨人がーっ!!」
「お慈悲をーっ!!」


 おお、出ていった瞬間に民衆からの叫びが凄い。
 マイナス方向の盛り上がりがピークに達しちゃってるわ。

「うん、大騒ぎだな」

 俺の横にいる吸血鬼がたんたんと感想を述べている。
 過失だけどもね、これお前のせいだからね。

「勇者東、というのはどなたであろうか」

 あ、民衆の前にいる貴族っぽいやつらのなかでも一際きらびやかな集団の中のくるりんヒゲのオッサンが前に出てきて話しかけてきた。
 まあ、一際きらびやかな集団が王族かな。
 このヒゲのオッサンは多分王様だべ。




名前   チャイト・ナピーナップ ♂
年齢   46才
職業   王様
種族   人族
称号   ザ王様

レベル  15
HP   71/71 
MP   53/53

STR  23
AGI  25
VIT  25
INT  33
MND  38
DEX  15

装備

水鳥の衣
神無花果の杖

所持スキル

片手剣レベル1

縦斬り、受け流し

水魔法レベル2

ウォーターキュア、ウォーターボール、ウォーターカッター

王の声


説明

どこにでもいる平凡な王様。



 ああ、やっぱ王様だったな。
 どこにでもいる平凡な王様らしい。
 どこにでもいないからこそ王様のような気がしないでもないが。


「東は自分です。東秀千代と言います」

「おお、そなたが勇者東か、私はこの国の王チャイト・ナピーナップだ。この国の民を代表して勇者の来訪を歓迎しよう」

 東くんが王様に挨拶をする。
 そういや跪いたりしなくていいのかな?
 前の国でもそんなことしなかったよな。
 勇者だからだろうか。
 まあなんでもいいか。

「それに、カワウソ殿もいるのだな。優秀なパーティーのようだ」

「お初御目にかかります。ピンタ・リバーフェニックスと申します」

 カワウソ達も、挨拶をしてる。
 カワウソ達はちゃんと跪いてるな。
 なんか、誰も文句言わないし変な空気も感じないから、やっぱ勇者は跪かなくてもいいんだろうな。

「あなたが勇者東なんですね。お会いしたかったです」

 お、何やら目をキラキラさせて東くんに話しかける少年がいる。
 立ち位置的にまあ王子だろな。



名前   ジェット・ナピーナップ ♂
年齢   8才
職業   王子
種族   人族
称号   賢い子

レベル  2
HP   13/13 
MP   3/3

STR  3
AGI  3
VIT  5
INT  6
MND  2
DEX  5

装備

水鳥の衣

所持スキル

綺麗な字

説明

なかなかに賢い子供、将来はイケメン。


「ジェット、失礼だぞ、まずは挨拶を」

「あ、ごめんなさい。第二王子のジェット・ナウマヤカです」

 苦笑した王様にたしなめられた子供が申し訳なさそうな顔で東くんに挨拶をする。

 やっぱ王子か。
 賢くてイケメンになるのか。
 将来が約束されまくりの王子だな。

 うん?第二王子?
 じゃあ第一王子もいるのか?
 どこにいんだ?

「おい勇者よ、恐怖にかられている余の国の民を助けよ」

 おう?
 今俺に言ったのか?
 いつのまにか俺の側に憎たらしい顔した小太りの子供がいる。
 後ろにはなにやらキツそうな感じの眼鏡のオバサンもいる。
 なんだこいつは?東くんの方見てたから気づかなかったわ。
 ……うん?いやまじでなんだこいつ。





 他の人達とテイスト違いすぎない?
 なんでこいつだけ絵本に出てくる王子風なんだ?
 肩んとこもっこりしてる服に、カボチャパンツみたいなズボンに白タイツ履いてるわ。
 他の人達はみんな南国風の服着てんのに、なぜだ……。


名前   バイサク・ナピーナップ ♂
年齢   10才
職業   王子
種族   人族
称号   太った王子

レベル  1
HP   10/10 
MP   1/1

STR  3
AGI  5
VIT  2
INT  3
MND  5
DEX  2

装備

絵本に出てきそうな王子服

所持スキル

無し

説明

ナウマヤカの第一王子、多少太っている。
憎たらしい顔してるし、太ってるし、横柄な態度だしで、国民の評判が少々良くない。

余談

現在第一王子と第二王子の派閥で後継者争いが起きている。
当然ながら賢い第二王子の派閥が優勢。
ちなみに第一王子と第二王子は母親が違う腹違いの兄弟。
だから余計に派閥争いが捗っている。

ちなみになぜこんな変な服を着ているのかと言うと、この世界の色物装備=優秀な装備の法則があるから。
つまり母親が過保護で優秀な装備を着せたがるせい。
太った王子の後方にいるこれまた絵本に出てきそうなドレスを着ている眼鏡をかけたオバサンがそれ、この国の第一王妃。


 ……王子だったわ。
 後ろの絵本に出てきそうな眼鏡かけたドレスのオバサンが母親か。
 この二人だけ超浮いてる。
 意地悪オバサンと生意気王子みたいなね。
 絵本の悪役臭が漂いすぎてる。

 しかしなんなんだよ。
 派閥争いは起きてるしよう、一人称「余」だしよう。
 この世界の第一王子はおかしなやつしか居ないんか。


「……安心しろぶーちゃん王子、あの巨人は俺達が退治したから」

 ある意味で。

「ぶーちゃん王子!?それは余のこと!?」

 そうです。君は俺の中でぶーちゃん王子と言う呼び名に定まったのです。

「退治!?召し使いよそれは誠か!?」

 あ、王様が俺のセリフに敏感に反応した。
 ……おい、今召し使いっつったな?

「そうです王様。我々の合体スキル、ブラックホールスーパーウルトラフリーズドライ製法大回転後ろ回し蹴りで退治してやりました」

「ブラックホールスーパーウルトラフリーズドライ製法大回転後ろ回し蹴り!?」

 よく一回で覚えたな王様。

「「「「……」」」」

 パーティメンバーが、こっち見ながらなんとも言えない顔をしてる。

「我々が宇宙の彼方に消し飛ばしてやりましたよ」

 吸血鬼の女王の、私ここにいるが?みたいな目線を真横から感じるが気にしない。

「ええもう、部屋に籠って泣き叫ぶほど完膚なきまでに叩きのめしてやりましたよ」

 すぐ復活したけどな。

「おお、おお、そうか。そうであったか、聞いたか皆のものっ!!巨人の恐怖はこの国よりさったぞっ、勇者東殿たちに感謝せよっ!!」

 ああ、王様が国民にでかい声で叫んでしまっている。
 俺の適当な嘘エイトオーオーなんだが。

「うおーっ東様ーっ!!」
「勇者東万歳っ!!」
「東っ東っ東っ!!」
「万歳、万歳、万歳っ!!」
「東様ーっ!!」

 おお、国民からの声援が凄いなあ。
 東くんの鬼の表情が一層鬼になってこっち見てる気がするなあ。
 おっかないからぶーちゃん王子のお腹をつまんでごまかそう。
 おお、やわらけ。

「さあ、東殿と仲間達よ、我が城に招待しよう。旅の疲れを癒してくれ」

「おい、召し使いよ。なぜ余の腹を摘まむのだ。やめよ」

「まあっ、召し使いなのに生意気ざますよっ!!礼儀がなってないざますっ」

 あ、ぶーちゃん王子の母ちゃんが喋った。
 まさかのざます口調なのかよ。嘘だろ。
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