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327話「終わりはいつか必ず来る①」
しおりを挟む学祭が終わった、次の月曜日。登校してきた生徒たちは、授業を受けることなく学祭で使用した備品等の片付けを、わいわいと楽しげに話しながら行っていた。
学祭と共に生徒会の任期を終えた三年である猪山と牛寅は、先生たちへの挨拶を済ませ、職員室を出てくる。
牛寅「これで私たちの生徒会生活も終わり...ですね、会長。」
猪山「だな。長いようで短いとは、まさにこのことだ。」
牛寅「そうですね。」
牛寅(はぁ...。今日で生徒会を引退...会長との生徒会生活が終了...特になんの進展もなく終了......。会長とはクラスも違うし...このまま、何事もなく会長との関係も終わりを迎えそう...。あぁ...。)
猪山「...どうした、灯?」
牛寅「え!?な、なにがですか!?」
猪山「落ち込んでいるように見えるが、なにかあったのか?」
牛寅「え!?あ、いや、その...あ、あれです、あれ!今日で生徒会生活も終わるのか~って思ったら、なんだか寂しくて...あ、あははは~!」
猪山「そうか。まぁ、その気持ちはわからなくもない。大変なことの方が多かったが、それでも充実した学校生活を送れた。寂しさもあるが、俺は生徒会としてこの三年間を過ごせたことを誇りに思う。」
牛寅「ですね。私も会長と同じです。」
猪山「さて、先生たちへの挨拶も済ませた。新しい会長たちの顔でも見に行くか。」
牛寅「明日...いや、正確には今日からか。今日からあの子達が生徒会として...不安がないと言えば嘘になります...。」
猪山「俺もだ。それと、灯。」
牛寅「はい、なんですか?」
猪山「今日から俺たちは、生徒会を引退する。だからーーー」
「いたいた。ここにいたよ。」
「ようやく見つけた。見つけたね。」
聞き覚えのある声に、二人は前方へと視線を向ける。視線の先には、黒と白の対象的なマントを身につけ、ベネチアンマスクで顔を隠した二人の姿。
二人は牛寅たちの視線に気づくと、ニッコリと笑みを浮かべ、深く深くお辞儀をする。
牛寅「...なにしてんの、あんたたち?」
猪山「青海と黄島だろ?なんだ、その格好は?」
黄島「青海と黄島?誰だい、それ?」
青海「僕は、ウミ。こっちは、ソラ。僕たち、青海でも黄島でもないよ。」
黄島「一体誰と間違えてるんだろうね、ウミ?」
青海「ね、ソラ。」
猪山「...なんだ、これは?」
牛寅「さぁ...?演劇の練習でもしてるんじゃないですか?あんたたち、練習するのは構わないけど、人の迷惑になるようなことはやめなさいよ。」
黄島「さっきから、何を言ってるんだろうね、あの人たち?」
青海「さぁ?僕にはよくわからないよ。」
黄島「困った困った。困ったね。」
青海「ね。」
牛寅「それはこっちのセリフよ!あんたたち、何がしたいのよ!?」
黄島「なにがしたい?それはもちろん、ゲームだよ!」
青海「あなたたちは、ゲームの参加者に選ばれたんだよ!おめでとう!おめでとう!」
猪山「ゲーム?」
牛寅「マジで何言ってんの...?」
黄島「まずは、これを見てよ。」
青海「見てよ見てよ。」
黄島はポケットからスマホを取り出すと、ビデオ通話の状態にして牛寅たちに見せる。
映し出されるのは、黄島たちと同じような格好をした、見覚えのある男子生徒。
猪山「...関、お前なにをしている?」
関「関?はて、誰ですか、それは?私は関ではなく、カカ・ワーリと申します。以後、お見知り置きを。」
牛寅「あんたに至っては何も隠せてないわよ!この二人みたいに別の名前にしなさいよ!腹立つ!!」
猪山「これは一体なんだ?なんの真似だ?」
関「ゲームですよ、ゲーム。三年間お世話になった生徒会の方々に、ありがとうの気持ちを込めた最高のゲームです。」
黄島「君たちには、色々とお世話になったからね。」
青海「カカ・ワーリ様からのプレゼントだよ。喜びなさい。喜びなさい。」
牛寅「喜ぶか!!むしろ、ムカつくわ!! こんなわけわかんないこと急にやられるこっちの身にもなれ!私たちはね、あんたらと違って忙しいのよ!! 会長、こんなやつら放っておいて、生徒会室に戻りましょう!!」
黄島「いいのかな、いいのかな?」
青海「カカ・ワーリ様を無視して、いいのかな?」
牛寅「いいに決まってんでしょ!なんかあいつの効果で、あんたらにもムカついてきたわ!なに、これ!?私を怒らせようの会でも開いてんの!?」
黄島「カカ・ワーリ様、こいつらゲームしないみたいですよ?」
青海「どうします?どうします?」
関「それはもちろん、お仕置きに決まっている。もし私を無視してゲームに参加しないのであれば...こいつが、どうなっても知らないぞぉ?いいのかぁ?」
猪山「それはーーー」
牛寅「あぁぁぁぁ!?それ、私のバッグ!?あんた、いつの間に!?つーか、汚い手で触るな!!」
関「汚いとは失礼ですね。では、もっともっと触ってあげましょう。」
牛寅「ぶん殴るぞ!!」
猪山「灯、落ち着け。つまり、ゲームに参加しないと俺たちのバッグを返さないということか?お前たち、何を企んでいる?」
関「企むなんて酷いですね。私たちは、あなた方のためを思って行動しているのですよ。ちなみに、私が持っているのは、そこの女性のバッグだけです。」
牛寅「なんであたしだけなのよ!?なんで会長のバッグは無事で私のだけ人質なのよ!?マジで意味わかんないんだけど!?」
関「このカバンを返して欲しければーーー」
牛寅「やるわけないでしょうが!あんたらのアホみたいな遊びに付き合ってるほど暇じゃないって言ったでしょ!あんた、今どこにいんのよ!?さっさと返せ!そんで、ぶん殴らせろ!」
黄島「ねぇ、ウミ?どうしてこの人、ゲームに参加するの拒むの?楽しいのに、どうして?」
青海「それはもちろん、カカ・ワーリ様に負けるのが怖いからだよ。」
牛寅「...はい?」
黄島「カカ・ワーリ様、強いもんね。この人じゃ勝てるわけないもんね。そうだよね。」
青海「ねぇカカ・ワーリ様、こんなゲームやる前から勝敗が見え見えだよ?やる意味あるの?」
関「...確かに、言われてみるとそうですね。勝敗が見えているゲームほど、つまらないものはない...。ゲームは無しにして、バッグをお返しーーー」
牛寅「ちょっと待ちなさいよ...!!」
関「どうしました?」
牛寅「私があんたに勝てるわけがない...?言ってくれんじゃないの...!いいわよ、やってあげるわよ...!今日こそあんたに教えてあげる...あんたよりも、私の方が上ってことをね!!」
黄島「ゲーム参加。決まりだね、ウミ。」
青海「決まりだね、ソラ。やったね。」
牛寅「ほら、さっさと内容を教えなさいよ!!どんなもんだろうと、ボコボコにしてあげるわ!!覚悟してなさいよ!!」
猪山「...どうして、いつもいつもこうなるんだ...?」
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