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第二話
第二話 パラダイム・シフト その10
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「ちょ、ちょっと?!なにしてんの?いきなり……」
突然の出来事に鈴鹿キョーコが声を上げる。
神社に設置されたベンチに二人ならんで腰掛け、一休みしていたキョーコと乙女であったが
いきなり乙女がしなだれかかってきた為、キョーコは驚いて声を上げてしまったのだ。
「こ、こ、こんな、まだ、真昼間だってのに、ちょっと、ひと目も多いのに……」
突然のアプローチにどぎまぎと戸惑うキョーコだったが
直ぐに我に返り顔を赤らめつつ乙女を睨む。
「じゃなくて!チョーシにのんなっつーの!」
意外と満更でもない面持ちも醸し出しつつも、キョーコが肩に寄りかかる乙女の頭を軽く叩くと、
乙女の体がぐらりと揺れ,
前のめりに倒れこんだ。
「え?」
力なく地面に倒れた乙女を見て慌てふためいくキョーコ。
「ちょ?!ちょっと?!タケシ、どうしたの?!」
キョーコは急いで乙女の上半身を抱き起こす。
「ねえ!タケシ!タケシったら!」
虚ろな表情で、ピクリともしない乙女。
瞬間、キョーコの脳裏に様々な思いがよぎる。
いきなりなんで?分体の故障?
タケシはどうしたの!?大丈夫なの!?
「タケシ!タケシ!」
呼びかけても一向に反応がなく、
まるで魂が抜けてしまったかのような乙女を見てキョーコは直感する。
「そういえばタケシとガミオンは一心同体も同然だって言ってた……
ってことは、今、ガミオンの身になにか起きてるのかも?!」
その様子に周囲の人がざわつき集まり始める。
どうしよう……どうしよう……
乙女の有様に加え、さらに周囲の人の目にキョーコがますます混乱していると
人をかき分け、一人の少女が走り寄ってきた。
「大丈夫ですか!?ちょっと失礼します!」
光明院女学院の制服を着たその少女は、乙女の様子を一目見るなり跪き、
脈や呼吸を確認し始めた。
先程までの激戦が嘘のように静まり返った海底では、
ガミオン・ケンタウロスを囲み、タイタンメイデン達が静かに佇んでいた。
「イテテテ……ガミオンだけじゃなくお前まで乱暴に扱いやがって」
変形を解いたタオがダインの手を借り、立ち上がりながら愚痴をこぼす。
「すまんな、タオ。だが、ご苦労だった、お前のおかげでニュートゥの作戦がうまくいった」
「へへへへ、だろっ?」
「メガミオンはもはや戦うどころか自分の意志で動くことも出来ぬわ」
得意げな表情で、ダインに寄りかかりながら自分の足を弄りまわし、ダメージの有無を確認するタオ。
バランスを崩したタオがガミオン・ケンタウロスにぶつかりそうになるがダインが支える。
「おっと!気をつけろ!今、ニュートゥはメガミオンと同調している、
少しの衝撃さえ精神に影響する可能性があるからな」
「お、おう。わりぃわりぃ」
ダインとタオがガミオン・ケンタウロスを見上げる。
意識を失ったかのように立ち尽くすガミオンは無表情に虚空を見つめ、動く気配がない。
その背中に張り付くニュートゥも同じように無表情でガミオンの頭部に食らいついていた。
頭部に差し込まれた赤い舌に光が走り続け、ガミオンが小刻みに痙攣する。
ニュートゥは舌を通じ、ガミオンの脳にアクセスしてその記憶をのぞき見ようと試みていたが
ガミオンの強固な意志に阻まれその記憶を覗くことが出来ないでいた。
なんという精神力だ、ここまでされてもなお守りたい秘密があるということか。
仕方ない、少々遠回りだが、まずはメガミオンの意思そのものを塗り替えてやる。
ニュートゥの目が妖しく光る。
するとガミオンが激しく痙攣し始める。
「しかし、コイツは結構やばい方法なんじゃないのか?」
ニュートゥを見守るタオの問いかけにダインが答える。
「ああ、危険すぎて、本来は戦場で行うような行為ではないが、
ニュートゥもそれだけ本気だということだろう。
ならば、我々はニュートゥを信じて、ただ待つしかあるまい」
そう言いながらも、ダインの表情が硬くなった。
そして、タオも同じようにニュートゥを見上げ、静かに見守るのだった。
少し立ちくらみを覚え、こめかみを抑えたタケシが意識を取り戻すと
自分が神社の境内ではなく、機械的な小部屋にいることに気づいた。
「こ……ここは、ガミオンの?」
分体とのリンクが切れ、ガミオン内に保護されている自分の本体へ精神が戻されたことを理解するタケシ。
「タ……タケシ、君が何故、意識を?
そ、そうか、今の攻撃の影響で、リンクが切れてしまったのか」
「ガミオン?!どうしたの?なにがあったの?!」
問いかけるタケシの脳内にガミオンの答えが映像となって直接流れ込む。
タオの挑発、ダインとの決闘、
『あの力』を使うことが出来ないガミオン、加えてニュートゥの策略、
そしてついに喫した敗北。
流れ込んだ映像とタケシの目とガミオンの視線が重なる。
そして今、タケシはガミオンが置かれている状況を一瞬で理解した。
「こんな……ひどい、脳を弄るなんて」
「あの力さえ使えれば勝利は容易かっただろう、
だが、どうやらあの力はタケシ、君と私の精神が一緒でなければ使えないらしい」
「ガミオン!なら、なんで直ぐに僕を呼ばなかったんだ?!」
「それは……君の本体に負担がかかる可能性があったからだ。
いまだ単体での生命維持活動不能状態の君に頻繁に意識を戻すことを繰り返せば、
なにか不都合が起こる可能性がないとは言い切れなかった」
「そんなこと気にしてる場合じゃないだろ!僕だって覚悟は出来ている!
君と僕とは運命共同体なんだから!」
「それだけではない。私は、そんな風に君を便利な道具のように使うのが嫌だった。
ブラブーバとの戦いの時は不可抗力だったが、むやみに君の意思を呼び戻すことはしたくなかったんだ」
「ガミオン……」
「すまない、タケシ、もう時間がない。
これより生成機を分離、従者に託し、君を安全な場所まで避難させる」
「なにいってるんだ?!今、ここに僕がいる!なら、あの力だってつかえるはずだ!!」
「残念ながらそれは無理だ……今、私の意思は70%敵に侵食されている……
あの力どころか……動くのも……こうして君と会話するのも……困難になってきた……」
「意識を乗っ取られれば、記憶も奪われる……だが、敵にこれ以上、情報を渡すことはできない……
わたしは……まだ……意識あるうちに……自分の頭部を、完全に破壊する」
「ガミオン?!」
ガミオンの腕が動きボウガンを強く握り締める。
「72%……78%……お別れだ、タケシ、最後に君と話せてよかった……」
「駄目だ!まだ何か方法があるはずだ!」
考えを巡らすタケシ。
ガミオンも、僕も二人で助かる方法……何かないのか?何か……
その時、苦悩するタケシの脳裏に閃光のようにあるヒラメキが舞い降りる。
「ある!ガミオンと僕、二人が助かる方法がッ!」
突然の出来事に鈴鹿キョーコが声を上げる。
神社に設置されたベンチに二人ならんで腰掛け、一休みしていたキョーコと乙女であったが
いきなり乙女がしなだれかかってきた為、キョーコは驚いて声を上げてしまったのだ。
「こ、こ、こんな、まだ、真昼間だってのに、ちょっと、ひと目も多いのに……」
突然のアプローチにどぎまぎと戸惑うキョーコだったが
直ぐに我に返り顔を赤らめつつ乙女を睨む。
「じゃなくて!チョーシにのんなっつーの!」
意外と満更でもない面持ちも醸し出しつつも、キョーコが肩に寄りかかる乙女の頭を軽く叩くと、
乙女の体がぐらりと揺れ,
前のめりに倒れこんだ。
「え?」
力なく地面に倒れた乙女を見て慌てふためいくキョーコ。
「ちょ?!ちょっと?!タケシ、どうしたの?!」
キョーコは急いで乙女の上半身を抱き起こす。
「ねえ!タケシ!タケシったら!」
虚ろな表情で、ピクリともしない乙女。
瞬間、キョーコの脳裏に様々な思いがよぎる。
いきなりなんで?分体の故障?
タケシはどうしたの!?大丈夫なの!?
「タケシ!タケシ!」
呼びかけても一向に反応がなく、
まるで魂が抜けてしまったかのような乙女を見てキョーコは直感する。
「そういえばタケシとガミオンは一心同体も同然だって言ってた……
ってことは、今、ガミオンの身になにか起きてるのかも?!」
その様子に周囲の人がざわつき集まり始める。
どうしよう……どうしよう……
乙女の有様に加え、さらに周囲の人の目にキョーコがますます混乱していると
人をかき分け、一人の少女が走り寄ってきた。
「大丈夫ですか!?ちょっと失礼します!」
光明院女学院の制服を着たその少女は、乙女の様子を一目見るなり跪き、
脈や呼吸を確認し始めた。
先程までの激戦が嘘のように静まり返った海底では、
ガミオン・ケンタウロスを囲み、タイタンメイデン達が静かに佇んでいた。
「イテテテ……ガミオンだけじゃなくお前まで乱暴に扱いやがって」
変形を解いたタオがダインの手を借り、立ち上がりながら愚痴をこぼす。
「すまんな、タオ。だが、ご苦労だった、お前のおかげでニュートゥの作戦がうまくいった」
「へへへへ、だろっ?」
「メガミオンはもはや戦うどころか自分の意志で動くことも出来ぬわ」
得意げな表情で、ダインに寄りかかりながら自分の足を弄りまわし、ダメージの有無を確認するタオ。
バランスを崩したタオがガミオン・ケンタウロスにぶつかりそうになるがダインが支える。
「おっと!気をつけろ!今、ニュートゥはメガミオンと同調している、
少しの衝撃さえ精神に影響する可能性があるからな」
「お、おう。わりぃわりぃ」
ダインとタオがガミオン・ケンタウロスを見上げる。
意識を失ったかのように立ち尽くすガミオンは無表情に虚空を見つめ、動く気配がない。
その背中に張り付くニュートゥも同じように無表情でガミオンの頭部に食らいついていた。
頭部に差し込まれた赤い舌に光が走り続け、ガミオンが小刻みに痙攣する。
ニュートゥは舌を通じ、ガミオンの脳にアクセスしてその記憶をのぞき見ようと試みていたが
ガミオンの強固な意志に阻まれその記憶を覗くことが出来ないでいた。
なんという精神力だ、ここまでされてもなお守りたい秘密があるということか。
仕方ない、少々遠回りだが、まずはメガミオンの意思そのものを塗り替えてやる。
ニュートゥの目が妖しく光る。
するとガミオンが激しく痙攣し始める。
「しかし、コイツは結構やばい方法なんじゃないのか?」
ニュートゥを見守るタオの問いかけにダインが答える。
「ああ、危険すぎて、本来は戦場で行うような行為ではないが、
ニュートゥもそれだけ本気だということだろう。
ならば、我々はニュートゥを信じて、ただ待つしかあるまい」
そう言いながらも、ダインの表情が硬くなった。
そして、タオも同じようにニュートゥを見上げ、静かに見守るのだった。
少し立ちくらみを覚え、こめかみを抑えたタケシが意識を取り戻すと
自分が神社の境内ではなく、機械的な小部屋にいることに気づいた。
「こ……ここは、ガミオンの?」
分体とのリンクが切れ、ガミオン内に保護されている自分の本体へ精神が戻されたことを理解するタケシ。
「タ……タケシ、君が何故、意識を?
そ、そうか、今の攻撃の影響で、リンクが切れてしまったのか」
「ガミオン?!どうしたの?なにがあったの?!」
問いかけるタケシの脳内にガミオンの答えが映像となって直接流れ込む。
タオの挑発、ダインとの決闘、
『あの力』を使うことが出来ないガミオン、加えてニュートゥの策略、
そしてついに喫した敗北。
流れ込んだ映像とタケシの目とガミオンの視線が重なる。
そして今、タケシはガミオンが置かれている状況を一瞬で理解した。
「こんな……ひどい、脳を弄るなんて」
「あの力さえ使えれば勝利は容易かっただろう、
だが、どうやらあの力はタケシ、君と私の精神が一緒でなければ使えないらしい」
「ガミオン!なら、なんで直ぐに僕を呼ばなかったんだ?!」
「それは……君の本体に負担がかかる可能性があったからだ。
いまだ単体での生命維持活動不能状態の君に頻繁に意識を戻すことを繰り返せば、
なにか不都合が起こる可能性がないとは言い切れなかった」
「そんなこと気にしてる場合じゃないだろ!僕だって覚悟は出来ている!
君と僕とは運命共同体なんだから!」
「それだけではない。私は、そんな風に君を便利な道具のように使うのが嫌だった。
ブラブーバとの戦いの時は不可抗力だったが、むやみに君の意思を呼び戻すことはしたくなかったんだ」
「ガミオン……」
「すまない、タケシ、もう時間がない。
これより生成機を分離、従者に託し、君を安全な場所まで避難させる」
「なにいってるんだ?!今、ここに僕がいる!なら、あの力だってつかえるはずだ!!」
「残念ながらそれは無理だ……今、私の意思は70%敵に侵食されている……
あの力どころか……動くのも……こうして君と会話するのも……困難になってきた……」
「意識を乗っ取られれば、記憶も奪われる……だが、敵にこれ以上、情報を渡すことはできない……
わたしは……まだ……意識あるうちに……自分の頭部を、完全に破壊する」
「ガミオン?!」
ガミオンの腕が動きボウガンを強く握り締める。
「72%……78%……お別れだ、タケシ、最後に君と話せてよかった……」
「駄目だ!まだ何か方法があるはずだ!」
考えを巡らすタケシ。
ガミオンも、僕も二人で助かる方法……何かないのか?何か……
その時、苦悩するタケシの脳裏に閃光のようにあるヒラメキが舞い降りる。
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