【完】泡姫ミナミくんの初恋 ~獣人店長さんと異世界人のソープ嬢(♂)

伊藤クロエ

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★ミナミくんの新たなる悩み。

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「は~~~~疲れた…………」

 ミナミは新都心と旧市街の狭間にある小さくて古いアパートに戻ると、粗末なベッドに倒れ込むなり思わずそう呟いた。
 思えば怒涛の一日だった。金曜日の今日、朝から仕事をして周りに頭を下げながら定時に上がり五華路のソープランドに履歴書を持って駆け込んだ。そこで見上げるほど大きくて強面の虎の店長さんに会い、そして面接を受けたのだ。

(……面接と言っても普通のじゃなかったけど……)

 思い出すなりまた顔が熱くなる。
 体験入店と称して行われたソレは、ソープ嬢の仕事を実際に体験して適性を見る、というのものだったが、蓋を開けてみれば結局南一人があの虎の店長さんに散々気持ちいい思いをさせて貰っただけで終わってしまった。

(…………そういえば、あれが手マン、ってやつだったんだな……きっと……)

 親に隠れてこっそり見たアダルト動画でしか知らなかったことを実際に自分が体験できてしまうとは。
 南の脳裏に、昔見たAV女優のように大きくて逞しい男に腰を捕らえられ開かされた足の間をじゅぷじゅぷと指で犯され、イかされている自分の姿が浮かび上がる。

(うわーうわー、見たかった……その様子をぜひ外から見たかった…………)

 そして南は今日初めて出会ったあの強面な店長さんを思い出す。
 あの白と黒の虎縞の毛に覆われた獣そのものの顔に、南の両腕では囲えないほど逞しい身体を持った虎の獣人が、泣いて喘いで逃げようとする南を捕まえて思うさま指で南のナカを嬲る様子を第三者の目で見ることができたら、きっとそれだけでイッてしまえるだろう。
 そう想像しただけでゾクゾクと得も言われぬ感覚が、まだぽってりと腫れて熱をもっているようなソコから這い上がって来るのを感じた。

(…………しらなかった…………おれってエロいだけじゃなくて変態でもあったのか…………)

 だがそんなことはどうでもよくなるくらい、南にとっては人生初めての、そして天変地異のごとき体験だった。

(…………きもち、よかったなぁ………………)

 くしゃくしゃのベッドシーツに頬を埋めて、南はぼんやりと壁を見つめながら繰り返す。

(店長さんの指、すごい太くて、俺のと全然ちがってた……)

 いかにも大型種の獣人らしい節のはっきりした太い指が、今まで南が男に抱かれるのを夢見て一人寂しくベッドで弄っていたあの狭くて熱い場所をこじ開けるようにして潜り込んできた感触を、南はぼーっとした頭で追いかけた。知らず、口から吐息が漏れる。

(おれが、ダメ、っていっても、やめてくれなかった)

 ベッドに押し付けた股間がずくずくと疼き出して、南は目を閉じ身じろいだ。

 自分よりも大きな男に組み敷かれ、有無を言わさぬ力でアソコに指やペニスを出し挿れされて、オンナにされる。それこそが南が後ろめたく思いながらもずっと妄想し続けてきた夢だ。

(……それと、ほとんどおんなじことが、きょう、おこったんだ……)

 もう我慢できないほど後ろが疼いて、南は震える手でデニムのジッパーを緩め、中に手を入れる。

「ん……っ、…………っふ…………っ」

 すでに硬く熱くなっているモノをゆるゆると扱くが、今欲しいのはそこではないとすぐに気づいた。

(……どうしよ……こんなの、きっとダメ、だよな…………)

 そうは思うがまざまざと思い出しては追いかけてしまうあの虎の獣人の硬い手のひらや太い指や低くて擦れた声を消すことができない。
 ついにデニムも下着も太腿の半ばまで引きずり下ろすと、ベッドにうつ伏せになったまま、ぐい、と手を奥まで滑らせた。
 今日散々責めたてられたソコは未だに熱く火照っていて、南の指をなんなく受け入れてしまう。それはそうだ。だってほんの一、二時間前に南のよりもずっと太い指を二本も咥え込んでは歓喜に震えて甘く淫らに纏わりついていた場所なのだから。

「あ……ッ、んっ、…………っふ、ん……っ」

 くちゅくちゅと、ローションも何も足していないのに濡れた音がする。まるで今日あの店長さんの太い指に奥まで挿れられた潤滑液がまだ残っていたのだろうか。

(ここ……ここを、ゆびではさんで、おして、ゆらして……)
「ひうんっ!」

 呉凱ウーカイの真似をしてソコに触れた途端、あまりの快感にとんでもない声が漏れてしまう。

「あっ! んっ、ひう、う、う~~~~~~」

 とうとう我慢できずに南はなんとか指を引き抜くと、這うようにしてベッドの下に突っ込んでいた極太のバイブを引きずり出す。それは先月ようやく携帯電話を手に入れてすぐに検索したアダルトショップで勇気を振り絞って買ってきた物だ。

「ハッ、ハッ、ん…………」

 震える手でローションを塗りたくり、蹴るようにして下着ごとデニムを脱ぎ捨てると、欲しがってひくひくと痙攣している後腔にぷちゅり、と押し当てた。

「………ん、ぐ………ッ!!」

 ぬぷ、とエラの張った大きな亀頭を中に潜り込ませると、腹の奥が早く、もっと奥へ欲しがって疼きだす。

「……あっ、ん……っ、あ、あ、あ……う」

 片方の手でバイブをゆっくりと押し込みながら、反対の手でぎゅううっ、と胸元を握りしめる。仰向けに仰け反りながら目を閉じ、今自分は大きな獣人に巨大なペニスで蹂躙されているのだと想像する。

「んぐ、あ、ひう、んんっ」

 南よりもずっと大きくて、強くて、怖いけもの。熊や虎、狼、獅子。南は知っている限りの大型獣人を思い浮かべる。
 もっと組み伏せられたい。
 太い強靭な手足で押さえつけられて、鋭い牙で噛みつかれて、めちゃくちゃにされたい。
 極太の血管がうねうねと這う、まさに凶器のようにガチガチに勃起した肉棒で奥の奥までこじ開けられて思うさま突かれたい。
 南が泣いて喘いで許しを乞うても一顧だにされず、無慈悲なまでの強大な力で支配されて、気絶するまでイかされたい。

 そんな妄想に溺れながら、南は挿れたバイブをきゅうきゅうと締め付けては唇を噛みしめる。
 呉凱ウーカイにも言ったとおりまだナカだけではイけず、それでも欲しいのは『前』ではなく『後ろ』なのだと身体が訴えてきて、腹の奥がどうしようもなく切ない。

「ハッ、あっ、う、うう」

 仕方なく臍まで反り返ったペニスを扱いて射精しようとするがなかなか出ない。

「う、イきたい、イきたい、ぃ…………っ」
(どうしよう……っ)

 南は泣き出したいほど狼狽える。苦労して手に入れたそのバイブはかなりの太さで、ようやく入るようになったはいいがさすがに怖くて電動のスイッチを押したことはなかった。
 手で出し挿れしながら前を扱いてもどうしても達することができず、南は亀頭の部分を前立腺に押し当てて恐々スイッチを押してみた。

「~~~~~~~ッツ!!」

 突然の衝撃に思わずソコから外して慌ててスイッチを切る。

「……ビ、ビックリ、した……」

 だがこのままではいつまで経っても望む快楽を得ることができない。南はもう一度一番弱い数字にダイヤルを合わせてスイッチを入れるが、やはりどうしても怖くて手を止めてしまう。

「う……どうしよう……、こんなのって……」

 南は泣きたいのを堪えて思わず呟く。
 今日、初めて他人の手で与えられる快感を知ってしまったせいか、どうしても自慰ではイけず、自分でコントロールできるオモチャも刺激の強さについ腰が引けてしまって最後までイくことができない。

「う……うそだ、ろ……ぉ……っ!?」
(ヒドい、こんなの、ひどすぎる)

 あの店長さんに採用できないと言われたばかりなのに、自分で自分を慰めることさえできないなんて。

 誰でもいい、熊でも虎でも鬼でもなんでもいいからイかせて欲しい。
 結局欲しい絶頂は得られぬまま、南はどうしようもない悔しさと悲しさと切なさとがぐちゃぐちゃに混ざった気持ちのままでバイブを握りしめて泣きながら眠った。
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