なんでも探偵部!

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
139 / 330

139話「バカでも風邪引く時は引く⑤」

しおりを挟む

 数十分後、台所。鍋の中で、食材がグツグツと煮られている。関はお玉で掬い上げ、小皿にとりわけ、味見を始める。


関「ん~よしよし。良い感じに仕上がってきてますね~。」

関「......あの二人も、いい感じになってますかねぇ? 彼女は、いつになったら自分の気持ちに気づくんでしょうかね?」

関「でも、傑くんは仲本くんに一方通行ですから、気づかない方がいいのかもしれませんね。気づいた方が、今よりモヤモヤすることが増えますよ。大人しく、愛を注いでくれてる西田くんに振り向いてもいいんじゃないかい? それが、一番辛い思いしなくていい道だと思いますけどね。」

関「でも、あなたが茨の道を突き進むと言うなら...私は、全力であなたを応援しますよ。張間 彩香ちゃん。」


恵「ただいま~。」


関「...ん?」


恵「あやちゃーん、今日は早く帰らせてもらえたのー。今から、ご飯作る...。」

恵「...こんな靴、うちにあったかしら? これ、どう見ても男の人の靴よね?」

恵「......ま、まさか!?」



ーーー



 張間の部屋。張間がプリンを食べ終え、横になっている。間宮はベッドにもたれかかり、自分のカバンに入れていた漫画を読んでいる。


張間「......間宮先輩。」

間宮「なに?」

張間「ありがとうございます。」

間宮「ん? なにが?」

張間「お見舞いきてくれて。あと、学校でも電話とかしてくれて。」

間宮「気にしないでいいよ。」

張間「じ、自分でこんなこと言うのあれですけど...嫌じゃなかったですか?」

間宮「......。」


 間宮は漫画を閉じ床に置くと、張間近づき軽くこめかみにデコピンする。


張間「あいてっ。」

間宮「嫌だったら、ここにきてないよ。」

張間「......。」

間宮「風邪引いて、一人で家にいて、寂しかったんでしょ?」

張間「...はい。」

間宮「全く、寂しがりやでうるさくて元気な後輩だこと。」

張間「そんな後輩はダメですか?」

間宮「ダメじゃないよ。」

張間「...間宮先輩。」

間宮「なに?」

張間「......か?」

間宮「ん? なに?」

張間「......。」

間宮「張間さん?」

張間「......咲ちゃんと私......どっちが好きですか?」

間宮「え?」


張間(M)私は一体、何を言ってるのだろうか?

張間(M)きっと、熱でボーッとしてるからだ。だから、こんなよくわかんないこと聞いちゃうんだ。

張間(M)あぁ...モヤモヤしてきた。答えを聞くのが怖い。

張間(M)このまま布団に潜り込みたい。

張間(M)...なんで、答えを聞くのが怖いんだろ?


間宮「どっちも好きだよ。」

張間「......。」

張間(私は...何を求めていたのだろう...?)

間宮「でも、どっちかって言われたら...僕は、張間さんが好きかな。」

張間「...え?」

間宮「部活の後輩だから。だから、他の人と比べたら、ちょっとだけ特別な存在かな?」

張間「特別...ですか?」

間宮「うん。でも、僕は風邪で寝込んでる張間さんより、部室でギャーギャー馬鹿みたいにうるさく騒いでる張間さんが大好きだからさ。今日は大人しくゆっくり寝て、月曜日、元気な姿で部室に来てね。」


張間(M)特別な存在。私は、間宮先輩のちょっとだけ特別な存在。

張間(M)それが、とてもとても嬉しい。なんでかわかんないけど、とてもとても嬉しい。

張間(M)身体が少し熱くなってきた。風邪の熱さじゃない。じゃあ、なんなんだろう? この熱さは?


間宮「張間さん? 大丈夫?」

張間「......間宮先輩。」

間宮「なに?」

張間「手、握ってもいいですか?」

間宮「手?」

張間「手。」

間宮「いいけど、どうしたの?」

張間「......。」

間宮「...ほら。」


 間宮は、ゆっくりと張間の前に手を差し出す。張間も、ゆっくりと布団から手を出し、間宮の手をギュッと握りしめる。


間宮「張間さんって、思った以上に寂しがりやさんなんだね。」

張間「......。」


張間(M)なんでだろう? 何度か間宮先輩の手は握ってるのに...なんでだろう? 今、すごくドキドキする。

張間(M)ずっと、この手を握ってたい。握りしめてたい。離したくない。


張間「...えへへ。」

間宮「張間さん?」


張間(M)なんだろう? 感じたことのない、この気持ち。名前の知らない、この気持ち。


張間「えへへ...間宮先輩。」

間宮「なに?」


張間(M)あなたの名前は、もしかしてーーー


関「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

間宮「え!? な、なに!?」

張間「部長の声が! 一体、何が!?」



ーーー



 リビングでは、恵が金属バットを持って関を威嚇している。ジリジリと迫ってくる恵から、ゆっくりと後ずさって距離を取っていた関だったが、ついに壁際へと追い込まれてしまう。


恵「お、大人しく、そこでジッとしててください! すぐに楽にしてあげますから!!」

関「楽に!? 私、殺されますよね!? そうですよね!? 落ち着いてください! まず、その金属バットを下ろしてください! 怪しい者じゃありませんから!」

恵「人ん家で勝手にご飯作って、さらにうちの食材勝手に使ってる人のどこが怪しくないんですか!? 反論は!?」

関「ありません!!」

恵「あ、彩ちゃんは...私が守るぅぅぅぅぅぅ!!」

関「あぁぁぁぁぁ!?!?」

張間「お、お姉ちゃん!? なにしてるの!?」

恵「彩ちゃん!? ダメ! ここにきちゃダメだよ! すぐに終わらせるから、待っててね!!」

間宮「先輩、大丈夫ですか!?」

恵「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!? 新たな敵が!? 彩ちゃんから、離れろぉぉぉぉぉ!!」

間宮「え!? ちょっ、待って待って待って!!」

張間「お姉ちゃんんんんん!! 落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!!」
しおりを挟む

処理中です...