虹色のプレゼントボックス

紀道侑

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第一章 温室育ちのへっぽこ先生異世界に降臨せり

ダンジョン都市で市民を守るために戦うことになった。人を殴ったことすらないのに。

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「りょ、領主様!?何をなさるのですか!?」

 ムキムキ領主さんの息子の部下っぽい人が気絶した息子を魔物から守りながら、文句を言ってる。

「当たり前じゃ!!そこのバカ息子のせいでこうなっとるんだぞっ!!」

 ムキムキ領主さんはバッサバッサ魔物を両断しながら叫んでる。おお、無双ってやつだな。

 ピンタさんやパニニさんもバッサバッサ、ザックザックと魔物を処理中だ。
 ピンタさんがでかい蟻みたいな魔物が一辺に突っ込んできたのを盾でさばいて、燃えてる剣でスパッといったり、パニニさんは槍を振り回して複数の魔物を穴だらけにしてる。





 ビジュアルは熊の着ぐるみと、蛇の着ぐるみ着てるカワウソが大暴れしてるだけなんだが。

 それにしてもすごい数の魔物だ。
 数百どころか、下手すると数千匹位の色んな魔物がいる。
 蟻っぽいのだの鳥っぽいのだの蛇っぽいのだの様々だ。
 時おりなにやら格上っぽい虎みたいなやつとか一段階でかい蟻もいる。
 しかもダンジョンの入り口からどんどん出てくる。
 なぜか魔物はあまり町の方に行かずに、ほとんどこっちに向かってくる。一番近くにいる人間に向かってきやすいのかな。
 町の方にいった魔物はなにやら光の壁みたいのに阻まれてる。あれが結界か。
 あんまり町の方に行かないのは好都合だな。
 虎っぽいのとかちょっと鑑定してみよう。

魔物名  痺れ虎
危険度  C+
レベル  8
HP   56/56
MP    7/7

STR  21
AGI  28
VIT  12
INT   8
MND  15
DEX   7

装備
無し

所持スキル

爪レベル1
切り裂き、毒爪

痺れる牙

ドロップ
毛皮
痺れ牙

 おお、なんかゲーム序盤でちょっと手こずる魔物って感じ。

「しかし、なんという数だ」
「おのれ、ムツキ」
「低階層の魔物ばかりとはいえ、あまりに数が多いな」

 んん、さすがに領主さんやカワウソ達も辟易した顔になってる。戦い的にはまだまだ余裕っぽいけど。
 まあ、気持ち悪い位魔物いるしね。

 ちなみに俺は一切戦ってない。みんながすごい守ってくれる。俺の回りを囲んで戦う布陣になってる。
 だいぶ申し訳ない気持ち。
 一応誰か怪我しそうになったらいつでも出せるように、片手はポケットのなんちゃってブーメランを持ってる。
 もう片手にはまんじゅうを持ってる。
 つまり俺は、みんなに守って貰ってるにもかかわらず、片手ポケットに突っ込んでもう片手には白い宝箱持ってるっていう、すごい失礼なんだか宝箱が大事なんだか、ちょっとろくでなし感あふれる、意味のわからないポーズになってる。

 うーん、本来なら魔物全部ブーメランで一発なんだが。

 ……ダンジョンから出てくる魔物の数も少なくなった気がする。
 そろそろいいかな?

「まんじゅう、いけるか?」

 リンリンリンっ!!

 準備万端っ、のリンリンリンだ。
 ちなみにこれからやろうとしてるのはまんじゅうの闇魔法の下級召喚魔法だ。
 正確にはその契約。

スキル名 下級召喚魔法

発動条件及び説明

レベル10までの魔物を屈伏させて契約し、その魔物を使役する魔法。
レベルにより契約数の上限が増える。
現在の契約数 0/30000


 ていう魔法だ。なんと30000匹と契約できる。
 いまだに一度も契約をしてないから、使役できる魔物は0だ。
 一人軍隊になれるポテンシャルを秘めた空飛ぶ宝箱。それがまんじゅう。

「いけ、まんじゅうっ」

「わんわんわんわんわんわんっ!!!!!!」

 まんじゅうの威圧スキル、超越者の咆哮が発動する。
 相変わらず犬の鳴き声だが。レベル差がありまくりだからか、数千匹の魔物は一斉に痺れて動かなくなる。
 こうかは ばつぐんだ!

「お、おお、すさまじい」
「威圧スキルか、凄い」
「さすがまんじゅう殿」

 ムキムキ領主さんやカワウソ達が称賛してくれる。

「よしまんじゅう、契約だ」

 リンリンリン。

 まんじゅうの白い体がもっと白くなる。ていうかぴっかぴかに白く光りだす。
 んん!?
 魔物一匹一匹の頭上と足下に魔法陣みたいのが現れた。
 魔物達も体が白く光りだす。
 ん?なんか魔物の体が縮んできた?
 あ、明らかにちっちゃくなってる。
 ええ?なにこれどんどん小さくなる。
 てか小さくなりすぎじゃね。
 もうまんじゅうの15センチサイズなんだけど……
 まだまだ小さくなるわ。なんだこれもう2、3センチ位にまで小さくなった。小さくなるにつれてなんか可愛くデフォルメされてる。
 あ、縮むの止まったかな?
 最終的に2、3センチのサイズだわ。手のひらサイズどころじゃないわ消ゴムサイズだわ。

 ……はっ!?
 今度は魔物の上下に浮かんでる魔法陣が形を変えだした。
 おお、なんだこれ、ぐにゃんぐにゃんに形を変えてプラスチックっぽい質感になった。
 んん?魔物の足下の魔法陣だけなにやらカラフルだ。
 赤、緑、黄色、青、なぜか統一感がない。
 なんでだ、属性別とかそういうわくわくするあれなんだろうか?

 お、頭上と足下の魔法陣が、消ゴムサイズになった魔物達を包み込む。
 なにやら丸い形になった。

 ……ああ、なんか全貌が見えてきたわ。
 なんだかすっげえ見たことあるわこれ。





 これはあれだな。色んな呼び名があるけど今一みんな正式名称を知らないあれだ。百円入れてガシャッてしたら、ポンって出てくるやつ。
 ちっちゃいチラシも入ってるわ。なんでやねん。

 様々なカプセルが浮かび上がって、まんじゅうの口の異次元空間に吸い込まれていく。
 おお、どうなったかな?

名前   マンジュウ三世
年齢   0才
種類   王箱ミミック
称号   神のごとき箱

所持スキル

下級召喚魔法
5112/30000

上等兵蟻 3256
軍曹蟻  125
大尉蟻  25
針刺し鳥 1252
刃刺し鳥 154
草蛇   253
痺れ虎  52

 おお、なんか蟻とか鳥とか、ちょっと上位の奴っぽいのも居たらしい。
 まんじゅう一人軍隊完成だ。

「ゆ、勇者様、今のは?」

 ムキムキ領主さんが、度肝抜かれた顔で疑問を投げ掛けてきた。

「まんじゅうの下級召喚魔法ですね、契約して一辺に処理しました」

「あれだけの魔物と一辺に契約を?さすがまんじゅう殿ですな」
「さすがまんじゅう殿」
「まんじゅうちゃんすごいわねー」

「レベル70の宝箱ミミックとの話は本当だったのですね。脅し文句通り我が町で暴れられていたら、魔物の氾濫が無くとも壊滅でしたな」

「いやいや、そんな死ぬまで後悔し続けるようなこと絶対しませんよ」

 ムキムキ領主さんがこっちを見て、なにやらにやっとしてる。

「わかっておりますよ」

「そうです。先生は決してそんなことしませんよ」

 ピンタさんがフォローしてくれた。

「……んん、なんだ?一体なにがあった」

 あ、肝座ってる領主のムキムキ息子が起きた。


名前    マックスバリユ・ダンガンポート
年齢    38
職業    重剣士
称号    お前のせいで町全滅しかけたぞポンコツ者

レベル   15
HP    70/87
MP    13/13

STR    77
AGI    40+15
VIT    50
INT    18
MND    25
DEX    43

装備
空鉄の大剣
空鉄の胸当て
銀狼の小手

所持スキル

剣術レベル3

縦斬り、横斬り、十文字斬り、真空波

体術レベル1

正拳、回し蹴り


 あ、ムキムキ息子さん結構年いってたわ。
 まあ、ムキムキ領主さんも70越えてるからな。
 お爺さんの息子なんだからおじさんだわな。
 血の気の多い、てやんでえタイプのおじさんなんだろう。

 ていうか称号が……今さっき変わったばっかなんだろうなこれ。
 この人これからこの称号背負って生きてくの?つらたん。
 まあ、そのうち変わるだろう。俺も頻繁に変わるし。
 町の全滅は免れたし、過失だしな。

「……あれ?親父?、なにし」

 ボコーンっ!!!!!!!!

 ムキムキ息子は、鬼みたいな顔した無言のムキムキ領主さんに殴られてまた気絶した。
 容赦がない。教育方針に容赦がない。
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