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第六話

第六話 無限の形 その4

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 ニュートゥの要求に対し乙女ガミオンはきっぱりといった。

「断る!お前の要求に従うつもりはない!」

「ならば今すぐに分体を分解し、必要な情報を抜き取るまで!」

再び手に力をこめ始めるニュートゥ。
乙女ガミオンの体が皮膚に付着したマテリアルペーストと共にきしみ始める。
分体を共有するタケシも焦りはじめるが、今はガミオンを信じ、
言葉を発することなく状況を見守り続ける。

「くっ……あ、あまいなニュートゥ、私がこの分体からだに重要な情報を保持してると思うか?」

絞り出すように言ったガミオンに対しニュートゥが答える。

「ふん!なめるなよメガミオンよ。万が一ここで情報を得られなくともかまわん。
 多少時間は掛かろうともコクーン化した貴様の本体を探し出し、そこからタケシに辿り着けばいいだけの話だ」

ニュートゥは手にした乙女ガミオンに電流を流す。

「ぐわぁぁぁ!」

流れ込む高圧電流に苦しむ乙女ガミオン
現在、分体のコントロールをガミオンに譲っているタケシに苦痛はない。
だが、苦しむガミオンを見ていられなくなったタケシが叫んだ。

「ガミオン!もう僕の事はいい!ニュートゥの要求に従うんだ!このままじゃ君自身が……」

だがガミオンは脳内に響くタケシの言葉に答えることはしなかった。

ニュートゥは一旦電撃を止め、再びガミオンに問う。

「最後の警告だ。次は容赦しない……さあ答えろ!!メガミオン!」

叩きつけられた最後通告に対しガミオンが答え始める。

「わ……私の答えは変わらないが、最後にひとつだけ、言っておくことがある」

「?」

「ニュートゥよ、先程お前は私を追い立てたといっていたな。だがそれは間違いだ」

「なんだと?」

「私はお前に追い立てられていたのではない……時間稼ぎをしてたのだ!」

乙女ガミオンが叫んだ途端、周囲の建物の影から、巨大な円盤状の物体が飛び出した。

「んな!?」

突如背後に現れた物体にタオが驚き振り返るも、
宙を舞った円盤は勢いを上げ、タオとニュートゥに激突する。

「なに!?」

「うおおおお!?」

円盤は激しい金属音と火花をちらしタオとニュートゥを諸共に弾き飛ばす。
大地を削りながら倒れるタオとニュートゥ。
反動で弾き上げられ、回転しながら地面に落下する円盤。
円盤はその勢いのまま全壊した校舎の方へと転がっていき、倒れているタイタンマンの傍らに倒れこんだ。
巻き上がった粉塵の中、
横たわった円盤の隙間からはタイタンメイデン・ガミオンの右腕が伸び、拳を高々と掲げていた。
そう、巨大な円盤、それはガミオンのコクーンであったのだ。

倒れたニュートゥが顔を上げ、コクーンを目にして叫ぶ。

「コ、コクーンを呼び寄せた、だと!?」

続いてタオが顔を上げ、コクーンに向かって言った。

「はぁ!?愚かか!てめーは?コクーン状態でノコノコとやってきやがって!そんなに倒されてーのか!」

そう叫んだが、コクーン状態でありながらもあえてこの場に現れたのは何か策があるに違いない。
そう思ったタオは慎重に立ち上がる。

「しまった!奴を止めろ!!タオ!!」

だが、先に立ち上がったニュートゥが叫び、コクーンに向かって走り出す。
またしても先行するニュートの行動に困惑するタオ。

「え!?なんだ、どうした!?」

タオが状況を呑み込めない間にコクーンに動きが生じた。

コクーンの隙間から掲げられたガミオンの拳が一瞬振動した後、ゆっくりと開かれる。
そこにはニュートゥにつかまっていたはずの乙女ガミオンの姿があった。
開かれた手のひらに乗った乙女ガミオンが立ち上がると、体に付着したマテリアルペーストが塵となって風に散っていく。

先程のダメージを微塵も感じさせぬ分体の様子にタケシが感嘆し声を上げた。

「関節が治ってる!?」

「説明は後だ、タケシ。さあ、反撃するぞ!!」

「で、でもこの状況、どうやって……」

「こうやってだ!」

ガミオンの叫びと同時にコクーンの隙間からガミオン本体の左腕が伸び出で、
タイタンマンの体を拘束する大蛇のような物体に触れた。




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