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Ⅰ 窮鼠、鬼を噛む 編

『初めまして、ラカンくん』

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 ゆるやかに上下してるラカンの胸を見て、俺はそっと唇を滑らせる。
 ラカンの分厚い胸、くっきりと割れた腹筋の溝を舌でなぞって、ちゅ、と口づけてみた。

(ああ、すごい、うそみたい、おれ、ほんとにラカンにさわってるんだ)

 今、俺はきっとものすごくだらしない顔で笑ってるんだろう。自分でもだんだん頭が馬鹿になってきているのがよくわかる。
 俺はラカンのズボンをそろそろと慎重に下ろした。すると下穿きに包まれたラカンのモノが現れた。
 ああ、ようやくお会いできましたねラカンくん……♡ なんて思わず挨拶したくなる。
 普段ムスッとした顔をして面白いジョーク一つも言えやしない俺が実際にそんなことを言ったら誰しもが驚くだろう。頭おかしいなんて言われなくてもわかっている。
 いや、実際にラカンに向かって「くん」なんて呼んだら絶対笑ちゃうだろうな。俺が。いやでも案外かわいいかもな。
 とはいえ、いつも愛想が足りないだの表情がないだのと言われる俺がもし本当にそんなことを言い出せば、正気か疑われて妖魔祓いの教会に放り込まれること間違いなしだろう。それは良くない。

(すごい……、ほんとに、ラカンのなんだ……)

 何日も野営しながらの仕事なんていくらでも一緒に行ってるけど、そういう場所では敵に襲われた時に素早く戦えるように服を脱いだり緩めたりということはめったにしない。
 いや、ラカンは強いし無頓着だから、途中で川や清水の湧くところがあると上の服くらいパッと脱いで身体洗ったりしてるが。でもさすがにジロジロ見るわけにいかないだろう。下心ありすぎて。
 だからラカンとは八年もつるんでいるが、上半身ぐらいならともかく彼の下半身なんて見たことがなかった。だから今、本当に、ものすごく興奮してしまってる。

 ラカンが身に着けてる下着は少し変わっていて、長い布を器用にねじって巻きつけている。多分彼ら鬼人族が元々いたという東の方の物なのだろう。着替えや水浴びをした時にちら、と見えたことはあったが、こんな間近でじっくり見るのは当然ながら初めてだ。

(ラカン、ラカン)

 ハアハアしながら布を大きく押し上げてる彼の股間に顔を埋めて、恐る恐る唇を押し当てる。

(どうしよう……、腹の奥が、きゅうっ、ってなる……)

 自分の下腹をそっと押さえながら、俺は口内に溢れる唾液を呑み込んだ。

 初めの二、三年は割と純粋でかわいらしかったラカンへの恋心は、八年経って片思いをこじらせすぎてとんでもない方向へと進化してしまった。
 お陰でこの数年、ラカンがきっとどこかで抱いてる女の子たちみたいに自分が抱きしめられて『かわいい、かわいい』なんて言われながら彼にうんといっぱい欲しがられてしまう、という妄想に俺は夢中になってしまっている。

 初めのうちはラカンに触られるのを想像しながら女の子になったつもりで自分で後ろを見様見真似で触っていただけで満足してたけれど、ある日突然『ラカンのラカンくんは指なんかよりずっと太いはずだ』と天啓をうけて、指で弄るよりもう一段階上の世界へ飛び込んでしまった。
 おかげで俺の尻はあられもないオトナの道具ですっかり開発済みだ。

 知ってるか? ニンゲンってやつは妙なところで妙な技術力を発揮するようで、女の人が自分を慰めるために男のアレの形をした道具ってのがあるんだぞ? すごいなニンゲン。
 そしてそれを使って楽しむのは女ばかりとは限らない、ってことだ。
 昔、たまたま入った酒場で隣に座っていた男が話してた大人のヒミツのお店とやらにこっそり行ってそれを買った時は、一生分の勇気を使い果たしたな、と思った。

 まあ、そんなこんなで、だから今もラカンのラカンくんを見て反応してるのは俺のペニスではなく尻の方だ。すごいな。処女なのにな。いや、男なんだから処女はおかしいけれど。
 そんなどうでもいいことをぐるぐる考えてしまうくらい、俺の脳みそはまともに活動していなかった。それもムリはないだろう。あんなにも恋焦がれたラカンが正体をなくしてあられもない姿で今、目の前にいるのだから。

「…………ラカン」

 そっと名前を呼んでみる。普段は絶対にできない、溢れる思いをいっぱいいっぱい詰め込んだ声で。

「……ごめん、もう我慢できない……」

 俺はどっしりとして大きく膨らんだラカンの下帯に、ちゅ、とキスをする。
 あたたかい。そして柔らかいけど芯のある弾力が俺の唇を押し返してくる。

 は~~~~~、これがラカンの。ラカンのにおいだ。

 顔を傾けて横ざまに幹を咥えてみる。そして唇で挟んで揉んでみる。ん、少し硬くなった?
 今度は舌全体を押し当ててみる。おいしいご馳走を味見してるんだと俺の舌もわかってるんだろうか、どんどん唾液があふれてきてラカンの下履きを濃い色に染めていく。

 布越しに夢中でしゃぶっているうちに、ラカンのモノは確実に反応し始めていた。酔わせすぎてラカンくんを役立たずにしてしまうことが一番の心配だったけど、大丈夫だったみたいだ。良かった。

(どうしよう、すごい、大きい、これ絶対に、大きい)

「んっ、っちゅ、ん、っふ」

 すっかり頭がバカになった俺は繰り返しキスをしながらあちこち探って、なんとかラカンの下穿きを解いて引き下ろす。するとラカンくんの先っぽがちょこっと顔を出した。ああ、その時の感動といったら!
 森から出てきて初めてウルティの果実酒を呑んだ時と同じくらい感動した。あれものすごく美味いよな。甘くてすっとしてキラキラしててほわっ、てなる。大好きなやつだ。

 そのままずりずりと下ろしながら俺は深く深く息を吐き出す。俺はきっと今、とても人には見せられない顔をしているだろうな。

 夢にまで見たラカンのラカンくんは、正直ものすごく、ものすごく凶悪だった。え、これとてもじゃないけどラカンくんなどとは呼べなくないか? ラカン様? ラカン大王? 魔王? 同じ男なのに俺のとこんなに違うものなのか?

 何が違うって大きさとか太さとかは、まあ、元の体格が全然違うんだし種族も全然違うししょうがない。俺は普通だ。多分。絶対に。
 なんというか、俺のよりもずっと色が濃い。何これ、経験の差ってやつ? 太くて、どっしりしてて、赤黒くて、その奥にぶら下がる陰嚢もすごく重たそうだ。これが『魔を喰らう者』と呼ばれる鬼人の男根なのか……。

 予想というか妄想を遥かに上回るモノが出てきて思わず呆然としてしまった。う……、当たり前だけどまだ全然反応してない通常の状態でこれなら、臨戦体勢になったら一体どんな風になるんだろう……。
 そして、ふと考えてしまう。
 ……ラカンはいつも、この凶悪なくらいに猛々しい逸物で、どんな風に女の人を愛してあげてるんだろう。やさしいのかな。激しいのかな。知りたいな。

「……はぁ……っ」

 自分でも恥ずかしいくらいいやらしい吐息が零れ落ちてしまう。

(だってすごく、すごくおいしそう)

 森にいたころは肉より川魚の方が断然好きだったのに、こっちに来て毎回ラカンに山盛りの肉を皿に盛られるようになって嗜好が変わってしまったのだろうか。

 すべすべの亀頭にキスをしてちょっと舌で舐めてみる。両手でそおっと幹を支えて、その舌を下へ滑らせる。そこでもう我慢できなくなって俺はかぶりつくみたいにラカンのを口いっぱいに咥え込もうとした。

(どうしよう、大きすぎて、全然口に、はいらない)

 一生懸命口を開けても亀頭を飲み込むのが精いっぱいだ。

(いやだ、いやだ、ずっと欲しくてたまらなかったのに)

 ずっと密かに妄想してたみたいに、唾液をからめてちゅうちゅうと吸っては舐めしゃぶる。

(ああ、すごい、すごい、おれ、いまほんとにラカンのモノを舐めて、さわってるんだ……)

「んっ、っふ、ぁ、すごい、ラカン、っ、ちゅ、ふあ、ラカン……ぁ……」

 熱い、大きい、うわ、ちょっと出てきた、我慢汁ってやつ? 少ししょっぱい。いいよ、もっと出して、もっと。

 ラカンが何か呻いて身じろぎしたような気がしたけど、もう構っちゃおれなかった。
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