銀髪の魔女

夢花音

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1章 大いなる力と試練

20話 前編時空の交差∶創造神彩子の意思

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リオと静香は、静香の部屋にいた。そこは、明るい日差しが差し込む3LDKのマンション。入口を入ると、広めの廊下が続いている。左手にはリビング・ダイニングが広がり、その先には居心地の良さそうなソファが置かれている。

リビングは南向きの大きな窓からの光で満たされており、心地よい温かさを感じさせる。窓際には、静香が大切にしているソファがあり、その前には家族や友人とお茶を楽しむためのコーヒーテーブルがさりげなく置かれている。

壁掛けのテレビはシンプルでスタイリッシュなデザインで、部屋に洗練された雰囲気を与えていた。ダイニングスペースには、6人掛けのテーブルがあり、賑やかな集まりにも対応できる広さがあった。

横には開放的なキッチンがあり、静香の生活感が感じられる空間が広がっている。

ため息をついて、静香はソファに腰を下ろした。先ほどよりは幾分落ち着いたが、青年を厳しい目で睨んでいた。

リオは少し肩を竦めると、黙々とキッチンでお茶を入れ始めた。

「ちょっと!あなた、勝手に私の家のキッチンで何をしているの?」

静香は立ち上がり、キッチンに駆け寄った。

「触らないで!」

青年は「いいから、いいから」と言ってお湯を沸かし、急須と湯呑みを取り出した。

お茶の葉を入れようとして、青年は少し眉をひそめた。

「いやね、静香ぁ。お茶葉は無くなったから、足しておいてって昨日言ったでしょ?」

そう言って、キッチンの棚から新しいお茶葉を取り出し、缶に足していった。

静香は言葉を失い、青年を目を見開いて見つめていた。

何故?どうしてわかるの?急須も湯呑みもお茶の葉も……。

その時、部屋の空気が変わった。

玄関の前で感じた気配がソファのあたりから漂ってくる。

じっと見ていると、ソファの中央がグニャリと歪み、人の形になり始めた。

18歳くらいの白いシンプルなワンピースを着た少女が、銀髪の少しウエーブした長い髪をかきあげ、黒い瞳で静香を見つめていた。

「!」

静香は息を呑んだ。この子がアレなの?再び混乱が押し寄せる。

静香の頭に声が響く。

『静香。落ち着け。とりあえず座れ』

その言葉が終わると同時に、静香はソファに座っていた。隣には銀髪の少女がいる。

不気味な感覚にガタガタ震えていると、テーブルにお茶が静香の湯呑みで出された。

顔を上げると青年と目が合う。

(そうだ。これも問題なんだっけ)と頭を抱えた。だが見知らぬ青年なのに、なぜか既視感を覚える。

『まず、私を知ってもらおう』と頭の中の声が言った。

すると、再び「ねぇ~彩子ぉ~普通に話せないのォ…」とルビーナの声が……。

「そうだ!ルビーナの声」静香は思わず叫んだ。

『普通に話せばいいのか?わかった』

銀髪の少女はそう言うと、話を続けた。

静香は何か言おうとしたが、口を開けなかった。

銀髪の少女は、自分は大魔女ミリディアの後継者だと静香に伝えた。

そして、後継者になってからルビーナと修行したこと、女神たちの試練に立ち向かった事、麒麟の試練、そして森羅万象を手に入れて自分がいる世界の崩壊を知った事。

さらに、ルビーナが妖精になり、精霊に成長したこと、その時新たな名前をリオとしたこと。

自分達の世界で精霊王になれるリオが静香のいる世界で人間として生きたいと望んで青年の姿になっている事などを淡々と話した。

静香は青年を見つめた。

先ほどから口を開く事が出来なかったが、今は違うようだ。

「ルビーナ、なの?」と青年に問いかけた。

青年はにっこり笑って頷いた。

静香は力が抜けたようにソファにへたり込んだ。

そして、わかったというように頷き、目の前にいる青年を見た。

それから、おもむろに隣りに座る銀髪の少女に視線を向けた。

理解はできたものの、ルビーナが人間になった事はどう納得していいかわからなかった。

嬉しいことには違いない。しかし、どう接したら良いか戸惑っていた。

静香の戸惑いに答えて彩子が話を始めた。

彩子にとってもリオは、ルビーナだった時からずっと大切な家族であり、側にいてもらいたくて、精霊王になって欲しかったことなどを、淡々と報告するように伝えた。

そして、ルビーナが人間になった事はリオの希望だった。

彩子は静香にリオが人間として生活するために、リオが望むように一緒に暮らしてくれないかと伝えた。

静香は彩子の話をじっと聞いていたが、話が終わると少し考え込んで口を開いた。

それは……と言いかけて言葉を飲み込んだ静香は、青年と彩子を交互に見た。

青年は微笑んでいる。彩子はただ無表情のまま静香を見つめていた。

静香は、「簡単では無いのよ」と説明をしようと話し始めたのだが、彩子にさえぎられた。

「いきなり現れた人間が、この世界で生きていくのは普通なら無理だな。だが、私がいる。何の問題もない。」と事も無げに言った。二人を見つめながら「とりあえず、二人は今後の活動について、話し合った方が良いだろ」と言って彩子は空間にさっさと消えてしまった。

青年と静香は、彩子が消えた後もリビングで話をしていた。

消えたと言っても、彩子は何処にでもいるし、何でも知っている。

しかし青年は、そこまで静香が理解できなくてもいいと思っていた。

青年はリオと名乗り、少女を彩子と呼んだ。しかし、彩子では無いんだと少し淋しげに笑った。

二人はソファに座り、向かい合わせで話していた。

リオはコーヒーを飲みながら話を始めた。

「コーヒー飲んでみたかったのよ。静香、いつも美味しそうに飲んでいたじゃない?」

静香はこめかみを押さえた。青年はリオは確かに人間の男性となったのだろう。

しかし、口調がルビーナのままなのだ。違和感がありすぎる。

人間としてのリオ(ルビーナ)にも慣れていない状況で、口調や仕草がルビーナのままなのだ。

こめかみをもんでいると、「どうしたの?」といいながらリオは、自分が人間になった事や、女神たちの試練の事を話した後、自分のいた世界の話をした。

静香は聞いた。

「彩子さんとは一緒にいなくても良かったの?」

「あら?一緒にいるわよ。いつでもどこでも!」

静香は首を傾げた。「良く分からないわ」

「ん~~しょうがないわねぇ」そう言うと、「ちょっと、彩子。なかなか説明するのは難しいわぁ」と空間に向かってリオが言った。

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