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【最終章】新世界
139 嵐の夜 2
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僕が話をしている間、サイードさんは一言も口を挟まなかった。そして全てを聞いても呆れたりせず、くだらぬ作り話を言うなと腹を立てることもなく、いつもと変わらぬ落ち着き払った声で尋ねた。
「……つまり今の俺たちは二度目の人生を歩んでいて、前の生で俺とダルガートはお前の護衛騎士であったというのだな。そして俺の身に以前と同じ不幸が起こるかもしれないと心配してこのダウレシュに来たのだと」
「ええ、そうです」
「今のこの嵐は、お前の言う《神子の力》によるものなのか?」
「わかりません。今のこの世界には《慈雨の神子》自体が存在しないし、それに数日前に」
と一瞬言葉が詰まりそうになって咳払いをする。
「ええと、数日前にちょっと……気持ちが乱れることがあったけど、その時は特に異常なことは起きなかったので」
「ではこの嵐がどのくらい続くのかも見当がつかないか?」
「はい、すみません」
「いや、いい」
頷くサイードさんを見てしみじみと思った。僕の話を聞いてサイードさんが真っ先に気にするのは、時間を巻き戻すとかこことは違う世界だとかいうことじゃなくて、やっぱりダウレシュの安全に関わることなんだ。
サイードさんらしいな、と思いつつ「お前」という初めて聞く呼びかけを新鮮に感じて笑みを浮かべる。
その時、不意にダルガートが口を開いた。
「異変はあった」
「え?」
驚いて僕とサイードさんがダルガートを見る。すると彼は濡れた前髪を掻き上げて言った。
「数日前『心が乱れた』と言うその日から、月が消えた」
「えっ!?」
するとサイードさんも頷く。
「三日前の夜のことだな。我らもそのことには気づいていた」
全然知らなかった。え、月が消えたって?
でもそう言われてみればあのことがあった夜もその次の夜も、夜営中に月を見た覚えがない。その前にカハル陛下と一緒だった時には間違いなく少し欠けた月が上っていた。あれからまだ一週間も経っていないのに新月になったとは考えられない。
そういえば昨夜、サイードさんのお父さんたちがやけに天候や作付けのことをダルガートに聞いていたのは、月が消えたのを心配してのことだったのか。
「そんな……つまり……、どういうこと?」
あの夜、僕はダルガートがあんな手段に出るほど僕を強く疑っていることが死ぬほど悲しくて、それでも直に触れ合えたことがあまりにも嬉しくて、相反する心がせめぎ合ってもうめちゃくちゃだった。
その夜から月が見えくなったのは僕のせいなのだろうか。ならば今嵐が起きているのも僕のせいなのか? 急に震え出した手を握りしめて呟いた。
「で、でも、もうこの世界には神子は存在しないから、だから神子の力だって、もう」
「……思うのだが」
ダルガートの声が激しい雨音の隙間に響く。
「確かに神子とやらが存在せぬのなら、神子の力もあるはずがなかろう。だがその天候を操る力とは、神子でなくお前自身の力ではないのか?」
「…………え?」
一瞬意味がわからず、ぽかんと口を開けてしまった。けれどサイードさんがそれを聞いて深く頷く。
「確かに。《慈雨の神子》というのはたいそう重い肩書のようだが、実際に雨を降らせ恵みを与えるのはお前自身なのだろう。先ほどの話の中で、お前はその力を制御するために並々ならぬ苦労をしたと言っていた。ならばそのわざを成し遂げたのはお前自身の努力によるものであって、肩書のあるなしは関係がない」
「…………え、でも…………」
そうなの? エルミランの山頂に雨が降り、イシュマールの地に水が増えたのは、僕が《慈雨の神子》だったからじゃないの?
呆然とする僕にサイードさんがさらに言う。
「お前は、神子だったお前を身を呈して守ったという我ら二人のために、また干ばつの犠牲になった多くの人々や過去の神子たちのために歴史を変え、干ばつそのものをなかったことにしたと言った。それはすべてお前が神子だったからこそできたことだというのなら、過去の神子たちがそれをできなかったのはなぜだ?」
「そ、それは……」
「《神子》だからそのようなことができたのではなく、お前だったからこそ成し得たことではないのか」
僕だから。
僕だからこそ。
サイードさんは少しだけ柔らかな目をして言った。
「俺はお前の話したことを完全に理解できたわけではない。だがお前は嘘や偽りを言うような男ではないと思う」
「…………っふ…………っ、……く……ぅ……っ」
ぼた、と涙が落ちた。それはもうとめどなく、後から後から涙が落ちてくる。
今の僕は、この世界がどこかの誰かが作り上げたストーリーに則って生み出されたものだと知っている。でもあの時の彼の言葉を信じるならば、ここに生きている人たちの意思や選択はその人自身のもので、操られたものではない。
彼らがしたことが、このイシュマール大陸という箱庭を造り、どこにどういう駒を配置するかということだけで、その中で起きることはすべて駒である僕たち自身の意思と行動によるものであるなら、僕たちみんなが今まで一生懸命やってきたことは決して無駄じゃなかったのだ。
駄目だ。泣いちゃいけない。もし二人の言葉が本当なら、今この嵐を起こしているのは僕だ。涙を止めなきゃ。
顔を両手で覆って背中を丸めた時、突然誰かの手が僕の髪に触れた。驚いて顔を上げると、ダルガートが僕の肩まで伸びた髪を一房掬って言った。
「耳の石を」
「え?」
「この石を彼にも見せてみろ」
ダルガートの言葉にサイードさんが頷く。
「そういえば前の世界とやらで、俺たちが共に艱難を乗り越えた友情の証としてお前に耳環を贈ったと言っていたな。それが今もあるのか? ならば見せて欲しい」
「え、あ、はい」
と答えようとした時、竈の中の薪が崩れた。それを見てサイードさんが新しい薪をくべようと立ち上がる。するとダルガートの低く抑えた声が耳元で聞こえた。
「言わずともよいのか」
「え?」
「この地へ来て彼に会い、言いたいことが他にあったのではないのか」
そう言われて思わず胸が詰まる。
ダルガートは、僕がさっきサイードさんに前の世界のことを話した時に、僕がサイードさんのことが好きで、それでどうしても会いたかったから来たのだと言わなかったことを聞いているのだろう。
「……いい。だってサイードさんは今が一番幸せなんだから」
余計なことを言って困らせたくないし、気まずくなるのも嫌だ。
だからこそ下級神官としては分不相応なこのピアスは、昔僕の護衛騎士だったサイードさんとダルガートが友情と信頼の証として贈ってくれたものだと説明したのだ。
話せることは全部話した。二人とも僕がみんなに危害を及ぼしたり悪いことをしようとしているわけじゃないことだけはわかってくれたらしい。それで充分だ。
本当ならダルガートにだって僕の恋心なんて秘密にしておくべきだったのだろうが、今更それは仕方がない。
少しだけ気が楽になって、鼻を擦ってダルガートに小さく笑う。
「あの時のことはダルガートも忘れていいよ。変なこと言っちゃってごめん」
そう僕の、僕たちの恋は僕だけが覚えていればいい。
でもダルガートはいつもの何を考えているかわからない黒い目でじっと僕を見るだけで何も答えなかった。
「寒くはないか?」
そう言ってサイードさんが僕のすぐ近くに座り直す。
「では俺たちが贈ったという耳飾りとやらを見せてくれ」
「はい! 二人は僕と一緒に国のあちこちを回って水が回復してるか調べて回ったりして、すごく楽しかったんですよ! 主従とかじゃなくて……仲のいい、年の離れた友達、みたいな……。夜営の時は必ずサイードさんが獲物を獲ってきてくれて、一緒に夜空を眺めながらお茶を飲んだり、冗談言っ……」
と思わず勢いづいて話していた時、ダルガートが指先で僕の顎を持ち上げた。
二人の手が伸びてきて、僕の両側の髪を持ち上げる。そして現れた僕のピアスを見たサイードさんは、なぜか目を見開き息を呑んだ。
「……これを《友情の証》として……?」
左のピアスに触れながら、サイードさんの声に驚愕と疑念の色が滲む。
その厳しい表情に思わず息を詰めると、同じく右のピアスに触れたダルガートが言った。
「右の石は鑽玉、天の誕生から世の終末さえも越える永遠の時を表すもの。左の石は橄欖玉、心身共に結ばれる和合の縁を示すものだ」
そして硬直している僕の目をダルガートが見据える。
「いいか、これは決して友に贈る石ではない」
「これを俺たちがお前に与えたというのか?」
サイードさんの言葉に、とっさに後ずさり逃げ出そうとした。けれどそれより早く二人が僕の腕を掴む。
ダルガートはあの夜このピアスを間近に見た時にすでにこの石の意味を知っていたのだろうが、サイードさんにとってはまさに青天の霹靂だったようだ。
唖然としたように目を見開き僕の耳を見ていたサイードさんが、隣で同じように僕の腕を掴んでいたダルガートに尋ねた。
「…………もしも、このような石を贈るなら、どんな相手に贈りたいと思う?」
するとダルガートが少し考えて答える。
「世界の終わりまで決して手放したくない者に。お前は?」
「……この世で最も愛しく、何ものにも代えがたき人に」
僕を挟んで二人は互いに見つめ合い、サイードさんの目がますます大きく見開かれた。
「……そうだ、あの時もお前はそう言った。そして俺も……」
「……同じことを言った。幾月も掛けて、ありとあらゆる伝手を頼り」
「そして見つけた」
何かに導かれるように二人が呟く言葉を、息を詰めて聞く。
「橄欖玉の緑は萌えいずる若木の色を」
「鑽玉の輝きはオアシスに湧き出でる清水の色を」
「それを九世変わらぬ白金に繋ぎ」
「あらゆる恐れと苦しみから、かの人を守れるように」
そしてサイードさんとダルガートはゆっくりと瞬きをしてから僕の方を見た。
「…………カイ?」
「……つまり今の俺たちは二度目の人生を歩んでいて、前の生で俺とダルガートはお前の護衛騎士であったというのだな。そして俺の身に以前と同じ不幸が起こるかもしれないと心配してこのダウレシュに来たのだと」
「ええ、そうです」
「今のこの嵐は、お前の言う《神子の力》によるものなのか?」
「わかりません。今のこの世界には《慈雨の神子》自体が存在しないし、それに数日前に」
と一瞬言葉が詰まりそうになって咳払いをする。
「ええと、数日前にちょっと……気持ちが乱れることがあったけど、その時は特に異常なことは起きなかったので」
「ではこの嵐がどのくらい続くのかも見当がつかないか?」
「はい、すみません」
「いや、いい」
頷くサイードさんを見てしみじみと思った。僕の話を聞いてサイードさんが真っ先に気にするのは、時間を巻き戻すとかこことは違う世界だとかいうことじゃなくて、やっぱりダウレシュの安全に関わることなんだ。
サイードさんらしいな、と思いつつ「お前」という初めて聞く呼びかけを新鮮に感じて笑みを浮かべる。
その時、不意にダルガートが口を開いた。
「異変はあった」
「え?」
驚いて僕とサイードさんがダルガートを見る。すると彼は濡れた前髪を掻き上げて言った。
「数日前『心が乱れた』と言うその日から、月が消えた」
「えっ!?」
するとサイードさんも頷く。
「三日前の夜のことだな。我らもそのことには気づいていた」
全然知らなかった。え、月が消えたって?
でもそう言われてみればあのことがあった夜もその次の夜も、夜営中に月を見た覚えがない。その前にカハル陛下と一緒だった時には間違いなく少し欠けた月が上っていた。あれからまだ一週間も経っていないのに新月になったとは考えられない。
そういえば昨夜、サイードさんのお父さんたちがやけに天候や作付けのことをダルガートに聞いていたのは、月が消えたのを心配してのことだったのか。
「そんな……つまり……、どういうこと?」
あの夜、僕はダルガートがあんな手段に出るほど僕を強く疑っていることが死ぬほど悲しくて、それでも直に触れ合えたことがあまりにも嬉しくて、相反する心がせめぎ合ってもうめちゃくちゃだった。
その夜から月が見えくなったのは僕のせいなのだろうか。ならば今嵐が起きているのも僕のせいなのか? 急に震え出した手を握りしめて呟いた。
「で、でも、もうこの世界には神子は存在しないから、だから神子の力だって、もう」
「……思うのだが」
ダルガートの声が激しい雨音の隙間に響く。
「確かに神子とやらが存在せぬのなら、神子の力もあるはずがなかろう。だがその天候を操る力とは、神子でなくお前自身の力ではないのか?」
「…………え?」
一瞬意味がわからず、ぽかんと口を開けてしまった。けれどサイードさんがそれを聞いて深く頷く。
「確かに。《慈雨の神子》というのはたいそう重い肩書のようだが、実際に雨を降らせ恵みを与えるのはお前自身なのだろう。先ほどの話の中で、お前はその力を制御するために並々ならぬ苦労をしたと言っていた。ならばそのわざを成し遂げたのはお前自身の努力によるものであって、肩書のあるなしは関係がない」
「…………え、でも…………」
そうなの? エルミランの山頂に雨が降り、イシュマールの地に水が増えたのは、僕が《慈雨の神子》だったからじゃないの?
呆然とする僕にサイードさんがさらに言う。
「お前は、神子だったお前を身を呈して守ったという我ら二人のために、また干ばつの犠牲になった多くの人々や過去の神子たちのために歴史を変え、干ばつそのものをなかったことにしたと言った。それはすべてお前が神子だったからこそできたことだというのなら、過去の神子たちがそれをできなかったのはなぜだ?」
「そ、それは……」
「《神子》だからそのようなことができたのではなく、お前だったからこそ成し得たことではないのか」
僕だから。
僕だからこそ。
サイードさんは少しだけ柔らかな目をして言った。
「俺はお前の話したことを完全に理解できたわけではない。だがお前は嘘や偽りを言うような男ではないと思う」
「…………っふ…………っ、……く……ぅ……っ」
ぼた、と涙が落ちた。それはもうとめどなく、後から後から涙が落ちてくる。
今の僕は、この世界がどこかの誰かが作り上げたストーリーに則って生み出されたものだと知っている。でもあの時の彼の言葉を信じるならば、ここに生きている人たちの意思や選択はその人自身のもので、操られたものではない。
彼らがしたことが、このイシュマール大陸という箱庭を造り、どこにどういう駒を配置するかということだけで、その中で起きることはすべて駒である僕たち自身の意思と行動によるものであるなら、僕たちみんなが今まで一生懸命やってきたことは決して無駄じゃなかったのだ。
駄目だ。泣いちゃいけない。もし二人の言葉が本当なら、今この嵐を起こしているのは僕だ。涙を止めなきゃ。
顔を両手で覆って背中を丸めた時、突然誰かの手が僕の髪に触れた。驚いて顔を上げると、ダルガートが僕の肩まで伸びた髪を一房掬って言った。
「耳の石を」
「え?」
「この石を彼にも見せてみろ」
ダルガートの言葉にサイードさんが頷く。
「そういえば前の世界とやらで、俺たちが共に艱難を乗り越えた友情の証としてお前に耳環を贈ったと言っていたな。それが今もあるのか? ならば見せて欲しい」
「え、あ、はい」
と答えようとした時、竈の中の薪が崩れた。それを見てサイードさんが新しい薪をくべようと立ち上がる。するとダルガートの低く抑えた声が耳元で聞こえた。
「言わずともよいのか」
「え?」
「この地へ来て彼に会い、言いたいことが他にあったのではないのか」
そう言われて思わず胸が詰まる。
ダルガートは、僕がさっきサイードさんに前の世界のことを話した時に、僕がサイードさんのことが好きで、それでどうしても会いたかったから来たのだと言わなかったことを聞いているのだろう。
「……いい。だってサイードさんは今が一番幸せなんだから」
余計なことを言って困らせたくないし、気まずくなるのも嫌だ。
だからこそ下級神官としては分不相応なこのピアスは、昔僕の護衛騎士だったサイードさんとダルガートが友情と信頼の証として贈ってくれたものだと説明したのだ。
話せることは全部話した。二人とも僕がみんなに危害を及ぼしたり悪いことをしようとしているわけじゃないことだけはわかってくれたらしい。それで充分だ。
本当ならダルガートにだって僕の恋心なんて秘密にしておくべきだったのだろうが、今更それは仕方がない。
少しだけ気が楽になって、鼻を擦ってダルガートに小さく笑う。
「あの時のことはダルガートも忘れていいよ。変なこと言っちゃってごめん」
そう僕の、僕たちの恋は僕だけが覚えていればいい。
でもダルガートはいつもの何を考えているかわからない黒い目でじっと僕を見るだけで何も答えなかった。
「寒くはないか?」
そう言ってサイードさんが僕のすぐ近くに座り直す。
「では俺たちが贈ったという耳飾りとやらを見せてくれ」
「はい! 二人は僕と一緒に国のあちこちを回って水が回復してるか調べて回ったりして、すごく楽しかったんですよ! 主従とかじゃなくて……仲のいい、年の離れた友達、みたいな……。夜営の時は必ずサイードさんが獲物を獲ってきてくれて、一緒に夜空を眺めながらお茶を飲んだり、冗談言っ……」
と思わず勢いづいて話していた時、ダルガートが指先で僕の顎を持ち上げた。
二人の手が伸びてきて、僕の両側の髪を持ち上げる。そして現れた僕のピアスを見たサイードさんは、なぜか目を見開き息を呑んだ。
「……これを《友情の証》として……?」
左のピアスに触れながら、サイードさんの声に驚愕と疑念の色が滲む。
その厳しい表情に思わず息を詰めると、同じく右のピアスに触れたダルガートが言った。
「右の石は鑽玉、天の誕生から世の終末さえも越える永遠の時を表すもの。左の石は橄欖玉、心身共に結ばれる和合の縁を示すものだ」
そして硬直している僕の目をダルガートが見据える。
「いいか、これは決して友に贈る石ではない」
「これを俺たちがお前に与えたというのか?」
サイードさんの言葉に、とっさに後ずさり逃げ出そうとした。けれどそれより早く二人が僕の腕を掴む。
ダルガートはあの夜このピアスを間近に見た時にすでにこの石の意味を知っていたのだろうが、サイードさんにとってはまさに青天の霹靂だったようだ。
唖然としたように目を見開き僕の耳を見ていたサイードさんが、隣で同じように僕の腕を掴んでいたダルガートに尋ねた。
「…………もしも、このような石を贈るなら、どんな相手に贈りたいと思う?」
するとダルガートが少し考えて答える。
「世界の終わりまで決して手放したくない者に。お前は?」
「……この世で最も愛しく、何ものにも代えがたき人に」
僕を挟んで二人は互いに見つめ合い、サイードさんの目がますます大きく見開かれた。
「……そうだ、あの時もお前はそう言った。そして俺も……」
「……同じことを言った。幾月も掛けて、ありとあらゆる伝手を頼り」
「そして見つけた」
何かに導かれるように二人が呟く言葉を、息を詰めて聞く。
「橄欖玉の緑は萌えいずる若木の色を」
「鑽玉の輝きはオアシスに湧き出でる清水の色を」
「それを九世変わらぬ白金に繋ぎ」
「あらゆる恐れと苦しみから、かの人を守れるように」
そしてサイードさんとダルガートはゆっくりと瞬きをしてから僕の方を見た。
「…………カイ?」
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