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【最終章】新世界
141 満月★(サイード・ダルガート)
しおりを挟むギシ、と木の床が軋む音がして、両手を掴まれる。まだ軽く触れられただけなのにどんどん体温が上がっていくのを感じる。
初めにダルガートが右手の甲に、サイードさんが左手の手のひらにキスをした。それから二人の唇が肌をついばみ、軽く食んで、尖らせた舌を這わせながら段々上に上がってくる。そしてぐい、と性急に二人の懐に抱き込まれた。
パチパチと火の爆ぜる音だけが聞こえてくる薄暗い小屋の中。二人の手が僕の髪を梳き、投げ出した踝を撫で、下着をはぎ取って後ろから身体を抱え上げ、足を開かせた。
「そんなことを言って、ただで済むと思っているのか? カイ」
耳に忍び込む、甘くかすれた声と懐かしい匂いがズン、と下腹に響く。
「優しくして欲しいと言われたのは、どうやら偽りだったようですな」
そんな意地の悪い言葉で煽られて肌がぞわぞわと粟立つ。
僕の肌を知り尽くした手で身体中をまさぐられ、ありとあらゆる場所を愛撫されて僕は甘い吐息を漏らす。すると前から覆い被さってきたサイードさんに顎をすくい取られて深く口づけられた。
伸ばした腕を持ち上げられては肘の内側から脇へと唇を這わされる。後ろから抱え込むダルガートの手が胸を覆ってやわやわと揉みしだく。もう何年も二人に弄られ続け育てられた胸の先端を摘ままれ、扱かれてぷっくりと勃起したところを前から吸われて舐められた。
「……ッ、……っ、ん……っ」
「カイ、声を我慢しなくていい」
目を開けると、覆いかぶさるサイードさんの目が情欲に濡れて僕を見ている。彼よりもっと浅ましく発情しているに違いない僕の目の前でこれ見よがしに自分の指を舐めると、すでに勃ち上がりかけている僕のものをそっと撫でさすった。
「……っは、あ、も、もっと、もっとちゃんとさわって……ぇ……っ」
「まだだ。まだ駄目だ」
「……っ」
五本の指先だけでさわさわと先端や幹をなぞられて思わず腰を突き出す。
「あっ、あっ、あっ」
「もう蜜がこぼれ始めている。カイはここも泣き虫なのか?」
「ひうんっ!!」
サイードさんにいやらしい言葉で嬲られながら先端を弄られて、ただそれだけで痛いほどペニスが張り詰めた。
「や……っ、サイードさん……っ、焦らさない、で……っ」
「ああ……すまない、カイ」
わずかに目を見開いて、サイードさんがこめかみにキスをする。そして今度はあの大きな手でしっかりと僕のものを扱いてくれた。
「あっ、ひう、んっ、あうっ」
硬い手のひらがたまらなく気持ちがいい。それでもやっぱり微妙に欲しいところを外されて煽られる。
え、無意識? 多分今は前のサイードさんと今のサイードさん二人分の記憶や性格が統合されている状態だと思うけれど、もしかして育った環境が違うと性格も少し変わるのだろうか。今のサイードさんは、前よりなんだか少しだけ意地悪……?
冗談じゃない。サイードさんとダルガート二人掛かりで虐められでもしたら間違いなくとんでもないことになる。
僕を後ろから抱きとめているダルガートが荷物を引き寄せ、火傷や切り傷に使う軟膏を取り出した。
彼の厚みのある手が僕の胸の上でたっぷりと軟膏を掬い、温めながら緩めていく。サイードさんはかすかに口角を上げると、ダルガートの手からそれをなすり取った。
ぬめりを帯びた二つの手に胸と股間をゆるゆると撫でられる。
「あっ、っは、あ……っ、……ン……ッ」
やがて中へと入って来た指を、僕のそこは歓喜に震えながら甘く締め付けた。
「それだけでは物足りないのでは?」
後ろからダルガートにそう聞かれて、恥ずかしさを堪えて小さく頷く。するとくちゅくちゅ出入りしているサイードさんの指と一緒にダルガートの太く節くれだった指が中に潜り込んできた。
「あっ、あっ、ひう、んっ!」
二人の指が交互に行き来し、中で時々絡み合いながら僕を奥深くまで暴いていく。
「んっ、あ、ゆび、ゆ、び……っ、あ、きもちいい、きもちいい……っ」
サイードさんとダルガートが一緒に僕を抱く時、これをされるのが一番辛い。
二人の指はぴったりと同じリズムで中を愛撫していたかと思うと、突然まったくバラバラの動きで好き勝手に責め立ててくる。そうなるとどう息を合わせればいいのか、過ぎる快感をどう逃せばいいかわからなくて、もうたまらなくなるのだ。
「あうんっ! ッヒ、あ、や、イヤだ、ソコ、あっ、ん~~~っ」
「そんな声で啼いていては男を煽るだけだ、カイ」
笑いながらサイードさんが囁く。
「……っそ、そんな、こと……はうッ」
言い返そうとしたところにぬるり、と濡れた舌が耳孔に這いこんできて息を呑んだ。
嬉しい。嬉しい。確かにサイードさんとダルガートだ。肌に馴染んだ熱や男らしい匂いにこの指づかい、何もかもが欲しくて欲しくてたまらなかったものだ。
僕はうっすらと目を開いてサイードさんの綺麗で凛々しい顔を見上げる。
「……そう、煽ってるんですよ、僕」
熱い吐息に乗せてそう答え、サイードさんの股間を押し上げている大きなものに手を伸ばした。そしてズボンの上からでもはっきりと形がわかるほどすでに硬く猛っている男根を扱く。頭が沸騰しそうだ。
「欲しい、僕、欲しいです……、サイードさん、の」
そう言った途端、後ろ髪を掴まれて激しく口づけられる。いつものサイードさんからは予想もつかないほど荒々しく口内を嬲られて、まだ中に挿れられたままの指をきゅぅうっと締め付けた。
それからダルガートの手によって、服を全部脱ぎ捨てたサイードさんの上にひざまずかされる。竈の明かりに照らされて毛布の上に寝そべった逞しい褐色の身体は、あまりにも美しくて官能的だった。
サイードさんの股間に深々と顔を埋めて、欲しくてたまらなかったものにそっとキスをする。そして丸くて滑らかな先端を咥えて呑み込んだ。
「ん……っ、……っ、……っふ、ん…………っ」
熱くて硬いものを舐めしゃぶりながら、恐ろしいほど興奮している。サイードさんの手が僕の髪をかき回し、優しく撫でてくれた。
背中にダルガートのたまらなく熱い巨躯が覆いかぶさって来て背骨の突起一つ一つに口づけていく。時々厚みのある舌で舐められては吸われ、そっと歯を立てられて思わず腰が揺れた。
早く、早く欲しい。二人の熱くて硬くて、僕の空っぽだった心と身体を繋ぎとめてくれる大きな楔が。
「欲しい、サイードさん、ダルガート」
唾液の糸を引きながら僕はサイードさんの上で懇願する。
「お願い、僕に、ちょうだい……っ。今二人が確かにここにいて、僕のこと愛してくれてるっていう、証拠を」
その言葉に、優しくて意地悪でとてつもなく強くて誰よりも僕を欲しがってくれる二匹の獣が微笑んだ。
◇ ◇ ◇
「あっ、あっ、んぐ、んっ、ひうっ」
サイードさんの完全に勃起したペニスが、すっかりその形を覚え込んでしまった僕の秘腔をみっちりと埋め尽くしている。彼の上に跨って、奥を捏ねるように何度も何度も下から突き上げられながら僕は頭を空っぽにしてひたすら喘ぎ続けた。
「んっ、んっ、っあ、あう」
ギラギラと欲情している目が乱れる僕を見上げている。サイードさんのものを咥え込んで下腹をひくひく痙攣させているのも、ダルガートに後ろから尖りきった乳首を弄られて感じてしまっているのも全部見られている。
あまりの気持ちよさにとろとろになった身体を揺さぶられながら、ふとサイードさんの途切れた右腕が目に入った。思わず泣きそうになって歯を食いしばる。けれどそんな僕にすぐ気づいたダルガートが、サイードさんのものを埋め込まれた下腹をぐっと押してきた。
「あっ、や、すごい、ここ、ここまで、はいってる……っ」
ぐいぐい押されたところを中からえぐるように突かれて目の前がパチパチと白くはじける。
「あっ、はっ、すき……っ、サイード、さん、すき、だいすき……っ」
「ああ、俺もだ、カイ……っ」
亀頭でぐりぐりと最奥を捏ねられて僕は目を見開いた。そして僕の腰を掴むサイードさんの左手にぐっと力が入って、腹の奥に熱い奔流がぶちまけられる。
下腹がぎゅっと引き絞られて痙攣しているのを感じたけれど、僕のものからは何も出ていなかった。
「ああ、また女のように達してしまったのか?」
腹筋の力だけで上体を起こしたサイードさんが低く笑って口づけてくる。ぬるぬると舌を絡められて鼻から甘い息を漏らしていると、今度は後ろからダルガートの声を耳に吹き込まれた。
「ならば今度は私が神子殿を涅槃へお連れいたそうか」
サイードさんの胸にぐったりともたれていた身体を引きずられ、毛布の上に仰向けに寝かされる。そして伸し掛かってきたダルガートに足を開かされて太い胴をねじ込まれた。
赤黒い亀頭でサイードさんの体液に濡れた後腔をぬるぬるとなぞられる。
「……っは、はやく、ダルガートの、ダルガートのも、いれて……っ」
いっぱい埋めて、僕に感じさせて。間違いなく二人がここにいて、僕を愛してくれているんだと。
「ひ、ぐ…………っ!!」
恐ろしく大きなものが狭い肉壁をこじ開けて入って来る。内臓ごと押し上げられるような苦しさに息が止まりそうになった。でもそれが嬉しくて気持ちがよくてたまらない。
「優しくして欲しいと言っておいでだったが」
彼特有の、あの延々と続く捏ね上げるような腰の動きを思い出してそれだけでイってしまいそうになりながらその声を聞く。するとダルガートが僕の頭の両側に手をつき、僕を見下ろして言った。
「もう二度と、貴方を傷つけたり無体を働いたりはしないとお誓い申し上げる」
いつも表情の読めないダルガートの黒い目に見つめられて、隙間なくぐっぷりと埋め込まれたもので最奥をゆるゆると捏ねられて、胸の中が甘い疼きでいっぱいになる。
「いいよ、だいじょうぶ、僕は一度だってダルガートに傷つけられたりしたことなんてない」
疲れを知らないダルガートが同じリズムで優しく甘く奥をずっと突いていてくれる。
「ダルガート……っ、ぼく、もう、神子じゃないよ……っ」
だから今度こそカイ、って呼ぶしかないね、とほくそ笑むようにして言うと、珍しく目を細めたダルガートが身を屈め、耳元で僕の名前を囁いた。
何度も繰り返し繰り返し小さな絶頂を味合わせてくれる彼に、僕は息も絶え絶えになりながら「好き、大好き」とうわごとのように呟く。その間サイードさんはずっと手を握って、柔らかな手つきで僕のペニスを撫でながらキスをしてくれた。
それから僕は夜が明けるまで、代わる代わる二人に溢れんばかりの愛と欲望とを注ぎ込まれたのだった。
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