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第一章 温室育ちのへっぽこ先生異世界に降臨せり
タンポポは英語だとダンデライオンって言う。
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バインバイン姉ちゃんことシラール・ザッハールを、安らかな眠りにつかせてから数日たった。
あの後、双子水晶の登録を解除して、カワウソ族の魔法使いのクレープさんに登録しなおしてから、ムツキには「勇者ヤスダには知識系スキルの存在は確認取れず、おそらく無い」みたいな通信を送っといた。
元々俺をアホだと思っていたアホなムツキは、冒険者ギルドの床で正座させられていたとの情報もあり、完全に納得したらしい。
他の連絡員すらも、しばらく寄越さないほどに納得したらしい。
ふふふ、アホめが。
俺の手のひらの上で、コロコロされているとも知らずに。
今はアズマ君含め、みんなムキムキ領主さんの領主の館に滞在してる。
まだ一月先の話だが、暗闇卿ムツキをぼこぼこにするにあたり、アズマ君達も同行してくれることになった。
だからアズマ君パーティには、使ってない狭い方の魔法の部屋を貸し出した。
まあ、三人で使う分には十分な広さだ。
正直年頃の男女を、同じ部屋に入れるのはどうだってのもあるが、中身的には全員年頃の女の子なわけだから問題あるまい。
鬼みたいな顔したリーダーに、美女美少女のハーレムパーティに見えるだけで、実質全員女性パーティなわけだからな。
ちなみにスズキさんは、カワウソ達の部屋の一室に住む予定だ。
最初は俺の部屋に住まわそうとしたんだが、五年にわたる孤独な生活のお陰で、どうやら人?が多いところの方が安心するらしく、カワウソ村預かりになった。
アズマ君達とスズキさんの家具なんかも買って、部屋を整えてる最中だ。
起きて顔洗ってから、朝ごはん食べる食堂?的な部屋にいると誰か入ってきた。
「おはようございますヤスダさん」
「おはよう」
アズマ君も朝食食いに来たらしい。
……朝会うたびに、女になってんじゃないかと、なんかハラハラしてんだよな。
まだ男のままのようだ。
「おはよう二人とも」
「おはようございます先生」
お、スズキさんとピンタさん達も来た。
みんなで朝ごはんを食べる。
ベーコンとウインナーとハムと玉子とコンビーフの朝ごはんだ。
迷宮都市のご飯なあ、肉の比率がえぐいのよな。
夕飯は週5ペースで焼肉だしさ。
肉肉な飯でもスズキさんは、胃袋に沢山食物を入れて栄養を体にたくさん蓄えられる才能の持ち主だから、ペロリといけるようだ。
アズマ君も若さが溢れる十代だから、肉だらけでも余裕っぽい。
カワウソ達も野性が溢れてるのか、むしゃむしゃいく。
俺も高いレベルのせいか、胃がもたれたりはしなくなったから食える。
でも気持ちでもたれる。俺の心の弱さがにくい。肉だけに。
「アズマ君、バインバイン姉ちゃんに変わりはないかい?安らかに寝てる?」
「大丈夫ですよ、すごい安らかに寝てます」
バインバイン姉ちゃんは領主の館の一室に寝てる。アズマ君パーティはみんな、ちょいちょい様子を見に行ってるらしい。
「そうか、じゃあ顔に落書きしに行ってもいい?」
「……ダメですよ。当たり前みたいに、顔に落書きしようとしないでくださいよ」
「ヤスダ君あの人のこと、ホントに嫌いだよね。なに?スタイルのいい女性になにか恨みでもあるの?」
スズキさんが、何やら不思議に思ったらしく聞いてくる。
「……いや、俺は胸のおっきい女性凄い好きだけど?」
「……そのわりにはシラールさんにあたりがきつくない?スパイも旦那さん人質に取られてなんだしさ、もうちょっとやさしく対応してあげてもよくない?」
スズキさんがもっと不思議に思った顔で聞いてくる。
……あれ?おかしいな……俺おっぱい大きい人すごい好みのはずなんだけどな。
……あの姉ちゃん顔も美人だし、物凄い好みのはずなんだけど……あら?
……なんだろうな。
なんだか知らないけどイラっとするのよな。
あ、これはあれだな。俗に言うところの……。
「生理的に受け付けないってやつかもしんない」
「君はOLかなにかかい?」
しょうがない、そうなんだから、しょうがない。
「所でヤスダ君、今日もスラムのギルド行くなら、僕も行くから一緒に行こう」
「いいよ、スズキさんまた缶詰売るの?」
「うん、ただで出てくるのに、お金取るのもどうなんだろうって葛藤が、未だにあるけどね」
「1個30Gでしょ?安いんだからいいじゃない」
この数日で、スズキさんは缶詰で商売を始めた。
スラムのギルドの前で、魔法の袋に入れた缶詰を、路上販売みたいに売ってる。
どんな缶詰でも1個30G、日本円だと30円位で売ってるから激安だ。
しかも一日で1000000000000000000000000000000個出せるからな。売り放題だ。
もうなんて読むのかわからない桁だからな。
今やスズキさんが、スラムのギルドにいくとすごい人だかりになる。
本来ならスズキさんがあまり目立つと困るんだが、まあ、スラムの前で路上販売するだけなら、さほど問題無いだろうって判断だ。
なんかムキムキ領主さんにも、備蓄としてまとめて売るとかって話出てたしな。
そっちは自重しなくていいから、何万個とかでの取引になりそうだ。
近々億万長者になるな、この人。
さてさて、じゃあ今日もスラムの孤児達に勉強教えに行くか。
「おはようセンセー」
「おはようございます」
「おはよー」
スラムのギルドに着くと、孤児達がギルドの奥から出てきて挨拶してくる。
うん、いつも通り。飲んだくれた冒険者のオッサンなんかがいるのもいつも通りだ。
盗賊団いなくなったからか、みんなへらへらしてるわ。
名前 ニューロン ♂
年齢 12才
職業 見習い剣士兼薬師
種族 人族
称号 多才な兄
レベル 2
HP 13/13
MP 3/3
装備
鋼の剣+5
鋼の胸当て+5
所持スキル
剣術レベル1
縦斬り
算術レベル1
正確な掛け算
調薬レベル1
初級魔法薬作成
草の見極め
韋駄天(小)
名前 シナプス ♀
年齢 4才
職業 見習い裁縫師
種族 人族
称号 多才な妹
レベル 1
HP 8/8
MP 3/3
装備
カワウソ族特製鋏
所持スキル
算術レベル1
間違わない足し算
裁縫レベル1
初級布装備作成
布の声
綺麗な字
ふふふ、生々しいパワレベのお陰で、ニューロン兄妹は算術やら裁縫やらのスキルを得た。
他の孤児達も剣術やら装備作成のスキルを得ている。
とりあえず、こいつらはもう安心……かどうかはわからんが、少なくとも生きていける力の足しにはなっただろう。
「なんの取り柄もない孤児達が、短期間でこんなに成長するとはね。しかしあんたも物好きだね、さすが勇者だ」
スラムのギルドマスターの、ミーニ婆さんが話かけてくる。
やっぱし勇者だとバレてたらしい。
「俺一応教師だからね。これが仕事だから」
「カッカッカ、そうかいそうかい、ああ、ちょっと待ってな。うまい煎餅があるんだ」
ミーニ婆さん、カッカッカって笑うんだな……。
ギルドの奥から戻ってきたミーニ婆さんから煎餅を貰って、漢字の書き取りをしてる孤児達や、すごい列になってるスズキさんの缶詰売り場を眺めてた。
ちなみにさりげなくついてきたカワウソ子供組は、ダンジョンから帰って来て、怪我してる冒険者なんかを魔法で治してる。しかも無料で。
カワウソ達は大人組も金とか取らないで傷治したり、アイテム作ってやったりするからな。
そりゃカワウソ様って呼ばれるわ。
でもこれ、カワウソ達居なくなったら困るよな。
ギルドには回復魔法使える職員なんかがいたりするらしいのだが、回復魔法使える人は貴重らしい。スラムのギルドには居ない。
スラムだともっぱら、ミーニ婆さんが作った薬を使って怪我した冒険者の傷を治してる。
ミーニ婆さんは薬師だったらしい。
でも回復薬の材料はどこも不足ぎみらしいからな。
うーん、魔導書出す訳にはいかんしな、あれは存在がバレたらとんでもないことになるって言われてるからな。
あ、そうだ。
俺の腰に引っ付いて、ウエストバッグのふりしてるまんじゅうに話しかける。
「まんじゅう、アレ一鉢やってもいいか?」
リンリンリン。
いいよ、のリンリンリンだ。よし。
「……ん?なんだい?」
「ちょっと待ってて」
俺はトイレ行くふりして、魔法の部屋からまんじゅうの育ててるタンポポを持ってくる。
アイテム名 癒し系タンポポ
分類 植物
レア度 ?
価格相場 5500000G~6000000G
効果及び説明
ヤスダがニューロン少年から譲り受けて、まんじゅうが育てていたタンポポ。
まんじゅうがタンポポに水をあげる時、蛇口の水を汲みに行くのをめんどくさがり、自前の回復魔法の水で育てたことにより生まれた新種の植物。
まんじゅうのえぐいくらい濃厚な回復魔法のお陰で、自らも癒しの力を産み出す生命力溢れる植物になった。
葉が初級回復薬、花が中級回復薬の材料になるのだが、元がタンポポなので簡単に増やせる植物界のチート野郎。
生命力もえぐいので、葉っぱを全部むしっても水さえあげれば平気でまた生えてきます。
おとといの夜中にトイレ行く時に、青白く光ってたタンポポを「ヒギャアアアっ」の悲鳴と共に発見したのだ。
なんかまんじゅうの植え木鉢は、えらくおかしなことになってたらしい。
ちなみにこれは、ニューロン少年から譲り受けて二週間程度のタンポポだが、まんじゅうの口から出てきた初期のタンポポは……。
アイテム名 神域のタンポポ
分類 植物
レア度 ?
価格相場 9000000000G~10000000000G
効果及び説明
まんじゅうのえぐい回復魔法の水を、たくさん与えられたタンポポ。
まんじゅうのプレゼントボックスから出てきたタンポポだからなのか、特におかしなことになった。
もはや近くにいるだけであらゆる怪我が治り、若返ったりする。
なんだこのタンポポは。もはやタンポポではない。
ゴッドオブダンデライオン。
こんなんになった。
とんでもないのが、俺ん家のフローリングに置いてある。
ミーニ婆さんにあげるのは、もちろんまともな方だ。
「ミーニ婆さんこれあげるわ、育てると良いことがあるよ」
「……タンポポかい?」
「うん、回復薬の材料になるから育てて増やせば便利よ」
「!?回復薬!?タンポポがかい?」
ミーニ婆さんびっくりだ。
「花が中級、葉が初級の薬の材料になるらしいよ。しかもタンポポだからね水さえやってれば簡単に育つよ」
「――!?……本当にいいのかい?」
「いいよ、ミーニ婆さんは結構有名な薬師だって話だしね。うまく活用しておくれ」
ミーニ婆さんは薬師界だと優秀なことで有名だ。とカワウソ薬師のプラム婆さんが言ってた。
「ありがとうよ。勇者は規格外だね」
「俺は別にそうでもないよ。俺のまわりが凄いだけ」
「カッカッカ、そうかねえ」
「そうだよ」
スラムのギルドで孤児達に勉強みっちりやらせたり、スズキさんの缶詰売ったり食べたり、なんやかんやした後、領主の館に帰ってきて夕食を食い、今は俺の魔法の部屋で一息ついてる。
夕食はまた焼肉だった。
桃鉄大会以来、夕食後はみんな俺の部屋に集まって、ゲームやったりDVD見たりするのが日課になりつつある。
カワウソ達は早寝早起きなので、桃鉄終わったら、もうみんな寝てしまった。
「あれ?このメデューサってこの女の子のお母さんじゃないんですか?」
今は青いロボットの、昔の大長編のDVD見てる。
アズマ君が十代らしい疑問を投げ掛けてくる。
「違うよ昔のヤツはただただ化け物なだけだよ。ちなみにメデューサじゃなくてメジューサね」
「昔のヤツはやたら怖かったりするんだよね。そこがいいんだけど」
スズキさんが良いこと言った。
そう、昔のヤツは怖かったり、ちょっとしたトラウマの元になったりなんだけど、そこがいいんだよね。
あ、そういえば、アズマ君にあれ渡しとくか。
「アズマ君、これ渡しとくわ」
俺は魔法の袋から錆の塊を出す。
アイテム名 錆びた剣
分類 ?
攻撃力 ?
レア度 ?
価格相場 ?
効果及び説明
?
余談
聖剣ヤオヨロズの封印された姿。
「あれ!?これ封印されてる聖剣ですよね!?なんで……あれ!?二本あるっ」
アズマ君が自前の魔法の袋から、錆の塊みたいな剣を出す。全く同じだわ。錆の塊二個になった。
「そう、二本あるんです。まんじゅうの口から出て来ちゃったんです。ちなみに何とか都市のギアマイルってとこにいるロザリンデさんって人に頼めば封印も解けるから」
「一年以上、封印解く方法探すのに時間費やして来たのに、ドラえ○んの映画見た流れでさらっと答え言われたっ」
「後、これも渡しとくから」
アイテム名 黄竜の大玉
分類 宝石
レア度 A+
価格相場 1000000000G~1500000000G
効果及び説明
大迷宮満月へ至る回廊の入り口を開く鍵。五色ある内の一つ。
「黄竜の大玉じゃないですか!?あ、これも二個あるっ!!」
黄竜の大玉もアズマ君の袋から自前のヤツが出てきた。
「そうです。これも二個あるんです。まんじゅうの口から出てきちゃったんです」
「剣はまだ分かる気がしますけど、この玉が二個あるのは絶対おかしいでしょ!?この手の五色あるキーアイテムで、黄色だけ二個あるとか絶対おかしいでしょっ」
「しょうがない。出てきちゃったんだから、ちなみにそのアイテム五色集めると月にあるダンジョンに行けるからね」
「月!?月に行けるんですか?なにこの人、すごいネタバレしてくるっ」
「いやあ、ヤスダ君は人間攻略本だね」
今日は平和な一日だな。
……ん?……あっ!!
「こらまんじゅうっ、蛇口の水をやれって言ったろっ」
「もうなんか、タンポポから変なオーラ出始めたじゃねえかっ」
またまんじゅうが回復魔法の水タンポポにやってたわ。
ていうか、アイツ確信犯だなこれ。
あの後、双子水晶の登録を解除して、カワウソ族の魔法使いのクレープさんに登録しなおしてから、ムツキには「勇者ヤスダには知識系スキルの存在は確認取れず、おそらく無い」みたいな通信を送っといた。
元々俺をアホだと思っていたアホなムツキは、冒険者ギルドの床で正座させられていたとの情報もあり、完全に納得したらしい。
他の連絡員すらも、しばらく寄越さないほどに納得したらしい。
ふふふ、アホめが。
俺の手のひらの上で、コロコロされているとも知らずに。
今はアズマ君含め、みんなムキムキ領主さんの領主の館に滞在してる。
まだ一月先の話だが、暗闇卿ムツキをぼこぼこにするにあたり、アズマ君達も同行してくれることになった。
だからアズマ君パーティには、使ってない狭い方の魔法の部屋を貸し出した。
まあ、三人で使う分には十分な広さだ。
正直年頃の男女を、同じ部屋に入れるのはどうだってのもあるが、中身的には全員年頃の女の子なわけだから問題あるまい。
鬼みたいな顔したリーダーに、美女美少女のハーレムパーティに見えるだけで、実質全員女性パーティなわけだからな。
ちなみにスズキさんは、カワウソ達の部屋の一室に住む予定だ。
最初は俺の部屋に住まわそうとしたんだが、五年にわたる孤独な生活のお陰で、どうやら人?が多いところの方が安心するらしく、カワウソ村預かりになった。
アズマ君達とスズキさんの家具なんかも買って、部屋を整えてる最中だ。
起きて顔洗ってから、朝ごはん食べる食堂?的な部屋にいると誰か入ってきた。
「おはようございますヤスダさん」
「おはよう」
アズマ君も朝食食いに来たらしい。
……朝会うたびに、女になってんじゃないかと、なんかハラハラしてんだよな。
まだ男のままのようだ。
「おはよう二人とも」
「おはようございます先生」
お、スズキさんとピンタさん達も来た。
みんなで朝ごはんを食べる。
ベーコンとウインナーとハムと玉子とコンビーフの朝ごはんだ。
迷宮都市のご飯なあ、肉の比率がえぐいのよな。
夕飯は週5ペースで焼肉だしさ。
肉肉な飯でもスズキさんは、胃袋に沢山食物を入れて栄養を体にたくさん蓄えられる才能の持ち主だから、ペロリといけるようだ。
アズマ君も若さが溢れる十代だから、肉だらけでも余裕っぽい。
カワウソ達も野性が溢れてるのか、むしゃむしゃいく。
俺も高いレベルのせいか、胃がもたれたりはしなくなったから食える。
でも気持ちでもたれる。俺の心の弱さがにくい。肉だけに。
「アズマ君、バインバイン姉ちゃんに変わりはないかい?安らかに寝てる?」
「大丈夫ですよ、すごい安らかに寝てます」
バインバイン姉ちゃんは領主の館の一室に寝てる。アズマ君パーティはみんな、ちょいちょい様子を見に行ってるらしい。
「そうか、じゃあ顔に落書きしに行ってもいい?」
「……ダメですよ。当たり前みたいに、顔に落書きしようとしないでくださいよ」
「ヤスダ君あの人のこと、ホントに嫌いだよね。なに?スタイルのいい女性になにか恨みでもあるの?」
スズキさんが、何やら不思議に思ったらしく聞いてくる。
「……いや、俺は胸のおっきい女性凄い好きだけど?」
「……そのわりにはシラールさんにあたりがきつくない?スパイも旦那さん人質に取られてなんだしさ、もうちょっとやさしく対応してあげてもよくない?」
スズキさんがもっと不思議に思った顔で聞いてくる。
……あれ?おかしいな……俺おっぱい大きい人すごい好みのはずなんだけどな。
……あの姉ちゃん顔も美人だし、物凄い好みのはずなんだけど……あら?
……なんだろうな。
なんだか知らないけどイラっとするのよな。
あ、これはあれだな。俗に言うところの……。
「生理的に受け付けないってやつかもしんない」
「君はOLかなにかかい?」
しょうがない、そうなんだから、しょうがない。
「所でヤスダ君、今日もスラムのギルド行くなら、僕も行くから一緒に行こう」
「いいよ、スズキさんまた缶詰売るの?」
「うん、ただで出てくるのに、お金取るのもどうなんだろうって葛藤が、未だにあるけどね」
「1個30Gでしょ?安いんだからいいじゃない」
この数日で、スズキさんは缶詰で商売を始めた。
スラムのギルドの前で、魔法の袋に入れた缶詰を、路上販売みたいに売ってる。
どんな缶詰でも1個30G、日本円だと30円位で売ってるから激安だ。
しかも一日で1000000000000000000000000000000個出せるからな。売り放題だ。
もうなんて読むのかわからない桁だからな。
今やスズキさんが、スラムのギルドにいくとすごい人だかりになる。
本来ならスズキさんがあまり目立つと困るんだが、まあ、スラムの前で路上販売するだけなら、さほど問題無いだろうって判断だ。
なんかムキムキ領主さんにも、備蓄としてまとめて売るとかって話出てたしな。
そっちは自重しなくていいから、何万個とかでの取引になりそうだ。
近々億万長者になるな、この人。
さてさて、じゃあ今日もスラムの孤児達に勉強教えに行くか。
「おはようセンセー」
「おはようございます」
「おはよー」
スラムのギルドに着くと、孤児達がギルドの奥から出てきて挨拶してくる。
うん、いつも通り。飲んだくれた冒険者のオッサンなんかがいるのもいつも通りだ。
盗賊団いなくなったからか、みんなへらへらしてるわ。
名前 ニューロン ♂
年齢 12才
職業 見習い剣士兼薬師
種族 人族
称号 多才な兄
レベル 2
HP 13/13
MP 3/3
装備
鋼の剣+5
鋼の胸当て+5
所持スキル
剣術レベル1
縦斬り
算術レベル1
正確な掛け算
調薬レベル1
初級魔法薬作成
草の見極め
韋駄天(小)
名前 シナプス ♀
年齢 4才
職業 見習い裁縫師
種族 人族
称号 多才な妹
レベル 1
HP 8/8
MP 3/3
装備
カワウソ族特製鋏
所持スキル
算術レベル1
間違わない足し算
裁縫レベル1
初級布装備作成
布の声
綺麗な字
ふふふ、生々しいパワレベのお陰で、ニューロン兄妹は算術やら裁縫やらのスキルを得た。
他の孤児達も剣術やら装備作成のスキルを得ている。
とりあえず、こいつらはもう安心……かどうかはわからんが、少なくとも生きていける力の足しにはなっただろう。
「なんの取り柄もない孤児達が、短期間でこんなに成長するとはね。しかしあんたも物好きだね、さすが勇者だ」
スラムのギルドマスターの、ミーニ婆さんが話かけてくる。
やっぱし勇者だとバレてたらしい。
「俺一応教師だからね。これが仕事だから」
「カッカッカ、そうかいそうかい、ああ、ちょっと待ってな。うまい煎餅があるんだ」
ミーニ婆さん、カッカッカって笑うんだな……。
ギルドの奥から戻ってきたミーニ婆さんから煎餅を貰って、漢字の書き取りをしてる孤児達や、すごい列になってるスズキさんの缶詰売り場を眺めてた。
ちなみにさりげなくついてきたカワウソ子供組は、ダンジョンから帰って来て、怪我してる冒険者なんかを魔法で治してる。しかも無料で。
カワウソ達は大人組も金とか取らないで傷治したり、アイテム作ってやったりするからな。
そりゃカワウソ様って呼ばれるわ。
でもこれ、カワウソ達居なくなったら困るよな。
ギルドには回復魔法使える職員なんかがいたりするらしいのだが、回復魔法使える人は貴重らしい。スラムのギルドには居ない。
スラムだともっぱら、ミーニ婆さんが作った薬を使って怪我した冒険者の傷を治してる。
ミーニ婆さんは薬師だったらしい。
でも回復薬の材料はどこも不足ぎみらしいからな。
うーん、魔導書出す訳にはいかんしな、あれは存在がバレたらとんでもないことになるって言われてるからな。
あ、そうだ。
俺の腰に引っ付いて、ウエストバッグのふりしてるまんじゅうに話しかける。
「まんじゅう、アレ一鉢やってもいいか?」
リンリンリン。
いいよ、のリンリンリンだ。よし。
「……ん?なんだい?」
「ちょっと待ってて」
俺はトイレ行くふりして、魔法の部屋からまんじゅうの育ててるタンポポを持ってくる。
アイテム名 癒し系タンポポ
分類 植物
レア度 ?
価格相場 5500000G~6000000G
効果及び説明
ヤスダがニューロン少年から譲り受けて、まんじゅうが育てていたタンポポ。
まんじゅうがタンポポに水をあげる時、蛇口の水を汲みに行くのをめんどくさがり、自前の回復魔法の水で育てたことにより生まれた新種の植物。
まんじゅうのえぐいくらい濃厚な回復魔法のお陰で、自らも癒しの力を産み出す生命力溢れる植物になった。
葉が初級回復薬、花が中級回復薬の材料になるのだが、元がタンポポなので簡単に増やせる植物界のチート野郎。
生命力もえぐいので、葉っぱを全部むしっても水さえあげれば平気でまた生えてきます。
おとといの夜中にトイレ行く時に、青白く光ってたタンポポを「ヒギャアアアっ」の悲鳴と共に発見したのだ。
なんかまんじゅうの植え木鉢は、えらくおかしなことになってたらしい。
ちなみにこれは、ニューロン少年から譲り受けて二週間程度のタンポポだが、まんじゅうの口から出てきた初期のタンポポは……。
アイテム名 神域のタンポポ
分類 植物
レア度 ?
価格相場 9000000000G~10000000000G
効果及び説明
まんじゅうのえぐい回復魔法の水を、たくさん与えられたタンポポ。
まんじゅうのプレゼントボックスから出てきたタンポポだからなのか、特におかしなことになった。
もはや近くにいるだけであらゆる怪我が治り、若返ったりする。
なんだこのタンポポは。もはやタンポポではない。
ゴッドオブダンデライオン。
こんなんになった。
とんでもないのが、俺ん家のフローリングに置いてある。
ミーニ婆さんにあげるのは、もちろんまともな方だ。
「ミーニ婆さんこれあげるわ、育てると良いことがあるよ」
「……タンポポかい?」
「うん、回復薬の材料になるから育てて増やせば便利よ」
「!?回復薬!?タンポポがかい?」
ミーニ婆さんびっくりだ。
「花が中級、葉が初級の薬の材料になるらしいよ。しかもタンポポだからね水さえやってれば簡単に育つよ」
「――!?……本当にいいのかい?」
「いいよ、ミーニ婆さんは結構有名な薬師だって話だしね。うまく活用しておくれ」
ミーニ婆さんは薬師界だと優秀なことで有名だ。とカワウソ薬師のプラム婆さんが言ってた。
「ありがとうよ。勇者は規格外だね」
「俺は別にそうでもないよ。俺のまわりが凄いだけ」
「カッカッカ、そうかねえ」
「そうだよ」
スラムのギルドで孤児達に勉強みっちりやらせたり、スズキさんの缶詰売ったり食べたり、なんやかんやした後、領主の館に帰ってきて夕食を食い、今は俺の魔法の部屋で一息ついてる。
夕食はまた焼肉だった。
桃鉄大会以来、夕食後はみんな俺の部屋に集まって、ゲームやったりDVD見たりするのが日課になりつつある。
カワウソ達は早寝早起きなので、桃鉄終わったら、もうみんな寝てしまった。
「あれ?このメデューサってこの女の子のお母さんじゃないんですか?」
今は青いロボットの、昔の大長編のDVD見てる。
アズマ君が十代らしい疑問を投げ掛けてくる。
「違うよ昔のヤツはただただ化け物なだけだよ。ちなみにメデューサじゃなくてメジューサね」
「昔のヤツはやたら怖かったりするんだよね。そこがいいんだけど」
スズキさんが良いこと言った。
そう、昔のヤツは怖かったり、ちょっとしたトラウマの元になったりなんだけど、そこがいいんだよね。
あ、そういえば、アズマ君にあれ渡しとくか。
「アズマ君、これ渡しとくわ」
俺は魔法の袋から錆の塊を出す。
アイテム名 錆びた剣
分類 ?
攻撃力 ?
レア度 ?
価格相場 ?
効果及び説明
?
余談
聖剣ヤオヨロズの封印された姿。
「あれ!?これ封印されてる聖剣ですよね!?なんで……あれ!?二本あるっ」
アズマ君が自前の魔法の袋から、錆の塊みたいな剣を出す。全く同じだわ。錆の塊二個になった。
「そう、二本あるんです。まんじゅうの口から出て来ちゃったんです。ちなみに何とか都市のギアマイルってとこにいるロザリンデさんって人に頼めば封印も解けるから」
「一年以上、封印解く方法探すのに時間費やして来たのに、ドラえ○んの映画見た流れでさらっと答え言われたっ」
「後、これも渡しとくから」
アイテム名 黄竜の大玉
分類 宝石
レア度 A+
価格相場 1000000000G~1500000000G
効果及び説明
大迷宮満月へ至る回廊の入り口を開く鍵。五色ある内の一つ。
「黄竜の大玉じゃないですか!?あ、これも二個あるっ!!」
黄竜の大玉もアズマ君の袋から自前のヤツが出てきた。
「そうです。これも二個あるんです。まんじゅうの口から出てきちゃったんです」
「剣はまだ分かる気がしますけど、この玉が二個あるのは絶対おかしいでしょ!?この手の五色あるキーアイテムで、黄色だけ二個あるとか絶対おかしいでしょっ」
「しょうがない。出てきちゃったんだから、ちなみにそのアイテム五色集めると月にあるダンジョンに行けるからね」
「月!?月に行けるんですか?なにこの人、すごいネタバレしてくるっ」
「いやあ、ヤスダ君は人間攻略本だね」
今日は平和な一日だな。
……ん?……あっ!!
「こらまんじゅうっ、蛇口の水をやれって言ったろっ」
「もうなんか、タンポポから変なオーラ出始めたじゃねえかっ」
またまんじゅうが回復魔法の水タンポポにやってたわ。
ていうか、アイツ確信犯だなこれ。
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けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
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※書籍化のため更新をストップします。
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