なんでも探偵部!

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
119 / 330

119話「恋とテストは難しい④」

しおりを挟む




 1-Bの教室。西田と北台が机をくっつけ、黙々とテスト勉強している。


西田「......。」

北台「......。」

西田「......はぁ。」

北台「......聖也くん。」

西田「な、なに?」

北台「張間、呼んであげようか?」

西田「え?」

北台「多分、聖也くんと二人っきりだと来ないけど、私がいたら一緒に勉強してくれると思うよ。」

西田「あ、いや...でもさ...。」

西田「......北台さんはさ、どうして僕のこと好きでいられるの? 僕はさーーー」

北台「好きだから。中学の時から、ずっと。」

西田「...諦めないの?」

北台「うん。可能性が0じゃないから。0でも諦めないけどね。だから、聖也くんも諦めちゃダメだよ。」

西田「...わかってるよ。というか、北台さんは中学の頃からマネージャーで、僕のこと見てくれてるから、言わなくてもわかるよね?」

北台「うん。あなたが大の負けず嫌いだってことは、知ってるよ。」

西田「今は、まだ振り向いてもらえてないけど...僕も、諦めないから。ってか、諦めちゃダメって僕に言う? 諦めてほしいんじゃないの?」

北台「まぁ、簡単に諦めてくれるのなら、諦めてほしいけど...。諦めないのが、西田 聖也だって知ってるから。それに、目標に向かって、がむしゃらに頑張って突き進むアナタが大好きだからさ。」

北台「あなたは今、前しか見てない。これからもずっと、隣にいる私のことなんて見ないかもしれない。それでも、私はずっとあなたの隣にいるよ。あなたが前を見続けてる限り、私は前を見てるあなたを応援する。でも、少しでも隣の私を見たら...。」


 北台は、手を止め立ち上がり、西田の元へと歩み寄る。少し屈み、西田の耳元に口を寄せる。


北台「覚悟、しててね。」

西田「......。」

北台「お手洗い行ってくるね。」

西田「う、うん。」

西田「......今のは、ちょっとドキッてするよ...。」


 北台の姿が見えなくなると、囁かれた耳を押さえてボソリと呟く。



ーーー



関「はーーりーーまーーくーーーん!!」

北台「ん?」


 お手洗いを済ませ、廊下を歩いていると、外から関の声が響いてくる。北台は窓に寄り、外を眺める。視線の先では、張間が必死に関から逃げている。


関「待ちなさぁぁぁぁい!!」

張間「いやぁぁぁぁぁ!? こないでぇぇぇぇぇ!!」

関「大人しく勉強しなさぁぁぁぁぁい!!」

北台「張間あいつは、なにやってんだか。聖也くんは、あいつのどこに惚れたんだろ? まぁ、いいやつだってことは、身をもって体験したからわかってるけどさ。」

北台「......。」


北台(M)張間あいつには、まだ少し嫉妬している。だって、私の好きな人が好きなんだもん。嫉妬は、止まることなく膨れ上がっていく。

北台(M)でも、私は学んだ。嫉妬は、私を真っ黒に染めるって。心をむしばんでいくって。

北台(M)嫉妬するのは、努力が足りないからだ。自分の努力が足りない部分を、嫉妬で埋めている。だって、努力は大変だから。辛いから。苦しいから。嫉妬してた方が、まだ楽なんだ。

北台(M)でも、嫉妬は心を蝕む。努力を蝕む。前を見えなくする。自分だけしか見えなくなる。

北台(M)ふと、前を見たとき...目の前にあったものは、全て無くなってた。嫉妬に、全部奪われていた。

北台(M)もうダメだ、なにもかも失った。もう諦めよう。そう思った。

北台(M)でも、あいつは...張間は、私に手を差し伸べてくれた。嫉妬が奪っていったものを、取り返してくれた。まだいけるよって、立てって、歩けって応援してくれた。

北台(M)前を向いて歩いていても、嫉妬は私の心を、努力を蝕もうと、後ろから追ってくる。

北台(M)だけど...私は、もう負けない。嫉妬なんかに負けない。

北台(M)嫉妬する時間を、自分を磨く時間に変える。

北台(M)嫉妬する時間を、起こらないかもしれない素敵な未来を考える時間に変える。

北台(M)嫉妬する時間を、素敵な未来を実現させるために努力する時間に変える。

北台(M)嫉妬する時間を、張間あいつへ感謝する時間に変える。

北台(M)前を見れば見るほど、聖也くんとの距離が遠いことに気づく。手を伸ばしても届かない、届く気配がない。

北台(M)でも、見えている。小さくても、遠くても、彼は見えている。

北台(M)だから、諦めない。歩みを止めない。一歩一歩、ゆっくりでもいい。どんなに苦しくても、辛くても、歩みを止めない。

北台(M)立ち止まってた私の背中を押した彼女に、起こらないかもしれない素敵な未来を実現させて、伝えるって決めたから。


関「さぁ、捕まえましたよ! もう逃がしませんよぉぉぉ!!」

張間「ちくしょぉぉぉ! 離せぇぇぇぇ!!」

関「くそっ、なんて活きのよさだ...! 暴れるんじゃない! 傑くーん! 首輪と紐! 早く早く!!」

北台「...あれに嫉妬してるって、なんかバカらしくなっちゃうよね。」


北台(M)でも、嫉妬してることが、少し嬉しい時もある。

北台(M)嫉妬しているってことは、それだけ聖也くんのことが、大好きってことだから。


北台「...あんたには、絶対負けないんだからね。張間 彩香ちゃん。」


 北台は、親指を立て、人差し指を張間に向け狙いを定める。


北台「...ばーんっ。」




しおりを挟む

処理中です...