仲良くしたいの。《転生魔法士はある日、森の中でクマさんと》

伊藤クロエ

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クルンの町~カンダルの町へ(ノルガン)1★

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――――俺は大丈夫だから。あなたは一人で先に行って。

 そして別々にカンダルの町に入ろう、と、リツが突然ノルガンに言ったのは、二人の旅が始まって六日が経ってからのことだった。

「この地域は特にじゅうじ…………差別が激しいって聞いてるから。あなたなら一人でカンダルまであっという間に行けるでしょ?」

 それまでずっとノルガンにされるがままに大人しくついて来ていたリツが急にそんなことを言い出したのは、恐らくここまで二人を乗せて来た馬が突然姿を消してしまったせいだろう。
 その前の晩、リツが眠っている間にあの馬を殺したことをノルガンは少しだけ後悔した。

 だって、あまりにリツがあの馬を可愛がるから。
 ノルガンがリツのために獲物を狩り甘い実生を探して持ち帰ると、いつもリツは馬の背を撫でながら「いつも乗せてくれてありがとう」と優しく話しかけていた。だから腹が立ってノルガンはその馬を捕まえて、この森に入ってからずっとノルガンたちの様子を窺うようにコソコソとついて来ていた魔獣たちに投げやった。
 魔獣たちはすぐに馬を咥えて引きずり姿を消した。これなら馬の血や死体を見てリツが怖がることもない。

 満足したノルガンは眠るリツのところへ戻って再び後ろから抱きしめ、狭くて熱くて気持ちがいい孔に自分のモノをゆっくりと咥え込ませた。ぐぷ、と男根が入った拍子に「ひぐ……っ」と可愛らしい声を漏らしたリツを抱いてなだめ、ノルガンはようやく満たされた気持ちになった。

 翌朝馬がいないのを見て当然リツは驚いた。けれどリツにはノルガンがいるから何も心配することはない。馬なんていなくてもどこへだってノルガンが抱いて連れて行ってやるとリツだって充分わかっているだろうに、なのにリツはひどく狼狽えてノルガンに「馬は?」と聞いていた。
 ノルガンが黙ってリツを見ていると、リツは何かを言いかけてまた口を閉じた。そしてなぜか何かを怖がるようにノルガンから目を逸らし、黙って俯いてしまった。

 なぜリツがノルガンを見ないのかわからない。だけどそのことはノルガンをひどく苛立たせ、悲しませた。
 結局、リツはそれ以上馬のことは一言も口にしなかった。ただのろのろとノルガンが採ってきたクラムの実を齧り清水を飲んで、そしてようやくノルガンを見た。

「昨日、街道が見えたよね。あと少しでええと……カランだっけ? カンダルの町の手前の宿場町に着くんだよね?」

 リツが尋ねたのでノルガンは頷いた。するとまたリツが何か考えながら口を開く。

「カンダルに行けばあなたのその首枷もきっと外せると思う。そうすればあなたが逃亡奴隷だとバレずに済むと思うんだ。じゃないといつかどこかで捕まっちゃうかもしれないから……」

 リツがたどたどしく言う言葉を、ノルガンは黙って聞いた。

 今、ノルガンの首にはまだ奴隷の証である鉄の首枷が嵌っている。ノルガンがその気になれば簡単に壊して外すことはできるのだが、リツがノルガンの首枷を気にして毎晩濡れた布で首と枷との間を拭いたり撫でたりしてくれるのが嬉しくてそのことはずっと黙っていた。
 それにリツが小さな頭で一生懸命ノルガンのこれからのことを考えてくれているのかと思うと、腹いっぱい肉を食べた時のように身体の中がポカポカと温かくなるような感じがして気持ちが良かった。
 リツが訥々とした口調でノルガンの話をする。

「でも、俺がちゃんとカンダルの町の門から入って身分証の検認をしてもらってからじゃないと、奴隷解放の手続きが取れないよね。でもあなたと一緒に入ろうとすれば、どうしたって町の衛兵にあなたのことを問いただされて、下手したら捕縛されたりまた奴隷市……? に戻されたりしちゃうかもしれないから……」

 と、リツが言葉を濁した。それでノルガンは気が付いた。
 ノルガンはあの夜ゴダルや他の同行者たちの身に何が起こったのか、リツに話してはいない。だからリツも詳しいことは何もわかっていない。それでも本能で、ノルガンが何かしたのだと薄々察しているのだろう。
 何も後ろ暗いことがなければ堂々と町の門から入って衛兵たちに説明すればいいのだが、リツはそれを避けようとしていることからも、それが明らかだった。

「あなたは一人でこっそり夜中に外壁を越えて町に入ってこれるよね?」

 リツの問いにノルガンは頷いた。もちろんそんなことは簡単なことだ。リツを抱いて二人で誰にも知られず町に入ることだってできる。

「じゃあ、やっぱり次のカランの宿場町で二手に別れよう。俺はカンダルに向かう他の人たちと一緒に町に入る。そうすれば俺は身分証の検認もしてもらえるから、きっと町の中であなたの解放手続きが取れると思うんだ」

 ノルガンは少し考えてからリツの言葉に黙って頷いた。

 それが今から三日ほど前の出来事だった。



     ◇   ◇   ◇



 リツと別れたノルガンは気配を消して彼のあとをつけ、森の木の上や影からリツの様子を見守り続けた。
 リツはカランの宿場町でカンダルを目指す一行の中に紛れ込み、街道を北に進んで行った。
 戦う術を持たずあまり裕福ではない人間たちが別の町へ移動する時、できるだけ大勢集まって全員で小金を出し合い傭兵を雇う。
 リツが紛れ込んだ一行の中で、そんな傭兵のうちの一人とごく普通の旅人の恰好をした男が一人、やけにねっとりとした目つきでリツを見ていることにノルガンはすぐに気が付いた。
 だからノルガンは姿を見せぬようにずっと彼らを見張っていた。

 案の定、男たちはすぐに尻尾を出してリツに薬を盛って無理矢理発情させ、街道から外れた森の中にリツを引きずり込んで犯そうとした。だがもちろんノルガンがそんなことを許すはずがない。
 ノルガンはリツの意識が朦朧となって周りのことがわからなくなってから、男たちをリツから引きはがし声を出す間もなく首をねじ切って森に捨てた。

 リツは血の匂いも好きではないだろうから、先に二人を離れたところに捨ててこようとしたが、顔を真っ赤にして荒い息を吐きペニスを勃たせて男を欲しがっているリツを見て、今すぐにこの美味そうな生き物を喰うことに決めた。






 ヒグマの血を引くノルガンは、人間たちよりずっと耳がいい。
 リツとともにカンダルの町を目指してここまで街道を歩いてきた人間たちが少し離れた場所で野営しながら立てているざわめきや薪の爆ぜる音が、ノルガンにははっきりと聞こえている。それに森のあちこちで息を潜めて様子を窺う魔獣たちの息遣いや、すぐ足元に横たわる男たちの死体から滴り落ちる血の音さえも。

 だがノルガンはそんなものより、掠れた声でもうどうしようもない、とばかりに喘ぐリツの吐息やぐちゅぐちゅとかき混ぜる濡れた粘膜の音やどんどん速く強くなるリツの鼓動を聞いていたかった。

「ぁぅうっ……んっ、ぁんっ、ぁあ……っ」

 ノルガンの腕の中でリツがビクビクと身体を震わせながら喘いでいる。その声がもっと聞きたくてノルガンはリツの中を責める指をさらにねっとりと奥深くまで潜り込ませた。

「ひ、ぁん、あ! そ、そこ……ぉ……っ」
 
 リツの尻に押し付けた自分の男根は痛いほど張り詰めていて、今すぐにでもこの小さな愛しい獲物の熱くぬかるんだ狭い孔に入りたくていきり勃っている。

「ひっ」

 ノルガンが指を抜こうとすると、リツが小さく呻いて身体を縮こませた。ずるずると柔らかな肉を引きずるたびにリツの身体はビクビクと震え、ノルガンの指を引き留めようとまとわりついてくる。
 いかにも物欲しそうにひくつく後孔を晒して息も絶え絶えに横たわるリツを見下ろしながら、ノルガンは下衣を緩めて完全に勃起した逸物を引きずり出した。そしてリツの両足を抱え上げて膨れ上がった亀頭を擦りつける。するとリツの濡れた孔は嬉しそうにノルガンのモノに吸い付いてきた。
 ノルガンはそのまま焦らすようにちゅぱちゅぱとわざと音を立てるように先端を押し付けては離してを繰り返し、その感触を楽しむ。

「あ、あっ、や、やだぁ……っあ、い、いれて、いれて……ぇ……」

 熱に浮かされたように真っ赤な顔でノルガンにねだる言葉を聞いて、ノルガンは口角を上げた。

「あ、うぅ……ぅ、ちょ、ちょーだい……、ナカ、ナカ……ぁ……」

 口からだらしなく唾液を垂らし、自分からノルガンのモノに秘所を擦り付けて腰を動かすリツに、ノルガンは満足する。

 これまでのリツは発情していても自分が何を欲しがっているのかよく分かっていないような様子だった。だがさすがに夜ごとノルガンに抱かれる度に少しずつ自分の望みを身体で覚えてきたようだ。
 ノルガンは、とろとろに潤んだ目で見上げて自分を欲しがって鳴く大事な獲物を両腕に抱え込み、触れそうなほど近く顔を覗き込んだ。

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