【完】酔っ払いオオカミくんと片思い赤ずきんちゃん

伊藤クロエ

文字の大きさ
上 下
6 / 10

06★ 赤ずきんちゃんの急転直下。

しおりを挟む
「ちょ、ドルフ……っ、な、何して……っ!」

 だが聞こえてきたのはまるで寝言のような低い唸り声だけだった。
 え、な、なに? これ、ね、寝ぼけてんの!?
 もしもこれが別の誰かだったら、僕はなりふり構わず暴れて相手を蹴り飛ばすか大声を上げて周りを起こしたと思う。けど下手に暴れて万が一にもドルフが身体を痛めるようなことがあったら駄目だって考えてつい力が鈍ってしまった。
 冷静に考えれば僕がどれだけ歯向かおうがドルフに傷一つつけられっこないのにさ。
 どんな目に合わされようが僕がとっさに考えるのは自分の身の安全よりもドルフのことなんだと思い知らされて、なんだかものすごく恥ずかしくなった。けど次の瞬間、尻を掴むドルフの手がゆるゆると動き出してさすがに僕も心底焦る。

「えっ、ちょ、ドルフ、離し、て……っ」

 するとドルフは逃げようとする僕の身体をいとも簡単にうつ伏せに返すと、まるで往生際の悪いエサを押さえこもうとするみたいに低く喉を鳴らしてうなじに緩く噛みついてきた。

「ひうっ!?」

 いかにも肉食の狼らしい大きな口にぞろり、と生えた牙が、僕の肌に食い込む。

「う゛、う゛……んっ」

 今までに僕は何度もドルフがあの太くて鋭い牙で大きな骨付き肉から肉を食い千切って咀嚼する姿を見たことがある。あの力強くて獰猛な牙で噛まれれば相当痛いはずだなのに、ずぶずぶと食い込むうなじからは痛みよりもずっと強く、奇妙な甘い痺れが全身に走った。

「う……あ……」

 うそ、なにこれ。
 ぞくぞくと背筋を這う得体のしれない感覚に、僕は一瞬パニックになる。そんで僕がうつ伏せのまま思わず身を強張らせた時、ドルフの手がベッドと僕の間に入り込んできた。

「っひゃ、や、だ……っ!」

 狼獣人のドルフの手は、形そのものは人間と同じだけど手のひらも甲も短くてちょっと硬い毛で覆われている。その太い指が無遠慮に下着の中に潜り込み、僕の内腿をひっかいてはペニスと陰嚢をひと撫でする。そしていつも重い鋼鐵の剣を軽々と振り回してる大きな手でゆっくりと揉みしだき始めた。
 え、ちょ、なんで……っ!? なんでそんなとこ……っ!?
 もしかして酔って寝ぼけて女を抱いているのと勘違いしているのかな。そんでその女を組み敷いて、今からドルフのアレを受け入れようとしているアソコをまさぐっているつもりなんだろうか。
 え、やだ。
 ってか、ドルフはいつもこんな風に誰かを抱いてるのかな。そんな風に勝手に想像して勝手に嫌悪感に襲われる。

 だれか、ドルフが抱いた、知らないおんな。

 ううう、いやだいやだいやだ。考えただけで一気に血の気が引いて指先まで冷たくなる。
 僕は必死に身をよじって逃げようとしたけど、悲しいかな、背中にのしかかるドルフの身体が重くてビクともしなかった。
 不意に、ハア、と耳元でドルフの酔いに濡れた吐息が漏れる。その熱い息を耳孔に注がれて、ずくん、とドルフの手の中に覆われた場所がひどく疼いた。

「…………あ…………っ」

 自分の口から漏れた声に自分で驚く。
 いやいや駄目だ。もうこれ以上なんにも考えるな、って思えば思うほど、背中を覆うドルフの重みと身体の熱と、ドクドクと血が集まって兆し始めた自分のアレを覆うドルフの手の感触に意識が集中してしまう。
 その間もドルフの手はゆるゆると僕の股間を愛撫するように動いてはさらに奥へと這い込もうとした。

「だ、だめだよ、ドルフ……っ」

 頼むから目を覚まして……! って必死に祈ったけど、僕に伸し掛かる身体はますます重くなるし、背中に当たってるドルフの分厚い胸が呼吸と一緒にゆるやかに上下してるのがすごく伝わってきてなぜかこっちの心臓はますます暴れ出す。
 その時、いつの間にか奥へと潜り込んだドルフの指に陰嚢の奥、会陰っていうの? そこをぐりってこすられて身体が勝手にビクンッ! って跳ねた。その拍子にまた短い悲鳴みたいな声が漏れてしまって心底焦る。

「ん、ん――――」

 暗闇に慣れてきた僕の目に、すぐ横で寝ているナナセが眉をしかめて小さく唸るのが映った。思わず僕はぎゅっと唇を閉じて声を押し殺す。なのにまたドルフが耳の後ろに舌を這わせながら股間に差し込んだ手を動かし始めた。

「……っふ、………………っ、…………ぁっ」

 え、ちょ、ほんとにダメ、ダメだって、起きて、起きて……っ!?

 ドルフの手はすごく大きくて、僕のペニスも陰嚢もすっぽり覆っちゃうだけでなく、その奥とか太ももの付け根のとことかまですりすりと触ってくる。ドルフの手のひらは肉厚で弾力があって、そんで熱いし滑らかな毛皮も気持ちがいいし、そう、気持ちよすぎて困るのだ。

「あ、う、っふ…………んっ」

 うわ、だめだだめだだめだ、声出ちゃう。隣にナナセが寝てるのに!
 慌てて口を押さえて必死に両足を閉じようとするんだけど、やっぱりドルフの方が力が強くて僕の足の間をまさぐる手の動きはちっとも止まらない。それどころか余計に手の関節がごつごつしてるところとか、びっくりするぐらい器用に動く指先だとかがますますはっきりと肌に伝わってきてしまって僕はますます焦ってしまった。
 え、ってかなんで!? なんで僕、こんなことされてんの!? ほんとに寝ぼけてんの!?

 その時、耳元でドルフの低い唸り声が聞こえてきた。そんで僕のアソコをいじってた手が止まる。そうかと思うと突然ドルフが完全に脱力したみたいで、一気にのし掛かる重みが増えてベッドに押し潰された。

 …………………………ひょ、ひょっとして、今度こそ本当に寝た………………?
 けどそう思った途端、また僕のお腹のあたりに回されたドルフのぶっとい腕に力が戻って、おまけに手とざらざらしたベロまで動き出した。

「……んっ、……っふ、ぅ……っ、あ……っ」

 首筋を舐めてた舌が耳の穴に這い込んできて、ちゅくちゅくと濡れた音が脳に流れ込んでくる。え、うそ、なんかぞわぞわしてくるし、それにこの音……っ! 

「ひ、ひう」

 にちゅ、ぴちゅ、って耳の中舐められて、なんだか脳みそに直接流し込まれてるみたいに響いてくるのがすごく、すごく腰に来る。ああ、なにこれ、こんな感覚初めてで何が何だかわかんない。
 それにぎゅって閉じた足の間にねじ込まれた手がぬくぬく動いてて、ドルフの指が僕でも触ったことないような場所まで撫でてきて僕は漏れそうになる声を押さえるのに必死だった。けど、そこからもなんだか濡れたような音が聞こえてきた気がして思わず息を呑む。

 う、うそぉおおおぉ……。いや、だめだろ、しょうがないけど、でもぼく、勃っちゃってる?!?!?!?!?

 ドルフの手の中でいつの間にか勃起しちゃったペニスから先走りが溢れてドルフの手を濡らしてしまってるんだと気づいてしまった。

「だ、だめ、ドルフ、はなし、て、ぇ……っ」

 耳元だけでなく足の間からもにちゅにちゅといやらしい音が漏れてきて、僕がますます身を強張らせるとそれより強い力で後ろからドルフが抱き込んでくる。

「ね、ねえ、起きて、ドルフ、起きて……っ」

 ナナセに気づかれたら僕よりドルフの黒歴史になってしまうから必死に声を抑えてなんべんもひそひそ声で囁くけど、聞こえてくるのはいやらしい濡れた音とドルフの呼吸する音だけ。
 きつく抱き込まれた背中に一定のリズムで上下しているドルフの胸が当たってる。これってやっぱり寝てるの!? ってか寝ぼけてるのにこんな風にやらしい指の動きとか、舌で舐めちゃうとか、それってもしかしてドルフが相当こういうことに慣れてるってことなの!?

「ひうっ!?」

 突然、ぬる、とドルフの指先が僕の後ろの穴を撫でてきて死ぬほどビックリした。
 こ……これはヤバイでしょ……だって、ソコは、さすがに……ってもうビックリ通り越してパニックで、怖いし、心臓バクバクしすぎて痛いくらいだし、でもそうする間もドルフは僕の後ろをゆるゆる撫でては時々ぐっと押したり、ふちっこのとこを引っ掛けたり……

「っ!?」

 あ、ウソ、ゆびが、ドルフのゆびが。
 今まで誰にも触られたことない、自分だって触るどころか見たことだってない入口を引っ掛けるようにして、指が潜り込んでくる。自分でも恥ずかしいくらいダラダラと垂れてるカウパーとかそんなものでぬるぬるしたソコの縁を広げるように撫でられて、ついに一本の指が狭い肉壁をこすりながら奥へ奥へと入ってきた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

好きだと伝えたい!!

えの
BL
俺には大好きな人がいる!毎日「好き」と告白してるのに、全然相手にしてもらえない!!でも、気にしない。最初からこの恋が実るとは思ってない。せめて別れが来るその日まで…。好きだと伝えたい。

【短編】売られていくウサギさんを横取りしたのは誰ですか?<オメガバース>

cyan
BL
ウサギの獣人でΩであることから閉じ込められて育ったラフィー。 隣国の豚殿下と呼ばれる男に売られることが決まったが、その移送中にヒートを起こしてしまう。 単騎で駆けてきた正体不明のαにすれ違い様に攫われ、訳が分からないまま首筋を噛まれ番になってしまった。 口数は少ないけど優しいαに過保護に愛でられるお話。

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

獅子王と後宮の白虎

三国華子
BL
#2020男子後宮BL 参加作品 間違えて獅子王のハーレムに入ってしまった白虎のお話です。 オメガバースです。 受けがゴリマッチョから細マッチョに変化します。 ムーンライトノベルズ様にて先行公開しております。

オメガな王子は孕みたい。

紫藤なゆ
BL
産む性オメガであるクリス王子は王家の一員として期待されず、離宮で明るく愉快に暮らしている。 ほとんど同居の獣人ヴィーは護衛と言いつついい仲で、今日も寝起きから一緒である。 王子らしからぬ彼の仕事は町の案内。今回も満足して帰ってもらえるよう全力を尽くすクリス王子だが、急なヒートを妻帯者のアルファに気づかれてしまった。まあそれはそれでしょうがないので抑制剤を飲み、ヴィーには気づかれないよう仕事を続けるクリス王子である。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

処理中です...