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第二話

第二話 パラダイム・シフト その9

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「タオ!変形しろ!!」

「なんだかよくわからんが、や、やるしかねェ!」

タオは吹っ飛びながらもニュートゥの指示に従い自らの能力を使い変形し始める。
全身の装甲や関節が蠢き、瞬時に三角系のシルエットをした飛行形態へと変わるタオ。
機体両サイドに鋭い刃を光らせ、後部に柄のような突起を持つその姿は巨大な剣のようでもあった。
変形を完了したタオはさらに速度を上げガミオンを包む粉塵へと迫る。
これはガミオン・ケンタウロスの足場を崩して視界を奪いつつ、退路を限定し誘導、
粉塵から出てきたばかりの、体勢の整っていない瞬間を狙って攻撃するというニュートゥの策であった。

 そういうことか!ただの攻撃なら容易に避けられてしまうだろう、
 だがダインの投擲プラス俺の加速ならよけられまい!
 そして俺なら四方八方どこに逃げたところで軌道修正し、ぶった切る事が出来る!

タオが確信した時、ガミオン・ケンタウロスが巻き上がる粉塵から飛び出した。

「うおっしゃァ!ぶった斬るぜェ!!」

だが次の瞬間タオは驚愕する。

「な、ナニィ?!」

普通の戦士なら回避行動に出たかもしれない。
だがガミオンは違った。
ガミオンは、逆に、両腕を広げ、タオに向かって走ってきたのだ。

 普通ならあの場合、危険を避ける為、退避行動に出るはずだ!それが最善の方法!
 なのに!コイツ!

ガミオンは上体をそらし、刃をかわしつつ、戸惑うタオを脇に抱えるようにして受け止める。
加速からくる衝撃が二人の体を揺らし軋ませる。
そしてガミオンは、すぐさまタオの後部突起部分を掴むと高く掲げ、
まさしく剣を振るうようにニ度、三度と振り回し、闘士ダインに向かって走り出した。

ガミオンの腕から流れ込む波動力に躰を押さえつけている為、変形不能となったタオが叫ぶ。

「か、躰が、自由にならねぇ……ダイン!避けろッ!!」

大きく振りかぶるガミオン・ケンタウロス。
だが、ダインは微動だにしない。
ガミオン・ケンタウロスはダインの間合いに足を踏み入れた瞬間、渾身の力を込めて剣を振り下ろした。
巨大な刃が振り下ろされダインの頭を叩き割ろうとしたその時、
ダインは両手で挟み込むようにして刃を受け止める。

─真剣白刃取り─

全身に力を込め耐えるダインの体を伝わり、衝撃が足元の海底を砕く。

ガミオン・ケンタウロスとダインが動きを止め、一瞬訪れる静寂。

タオの攻撃を正面から受け止めたガミオンと同じように、
ダインもまた真正面からガミオンの攻撃を受けきったのだった。
ニヤリ、と笑うダイン。

「やはり!今の反応、流石と言おうメガミオン!
 体格に恵まれてさえいれば闘士どころか勇士にさえなれるだろう逸材!
 だが、故にその蛮勇……」

その時、ダインの影に隠れていたニュートゥが脱兎のごとく飛び出した。

「既に我らが策の内よ!!」

ニュートゥの姿を確認したガミオンはすぐさまタオを掴んでいた手を離し、
馬体の前足を振り上げてニュートゥを叩き落とそうとするも
間髪を置かずタオを離したダインが前足を掴み力任せに引き寄せる。

「うおっ!?」

ダインを引き剥がすか?ニュートゥを打ち落とすか?
ガミオンはボウガンを手に取り、ニュートゥを打つ。
それは一瞬の迷いであったがそれがガミオンのミスであった。

ダインが体を揺するとガミオンのボウガンも振れ、放たれた光弾が軌道をそれる。
ニュートゥは足をかすめた光弾の衝撃も無視しガミオンに掴みかかった。

「しまった!」

ガミオンが次の行動に移るよりも早く、ニュートゥは全ての触手をガミオンに絡ませると
その背後に回り込んだ。
ガミオン・ケンタウロスは馬体を震わせ何度も後ろ足を蹴り上げ振り落とそうと試みる。
だが、ダインに前足を掴まれて本来のパワーを発揮しきれないガミオン・ケンタウロスに対し、
渾身の力でしがみつくニュートゥはびくともしない。

「メガミオン!貴様の記憶、見させてもらうぞ!」

ニュートゥが叫び、口を大きく開くと、その唇の両端が大きく裂け、
口内から長く怪しげな光沢を放つ赤い舌が蛇のように這い出した。

赤い舌がガミオンの治りかけた側頭部の亀裂を舐めまわす。
その感触から、最も脆い箇所を探し出したニュートゥは
舌の先端を亀裂へと這わせ、無理矢理ねじ込み始める。
さらに舌の先端が三つに分かれ亀裂を押し開き始めると、苦痛がガミオンを襲い、体液が漏れ出す。

「ぐうっ!……おおっ!」

ガミオンは全身の力を右腕に集中する。

「く、苦痛など……構っている暇はない!」

ガミオンの体のラインを伝わり光が右腕に集中し始め、ニュートゥの触手をはじき飛ばそうとする。
だが、ニュートゥも負けじと触手にパワーを注ぎ込み、それに対抗、
反発し合う光の波動がスパークし火花を散らす。

「うおおおおお!」

ガミオンが渾身の力を込めると光の波動がはじけ、
ついにニュートゥの触手を振り解くことに成功し、右腕が自由になる。
だが、

「遅い!」

それよりも早く、ニュートゥの舌がガミオンの頭部装甲を差し貫いた。

「うああ!!」

頭部に侵入した舌先はズルズルと脳を舐め回し、ガミオンの記憶中枢を探る。

「見つけたぞ!!」

ニュートゥは探り当てたガミオンの記憶中枢に舌先を差し込んだ。
火花を散らすガミオンの脳。

「ぐわあああああああああああ!!」

絶叫するガミオン。

「タ……タケシ……」

混乱する意識の中、ガミオンの脳裏に浮かぶのは、
ただ一つ、タケシの姿だけであった。


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