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第四話

ピュエラ・エクス・マキナ その5

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 一方その頃、
此処、千葉県某所のラブホテルの一室では、二人の女がベッドに腰掛けて何やら作業していた。
体にぴったりとフィットした黒いスーツにしわが寄るのも構わず、ベッドの上で胡坐をかき、
足の間に丸い物体を挟んで弄り回している長髪の女に、黒いスーツをラフに着崩した短髪でボーイッシュな女が話しかける。

「なあ、ニュートゥ?」

ベッドの上で作業する女、それはタイタンメイデン・ニュートゥの分体であった。
ニュートゥは丸い物体から目を離さずに答える。

「なんだ?タオ?」

タイタンメイデン・タオの分体である短髪の女が、丸い物体を指し示しながら問う。

「さっきからドローンばっかりいじって何やってんだ?」

「行動に移す前に、まずは人間のデータベース等を探ろうと思ってな。
 その為にドローンに疑似人格を与えて人間のふりをさせるんだ」

「はぁ?なんでそんな回りくどいやり方すんだ?直接つないじまえば一瞬ですむじゃねーか?」

「敵が網を張っている可能性もあるからな。
 その場合、我らが直接コネクトすれば一瞬でバレてしまう。
 少しでもこちらの痕跡を残さない為には、
 ドローンを介し人間のやり方をトレースさせるのが一番だろう。
 ヨミが言うところの『最短の道を行くには最長の準備を』ってやつだ」

「そんなもんかね」

「そんなもんだ」

タオがだるそうな表情でテレビのスイッチを入れるとモニターからは女性の喘ぎ声が響いた。
リモコンをかざしたタオがどの動画を選択しても聞こえる音は女性の喘ぎ声ばかり。
映る映像はどれも男女が性交している場面。
そう、表示される映像は全て成人向けのアダルトビデオだったのだ。

「なんだこりゃ?どの動画も人間が交尾してる映像しか映んねーぞ?」

困惑するタオが発した声に、ニュートゥが作業の手を止めずに答える。

「ふむ?ここは『ラブホテル』といって人間のつがいが生殖行為を行う為に使う施設らしい。
 その映像は生殖知識の浅い個体に対してのサンプル映像の類なのかもしれん」

「へえ~」

「あくまでも私の予想に過ぎないから断言はできんぞ」

「あ!それならよ~、男女つがいでなく女二人でここに入ったのはマズったんじゃないか?
 なにか怪しまれているかもしれないぜ?」

「いや、その心配はない。
 人間は生殖行為を『お互いの愛情や信頼関係を確かめる』為に行うこともあるらしい。
 その際、お互いの性別は関係ないそうだ」

「へえ~、人間の生態はよくわからんな。まぁ、どうでもいいか……」

「それにお前の分体は見ようによっては『イケメン』とかいう種類の男にも見えるから、より安心だ」

「はぁ、怪我の功名ってやつかねぇ?」

勢いよくベッドに仰向けに転がったタオ。
暫く沈黙が続いた後、何やら思いついたタオがぽつりとつぶやく。

「なあ、ニュートゥよ~」

「なんだ?」

「俺たちもやってみない?」

「何をだ?」

「その『信頼関係を確かめる行為』ってヤツ!」

「いや、その必要はないな」

「なんでよ?」

ニュートゥは作業の手を止め、タオの目をじっと見つめて言う。

「われらの信頼関係はあらためて確かめるまでもないだろう?」

「おお!うれしいこと言ってくれるじゃないの~!」

抱き着こうとするタオの手をニュートゥが軽くひねると、タオは猫のようにコロンとベッドに横になる。

「あらら……」

ベッドで大の字に転がるタオを見下ろすニュートゥ。

「だが、お前が望むなら、そのうち相手をしてやる」

「そう来なくっちゃ!」

タオは準備万端とばかりに腕を広げたが、ニュートゥはそれを無視して手元に視線を戻す。

「しかし今はこちらの作業が優先だ。その間、お前はその映像で
 『人間の生殖および愛情、信頼を確認する行為』に対する知識でも増やすといい」

「まあ、しゃーないか……んじゃ、そうするわ」

そう言った後、
ニュートゥは再びドローンの調整作業に戻り、タオも再びアダルトビデオ鑑賞にと戻るのであった。




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