なんでも探偵部!

きとまるまる

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96話「一年もあれば、色々と変わるもの③」

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関「ほら、茶だ。」

間宮「あ、あ、ありがとう、ございます...。」

関「なんか食うか? 冷蔵庫、なんか入ってたっけか?」


 椅子に座り、フルフルと震えている間宮から視線を外し、冷蔵庫を開けジッと中を覗き始める。


間宮(な、なんだ、ここ? というか、なんで部室に冷蔵庫が...?)

関「おい、お前。」

間宮「は、はい!!」

関「プリン食うか?」

間宮「だ、だ、大丈夫でふ!」

関「でふってなんだよ、でふって。」

間宮「ご、ごめんなさい!!」

関「いちいち謝んなくていいぞ。そんな謝られると、うぜぇ。」

間宮「ご、ご、ごめんなさい!!」

関「お前、人の話聞いてる?」

間宮「ひぃ!?」

関「...なぁ。」

間宮「は、はい!!」

関「名前、なんて言うんだ?」

間宮「な、名前ですか...?」

関「俺は、関 幸ってんだ。お前は?」

間宮「ま、間宮 傑...です...。」

関「間宮くんか。間宮くん、なんかあったのか?」

間宮「...え?」

関「さっきから、すげぇビクビクしてるっつーか...あ、俺が怖いだけか?」

間宮「そ、それは...。」

関「なんかあったんだろ? 俺でよければ、話聞くぜ?」

間宮「......。」


 間宮は顔を俯かせ、沈黙が数秒続く。関は、悲しそうに俯く間宮を見つめながら、大きく咳払いを一つする。


関「ここは、なんでも探偵部! 校庭の草むしりから人探しなどなど、困っている人たちに手を差し伸べる、すんばらしい部活動だ!」

間宮「...え?」

関「つーことだ。だから、お前が何か困ってることがあるなら、力になるぜ。」

間宮「......。」

関「無理には聞きださねぇよ。嫌だったら、茶飲んで帰ってくれていい。お前のしたいようにしろ。どんなことでも、俺は受け止めるぜ。」

間宮「......僕は...。」



ーーー



関「ふーん、部活内でいじめねぇ...。そりゃ、入りたくなくなるな。」

間宮「......。」

関「つーか、それならなんで部活必須のここにきたんだよ?」

間宮「ここには、幼馴染がいるから...。知り合いがいた方が、少しは楽だったから...。だから、あまり調べないできちゃって...。」

関「なるほどな。そーかそーか......そんな理由があるならば、無理やり入部させるとかはやめた方がいいなぁ。」

間宮「む、無理やり!?」

関「どうすんだ? 今日明日で部活決めなきゃだぞ?」

間宮「......。」

関「まぁでも、そういう理由なら、もしかしたら例外つってどこにも入らなくてよくなるかもだな。先生とか生徒会の野郎どもには伝えたのか?」

間宮「...まだ、です...。」

関「そうか。間宮くん。」

間宮「は、はい?」

関「どこにも入りたくないなら、明日一緒に先生に言いに言ってやるよ。」

間宮「...え?」

関「一人じゃ言いにくいだろ?」

間宮「...はい。」

関「話は聞いたから、あれだったらお前は隣で突っ立ってるだけでもいい。俺が説明してやるよ。もし、どこかしら所属しろって言われたら、ここに入部するだけ入部して、こなくてもいいぞ。」

間宮「え?」

関「部活入りたくないやつが無理やり入ったって、楽しくもなんともないだろ? 俺は、お前がこれ以上部活が嫌なもんだって思ってほしくないからな。」

間宮「......。」

関「ここに入るのも嫌なら、部活探し手伝ってやる。どうせ、体験入部とか何一つしてないんだろ? 一人が怖いなら、俺がついてってやる。もしなんかされそうになったら、俺が助けてやるよ。ぶん殴られそうになったら、俺がそいつをぶん殴ってやる。」

間宮「そ、それは、やめてください!」

関「遠慮しなくていいぞ~!」

間宮「......。」

関「ん? どうした?」

間宮「...な、なんであなたは、僕に優しくしてくれるんですか...?」

関「聞いてなかったのか?」

間宮「え?」

関「ここは「なんでも探偵部」校庭の草むしりから人探しなどなど、困っている人たちに手を差し伸べる、すんばらしい部活動だ。」

関「お前が困ってるんなら、手を差し伸べてやるよ。」

間宮「......。」

猪山「関、いるか? 入るぞ。」

関「ん? 光里と牛寅じゃねぇか。んだよ?」

牛寅「おい、苗字で呼ぶな。」

関「いちいちうるせぇな...。何しにきたんだよ、ピカピカコンビ。」

猪山「ピカピカコンビ? なんだ、それは?」

関「お前ら、光里と灯だろ? だから、ピカピカコンビ。」

猪山「意味がわからん。」

牛寅「や、やややややめなさいよ! コ、コ、コンビって!? 光里さんと一緒にしないでよ!」

猪山「灯、俺と一緒は嫌なのか?」

牛寅「え? い、いや、違いますよ! 嫌じゃないです! むしろ、とっても嬉しいんです! でもですよ!? こう...コ、コンビとか、そんな近い感じというかなんというか!? つ、付き合ってるみたいな感じに間違われたら...いや、私はめちゃくちゃ嬉しいです! すぐにでも付き合い...あぁぁぁぁぁ違います違います!!」

猪山「なにを言ってるのかよくわからん。というか、光里さんじゃなくて光里でいいとーーー」

牛寅「光里さんと呼ばせてください!!」

猪山「お、おう...。」

関「おい、なにしにきたんだよ? イチャイチャを見せつけにきたのか? そういうのいいから、とっとと帰れ。ダメガネと乳デカ。」

猪山「おい貴様、誰がダメガネだ?」

関「お前以外、誰がーーー」

牛寅「おいてめぇ、ゴラァァァ! 誰が、乳デカだ!? あぁぁん!? 人が気にしてるところを...! このクソ野郎が!!」

関「あ~怖い怖い。牛のような乳を持ち、寅のような凶暴性。まさに牛寅の苗字がふさわしいな。」

牛寅「ぶっ殺すぞ、てめぇ!!」

関「なぎといい、お前といい...乳デカいやつはみんな凶暴なのか? まぁまぁ落ち着けよ。男はみんな、乳デカい方が好きだからよ。お前の好きなやつだって、きっとそうだぜ。なぁ、光里。」

猪山「なぜ、俺に話をふる? というか...お前は誰だ?」

間宮「あ、あ、ぼ、僕は...。」

牛寅「ん? あ、他に人いたのね。」

関「気づいてなかったのかよ。」

牛寅「ここに、あんた以外の人がいるはずないと思ってるから。」

関「ぶん殴るぞ?」

牛寅「やれるもんならやってみろや。」

猪山「お前ら、いい加減落ち着け。」

関「けっ。」
牛寅「ふんっ!」

猪山「俺と関が言い合いになったら、灯に止めてもらおうと思って呼んだんだがな...なぜこうなる?」

牛寅「あなた、名前は?」

間宮「ぼ、僕ですか!?」

猪山「名前を聞いてるだけだ、怖がらなくていい。というか、貴様一年か? ここでなにしてる?」

間宮「ぼ、僕は...。」

牛寅「...一年生? はっ!? も、もしかして!?」

猪山「貴様、ここに入部する気か!?」

間宮「ひぃ!?」

牛寅「そう考えてるなら、今すぐにやめなさい! ここは、ろくでもないところだからね! あなたみたいな子が入っていいところじゃないよ!!」

関「おい。」

猪山「あいつは、あの見た目通り凶暴なやつだ! 暴力事件を何度か起こしてるやつだ! ここにいては危ないぞ!!」

間宮「え!? ぼ、暴力!?」

関「おいゴラァァ! 一年坊主、怖がらせてんじゃねぇぞ!!」

牛寅「きゃーー! 怖~い! ぶん殴られちゃう~~!」

関「おいゴラ、てめぇ!!」

牛寅「なんですか~? また暴力で解決しようと? 怖~い!」

猪山「灯、やめてやれ。ここを潰したい気持ちはわからんでもないが。」

牛寅「あ、はい...わかりました。」

関「マジでなにしにきたんだよ、てめぇらは! とっとと帰れよ!!」

牛寅「なにって、あんたに嬉しい報告持ってきてあげたのよ。感謝しなさい。」

関「は? なんだよ?」

猪山「締め切りの時間を、18時から21時に伸ばした。これ以上はどうにもできん。」

関「おーおー、優しいことしてくれるじゃん? どうした?」

猪山「風邪引いたのは自己責任だが、理由が理由だ。今回だけだぞ。」

牛寅「光里さんが会長に頭下げたんだから、感謝しなさいよ!」

関「どうせやるなら、人連れてくるか、一人でも部活続けられるようにしてくれよな。」

牛寅「おいこら、てめぇ! ワガママ言ってんじゃねぇぞ!」

関「うるせぇな...。ありがとよ。」

猪山「もし存続したとしても、なんの成果もなければすぐに潰すからな。」

関「はいはい。まずは存続できるように頑張りますよ。」

猪山「...おい、君。」

間宮「あ、は、はい...。」

猪山「名前は?」

間宮「ま、間宮 傑です...。」

猪山「間宮くん、君はまだ部活決めてないのか?」

間宮「は、はい。」

猪山「期限は明日だぞ? 大丈夫か?」

間宮「......。」

猪山「...こいつはな、さっき言ったように何度か暴力事件を起こしている。」

関「おい!」

猪山「本当のことだ。隠していたって、いつかバレるだろ?」

関「そうかもしんねぇけどよ...。」

猪山「口も悪いしな。いいところが何一つないような男だ。だから、ここは勧めることはできん。」

間宮「......。」

猪山「......川で溺れてる子犬を、橋から飛び降りて助けるバカだ。」

間宮「え?」

猪山「まだ肌寒い春先なのにな。後先考えず飛び込んで風邪引くバカだ。そんなバカと一緒にいたら、大変なことばかり起こるぞ。」

間宮「......。」

猪山「いくぞ、灯。」

牛寅「あ、はい!」

関「けっ。んな漫画みたいなことあるわけないだろとかなんとか言ってたくせによ。すまねぇな間宮くん、ギャーギャー騒いじまって。」

間宮「あ、いえ...。」

関「あいつが言ってたのは、本当のことだ。何度か暴力事件起こしてる。まぁ、相手が殴ってきたから殴り返しただけなんだけどな。」

間宮「...あの。」

関「なんだ?」

間宮「...子犬の話も、本当なんですか?」

関「お前は信じるのか? 漫画みたいな話を。信じるか信じないかは、お前に任せるよ。」
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