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第三話

第三話 光明院ケイはこういった その5

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 此処は太平洋上に浮かぶ小島。
地図にも載っていない名も無きその島の砂浜に、ひとりの少女がいた。
年の頃は10歳ほどであろうか、その少女は黄色いビキニを身につけているが
凹凸のない幼い身体にはイマイチ似合ってはいなかった。
人の気配の全くない砂浜の中央で、長めのビーチチェアに寝そべりながら青い飲料の注がれたグラスを片手にした少女の横にはキャンバスを乗せたイーゼルが設置されている。
少女がつけているこれまたアンバランスな大きさのサングラスのメタリックレンズが、眩しい日差しに反射する。

突如、静けさを破り、海の中から二体の巨人が姿を現した。
それはガミオンと死闘を繰り広げたタイタンメイデンのダイン、タオの二人。
打ち付ける波をかき分けながら砂浜へと上陸する二体のタイタンメイデンの巨体が日の光が照らし、
輝く金属の体表をさらに輝かせる。

少女のサングラスにその姿が映り込むと、
少女は立ち上がりイーゼルの前に立ち、キャンバスに筆を走らせ『ウー』とサインを入れた。

意識を失いピクリともしないニュートゥを腕に抱いたダインが慎重に歩を進め少女の前へとやって来ると、
少女は笑顔でダインを見上げ声をかける。

「おかえりなさい!ダイン!」

「ただいま、ウー」

「ほら!コレ!」

優しげな微笑みを浮かべて少女を見下ろすダインに向けて少女が掲げたキャンバスには
拙い筆使いでダインの顔が描かれていた。

「へへぇ~、りきさく!ダインにプレゼント!」

「ほう、君の書いた『絵』か、興味深い。ありがとうウー」

しかし、言葉とは裏腹に表情の冴えないダイン。
かかえられたニュートゥをまじまじと見つめながらウーが疑問を口にする。

「ニュートゥはどうしたの?眠っているの?」

少し不安げなウーに心配をかけまいと平静を装うダイン。

「ああ、少し疲れているみたいでな。先に中に連れて行き休ませてあげたいんだが、いいかい?」

ダインはウーの返事を待たずに、少し離れて後ろにいるタオを呼ぶ。

「タオ!ウーの相手をしてやってくれ」

タオは頷くと腰を落とし、ウーに語りかける。

「ダインママはちょっと忙しいんだとさ。
 代わりにこの俺、タオ様が相手してやっからありがたく思え。
 どれ、ちょっと俺にも見せてみ?」

タオが言いながらウーの持つキャンバスを器用につまみあげる。

「これがダイン?へったくそだな~」

タオの言葉にウーが機嫌を損ねてムッとするが、タオは気にするそぶりも見せない。

「んで、オレのは?」

図々しくも自分の分を要求するタオに向かってウーは舌を出して言った。

「べーっだ!あるわけないじゃん!」

「またまた、そんなこと言ってホントはあるんだろ?」

「ないもん!」

「うそ!?マジで!?」

大げさにがっかりしてみせるタオに向かってウーがニカッと笑って答える。

「うっそ~!ホントはタオのもありま~す!勿論ニュートゥのも~!」

「そうこなくっちゃ!」

そんな二人のやり取りを耳にしながらながらダインは歩を進め崖の前へとやって来る。
すると崖の壁面の一部が音もなくスライドし始め、巨大なタイタンメイデンも余裕で通れるほどの空間が開かれた。
ダインが金属の光沢を持つその空間に入ると崖の壁面は開いた時と同じように音もなく閉じていく。
そこはエレベーターのような物であったのだろうか、
しばらくすると今度は目の前の壁がスライドして開き、ダインはそこから広く開けた空間へと歩き出る。
心做しか足早に進んでいくダインがいくつかのドアをくぐり抜けていく。
最後に最初の入った空間と同じぐらいの開けた部屋へと足を踏み入れたた時、ダインは声を上げた。

「闘士マカラダイン、只今帰還した」

ダインの声に反応し、周囲の壁が万華鏡のようにゆっくりと展開していくと
中から様々な機械部品が取り付けられたシートが現れる。
そしてそこには、威風堂々とした風格の、細身で漆黒のボディーを持つ新たなタイタンメイデンが腰掛けていた。
黄金の装甲を散りばめた頭部から幾重にも伸びた器官がシートと一部融合し、まるで一個の生命体のようにも感じられるタイタンメイデン、その名はヨミ。

「すまない、ヨミ。私の判断ミスで積荷の一部が奪われてしまった」

ヨミは手をかざしてダインの言葉を遮る。
するとダインの横の床がせり出し、タイタンメイデン一人が横たわれるほどの台座が形作られる。
ダインがその台座へニュートゥを横たえると、ヨミは透き通るような優しさを感じる声で言った。

「マカラダイン、報告は後でよろしい。今はニュートゥの治療を最優先でおこないましょう」

ヨミの言葉が終わる前に、台座を中心とした床からは有機的な機械が次々と伸びいで
瞬く間にニュートゥの体を覆っていった。


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