虹色のプレゼントボックス

紀道侑

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第一章 温室育ちのへっぽこ先生異世界に降臨せり

はげたオッサンにしか見えない神様が降臨なされたとさ、なんかよくわからん玉を授かったとさ

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 禿げたオッサンにしか見えない神様が、まんじゅうの口から降臨してきてから三日後。
 今は仲間達とダンガンポートの広場に来ている。
 よし、ウルトラ鑑定。

場所名 ダンガンポート四番街広場噴水前

説明

勇者アズマはここの噴水の影から転移して来ます。
大体三分後。

「まんじゅう、この辺りに眠りの呪いやって」

 リンリンリン。

 アズマ君の転移してくる辺りに、眠りの呪いの煙を充満させておく。

「よし、じゃあ後はアズマ君待ちだ」

「ヤスダ君、これほんとに上手いこといくの?」

 スズキさんが不安げだ。

「大丈夫大丈夫」

 禿げたオッサン神から貰ったアイテムにより、強硬策が可能になったので、バインバイン姉ちゃんの双子水晶を奪って登録しなおす。
 後は俺のウルトラ鑑定で、通信方法やら暗号なんかを割り出して、バインバイン姉ちゃんのふりをして、ムツキをだまくらかしてムツキ取っ捕まえる準備の時間を稼ぐ。
 名付けて、超完璧なオレオレ詐欺作戦だ。

「先生」

 ピンタさんが俺を呼ぶ。
 ん?来たかな?
 あ、煙の中にうっすら人影が見える。

「あれ?なにこの煙?火事?」

 あ、これアズマ君の声だな。

「なんだこれ?ヒデチヨなんかいい匂いするな。この煙」

「もう、ちょっとなによこれ、誰かお香焚いてんの?」

「ん?なんか体……が……」

 ドサドサドサドサッ。

 複数の人間が倒れる音がした。

「よし、まんじゅう煙晴らして」

 リンリンリン。

 よし、アズマ君パーティは全員安らかな寝顔で寝とる。
 よしよし。

「じゃあ、そのバインバイン姉ちゃんの持ち物の双子水晶を……えーとブーツの内側にあるんで、誰か出して」

 クレープさんが、バインバイン姉ちゃんのブーツの中をゴソゴソする。

「……あら、本当にあるわ、隠しポケットみたいになってるわね。はい」

アイテム名 双子水晶

分類    通信機器
レア度   B-
価格相場  2500000G~2800000G

効果及び説明

二つで対になる水晶、片方に魔力を込めると二つ同時に光る。
短く光らせたり長く光らせたりすることで、モールス信号のように通信ができる。
登録者にしか使用できない。
現在の登録者シラール・ザッハール
ムツキの暗号は別途参照


「よし、完璧、じゃあアズマ君とそのちっちゃい子と普通の子はやさしく領主の館に運んであげて、そのバインバインな女は簀巻きにして運ぼう」

 旦那が人質に取られてるのは同情の余地ありだが、まあスパイには間違いないしね。
 あと俺、この女普通に嫌いだしね。

「はい」

 カワウソ達がテキパキ動き出す。

「いやあ、ほんとに上手いこといったね。凄いチートだねウルトラ鑑定」

 スズキさんの称賛が出たぜ。

「はっはっは、ウルトラだからね。ウルトラな鑑定スキルだからね」

「鑑定って言われると、鑑定なのこれ……」

 うん、まあ鑑定ではないよね。

「……所で、本当にこの世界の神様が出てきたわけ?まんじゅう君の口から?」

 スズキさんが小声で聞いてくる。さすがにこの世界の神様やらの話は、カワウソ達にもしてないからな。

「うん、間違いないよ。きっちり鑑定したもの、凄い禿げてた」

「禿げてたんだ……」

「うん」

 なんか微妙な空気になるな。

「いやあ、しかし成功してよかった」


 そしてアズマ君パーティを運びながら、領主の館に到着した。

 アズマ君達は、武器とか取った後、みんな同じ部屋のベットに寝かせてある。
 客間?っぽい部屋だ。
 バインバイン姉ちゃんは床に寝かせてある。

「よし、じゃあまんじゅう、バインバイン姉ちゃん以外呪い解いてくれ」

「……前から思ってたけど、ヤスダ君それセクハラだよ」

 スズキさんにセクハラ認定された。
 でもやめません。俺はこの女なんか嫌いだから。

 アズマ君達の体から、何やら煙みたいのが出てきて、まんじゅうの口に吸い込まれる。

「……ん?あれ?ここは」

 アズマ君が気がついた。

「あれ?ヤスダさん?」

 よし、じゃあ全部説明しないとな……。
 ……しっかし相変わらずおっかない顔だなあ。
 ……大丈夫かなこれ。
 俺が眠らせたって言った瞬間、身体中の骨バキバキにされるんじゃねえの……。
 ……怖いわあ。

「……アズマ君大丈夫かい?なんか噴水のある広場にみんな気を失って倒れてたよ。なにがあったんだろうね」

 みんなが、ええ!?て顔してこっち見てる。
 ……やべ、アズマ君の顔おっかなすぎて、凄い小手先な嘘ついちまった。

「え!?そ、そうなんですか?なんか煙が漂ってたことは覚えてるんですけど」

「なにがあったんだろうね。ホントに」

「ヤスダ、どこだココ」

 あの、えー、ヒューイだっけ?あの小さい子も意識はっきりしたのか話しかけてくる。

「領主の館だよ」

「アズマ殿ですな。わたくし領主のマックスウェル・ダンガンポートと申します」

「長子のマックスバリユです」

 ムキムキ親子が前に出てアズマ君に挨拶をする。
 挨拶した後俺の方見て、どうすんのこの後、て顔をしてる。
 どうしようかな。ホントにどうしようかなー。

「あ、シラールさんだけ、なんで縛られて床に寝かされてるんですかっ!?」

 あのテレポート使える普通の子が、バインバイン姉ちゃんの異変に気づいちまった。
 一人だけ簀巻きにして、床に寝かせてるからな。

「……あのヤスダさん、なんでシラール姉さんだけ……」

「……俺、あの女凄い嫌いだから……」

「ええ!?嫌いだからって、簀巻きにはしないであげてくださいよっ」

 いや、ホントはスパイだからなんだけどね。
 あ、小さい子がバインバイン姉ちゃんの縄ほどこうとしてる。

「あー、ちょっと縄ほどかないで」

「なんでだヤスダ、可哀想だろ」

「んー、ほどいたらあれだよ、爆発するよ」

「爆発!?」

 あーもうだめだ、小手先の嘘が子指先の嘘になってきちまったわ。

「そのシラールさんはスパイだからだよ」

 あっ、スズキさんがおもむろにぶっちゃけたっ。

「スパイ!?なにいってるんですか!?あなた誰なんです!?」

 ああ、アズマ君の剣幕が凄い。

「どうも鈴木義一です。僕も日本人ですよ」

「え!!?」
「日本人!?」
「勇者か!?」

 アズマ君の仲間達が、みんなびっくりしてるわ。

「なんかヤスダ君がおかしな事言い始めたらから、もう僕が言っちゃうけど、その人スパイなんだよ。サイカ・ムツキの」

「ムツキ!?第一王子がなんなんです?」
「シラールがそんなことするわけない、なんだお前、デブ!!」
「第一王子は病気のはずですよ。でたらめ言わないでください」

 もうアズマ君と仲間達、凄い剣幕だわ。

「詳しい話は、そこのヤスダ君にして貰って……ヤスダ君どうしたの?なにその顔」



「アズマ君に、首引きちぎられるんじゃないかと思って」

「首引きちぎる!?なにその怖すぎる言葉!?そんな猟奇的なことしませんよ!?」

「……ヤスダ、ヒデチヨそんなひどいことしない。鬼の部分顔だけ」

「ヒューイもひどいよ!?顔の事は言わないで!!」

 あ、なんかちょっと和んだので、色々説明しよう。












「……旦那さんを人質に……」

「シラールそんなこと一言も言わなかった」

「シラールさん……」

「じゃあ、シラール姉さんにその鑑定スキルがばれないように、正座したりしてたんですか?」

「そう、凄い辛かった」

「……シラール姉さんが……」

 一通り話したらアズマ君達がしんみりしちまった。

「まあ、とりあえずバインバイン姉ちゃん起こすか、まんじゅう」

 リンリンリン。

 バインバイン姉ちゃんの体から煙が出る。

「……ん?なにこれ!?なんであたし縛られてんの!?ん!?ヤスダ!!あんたの仕業か!!一目見たときからろくでもないヤツだと思ってたよ!!」

 なんだこの女。お前がスパイだからだろ。

「30才越えてるからだよ。30すぎた女は、簀巻きにして床に転がしておくべしって家訓が、安田一族にはあるんだよ」

「なんだとう!!お前30すぎの女全員敵に回したからなっ!!ヤスダこらあっ、縄はずせえっ」

「ヤスダさんちょっと……なんなんですか?ここ一番で訳のわからない作り話する癖でもあるんですか?」

 アズマ君が妙なこと言い出した。
 無いよそんなの。最初の作り話はアズマ君の顔が怖すぎるからで、今の作り話はピュアな嫌がらせだよ。

「ヒデチヨっ!?助けてっ、そこのナヨナヨした男の首斬り落として!!」

 すごい怖いこと言い出した。
 俺はアズマ君から距離を取りながらぶっちゃける。

「あんた旦那人質に取られて、ムツキ王子のスパイやってるだろ」

「――!?」

 言葉にならないような顔で驚いてるわ。

名前    シラール・ザッハール ♀
年齢    32
職業    緑魔法使い
称号    緑炎
レベル   21
HP    117/117
MP    130/130

余談

ダメですね。
旦那の居場所がわかれば、クーデターなど気にせずに独断で助けに行きます。
こちらの仲間に引き込んでも、旦那を助けるために独断で動く可能性がかなり高いです。
こちらの情報を材料に、ムツキに取引を持ちかける可能性もかなり高いです。
この女ダメです。


 ……こりゃダメだな。ダメですって2回書いてあるし。

「次起きた時には、旦那さんも助けられてると思うから、えー、……おやすみなさい」

「はあ!?ちょっ、何を……」

 まんじゅうからいい匂いの煙が出て、バインバイン姉ちゃんを包み込む。

「ちょっとっ、ヤスダさん!?」

 アズマ君が驚いてる。

「なんかもう、クーデターとか気にせず旦那助けるために動いちゃうっぽいから、寝てもらった」

「……えー、よっぽど旦那さんが好きなんですね」
「んー、スパイ、んー、でも旦那さんの為なんですもんね。んんー」
「……シラール」

 アズマ君の仲間達もなんか煮え切らない感じだ。

「ウルトラ鑑定でそう出たの?」

「うん」

 スズキさんの疑問に、答えを返す。

「ウルトラ鑑定はウルトラだからね。大概のことわかっちまうんだ。まあ、このバインバイン姉ちゃんの旦那の居所もわかってるし、王都の仲間の人達にも監視して貰ってるんですよね?ピンタさん」

「はい、彼女の夫の居所はつかんで監視しています」

「アズマ君の滞在予定が一ヶ月だから、猶予一ヶ月だね。ピンタさんいける?」

「……一月あれば、準備が整うでしょう。大丈夫です」

 一ヶ月経っても、バインバイン姉ちゃん戻らないとムツキに怪しまれるからな。
 一ヶ月でムツキぼこぼこにする下地整えないとだめってことだ。

 よし、じゃあこれからどうするべ。
 アズマ君達は、安らかに寝てるバインバイン姉ちゃん見て、微妙な顔してるしな。

「……じゃあ、親睦を深めるために、桃太郎さんの電鉄会社経営すごろくゲーム、略して桃鉄やる?」

「え!?桃鉄あるんですか?」

 アズマ君が食いついた。


 そして、みんなで飯を食いながらの桃電大会をして、親睦を深めることになった。

「じゃあ三位の人にはオーガの棍棒、二位の人には風銀製の腕輪、一位の人には、無駄にレア度が高くて、意味のわからない位高価な男女逆転薬を差し上げます」

「――!?」

 アズマ君が明らかに男女逆転薬に食いついた。
 ちなみにアズマ君の仲間達も反応した。アズマ君の乙女問題には、彼女達も気づいていたらしい。まあ、仕草とか言葉使いとか、長いこと一緒にいて気づいたんだろう。

 そして俺のフォローにより、無事アズマ君優勝で桃鉄大会は幕を閉じた。
 大盛り上がりでした。

「ありがとうございます。ありがとうございます」

 アズマ君が泣きながら、お礼を言ってくる。

 どのタイミングで使うのかわからんが、すぐに使われたら、どうリアクションしたらいいかわからんから、すぐに使わないでくれたら嬉しいなあ。


 まあ、なんにせよアズマ君関連の問題は、これで一通り解決なり。
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