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第三話
第三話 光明院ケイはこういった その6
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「ね、ねぇ!ケイ!待ってよ!」
ルイが声をかけるとケイは突然足を止め、キョロキョロと周りを見回しながら呟いた。
「……見失った?」
しかしケイは諦めようとせず、道を確認しながら、直観を頼りに小走りに走り出す。
慌ててついて走るルイ。
走りながら竜胆ルイは肩で息をしつつ、先を走る光明院ケイに問い掛ける。
「本当にあの子達だった?見間違いじゃないの?」
ケイもまた止まることなくそれに答えた。
「間違いなくあの子達だった……見間違いなんかじゃないよ。確かに森の中から出てきたんだ」
「いや、そこまで言うなら確かなんだろうけど、そんな必死に後をつけていく必要、ある?」
ケイはあの少女達が森の上空を舞っていたのを目撃したことをルイには伝えてはいなかった。
自分は確かに目撃した確信があったが、さすがにそれを話せば否定されるだけだと思ったからだ。
そうとは知らないルイが当然の疑問を口にすると、ケイが少し考えてから答えた。
「……私の名前を知ってた」
「え?」
「意識を取り戻した時、確かに言ったんだ『ありがとう光明院ケイ』って」
「それは……私たちの会話を聞いていて、それで知った、とかじゃないの?」
「心肺停止状態だったのに?
私たちはあの子が意識を取り戻してから名前を呼び合ってはいない、だとしたら……」
「ちょい待ち!ケイ!あそこ!」
ルイが指さす先に追っていた少女がいるのを確認すると、
ケイとルイは頷きあい、改めてその後をつけ始める。
だが、暫くすると少女達はケイの見覚えがある二階建ての家の前で立ち止まった。
二人に気づかれないように物陰に身を潜めるケイとルイ。
「って、あの家!?」
「うん……」
驚くルイに対しケイが頷きながら答える。
「あれは只野タケシ君の家だ!」
只野タケシの家の前で鈴鹿キョーコが乙女に問いかける。
「やっぱ気になる?」
「へ?」
「ご両親の様子、気になるんでしょ?わざわざ様子を見に来るぐらいだし」
「いや、そういう訳じゃ……」
「何恥ずかしがってんのよ?家族の様子が気になる、なんて普通の感情じゃん」
「いや、恥ずかしがってるわけじゃなくて、
通販で頼んでたフィギュ……商品がそろそろ発送されてる頃なんで、家に届いているかなぁ、と」
「そっちかい!!」
「いや、他にも、ほら……そう携帯!の充電器とかその他もろもろを取ってこなくちゃって」
「ふーん」
キョーコがジト目で乙女を見る。
「で?どーやって取ってくんの?」
「二階の窓から直接侵入して……」
「鍵は?」
「多分掛けてないまま、だと思う」
「掛かってたら?」
「問題ない」
乙女の口を通しガミオンが会話に割って入る。
「ガミオン?」
「地球上のロック機構なら分体の機能で全て開けることが出来る」
「くっろ!またもや真っ黒な発言やん!ガミオン!」
「ま、まあ、僕の部屋ですし『本人の許可済み』ということで……」
乙女はガミオンの発言にドン引きするキョーコに取り繕いながら、二階の窓を仰ぎ見た。
「と、取り敢えず人目がないうちに行ってきます!」
そう言うなり、乙女は二階に向かってジャンプすると
猫のようなしなやかさで、物音ひとつ立てずにフワリと一階の瓦屋根に取りつき窓を開ける。
キョーコが見上げる中、部屋の中へと体を滑り込ませた乙女は
一分もしないうちに紙袋を手に持ち、二階の窓から再び音もなく飛び降りた。
「終わったよ」
「んで、頼んだフィギュアは届いていたの?」
「お……う、うん一応……」
「んで、フィギュアも持ってきた、と?」
「いやいやいや、流石にそれは……
箱周りを確認しただけに留めて、生活必需品のみにしておきました」
「うむ、よろしい」
キョーコの追及をかわし、そそくさとその場から立ち去ろうとする乙女。
「じゃあ、人目につく前にこの場を……あ!!」
「え!?何!?どしたん?」
キョドるキョーコの後ろを指差し乙女が声を上げた。
「ケ……ケイ君!?」
驚く乙女の目に飛び込んできたのは、光明院ケイとその友人、竜胆ルイの姿であった。
いつの間にかキョーコの背後ににじり寄っていたケイは
乙女が怯んだ一瞬にキョーコの脇をするりと抜けて、
乙女の腕をガッチリと掴むと、じっとその目を見据えて呟く。
「ケイくん?」
「ちょ、うぇ?い、いつの間に!?」
驚き、飛び上がるキョーコ。
反射的に腕を払い除ける乙女。
だがその腕を、執拗につかもうとするケイ。
しかし乙女もまた掴ませまいと腕を払う。
次々と繰り出すケイの腕を的確にさばき続ける乙女の腕。
まるで功夫映画のようなその様にキョーコとルイは思わず同時に歓声を上げてしまうのだった。
「「おお~~~!!」」
「……じゃなくて、ケイ!」
ルイが叫ぶと同時に乙女に向かって何かを投げつけると、
それに反応した乙女はすかさずそれをはっしと掴む。
「こ、これは(ストラップの)人形!?」
乙女の視線が掴んだストラップにそれたその瞬間を見逃さずに、
ケイは乙女の腕を掴むと、さらに引き寄せてガシっと脇に抱え込む。
「ちょ、ちょっと待って!む、胸!あ、あ、当たってる!」
腕から伝わるケイの胸の柔らかな感触に顔を赤らめて戸惑う乙女。
ケイはさらにもう一本の腕を取ると、乙女を後ろ手に拘束し、
しっかりと離さずに、冷静さを装いつつ問いかけてきた。
「……君、いまタケシ君の部屋に忍び込んでいましたよね?」
言葉から伝わるケイの威圧に乙女が身震いする。
「ケイ!どうする?警察に突き出す?警察に突き出す?警察に突き出そう!」
ルイが携帯を手に持ち、すぐにでも110番出来るようにする。
慌てるキョーコと乙女。
「いや!?待って!誤解!大いなる誤解だから!!」
言い訳する乙女に対し、ケイは腕に力を込め、さらに問い詰める。
「まずは詳しく……話を聞かせてください……僕は今、冷静さを欠こうとしています……!」
ルイが声をかけるとケイは突然足を止め、キョロキョロと周りを見回しながら呟いた。
「……見失った?」
しかしケイは諦めようとせず、道を確認しながら、直観を頼りに小走りに走り出す。
慌ててついて走るルイ。
走りながら竜胆ルイは肩で息をしつつ、先を走る光明院ケイに問い掛ける。
「本当にあの子達だった?見間違いじゃないの?」
ケイもまた止まることなくそれに答えた。
「間違いなくあの子達だった……見間違いなんかじゃないよ。確かに森の中から出てきたんだ」
「いや、そこまで言うなら確かなんだろうけど、そんな必死に後をつけていく必要、ある?」
ケイはあの少女達が森の上空を舞っていたのを目撃したことをルイには伝えてはいなかった。
自分は確かに目撃した確信があったが、さすがにそれを話せば否定されるだけだと思ったからだ。
そうとは知らないルイが当然の疑問を口にすると、ケイが少し考えてから答えた。
「……私の名前を知ってた」
「え?」
「意識を取り戻した時、確かに言ったんだ『ありがとう光明院ケイ』って」
「それは……私たちの会話を聞いていて、それで知った、とかじゃないの?」
「心肺停止状態だったのに?
私たちはあの子が意識を取り戻してから名前を呼び合ってはいない、だとしたら……」
「ちょい待ち!ケイ!あそこ!」
ルイが指さす先に追っていた少女がいるのを確認すると、
ケイとルイは頷きあい、改めてその後をつけ始める。
だが、暫くすると少女達はケイの見覚えがある二階建ての家の前で立ち止まった。
二人に気づかれないように物陰に身を潜めるケイとルイ。
「って、あの家!?」
「うん……」
驚くルイに対しケイが頷きながら答える。
「あれは只野タケシ君の家だ!」
只野タケシの家の前で鈴鹿キョーコが乙女に問いかける。
「やっぱ気になる?」
「へ?」
「ご両親の様子、気になるんでしょ?わざわざ様子を見に来るぐらいだし」
「いや、そういう訳じゃ……」
「何恥ずかしがってんのよ?家族の様子が気になる、なんて普通の感情じゃん」
「いや、恥ずかしがってるわけじゃなくて、
通販で頼んでたフィギュ……商品がそろそろ発送されてる頃なんで、家に届いているかなぁ、と」
「そっちかい!!」
「いや、他にも、ほら……そう携帯!の充電器とかその他もろもろを取ってこなくちゃって」
「ふーん」
キョーコがジト目で乙女を見る。
「で?どーやって取ってくんの?」
「二階の窓から直接侵入して……」
「鍵は?」
「多分掛けてないまま、だと思う」
「掛かってたら?」
「問題ない」
乙女の口を通しガミオンが会話に割って入る。
「ガミオン?」
「地球上のロック機構なら分体の機能で全て開けることが出来る」
「くっろ!またもや真っ黒な発言やん!ガミオン!」
「ま、まあ、僕の部屋ですし『本人の許可済み』ということで……」
乙女はガミオンの発言にドン引きするキョーコに取り繕いながら、二階の窓を仰ぎ見た。
「と、取り敢えず人目がないうちに行ってきます!」
そう言うなり、乙女は二階に向かってジャンプすると
猫のようなしなやかさで、物音ひとつ立てずにフワリと一階の瓦屋根に取りつき窓を開ける。
キョーコが見上げる中、部屋の中へと体を滑り込ませた乙女は
一分もしないうちに紙袋を手に持ち、二階の窓から再び音もなく飛び降りた。
「終わったよ」
「んで、頼んだフィギュアは届いていたの?」
「お……う、うん一応……」
「んで、フィギュアも持ってきた、と?」
「いやいやいや、流石にそれは……
箱周りを確認しただけに留めて、生活必需品のみにしておきました」
「うむ、よろしい」
キョーコの追及をかわし、そそくさとその場から立ち去ろうとする乙女。
「じゃあ、人目につく前にこの場を……あ!!」
「え!?何!?どしたん?」
キョドるキョーコの後ろを指差し乙女が声を上げた。
「ケ……ケイ君!?」
驚く乙女の目に飛び込んできたのは、光明院ケイとその友人、竜胆ルイの姿であった。
いつの間にかキョーコの背後ににじり寄っていたケイは
乙女が怯んだ一瞬にキョーコの脇をするりと抜けて、
乙女の腕をガッチリと掴むと、じっとその目を見据えて呟く。
「ケイくん?」
「ちょ、うぇ?い、いつの間に!?」
驚き、飛び上がるキョーコ。
反射的に腕を払い除ける乙女。
だがその腕を、執拗につかもうとするケイ。
しかし乙女もまた掴ませまいと腕を払う。
次々と繰り出すケイの腕を的確にさばき続ける乙女の腕。
まるで功夫映画のようなその様にキョーコとルイは思わず同時に歓声を上げてしまうのだった。
「「おお~~~!!」」
「……じゃなくて、ケイ!」
ルイが叫ぶと同時に乙女に向かって何かを投げつけると、
それに反応した乙女はすかさずそれをはっしと掴む。
「こ、これは(ストラップの)人形!?」
乙女の視線が掴んだストラップにそれたその瞬間を見逃さずに、
ケイは乙女の腕を掴むと、さらに引き寄せてガシっと脇に抱え込む。
「ちょ、ちょっと待って!む、胸!あ、あ、当たってる!」
腕から伝わるケイの胸の柔らかな感触に顔を赤らめて戸惑う乙女。
ケイはさらにもう一本の腕を取ると、乙女を後ろ手に拘束し、
しっかりと離さずに、冷静さを装いつつ問いかけてきた。
「……君、いまタケシ君の部屋に忍び込んでいましたよね?」
言葉から伝わるケイの威圧に乙女が身震いする。
「ケイ!どうする?警察に突き出す?警察に突き出す?警察に突き出そう!」
ルイが携帯を手に持ち、すぐにでも110番出来るようにする。
慌てるキョーコと乙女。
「いや!?待って!誤解!大いなる誤解だから!!」
言い訳する乙女に対し、ケイは腕に力を込め、さらに問い詰める。
「まずは詳しく……話を聞かせてください……僕は今、冷静さを欠こうとしています……!」
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