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web版【第一部】おまけ&後日談
回想 朝浴(前)
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カイが目を覚ましたのはとっくに日が昇った後だった。
「うっは! 寝坊した!?」
「どうした? カイ」
思わず飛び起きた途端、すぐ傍からサイードの声がする。そこでようやくカイは自分が今いる場所と状況と、そして妙に重だるい下半身に気がついた。
(そ、そうだった……昨日、僕初めてサイードさんとダルガートと……っ)
と思い出して顔を赤くしていると、すぐ傍らで何か書付けのような物を読んでいたサイードがカイを見て微笑む。
「痛みはないか?」
「う、うえっ!?」
あまりにストレートに聞かれて思わず慌てふためくが、サイードの視線が自分の額の辺りに注がれているのに気づく。昨日アダンに殴られた場所のことを言っているのだとわかって悶絶した。
「……だ、だいじょうぶです…………」
「そうか」
サイードが持っていた羊皮紙の束を置くとカイの方へと身を乗り出す。そして薄掛けを剥いで目尻に口づけながら小声で囁いた。
「他の場所も問題ないか……?」
「~~~~~~~ッ!!」
突然、昨夜の情事を思わせるようなことを低く、甘やかな声で吹き込まれてカイの背筋にぞくぞくと得体の知れない感覚が走る。カイはますます真っ赤な顔をして無言で頷くと、サイードの手を借りて身体を起こした。
その時、天蓋から下がるベールの向こうから突然ウルドの声が聞こえてきて息を呑む。
「神子様、お目覚めでございましょうか」
咄嗟に声の出なかったカイに代わってサイードがごく普通の口調で答えた。
「ああ。湯の支度は?」
「できております」
「そうか」
そして寝台のベールを上げるように指示をした。ハッと我に返ってカイは自分の身体を見下ろす。
(よ、よかった、一応服着てる……)
多分カイが眠っている間に二人がもう一度夜着を着せてくれたのだろう。それにホッとする反面、ひどく乱れた枕や敷布を見て青褪めた。
(え、っていうか、これって、昨日ここで僕たちが何してたかバレバレじゃないか!?)
おまけに……ふと目に入った二の腕の内側にうっすらと鬱血跡らしきものまである。
(こ、これがキスマークってやつ……っ?)
生まれて初めて見たソレに思わずドキドキしていると、ウルドともう一人の召使いがベールを上げてカイに頭を下げた。
「おはようございます、神子様。サイード様に皇帝陛下と騎兵団よりお言付けが届いております」
「ああ」
サイードがウルドから受け取った書き付けを見てからカイに言った。
「すまない。少し外すがいいか?」
「え、あ、はい。大丈夫です」
「ウルド、カイの沐浴を。その後朝食だ。二人分用意してくれ」
それからカイに手を貸して寝台から立たせると、ひょい、と横抱きにして歩き出した。
「あ、あの、歩けます……!」
「蒸し風呂までだ」
そして例の籐の寝椅子に座らせてじっとカイを見つめた。
「すぐに戻る」
いってらっしゃい、と答えようとした隙に顎を掬い取られ、口づけられた。思わず固まってしまったカイに小さく笑うと、入口近くで待機していたウルドに何事かを指示しつつ部屋から出て行った。
(…………あ、朝から刺激が強すぎる…………)
まだ一日は始まったばかりだというのに丸一日分の疲れが襲ってきたような感覚がして、カイは思わず深々とため息をついた。
「神子様、こちらに湯舟の用意をしてございます」
ふいにウルドに言われてハッと我に返る。
「ゆ、湯舟……!?」
「はい、先日はお入りになれませんでしたので」
そう言ってウルドが微笑んだ。その『先日』とはダルガートとともにハマームでアレコレしすぎて疲れ果てて寝落ちしてしまった時のことだと気づいて、またカイの顔が赤くなる。
「ええと、じゃあありがたく……」
と言いつつ、また身体を洗うだのなんだのと言われるかな、と一瞬身構えると、ウルドが陶器の入れ物に石鹸や手巾などを並べて足元に置いてくれた。
「お背中だけお手伝いいたしますので、良きところで声をお掛け下さい」
「あ……ありがとう」
手取り足取り仕えられるのに慣れていない自分を気づかってくれるウルドに感謝しながら、カイは衝立の向こうで夜着を脱いだ。
(お湯がたっぷりあるってほんとありがたいな……)
カルブの儀式の後、神殿領では順調に地下水源の水量が増えているらしい。
普通に考えれば遠くのエルミラン山脈に雨が降って数日でそんなに水量が増えるわけがないのだが、そこも神子の不思議な力ゆえなのだろうか。相変わらずこの世界の理屈はよくわからない。
一応こちらのしきたり通り、ごく薄い浴衣に着て手巾に石鹸を擦りつけ、身体を洗う。だが、どうしても思い出してしまうのは昨夜の二人の手の感触だ。
自分で首や肩や腕や胸を洗うたびに、そこに這う大きな手のひらを思い出してしまう。
(……ってか、触られてないとこなんてどこにもないんじゃ……)
そう思ってしまうくらい、二人の愛撫は濃厚で執拗だった。
背後からカイを抱き支えていたダルガートの硬くて厚い手のひらはカイの首筋や脇の下、腹から胸へと這い周り、絶え間ない快感にピクピクと震えて蜜を零していたカイのモノや両足の付け根の際を撫でて擦っていた。
そしてサイードの、あの穏やかな微笑みを浮かべる唇にありとあらゆる場所を愛された。
カイはダルガートにやたらと執拗に嬲られていやらしくぷっくりと膨らんだままの乳首を見下ろして真っ赤になる。
そしてサイードにされた濃厚な口淫を思い出して、股間を洗う手を止めてしまった。
(だ、だって、まさかあんな……)
サイードがあの男らしい美貌をカイの股間に深々と埋め、そそり勃つモノを咥え込んでいた光景が目蓋に焼き付いて離れない。
我慢できずに彼の口内へ精を零してしまったカイを見上げてくっきりとした口元に笑みを浮かべた顔は、普段の穏やかさが嘘のようにゾクゾクするほど危険な官能に満ちていた。
「…………っは……ぁ……っ」
あまりに刺激的かつ衝撃的な光景を思い出しては思わず息を吐きだす。
(こ、ここ、ナカもちゃんと洗わないといけないよな……多分……)
そして未だに何か太いモノが挟まっているような感覚が残っている後腔に、そっと指を這わせた。
「うっは! 寝坊した!?」
「どうした? カイ」
思わず飛び起きた途端、すぐ傍からサイードの声がする。そこでようやくカイは自分が今いる場所と状況と、そして妙に重だるい下半身に気がついた。
(そ、そうだった……昨日、僕初めてサイードさんとダルガートと……っ)
と思い出して顔を赤くしていると、すぐ傍らで何か書付けのような物を読んでいたサイードがカイを見て微笑む。
「痛みはないか?」
「う、うえっ!?」
あまりにストレートに聞かれて思わず慌てふためくが、サイードの視線が自分の額の辺りに注がれているのに気づく。昨日アダンに殴られた場所のことを言っているのだとわかって悶絶した。
「……だ、だいじょうぶです…………」
「そうか」
サイードが持っていた羊皮紙の束を置くとカイの方へと身を乗り出す。そして薄掛けを剥いで目尻に口づけながら小声で囁いた。
「他の場所も問題ないか……?」
「~~~~~~~ッ!!」
突然、昨夜の情事を思わせるようなことを低く、甘やかな声で吹き込まれてカイの背筋にぞくぞくと得体の知れない感覚が走る。カイはますます真っ赤な顔をして無言で頷くと、サイードの手を借りて身体を起こした。
その時、天蓋から下がるベールの向こうから突然ウルドの声が聞こえてきて息を呑む。
「神子様、お目覚めでございましょうか」
咄嗟に声の出なかったカイに代わってサイードがごく普通の口調で答えた。
「ああ。湯の支度は?」
「できております」
「そうか」
そして寝台のベールを上げるように指示をした。ハッと我に返ってカイは自分の身体を見下ろす。
(よ、よかった、一応服着てる……)
多分カイが眠っている間に二人がもう一度夜着を着せてくれたのだろう。それにホッとする反面、ひどく乱れた枕や敷布を見て青褪めた。
(え、っていうか、これって、昨日ここで僕たちが何してたかバレバレじゃないか!?)
おまけに……ふと目に入った二の腕の内側にうっすらと鬱血跡らしきものまである。
(こ、これがキスマークってやつ……っ?)
生まれて初めて見たソレに思わずドキドキしていると、ウルドともう一人の召使いがベールを上げてカイに頭を下げた。
「おはようございます、神子様。サイード様に皇帝陛下と騎兵団よりお言付けが届いております」
「ああ」
サイードがウルドから受け取った書き付けを見てからカイに言った。
「すまない。少し外すがいいか?」
「え、あ、はい。大丈夫です」
「ウルド、カイの沐浴を。その後朝食だ。二人分用意してくれ」
それからカイに手を貸して寝台から立たせると、ひょい、と横抱きにして歩き出した。
「あ、あの、歩けます……!」
「蒸し風呂までだ」
そして例の籐の寝椅子に座らせてじっとカイを見つめた。
「すぐに戻る」
いってらっしゃい、と答えようとした隙に顎を掬い取られ、口づけられた。思わず固まってしまったカイに小さく笑うと、入口近くで待機していたウルドに何事かを指示しつつ部屋から出て行った。
(…………あ、朝から刺激が強すぎる…………)
まだ一日は始まったばかりだというのに丸一日分の疲れが襲ってきたような感覚がして、カイは思わず深々とため息をついた。
「神子様、こちらに湯舟の用意をしてございます」
ふいにウルドに言われてハッと我に返る。
「ゆ、湯舟……!?」
「はい、先日はお入りになれませんでしたので」
そう言ってウルドが微笑んだ。その『先日』とはダルガートとともにハマームでアレコレしすぎて疲れ果てて寝落ちしてしまった時のことだと気づいて、またカイの顔が赤くなる。
「ええと、じゃあありがたく……」
と言いつつ、また身体を洗うだのなんだのと言われるかな、と一瞬身構えると、ウルドが陶器の入れ物に石鹸や手巾などを並べて足元に置いてくれた。
「お背中だけお手伝いいたしますので、良きところで声をお掛け下さい」
「あ……ありがとう」
手取り足取り仕えられるのに慣れていない自分を気づかってくれるウルドに感謝しながら、カイは衝立の向こうで夜着を脱いだ。
(お湯がたっぷりあるってほんとありがたいな……)
カルブの儀式の後、神殿領では順調に地下水源の水量が増えているらしい。
普通に考えれば遠くのエルミラン山脈に雨が降って数日でそんなに水量が増えるわけがないのだが、そこも神子の不思議な力ゆえなのだろうか。相変わらずこの世界の理屈はよくわからない。
一応こちらのしきたり通り、ごく薄い浴衣に着て手巾に石鹸を擦りつけ、身体を洗う。だが、どうしても思い出してしまうのは昨夜の二人の手の感触だ。
自分で首や肩や腕や胸を洗うたびに、そこに這う大きな手のひらを思い出してしまう。
(……ってか、触られてないとこなんてどこにもないんじゃ……)
そう思ってしまうくらい、二人の愛撫は濃厚で執拗だった。
背後からカイを抱き支えていたダルガートの硬くて厚い手のひらはカイの首筋や脇の下、腹から胸へと這い周り、絶え間ない快感にピクピクと震えて蜜を零していたカイのモノや両足の付け根の際を撫でて擦っていた。
そしてサイードの、あの穏やかな微笑みを浮かべる唇にありとあらゆる場所を愛された。
カイはダルガートにやたらと執拗に嬲られていやらしくぷっくりと膨らんだままの乳首を見下ろして真っ赤になる。
そしてサイードにされた濃厚な口淫を思い出して、股間を洗う手を止めてしまった。
(だ、だって、まさかあんな……)
サイードがあの男らしい美貌をカイの股間に深々と埋め、そそり勃つモノを咥え込んでいた光景が目蓋に焼き付いて離れない。
我慢できずに彼の口内へ精を零してしまったカイを見上げてくっきりとした口元に笑みを浮かべた顔は、普段の穏やかさが嘘のようにゾクゾクするほど危険な官能に満ちていた。
「…………っは……ぁ……っ」
あまりに刺激的かつ衝撃的な光景を思い出しては思わず息を吐きだす。
(こ、ここ、ナカもちゃんと洗わないといけないよな……多分……)
そして未だに何か太いモノが挟まっているような感覚が残っている後腔に、そっと指を這わせた。
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