月の砂漠に銀の雨《二人の騎士と異世界の神子》

伊藤クロエ

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【第三部】西の国イスタリア

113 贈り物★(サイード・ダルガート)

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 それから数日後、僕のイスタリア行きはあっさりと認められた。
 多分カハル皇帝や宰相さんの頭の中では、そこにいるだけで天候が安定すると言われる《慈雨の神子》を他国へ行かせる弊害を超える外交上のメリットがすでに描かれているのだろう。そして今回の訪問の名目となるレティシア王女の婚約祝いのために文官の代表として宰相補佐のアドリーが同行することも決まった。
 それから僕の主騎のヤハル、近従のウルド、その他の護衛の騎士と彼らに仕える従士たち、アドリーの補佐を含めて二十人ほどがついて来てくれるらしい。
 何せ今回は他国の王族への公式な訪問だ。服だの土産物だのと連日慌ただしく支度が整えられる中、僕はサイードさんとダルガートに思いがけないものを予想もしなかった時に貰ってしまった。


     ◇   ◇   ◇


「え……っ? んっ、じゃ、ふ、二人とも、一緒に来てくれる、んですか……あっ」
「ああ、そうハリファのお許しがあった」
「んっ、あっ、そう……、は……ぁ……っ」

 深々と後ろにサイードさんの熱くて硬いものを埋め込まれたままダルガートに前をぬるぬると扱かれて、あまりの気持ちよさに言われた言葉を理解するのに数秒掛かってしまった。

「……っう、で、でも、大丈夫なんですか……っ、所属が違うとはいえ、二人が同時に、国を出るなん、……あっ」
「所属が違うからこそ、だな。国の守りはサファル殿とカーディム殿がいるし、ハリファの近衛も優秀な者は多くいる」
 
 その時サイードさんにぐぐっ、と最奥を押し上げられて思わず息を呑んだ。

「あ、そこ、待って……っ、ひゃ、ダメ、ダメ……っ!」

 夜も更けた頃、寝台の帳の中に荒い息遣いと濡れた声が木霊する。もうずっと二人に向かい合わせに挟まれるようにして、サイードさんの膝に座らされ後ろから貫かれていた。前からはダルガートの手や口に愛撫され、受け止めきれない快感に身体が逃げそうになってもどこにも行き場がない。
 サイードさんのモノに一番奥にある狭い入り口のような場所を捏ねられ、くぷくぷと突かれて声も出ない。そこを責められると頭が真っ白になって身体がちょっとおかしくなってしまうからあまりしないように頼んでいるのに、サイードさんもダルガートも時々こんな意地悪をしてくる。

「ひ……、あ、ふぁ、あ、……ひゃ、あぁ……」

 ダルガートにしがみつきながらいつまで経っても慣れないめちゃくちゃな快感にだらしなく喘いでいると、突然耳元でダルガートの声がした。

「今回のイスタリア行きには季節一つ分ほど掛かりそうですな」
「そ、そんなに長く、……んんっ」
「そこで神子殿に一つお願いが」
「……お、おねが、い……っ? な、なに……ひっ! や、やだ、おなか、押さない、で……っ」

 ぐいぐいと突き上げてくるサイードさんのモノと呼応するようにダルガートが僕の下腹を押してくる。「ここまで深く入っているのがお分かりか?」とダルガートが僕に聞いているのだ。ダルガートの恐ろしく大きくて太いモノを限界まで埋め込まながら揺さぶられている時にサイードさんまで同じことをしてくるのが本当にたまらない。
 中からも外からも情け容赦なく責め立てられて、最近では射精せずにイってしまうのが癖になってしまった。
 泣いて喘いでビクビクと痙攣しながら達しそうになった時、今度はサイードさんが囁くような声で言った。

「俺とダルガートから、カイに贈りたいものがあるのだ」
「……っ、っふぁ、ひぁ、あ……っ、あっ」
「どうかイスタリアでも必ず、肌身離さず常に付けていて欲しい」
「っひゃ、わ、わかったから、も、だめ、はやく、はやく、イかせて……っ」

 ダルガートの手が離れて、また戻ってくる。

「……っは……っ、あ、……っひ、あう…………んっ」

 ぐぷぐぷと突かれながらダルガートに濡れた布で耳たぶを拭われる。同時に強い酒の匂いがして、何かツンと尖ったものが皮膚に当たるのを感じた。

「少しだけご辛抱を」
「ひぐっ!」

 後ろからサイードさんが身動き取れないくらきつく頭と身体を抱き締めて、最奥にねじ込んでくる。ぷつん、と耳たぶにかすかな痛みが走った。けれどそれの何十倍も大きな、いっそ暴力的なまでの快感を味合わされてそんな小さな痛みなど一瞬で吹き飛んでしまう。

「~~~~~~ッ!!」

 ビクビクと痙攣する身体をサイードさんに抱きしめられて抑え込まれた。その間もダルガートが耳に触れて何かしている。

「……っふ、ふぁっ、……はっ、っは……っ」

 必死に呼吸を繰り返していると頭をそっと倒されて、今度は逆の耳にダルガートが触れてきた。出さずにイってしまった前をサイードさんに優しく撫でられて思わず泣き出してしまう。その隙にまたダルガートが僕の耳に針を刺した。
 息も絶え絶えになっている僕の前に鏡が差し出される。すると両耳に小さいけれどひどく精巧に作られた耳飾りがついているのがわかった。

「これはお守りだ。右の耳環がダルガート、左は俺からだ。必ず、どこへ行くにも決して外さずにいて欲しい。きっとカイを守ってくれるだろう」

 そう言われてふと思い出した。
 以前東の辺境から帝都に戻ったばかりの頃、ウルドが「僕のような身分の人は本当は耳飾りをつけないといけない」と言っていたことがある。身分と言われて思い浮かべたのは神殿関係者や周りの偉い人たちだったけれど誰も耳飾りなんてしていなくて、どういう意味なのかウルドに聞いたら困ったような顔をされたのでそれ以上追及するのはやめたんだった。
 これってそれのことなんだろうか。でも護身のためのお守りだというピアスと身分がなんの関係があるんだ?
 よくわからないけれど二人からのプレゼントは素直に嬉しかったので「絶対外しません」と答える。するとサイードさんとダルガートが互いに目を合わせてから僕にキスをしてくれた。

 そうしてひと月の間に準備は整い、僕はイスタリアへの旅に出た。

「気をつけて行けよ、神子さんよ!」

 カハル皇帝の義弟のカーディム将軍が大声でそう言うとサファル将軍がその後ろで頷いた。カハル皇帝もニヤリと笑って「くれぐれもあの王女にサイードを獲られぬようにな」と言った。

「あの、でも婚約されたんですよね? もっと西の国の王子と」
「あの女狐が男一人で満足するタマだと思うか?」

 などと恐ろしいことを言うカハル皇帝の横でサファル将軍とカーディム将軍が大真面目な顔をして「くれぐれもサイードをよろしく頼む」と僕に言ってきた。なんと答えていいか分からず、僕もできるだけ真面目な顔で頷く。

 わざわざ宮城の外まで見送りに来てくれた陛下たちに手を振りながら、実に個性的な三人組の姿に密かに感嘆した。
 アジャール山へ登った時にヤハルから初めてカハル皇帝とその義兄弟たちの話を聞いた時には、まるで三国志のようにドラマティックな人物像にワクワクしたものだ。実際天才軍師(?)もいたし。
 けれどあの稀代の物語での三兄弟の最期は実に寂しく悲しいものだった。できることならこの三人にはいつまでもこんな風に豪快に笑っていて欲しいな、と思う。

 そういえばサイードさんとダルガートに貰った耳飾りを見てヤハルとウルドが「……なんというか……」「すごいですね……」と絶句して、カハル皇帝たちはものすごく愉快そうに笑っていた。ちなみに宰相さんは完全に呆れ返っていた。なのに誰もその理由は教えてくれなかったのはなぜなのだろうか。気になる。
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