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Ⅰ ”最も優秀なオメガ”カイルのお見合い話
お隣さんと届いた荷物
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『■■■! ■■■■、■■■!?』
「えっ!?」
驚いて振り返ると何者かがカイルに武器らしきものを突き付け、声高にまくし立てている。紫色の肌に尖った顔、黄色のつり上がった目、頭には頭巾をかぶり背丈はカイルの胸程までしかない。見た目はトカゲ、ただしずいぶんと太って腰にエプロンを巻いたトカゲだった。おまけに振りかざしているのは大きな箒だ。
『■■■! この■■家■■!!』
「ええと……困ったな」
エプロン姿からして農家のおかみといった雰囲気だった。箒を突きつけながら怒っているトカゲ夫人は、どうやらカイルを激しく警戒しているようだ。とりあえずカイルはステイツでは無敵を誇った笑顔を浮かべて、ことさら落ち着いた声で話しかけてみる。
『こんにちは。私の名はカイルです』
自己紹介は語学学習において基本中の基本だ。これだけは何度も何度も練習してきたので間違いない。すると無事通じたらしく、トカゲ夫人の鋭い舌鋒がピタリと止まる。これ幸いとカイルは胸に手を当て、優雅に一礼して言った。
『海の向こうの新大陸から来ました。どうぞよろしく』
『……フン、■■■■■■』
トカゲ夫人は鼻を鳴らすと箒をドスン、と立てて仁王立ちした。そして再び勢いよくしゃべりだす。だがカイルが習った基本会話とはかなり違っているようで、ごくたまに聞き覚えのある単語が飛び出すくらいで残念ながらほとんど聞き取れない。
「うーん、これは困ったな」
思わずそう呟いた時、またカイルの腹が派手な音を立てて鳴った。
「これは失礼。えーと……”マーフ キージェ”」
こちらの言葉で「すみません」と謝ると、トカゲ夫人は尖った目を丸くする。そして大きく「フン!」と鼻を鳴らすと、ちょいちょいとカイルを指で招いて歩き出した。
エプロン姿の太ったトカゲが尻尾をふりふり歩いて行く後姿はひどくユーモラスで思わず笑い出しそうになる。だがカイルは至極真面目くさった顔で、庭の片側の繁みの中にごそごそと入っていくトカゲ夫人の後を追った。そして枝を持ちあげ葉っぱを頭にくっつけながら繁みを抜けると、そこにはカイルの家よりずっと小さな素焼き煉瓦の家があった。トカゲ夫人は箒を担いでその家に入っていく。
(そうか、あのご婦人はお隣さんだったのか)
程なくしてトカゲ夫人が家から出てきてカイルに何かを押し付けた。見ると蔓で編んだ籠の中に布で包まれたひらべったいパンのようなものが入っている。
「これ、貰っていいんですか?」
カイルはありがたく「ダンニャ ワード、ダンニャ ワード」とお礼を言って頭を下げると、トカゲ夫人は籠の中身を指して『■■ ナーシュター、■■■』と言い、さらに自分の胸を指で指しながら『パドマ』と言った。
「パドマさんですね? ありがとうございます。恩に着ます」
カイルがそう言ってニッコリ笑うと、夫人はまたフン! と鼻を鳴らしてシッシッと手を振った。カイルはペコペコ頭を下げてまた藪の中に入り、家に戻る。
なんという幸運だろう。労せずして朝食を手に入れてしまった。カイルは自分の運の良さを褒めたたえつつ家の中に入ろうとした。その時、どこからか飛んできた小鳥が窓枠に止まり、閉まったままの木戸をくちばしで突いているのが見えた。
「そうか、朝の物音の犯人はお前か」
カイルは立ち止まり、周りを見渡す。庭に蔓延る雑草も、よくよく見るとところどころ小さな黄色の花が咲いているし、慣れないあの蒸し暑さも朝の内はさほど感じなかった。しかも丘の上にあるせいか抜ける風がとても心地いい。
あの薄暗くて埃っぽい家の中に入って食事をするのはもったいない気がして、カイルはパドマに貰った籠を抱えて家の前に転がる石の上に腰かけた。そして入っていた平たいパンのようなものをちぎって口に入れる。
(不思議だなぁ、こんなに遠く離れていて姿かたちも全然違うのに、お互い同じようなものを食べているなんて)
あいにくジャムもバターもなかったが、小麦のほんのり甘い味がしてとても美味かった。欠片一つ残さず食べてからぼーっと空を見上げていると、にわかに庭の門の向こうから聞き覚えのある声が聞こえて来た。カイルは立ち上がって手を振る。
「やあ、シュレンとダンじゃないか」
「ようやく見つけましたよ、ミスター!」
シュレンが静かに怒りながら庭に入って来た。その後から興味深げにあちこち見回すダンと、大きな木箱や包みを積んだロバがついて来る。
「よう、旦那。あんたの荷物を運んできたぜ」
「ありがとう、助かったよ。でもどうしてここが?」
「最初に俺らを王族方のところまで案内してくれたやつが知らせてくれたんだよ」
ダンがそう言ってロバの背中から次々と荷物を下ろす。
「とりあえず船にあったあんたの荷物だ。それと積み荷の中からいくつか失敬したものもな」
「いいのかい、そんなことをして」
カイルが尋ねるとシュレンが「いいんですよ、駄賃替わりです」と冷え冷えとした口調で言った。その横でダンが苦笑する。
「あの後、お役人どもはすっかり怖気づいちまってな。もちろんそんな様子はおくびにも出さないが一刻も早く国に戻りたいらしい。ほら、あんたへの手紙だ」
そう言って手渡された紙には『君はアルファ以上と言われるほど優秀なオメガだ。一人でも適切に対処できるだろう。我々は本国に戻り大統領閣下へ今回のことを報告するために帰国しなければ』というようなことがつらつらと書かれていた。
「それで、ミスターの縁談相手の方はどこにいらっしゃるんです?」
「あー、それは……」
と言いよどむとすかさずシュレンに問い詰められる。仕方なく昨日の一部始終を話して聞かせた。
「それで、こんな右も左もわからない異国の地だというのに貴方を一人ほっぽりだして行ってしまわれたんですか、その御仁は」
「まあ、でもこうして親切に家まで用意してくれたんだから」
「親切? どこがです」
忌々しげに言うシュレンにカイルは笑って答えた。
「いや、彼は充分親切だよ。こんな風に無理に押し掛けた僕の片言の言葉にも辛抱強く付き合って最後まで聞いてくれたし、お前たちにこの場所を伝えさせたのも間違いなく彼の指示だろう。それだけで充分だよ」
「相変わらず呑気ですね」
「そうでもなければこれまで生きてはこれなかっただろうね」
そう言うとシュレンは黙ってしまった。カイルは肩をすくめて言う。
「とにかく、手紙を書くから本国へ持って帰ってくれ。シュレン、僕の荷の中から筆記具を出してくれ」
「……かしこまりました」
トランクから出した革表紙の文挟みを受け取り、庭の石に腰かけてペンを取る。そして事の次第を書いた手紙を一通と、両親宛に『心配しなくて大丈夫です』と記したものを一通書き上げた。
「さあ、これはアラン氏経由で大統領閣下宛て、こっちは父上に渡してくれ」
「かしこまりました」
シュレンが封筒を懐にしまい、ダンが連れて来たロバを「こいつはここに置いてくから役立ててくれ」と言って木に繋ぐ。そして船に戻るために庭の囲いを出た時、シュレンが振り向いて尋ねた。
「ちなみにお相手の方からアルファのフェロモンは多少なりとも感じられたんですか?」
「いや、特には」
「…………向こうの方も?」
そう聞かれて、昨日ヴィハーンに『臭くない』などと褒めてるのかけなしているのかよくわからないことを言われたのを思い出す。
「そんな感じは全然なかったな」
あっけらかんと答えるカイルにシュレンが大きくため息をついた。ダンがヒュウと口笛を吹く。
「本国じゃあんたの方が優秀すぎてどのアルファのフェロモンも効かなかったってのは本当だったんだな」
「ミスターの方があいつらよりも上等な人間だってことは間違いありませんよ」
シュレンがそう言ってバッサリと切り捨てた。だがそれきり口を噤むと珍しく視線を地面に落とす。
「……昨日こちらの王族方と対面した時、正直私は足が竦んで身動き一つ取れませんでした。ああ、これが生物としての格の違いかと腑に落ちました」
シュレンがぽつりとつぶやいた。
「なのでさすがにミスターも何か感じるところはあるんじゃないかと思ったんですがね」
それを聞いてカイルは笑って肩をすくめる。
「どうやらここにも僕の《運命》とやらはいないようだね」
「こうなるとミスターのお母君のおっしゃる『アルファとオメガの絶対的運命論』も眉唾物のようですね」
シュレンはコホンと咳ばらいをして顔を上げた。
「ますます貴方がここに残る理由がないような気もしますが、まあお身体だけはお気をつけて」
「ああ、お前こそ、こんな遠いところまで一緒に来てくれてありがとう」
「……私のような異邦人を個人秘書として取り立ててくださった恩がありますからね」
シュレンはそう言うと一礼して庭の囲いを出ていく。ダンがカイルの肩を叩き、懐から出したものを手渡してきた。
「こいつは俺が書き記してきたもんだ。俺よりあんたの方が必要だろう」
それは手ずれのした革表紙の手帳で、開いてみると様々な単語の一覧や珍しい食べ物や植物などの絵がたくさん書かれていた。
「こんな貴重なものをいいのか?」
「あんたを無事ステイツに連れて帰るところまでが俺の役目だ。それを果たせずして報酬だけ貰っちゃ座りが悪いからな。あと俺がこっちで懇意にしてる商人の名前と住まいを後ろに書いておいた。一度訪ねてみるといい」
「何から何までありがとう、ダン」
カイルはダンと固く握手をすると、二人の姿が見えなくなるまで見送った。
「えっ!?」
驚いて振り返ると何者かがカイルに武器らしきものを突き付け、声高にまくし立てている。紫色の肌に尖った顔、黄色のつり上がった目、頭には頭巾をかぶり背丈はカイルの胸程までしかない。見た目はトカゲ、ただしずいぶんと太って腰にエプロンを巻いたトカゲだった。おまけに振りかざしているのは大きな箒だ。
『■■■! この■■家■■!!』
「ええと……困ったな」
エプロン姿からして農家のおかみといった雰囲気だった。箒を突きつけながら怒っているトカゲ夫人は、どうやらカイルを激しく警戒しているようだ。とりあえずカイルはステイツでは無敵を誇った笑顔を浮かべて、ことさら落ち着いた声で話しかけてみる。
『こんにちは。私の名はカイルです』
自己紹介は語学学習において基本中の基本だ。これだけは何度も何度も練習してきたので間違いない。すると無事通じたらしく、トカゲ夫人の鋭い舌鋒がピタリと止まる。これ幸いとカイルは胸に手を当て、優雅に一礼して言った。
『海の向こうの新大陸から来ました。どうぞよろしく』
『……フン、■■■■■■』
トカゲ夫人は鼻を鳴らすと箒をドスン、と立てて仁王立ちした。そして再び勢いよくしゃべりだす。だがカイルが習った基本会話とはかなり違っているようで、ごくたまに聞き覚えのある単語が飛び出すくらいで残念ながらほとんど聞き取れない。
「うーん、これは困ったな」
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「これは失礼。えーと……”マーフ キージェ”」
こちらの言葉で「すみません」と謝ると、トカゲ夫人は尖った目を丸くする。そして大きく「フン!」と鼻を鳴らすと、ちょいちょいとカイルを指で招いて歩き出した。
エプロン姿の太ったトカゲが尻尾をふりふり歩いて行く後姿はひどくユーモラスで思わず笑い出しそうになる。だがカイルは至極真面目くさった顔で、庭の片側の繁みの中にごそごそと入っていくトカゲ夫人の後を追った。そして枝を持ちあげ葉っぱを頭にくっつけながら繁みを抜けると、そこにはカイルの家よりずっと小さな素焼き煉瓦の家があった。トカゲ夫人は箒を担いでその家に入っていく。
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程なくしてトカゲ夫人が家から出てきてカイルに何かを押し付けた。見ると蔓で編んだ籠の中に布で包まれたひらべったいパンのようなものが入っている。
「これ、貰っていいんですか?」
カイルはありがたく「ダンニャ ワード、ダンニャ ワード」とお礼を言って頭を下げると、トカゲ夫人は籠の中身を指して『■■ ナーシュター、■■■』と言い、さらに自分の胸を指で指しながら『パドマ』と言った。
「パドマさんですね? ありがとうございます。恩に着ます」
カイルがそう言ってニッコリ笑うと、夫人はまたフン! と鼻を鳴らしてシッシッと手を振った。カイルはペコペコ頭を下げてまた藪の中に入り、家に戻る。
なんという幸運だろう。労せずして朝食を手に入れてしまった。カイルは自分の運の良さを褒めたたえつつ家の中に入ろうとした。その時、どこからか飛んできた小鳥が窓枠に止まり、閉まったままの木戸をくちばしで突いているのが見えた。
「そうか、朝の物音の犯人はお前か」
カイルは立ち止まり、周りを見渡す。庭に蔓延る雑草も、よくよく見るとところどころ小さな黄色の花が咲いているし、慣れないあの蒸し暑さも朝の内はさほど感じなかった。しかも丘の上にあるせいか抜ける風がとても心地いい。
あの薄暗くて埃っぽい家の中に入って食事をするのはもったいない気がして、カイルはパドマに貰った籠を抱えて家の前に転がる石の上に腰かけた。そして入っていた平たいパンのようなものをちぎって口に入れる。
(不思議だなぁ、こんなに遠く離れていて姿かたちも全然違うのに、お互い同じようなものを食べているなんて)
あいにくジャムもバターもなかったが、小麦のほんのり甘い味がしてとても美味かった。欠片一つ残さず食べてからぼーっと空を見上げていると、にわかに庭の門の向こうから聞き覚えのある声が聞こえて来た。カイルは立ち上がって手を振る。
「やあ、シュレンとダンじゃないか」
「ようやく見つけましたよ、ミスター!」
シュレンが静かに怒りながら庭に入って来た。その後から興味深げにあちこち見回すダンと、大きな木箱や包みを積んだロバがついて来る。
「よう、旦那。あんたの荷物を運んできたぜ」
「ありがとう、助かったよ。でもどうしてここが?」
「最初に俺らを王族方のところまで案内してくれたやつが知らせてくれたんだよ」
ダンがそう言ってロバの背中から次々と荷物を下ろす。
「とりあえず船にあったあんたの荷物だ。それと積み荷の中からいくつか失敬したものもな」
「いいのかい、そんなことをして」
カイルが尋ねるとシュレンが「いいんですよ、駄賃替わりです」と冷え冷えとした口調で言った。その横でダンが苦笑する。
「あの後、お役人どもはすっかり怖気づいちまってな。もちろんそんな様子はおくびにも出さないが一刻も早く国に戻りたいらしい。ほら、あんたへの手紙だ」
そう言って手渡された紙には『君はアルファ以上と言われるほど優秀なオメガだ。一人でも適切に対処できるだろう。我々は本国に戻り大統領閣下へ今回のことを報告するために帰国しなければ』というようなことがつらつらと書かれていた。
「それで、ミスターの縁談相手の方はどこにいらっしゃるんです?」
「あー、それは……」
と言いよどむとすかさずシュレンに問い詰められる。仕方なく昨日の一部始終を話して聞かせた。
「それで、こんな右も左もわからない異国の地だというのに貴方を一人ほっぽりだして行ってしまわれたんですか、その御仁は」
「まあ、でもこうして親切に家まで用意してくれたんだから」
「親切? どこがです」
忌々しげに言うシュレンにカイルは笑って答えた。
「いや、彼は充分親切だよ。こんな風に無理に押し掛けた僕の片言の言葉にも辛抱強く付き合って最後まで聞いてくれたし、お前たちにこの場所を伝えさせたのも間違いなく彼の指示だろう。それだけで充分だよ」
「相変わらず呑気ですね」
「そうでもなければこれまで生きてはこれなかっただろうね」
そう言うとシュレンは黙ってしまった。カイルは肩をすくめて言う。
「とにかく、手紙を書くから本国へ持って帰ってくれ。シュレン、僕の荷の中から筆記具を出してくれ」
「……かしこまりました」
トランクから出した革表紙の文挟みを受け取り、庭の石に腰かけてペンを取る。そして事の次第を書いた手紙を一通と、両親宛に『心配しなくて大丈夫です』と記したものを一通書き上げた。
「さあ、これはアラン氏経由で大統領閣下宛て、こっちは父上に渡してくれ」
「かしこまりました」
シュレンが封筒を懐にしまい、ダンが連れて来たロバを「こいつはここに置いてくから役立ててくれ」と言って木に繋ぐ。そして船に戻るために庭の囲いを出た時、シュレンが振り向いて尋ねた。
「ちなみにお相手の方からアルファのフェロモンは多少なりとも感じられたんですか?」
「いや、特には」
「…………向こうの方も?」
そう聞かれて、昨日ヴィハーンに『臭くない』などと褒めてるのかけなしているのかよくわからないことを言われたのを思い出す。
「そんな感じは全然なかったな」
あっけらかんと答えるカイルにシュレンが大きくため息をついた。ダンがヒュウと口笛を吹く。
「本国じゃあんたの方が優秀すぎてどのアルファのフェロモンも効かなかったってのは本当だったんだな」
「ミスターの方があいつらよりも上等な人間だってことは間違いありませんよ」
シュレンがそう言ってバッサリと切り捨てた。だがそれきり口を噤むと珍しく視線を地面に落とす。
「……昨日こちらの王族方と対面した時、正直私は足が竦んで身動き一つ取れませんでした。ああ、これが生物としての格の違いかと腑に落ちました」
シュレンがぽつりとつぶやいた。
「なのでさすがにミスターも何か感じるところはあるんじゃないかと思ったんですがね」
それを聞いてカイルは笑って肩をすくめる。
「どうやらここにも僕の《運命》とやらはいないようだね」
「こうなるとミスターのお母君のおっしゃる『アルファとオメガの絶対的運命論』も眉唾物のようですね」
シュレンはコホンと咳ばらいをして顔を上げた。
「ますます貴方がここに残る理由がないような気もしますが、まあお身体だけはお気をつけて」
「ああ、お前こそ、こんな遠いところまで一緒に来てくれてありがとう」
「……私のような異邦人を個人秘書として取り立ててくださった恩がありますからね」
シュレンはそう言うと一礼して庭の囲いを出ていく。ダンがカイルの肩を叩き、懐から出したものを手渡してきた。
「こいつは俺が書き記してきたもんだ。俺よりあんたの方が必要だろう」
それは手ずれのした革表紙の手帳で、開いてみると様々な単語の一覧や珍しい食べ物や植物などの絵がたくさん書かれていた。
「こんな貴重なものをいいのか?」
「あんたを無事ステイツに連れて帰るところまでが俺の役目だ。それを果たせずして報酬だけ貰っちゃ座りが悪いからな。あと俺がこっちで懇意にしてる商人の名前と住まいを後ろに書いておいた。一度訪ねてみるといい」
「何から何までありがとう、ダン」
カイルはダンと固く握手をすると、二人の姿が見えなくなるまで見送った。
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