仲良くしたいの。《転生魔法士はある日、森の中でクマさんと》

後日談（３）【完】

「あっ、あっ、あっ」

　ノルガンの勃起したペニスが、すっかりその形を覚え込んでしまったリツの秘腔をみっちりと埋め尽くす。そのまま奥を捏ねるように何度も何度も突かれながら、リツは頭を空っぽにしてひたすら喘いだ。
　ぐちょぐちょぬぷぬぷと聞くに堪えない音が密着した二人の股間から聞こえてくる。それでもそれが恥ずかしいと思える正気を、リツはとっくになくしていた。

「っひゃ！　あ、は、はいってる、お、おく、あうんっ！　んぐ、っひんッ」

　ぐりぐりと一番奥の行き止まりを小刻みに突かれてリツは悲鳴を上げる。奥から入り口まで粘膜を引きずって何度もこすられるのもたまらないが、こうして奥までハメたまま延々と捏ねられ続けるのも死にそうなほど気持ちが良かった。

（だめ、これ、これ、だめ……っ）

　こんな風に奥をひたすら虐められていると、入ってしまうのだ。さらにその奥、絶対ダメな場所に。

「や、だめ、だめ、ノルガン、あ、ひゃ、あぁああ……っ！」

　それを聞いた途端、ノルガンが嬉しそうに笑って全体重をかけてきた。本当に本当に珍しいノルガンの笑みに一瞬頭が呆けた瞬間を狙いすましたかのように、ノルガンがリツの頭と肩を抱え込んで一ミリも身動き取れなくしてしまう。

「ひ……、ひゃん……っ！　ノル、ノルガ、んっ！」

　泣いて拒んでも容赦なくソコを捏ねられ続けて、ついにリツの身体は自分を征服しようとする獣に完全に屈服した。パンパンに張り詰めた亀頭が、最奥の狭い入口のような場所にぬぷ、と入り込む。脳髄を揺さぶられるような快感と喉まで埋め込まれたような苦しさにリツは我を忘れて喘いだ。

「んっ、あぐ、あ、んっ、んっ」

　ノルガンの先端がソコをこじ開け、また抜けていく度に視界がパチパチと白く弾け、腹の奥底がどろりと融けていくのがわかる。すでに何度もリツは絶頂していた。そのくせ力なく垂れたままのペニスからはまるで精液は出ていない。
　女のような小さなエクスタシーに何度も何度も脳を犯されながら、リツは必死にノルガンの太い首にしがみつく。やがてノルガンの目が剣呑に光ったかと思うと、リツの膝裏を掴んでぐい、と持ち上げた。

「～～～～～ッツ！！」

　まるで心臓まで串刺しにされたような感覚に、リツははげしく仰け反って一瞬意識を失った。だがすぐに絶頂に痙攣する秘肉をさらに激しく擦り立てられ、ぐちゅぐちゅと最奥を突かれまくって現実に引き戻される。

「っあ、あう、っひ、あ」

　もはや声にならぬ声を零しながら、リツはノルガンにひたすら食いつくされた。そしてノルガンが唸り声とともにブルッ、と身体を震わせ射精した瞬間、腹の奥にじんわりとひろがっていく熱にゾクゾクと震えながらまた絶頂へと追い上げられる。その時、ふいに目蓋の裏に光が弾けた。

「……っ、はぁ、……ぁ……っ……、ぁ、あぁ……っ」

　浅い呼吸をなんとか繰り返しているリツを貫いたまま、ノルガンが器用に身体を入れ替える。今度はノルガンが下になってリツを腹の上に寝かせると、尻の谷間から繋がったままの縁に指を這わせて優しく撫で始めた。まるで獣の王が自らの欲望を懸命に受け止めた健気な雌を労い、褒めているかのようだ、と思う。

　これできっと今夜も夢も見ないほど深く、死んだように眠れることだろう。リツは過ぎる快楽に溺れたままの頭で考える。きっとノルガンは今夜もこのままリツを抱き続ける。例えリツが気絶同然に眠り込んでしまっても、ノルガンのモノを根本まで咥え込まされて夜明けまでゆるゆると揺さぶられ続けるのだろう。

「んっ、あ、あ、ノル、ガン……、ノルガ、ン……っ」

　いくつもの傷跡が隆起する分厚い胸に懐きながら、リツは何度もノルガンの名を呼ぶ。その度にナカがいやらしく蠢いてはノルガンのモノを締め付けて、再び彼のモノの圧倒的な質量と亀頭の丸みを教え込まされる。後腔の動きに合わせて中に吐き出された大量のザーメンがちゅぷちゅぷと跳ね、その音が腰の奥で甘く響いた。

「ノルガン……、もっと、もっと、して、ずっといっしょに、いて」

　ノルガンは答えない。ここに住み始めてからただでさえ少なかったノルガンの口数はますます減ってしまった。あの低く掠れた声が聞けないのは残念だけど、ノルガンが話したくなければ別にそれでも良かった。その分ノルガンは態度や行動でリツに気持ちを伝えてくれるからだ。
　今もノルガンはただ黙ってリツをきつくきつく抱きしめた。無言でリツを責め立てる彼の、ただ荒くなっていく息遣いだけを聞きながら貫かれていると、まるで本物の獣に犯されているような気になることもある。
　でもノルガンは抱きしめてくれるのだ。今でも悪夢にうなされ、何かあるとすぐに体調を崩し、時々意味もなく怖くて不安でどうしようもなくなってしまうリツを黙って抱きしめてくれるのだ。

　今だってリツはノルガンになら食べられてもいいと思っている。
　ノルガンに食われればリツは彼の肉体を形作る血となり肉となる。リツはノルガンと文字通り一心同体となり、リツが欲しくて欲しくてたまらなかったあらゆる魔獣や人間たちに勝る力をついに手に入れられるのだ。それは絶対にノルガンにも誰にも言えない、リツの後ろ暗い秘密の快楽だ。
　でも本当に彼に食べられて死んでしまったら？
　リツはそりゃあ満足だろう。でもノルガンは？　リツが死んだらノルガンはたった一人取り残されてしまうのだ。

　ダールの町でノルガンは「リツと二人でいたい」と言ってくれた。だからリツは絶対にノルガンの望みを叶えてやりたいと思う。
　こんなにも強くて、一人でだって平気で生きていける男の唯一の願いをリツだけが叶えてやれるのだ。この世界に来てずっと馬鹿にされ虐げられてきたリツからしたら信じられないほどの奇跡だ。

（おれはなんてしあわせなんだろう）

　リツは心の底から満足すると、深いため息を一つついて考えるのをやめた。


　　　　　◇　　　◇　　　◇


　翌朝、目が覚めるとまず最初にノルガンが熾火を掻き立てて湯を沸かしてくれた。朝に白湯を飲むと身体も温まるしなんとなく調子がいい気がする。だからリツはこの小屋に住むようになってから毎朝の習慣にしていた。
　ノルガンは熱い飲み物は好きではないようで、いつもコップに一杯分だけ沸かしてリツにくれる。そして自分は昨日の残りの肉を食べ、リツには果物や肉の柔らかいところを残しておいてくれた。
　ノルガンのそんな小さな優しさがたまらなく嬉しい。けれど身じろぎした拍子に肩から毛布が落ちて、たちまち寒さに震え上がる。
　今からこんなに寒くて、本当に冬になったらどうなるだろうか。正直ここに来たばかりの去年の冬のことは具合が悪すぎてよく覚えていなかった。

（ハデルさんも、俺みたいなのが森で一冬過ごすなんて自殺するようなもんだって言ってたくらいだしな）

　親切な村の雑貨屋の夫婦だけじゃなく、村の者たちはみな冬の間だけでも村に来るように何度も言ってくれている。でもたとえどんなに苦労することになっても、リツは例え一時的でもこの森から出て生活するつもりはなかった。
　確かに村は便利で賑やかで美味しい食べ物や飲み物もあるし藁を詰めたベッドだってある。村の人たちだって驚くほどリツに親切にしてくれる。もしノルガンを連れて行ったとしても、きっと内緒にしてくれるだろう。
　でもリツはここで、ノルガンと二人だけで生きていくと決めた。
　鶏だって本当は欲しかった。でもノルガンがあの馬に何をしたかをリツは忘れてはいない。
　ノルガンが嫌がるのなら、この先も馬だろうが鶏だろうが人間だろうが何一つ二人の間に入れるつもりはなかった。

「冬になる前に」

　突然低くしゃがれたような声がして、リツは一瞬反応が遅れた。それがノルガンの声だと気づいてびっくりする。ノルガンは火を見たままボソボソと話した。

「落ち葉を集めて床にたくさん敷き詰める。その上を毛皮で覆えばいい」

　リツは湯の入った器を持ったまま、ぽかんと口を開けてしまった。

「…………そうだね、そうしようか」

　リツはそう答えて目を細める。

　ここに来てから、リツは今まで以上に頑張って働いた。時々出くわす魔獣を一人で倒すことはまだできないが、戦斧を握るノルガンを支援するための魔法にはますます磨きが掛かっていたし、薪を拾ったり水を汲んだり、木のとげと細く裂いた蔓の繊維で破れた服を繕うことだってできるようになった。
　栄養が偏っているせいか、相変わらず手足は細っこいままであまり筋肉はつかず、いつでも疲れが取れずにだるさが残っているのは相変わらずだ。でももうそれも慣れっこだし、実際ちゃんと生き延びている。

「今日から早速やろう。それにいい匂いのする枕も貰ったんだ」

　ふと思い出してリツは昨日村で貰った干し草入りの枕を目で探す。するとノルガンが腕を伸ばして取ってくれた。彼は疑わし気な顔でその匂いを嗅ぐと、ふっと顔を上げてリツに渡してくれた。どうやらこれの匂いは大丈夫だったようだ。

「冬までに木の実やなんかももっと集めて蓄えておこうよ。もしかしたら小屋から出られない日が続くこともあるかもしれないからね」

　もしそうなればきっと昨夜以上に濃密で爛れた時間を二人で過ごすことになるだろう。そう思った途端、あの常軌を逸した国境の山の洞窟での日々を思い出して無意識に身体が震える。
　生と死の淵ギリギリの、完全に閉ざされた二人だけの世界。

（…………本当は、無理なことなんだろうか）

　強者と弱者。捕食者と餌。食う者と食われる者。半獣と人間。
　ノルガンとリツの生き物としてのあまりにも大きな差と本能に刻み込まれた恐怖は、自分の気持ちや理性だけでどうにかなるものではないのかもしれない。

　不意に青褪めたリツの顔色に気づいたのかどうなのか、ノルガンが急に手を伸ばしリツの頬に触れた。
　彼がその気になればリツなど簡単に縊り殺せる大きくて分厚くて力に満ちた手。
　その手はリツに本能的な恐怖と、他の誰にも不可能な絶対の安心感と、そしてたまらない快楽を与え続ける。
　その瞬間。親切な雑貨屋の夫婦、村の老女、リツを助けてくれた半獣の兄弟や親切な女傭兵、笑って自分を見上げる子どもたちの顔が頭の隅によぎり、そして消えた。

　冷たい薄氷色の目がリツを見ている。リツは小さく笑って、その手に自分の手を重ねた。

「大丈夫、ずっと一緒だよ。約束したからね」

　そう、リツたちはこのまま、まるで世界に残った最後のつがいのように仲良く暮らしていくのだ。
　二人きり、永遠に。





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おまけの後日談、めちゃくちゃ遅くなってしまって申し訳ありませんでした…！
どうしてもいちゃこらした感じにならず…きっとこの二人はこれが精いっぱいのハッピーエンドなんだと思います…！

これにて完結です。長い間お付き合いくださってありがとうございました。