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177話「先輩と後輩⑧」
しおりを挟む時刻は21時を過ぎ、閤たちは店内の清掃を行なっている。関はテーブル席を、閤はカウンター席を拭いている。
閤「悪いなぁ、片付けまでしてもらって。」
関「気にすんなって。」
閤「ありがと。」
関「んで、今度はいつ来りゃいいんだよ?」
閤「ん? あぁ......やっぱりいいや。」
関「...は?」
閤「大丈夫、今日だけでいいよ。」
関「...なんでだよ?」
閤「んー? なんていうかさー...あんたたち、夏休みも部活してんでしょ?」
関「まぁ、週三だけど。」
閤「結構がっつりじゃん。あんたら、めっちゃ仲良いね。」
関「そう見えてんなら、そうかもな。」
閤「だからさ、私じゃなくて部活優先してあげなよ。せっかく好かれてんだから。あんたは、後一年もしないうちに卒業なんだから、今のうちにたくさん思い出作っときなって。」
閤「......作れなくなる前にさ。」
関「...俺の青春を邪魔したくないってか?」
閤「まぁ、そんなとこ?」
関「だったら、今日も呼ぶなよ。」
閤「ごめんごめん。誰に助けてもらおうかな~って思ったとき、あんたの顔が真っ先に思い浮かんだからさ...。」
関「......。」
閤「あいつは、どうせ暇してんだろうなぁって思ったら...つい...!」
関「おい。」
閤「あははは~! ごめんごめんって!」
関「...あ、そうだ。」
閤「ん? どうした?」
関「一つ言うこと聞いてもらうわ。」
閤「は? 飯でチャラだろ?」
関「あれは、まだ仕事中だから。約束の内容は、仕事中にミスしない。つまり、閉店の21時を過ぎて仕事終わった時に清算ってことだ。」
閤「お前、ズルくね?」
関「そういうルールだろ?」
閤「はいはい...ったく、いつまで経っても変わんねぇなぁ...。んで、なんだよ? なにしてほしいの?」
関「...頼れよ。」
閤「...え?」
関「部活、そんな長いことやってないから終わってから来られるし。バイトもちょこちょこ入れてるけど、こっちに顔出せる暇、結構あるんだよ。」
閤「...いいの?」
関「俺、あんたには色々と...その...世話になったから。俺にできることがあるなら、なんでもいいから、してやりたい。だから、手伝わせてくれ。」
関「もっと、後輩を頼ってこいよ......華先輩。」
閤「今、先輩って呼ぶのはズルくね?」
関「ズルくねぇ。」
閤「...じゃあ、甘えちゃおうかな?」
関「おう。」
閤「ありがとね、幸。んじゃ早速、明日来てもらえる?」
関「何時からだよ?」
閤「あんた、何時から来れんの?」
関「開店から閉店まで。」
閤「いや、流石にそれは...。」
関「甘えろ。」
閤「...へーへーわかりましたよ。後で嫌って言っても無理矢理働かせるからな? わかってんだろうな?」
関「おう。」
閤「んじゃ、片付け終わったらでいいから、他に来れる日教えて。あっ、あんたがいない日はどうしようかなぁ?」
関「七海ちゃんとか暇してんじゃね? あと、野球部員も。」
閤「そういや、野球部負けちゃったんだもんね。惜しかったなぁ~ホント残念...。あっ、ななみん良ければ甚八とか来てくれないかな?」
関「あいつなら来るんじゃね? 野球部組と一緒に、この後聞いてみるわ。」
閤「マジ? 仕事できる後輩で、先輩嬉しいわ~!」
関「今更だろ。あ、そうだ。」
閤「ん? なに?」
関「飯、めちゃ美味かったわ。」
閤「へへへ、それは良かった。今度は、幸が作ったもん食わせてよ。あれからどんだけ成長したか、見てやんよ。」
関「あの時に比べたら、だいぶ上達してると思うぜ? めちゃくちゃ練習してるからな、料理は。」
閤「ほぉ~? じゃあ、賄いはお任せしても?」
関「ほっぺた落ちて、仕事どころじゃなくなっても知らねぇからな?」
閤「言ってろ、生意気後輩。」
関「黙ってろ、バカ先輩。」
二人はその後も話に花を咲かせながら、ゆっくり、ゆっくりと店の後片付けを行っていった。
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