【完】泡姫ミナミくんの初恋 ~獣人店長さんと異世界人のソープ嬢(♂)

伊藤クロエ

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★虎の店長さん、キレそうになる。

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 このニンゲンは間違いなく馬鹿だ。
 明らかにド素人のカタギ者のくせに「オスと交尾がしたいから」となぜかまともな恋人を探すのではなくこんな場末の男ソープなんかに来る時点で相当な馬鹿だが、それでも前から相当な変わり者が多いと聞いていた界客ではあるし、一見能天気そうに見えても異世界なんぞから飛ばされてきて苦労も多かっただろうから、と色々と慮って手加減してやっていたつもりだった。
 この研修だって、この考えなしのニンゲンが驚いてしっぽを巻いて逃げ出して、二度と五華路なんかに迷い込まぬようにと思ってやったことなのに。逃げ出すどころかこんなとろとろに蕩けた目をして呉凱の男根を欲しがるような真似をして。
 もし呉凱が本当に悪い男であればここでめちゃくちゃにされても仕方がないところだ。

(いいや、馬鹿とかいうレベルじゃねぇ。こいつは、全然わかっちゃいないとんだ性悪だ)

 このニンゲンはセックスのことなど何もわからない、と言いながら、一体自分がどんなツラでどんな恰好をして、どれほどオスを煽り誘惑しているのか全然わかっちゃいない。

(わかってやってるなら即採用だ。けどこいつはそうじゃねぇ)

 今まで呉凱は仕事とプライベート、そして自分の感情は完全に切り離してきた。なのにこのニンゲンには最初から調子を狂わされ、うっかり甘やかしてしまいそうになっていたことを心底後悔する。

(今の俺こいつはあくまで雇用者と被雇用者の関係だ。ここでこんなことをしているのもあくまでビジネスで、そこに私情を挟むなどもってのほかだ)

 男を知らない子どものおイタと大目に見てやるつもりだったが、この無自覚なビッチを放置しておけばいつかこのニンゲン自身がひどく痛い目を見るハメになるだろう。
 素知らぬ顔でこのニンゲンを雇って客を取らせれば、ぶっちゃけかなりの稼ぎになるに違いない。こういうエロいことや快感に素直な身体で、なおかつ世間を知らず無茶なこともできてしまうような相手は一部の性悪な獣人たちに大層人気があるのは明白だった。
 だが呉凱ウーカイの最低限の大人としての良識がそれを良しとしない。ならば例えミナミを傷つけることになろうが、まだ引き返せる今のうちに呉凱はやるべき事をやらなければならなかった。

「……前立腺マッサージだな。よし、なら俺が手本を見せてやる」

 そう言って立ち上がると、ミナミが一瞬虚を突かれたような顔をした。

「今度はお前がここに座れ」
「え、でも、店長さんがお客さんで……」
「今はいい。俺がやってみせるから、お前は自分の身をもってやり方を覚えろ」

 これ以上ないほどミナミが大きく目を見開いた。ぽかんと口を明けて呉凱を見ているその顔を見下ろして、呉凱はわずかに溜飲を下す。

「オラ、さっさとしろ。俺は忙しいんだ」
「……は、はい!」

 ミナミが慌ててその卑猥な形の椅子に腰掛ける。呉凱はその前にしゃがんで踵に尻を乗せる。

「いいか、普通は指サック使うけど、お前はさっき触った感じ、ちゃんと中キレイにしてきたんだろ?」
「あ、はい」
「ならナマでするからな。その方がお前も触った感触とかよくわかるだろうし」

 一瞬、ミナミの目にかすかに動揺らしきものがよぎった。だがお構いなしに呉凱は手にグリセリンフリーのアナル用ローションをたっぷりと垂らして、椅子の溝から南の股間に手を入れた。

「客のケツに入れる時はゆっくり、外側からマッサージしてやれ」

 そう言ってぬるぬると孔の周りを円を描くように揉みしだく。

「最初は小指、抜いて次に中指だ。お前は大丈夫だろうからいきなり中指行くぞ」

 そう言って呉凱はかすかにひくついている入り口を指の先で押し開き、くちくちと動かして広げていった。するとミナミの身体がピクッと反応する。それを見ながら呉凱はぐりっと第二関節あたりまで一気に指を押し入れた。

「ひあっ!」

 小さく声を上げてミナミが背筋を伸ばす。

「もちろん、客相手にこんないきなり突っ込んだりすんなよ。時間ねぇからお前にはいろいろ省略すっけど」
「……は、い」
「ココ、この入り口から少しずつこの筋辿って、指の腹使えよ。そんで……ココ、な」
「…………ッツ!!」

 明らかにミナミの身体が跳ねた。

「わかるだろ? このコリコリしたとこ、こうして指の腹で押して、揺らして」
「う……っふ……っ」
「やさしく撫でてやる」
「ん……っ!」

 ミナミが大きく息を吐き、呉凱ウーカイの肩に置いた手を突っ張ってなんとか堪えようとしているのがわかる。けれど呉凱はミナミのその恐ろしく敏感なふくらみを責める手を緩めなかった。

「どうだ、気持ちいいか?」

 さっきミナミが呉凱に尋ねたのと同じことを聞く。するとミナミが困ったように眉を下げて唇を噛みしめたのが見えた。

「ミナミ。お前、指二本入るか?」
「え……じぶんの、なら……っ」
「それじゃあ、もし痛かったら言え。いいか、客がもし要求したら指増やして、こうやって……」

 呉凱は一旦指を入り口ギリギリまで抜くと、中指と人差し指を揃えてぬぷっ、と突き挿れた。

「ひゃうっつ!!」

 悲鳴とともに大きく反り返ったミナミの背中をもう片方の手ですかさず抱きとめる。

「お、入ったな。ここ、二本の指で挟んで擦るみたいに……わかるか? ミナミ」
「う、わ、わかる……ッ!」
「そうか、お前ほんとネコの素質あるぜ。良かったな」
「あ、そ、そう……ひうんっ!」

 明らかにミナミがいっぱいっぱいなのをわかっていながら、呉凱ウーカイは容赦なくミナミの前立腺を責めたてる。ミナミの言葉が本当ならまだヴァージンの素人相手にやりすぎだと自覚しながらも、ミナミを責める手を止めることができなかった。

(一体、こいつが言ってることは本当なのか? これで本気で処女だっつーのかよ)

 ぐちゅぐちゅと二本の指でナカを掻き混ぜ、愛撫されすぎてぽってりと腫れたふくらみを嫌というほど捏ねまわして呉凱ウーカイは言う。

「いいか、もしお前がここで働くようになったら客の言うことは絶対だ。もちろん最低限のルールはあるが、お前はここで客の言う通りに奉仕して、客をこれ以上ないくらいの天国に連れてってやんなきゃいけねぇ」
「っは、はい……ひんっ!」
「だが客と自分だけの密室では自分を守れるのも自分だけだ。てめぇのケツで客をイかせてる最中だって、いつでも絶対にお前自身が主導権を握ってなきゃ駄目だ。意味わかるか」
「は……はい、あ、ソコ、や……、わ、わかり……ッ、んうっ!」

 本当にわかっているのかどうか、ミナミは眉を顰めて呉凱の首にしがみつき、きゅうきゅうと呉凱の指を締め付けながら喘ぐ。

「おい、聞いてんのか!?」

 呉凱はミナミの腕を掴むとなんの遠慮もなくミナミの中を指で犯し始めた。突いて、えぐって、擦って、押しつぶす。

「ひあっ、あっ、て、てん、ちょ、さ、ソコソコ……っ、んんん……ッツ!」
「だから嬢がそんな感じちまってどうすんだ!」
「だって、だって、あんっ! あんっ! ソコ、イイ! きもちいい……っ!」

 呉凱にしがみついて全身を震わせ、訳も分からず甘い鳴き声を漏らすミナミの尻をパン! と叩いて言った。

「お前、マジに中で感じてんのか。とんでもねぇ淫乱ヤロウだな!」
「んっ、んっ、はあっ! な、なか、すご、きもちイイ……っ!」
「ひょっとして中だけでイけんのか?」
「そ、そんな、あうッ、ム、ムリ……、です……ひんっ」
「ふーん、そんな風には見えねぇけどな……っ!」

 呉凱は腕ごとミナミの身体を持ち上げるようにして一度奥を激しく突くとミナミの呼吸が一瞬止まる。そして、ぬるっと指をミナミの中から引き抜いた。

「はああぁあ…………んっ」

 途端にミナミが呉凱の肩にすがるように崩れ落ちてくる。

「お前、全然ダメだな」

 呉凱はへたり込んだミナミの身体を抱きとめると、床に横たえてやって言った。

「嬢が客ほったらかしで一人でイきそうになってどうする。言っただろ? いつでも、どんな場面でも主導権を握るのは嬢だ。でなけりゃ客にいいように遊ばれて、下手すりゃ怪我どころじゃすまなくなるぜ」
「……っは、……ハッ、……は、……は、い…………す、すみま、……っ」
「もういい。テストはここまでだ」

 呉凱はそう言って湯桶に汲んだ湯をザッと自分の下半身に掛けて立ち上がる。

「しばらく時間やるからソレ、自分で処理してベッドで休め。着替えが済んだらさっきの事務所に来い」

 ハアハアと肩で息をしながらローションまみれの床に蹲るミナミの背中にそう言って、呉凱は風呂場から出た。

(…………ほんとに、とんでもねぇ野郎だ)

 狭いベッドルームに戻り再び店員の制服を着ながら呉凱は思う。

(まさかあんなド素人にこの俺が一瞬理性飛びそうになるとはな)

 しかも一番始末に悪い方向へ、だ。

(一瞬、あの何にもわかっちゃいねぇバカを、めちゃくちゃにしてやりたいと思った)

 どこの誰ともわからぬ男とこんな密室で二人きりになることの危険性を、あのニンゲンはまるでわかっちゃいない。あんな風に自分で自分がコントロールできないくらいヨがって喘いで呉凱にしがみつき、全てを預けて警戒心の欠片もないなんて無防備にも程がある。
 もしもひどい暴力を振るわれて、怪我どころか取り返しのつかないような傷物にされたらどうするつもりなのか。まるで思いもつかないらしいその危機感のなさは致命的だった。

(けど、これで懲りただろう)

 初めて会ったばかりの得体のしれない獣人なんかに好き勝手されて、最後までイかせても貰えず風呂場に放り出されて、きっとあのちっちゃなニンゲンは今頃泣いているかもしれない。それが悔しさからか寂しさからかはわからんが、これでもう二度とこの店に、そして呉凱の前には姿を現しはしないだろう。

(……ちっちぇえニンゲン、なんて言ったら、またムッとした顔すんのかな)

 ふとそう思って呉凱は口角を上げる。そしてちら、と風呂場へ続くドアを見てから個室を出て行った。
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